回転を支える技術:動圧軸受け

回転を支える技術:動圧軸受け

車のことを知りたい

先生、「動圧軸受け」って回転することで油の圧力で軸を支えるんですよね?どんな風に軸を浮かせているのかイメージが難しいです…

車の研究家

そうだね、回転によって軸が少しずれて、軸と軸受けの間にすき間ができるんだ。このすき間は、くさびのような形になっているんだよ。

車のことを知りたい

くさび形…ですか?

車の研究家

そう。回転で油がくさび形のすき間に押し込まれると、圧力が上がる。この圧力で軸が持ち上げられるから、軸と軸受けは直接触れ合わないんだ。だから、摩擦も少なくなるんだよ。自転車のタイヤに空気を入れるようなイメージだね。空気圧でタイヤが支えられているのと同じだよ。

動圧軸受けとは。

くるまの部品である「動圧軸受け」について説明します。これは、軸が回ることで軸と軸受けの中心がずれることで機能する、滑り軸受けの一種です。軸と軸受けの間には、くさびのような形のすき間があり、そこに潤滑油が押し込まれることで油の圧力(油圧)が発生し、軸にかかる重さを支えます。あらかじめ油圧をかける静圧型と比べると、回転し始めや低速回転時には油圧が低く、摩擦が少し大きくなります。そのため、軸受けの材料、油の量、油圧、軸受けのすき間の管理に気を配る必要があります。車のエンジンのクランク軸のように、重さがかかる方向が変わる軸受けでは、油圧が発生しやすく、焼き付きも比較的起こりにくいという特徴があります。

動圧軸受けとは

動圧軸受けとは

動圧軸受けは、機械の中で回転する軸を支えるための重要な部品です。滑り軸受けの一種であり、軸が回転することで生まれる油の膜によって軸を浮かせるという、少し変わった仕組みで動いています。

軸が静止している時は、軸は軸受けに直接接触しています。しかし、軸が回転を始めると状況が変わります。軸の回転によって、軸と軸受けの間にわずかな隙間ができます。この隙間は、軸の回転方向に対して楔のような形をしています。この形が動圧軸受けの肝となる部分です。

楔形の隙間に、潤滑油が流れ込みます。この潤滑油は、回転する軸によって押し出され、楔の狭い方から広い方へと流れていきます。潤滑油の流れは、ちょうど扇風機で風を送るように、軸の回転に沿って生じます。この時、潤滑油は軸を押し上げる力を生み出します。これが油膜による圧力、つまり動圧です。

この動圧が軸の重さを支えるのに十分な大きさになると、軸は軸受けから浮き上がり、油膜の上で回転するようになります。軸と軸受けが直接接触しないため、摩擦は非常に小さくなり、摩耗もほとんど起きません。これが、動圧軸受けの大きな利点です。

自動車のエンジン発電機のタービンなど、高速で回転する軸を支える必要がある機械には、この動圧軸受けが広く使われています。摩擦が少ないことでエネルギーの損失を抑え、機械の寿命を延ばすことができるため、動圧軸受けは現代の機械になくてはならない技術と言えるでしょう。

動圧軸受けの仕組み

動圧軸受けの仕組み

動圧軸受けは、回り続ける軸を支える重要な部品であり、その名の通り、油の圧力によって軸を浮かせるという、少し不思議な仕組みで動いています。軸受けの中には、軸とそれを包み込む軸受け本体の間にわずかな隙間があります。この隙間には潤滑油が満たされており、軸が止まっている時は、軸は軸受け本体に直接接触しています。

しかし、軸が回転し始めると状況が変わります。軸が回り始めると、周りの油も一緒に引きずられるように動き始めます。この時、軸と軸受け本体の間の隙間は、入口側が広くて出口側が狭い、楔のような形をしています。回転する軸によって引きずられた油は、この楔形の隙間を進むにつれて、狭い出口側に押し込められる形になります。液体は圧縮されにくい性質を持っているため、狭い場所に押し込められた油は圧力を高めます。これが動圧と呼ばれる圧力です。

この動圧が軸を押し上げる力となり、軸は軸受け本体から離れて、油の膜の上で浮いた状態になります。この油の膜を油膜と呼びます。油膜が形成されると、軸と軸受け本体は直接接触しなくなるため、摩擦が大幅に減り、滑らかに回転できるようになります。まるで水の上に浮かぶ船のように、軸は油膜の上を滑るように回転するのです。

この油膜の厚さは、軸の回転速度が速いほど厚くなります。また、粘り気のある油を使うほど厚くなり、逆にサラサラとした油では薄くなります。さらに、軸受け本体の形状も油膜の厚さに影響を与えます。最適な油膜の厚さを保つことで、軸受けの寿命を長くし、機械の効率的な運転を維持することができるのです。

項目 説明
動圧軸受けの役割 回り続ける軸を支える部品
軸受けの仕組み 油の圧力によって軸を浮かせる
軸の静止時 軸は軸受け本体に接触
軸の回転時 軸が回転すると油も引きずられて動く
動圧の発生 楔形の隙間を進む油が圧縮され、動圧が発生
軸の浮上 動圧が軸を押し上げ、油膜の上で軸が浮く
摩擦の低減 油膜により軸と軸受け本体の接触がなくなり、摩擦が大幅に減る
油膜の厚さ 軸の回転速度、油の粘度、軸受け本体の形状によって変化
油膜の厚さと回転速度 回転速度が速いほど厚くなる
油膜の厚さと油の粘度 粘り気のある油を使うほど厚くなる

静圧軸受けとの違い

静圧軸受けとの違い

滑り軸受けには、動圧軸受けと静圧軸受けの二つの種類があります。どちらも油の膜で軸を支えるという点では同じですが、その膜の作り方に違いがあります。

動圧軸受けは、軸自身の回転によって油の膜を作ります。軸が回転を始めると、周りの油が巻き込まれるようにして軸と軸受けの間に引き込まれていきます。この巻き込み効果と粘り気によって、軸は油の膜の上に浮かび上がった状態になります。回転数が上がれば上がるほど、より多くの油が引き込まれ、膜は厚くなります。しかし、軸がゆっくりと回転している時や止まっている時には、油の膜は薄く、軸と軸受けが接触しやすくなります。そのため、摩擦が大きくなり、摩耗しやすくなってしまいます。ですから、動圧軸受けは高速回転する機械に適しています。

一方、静圧軸受けは、外部からポンプを使って油を軸と軸受けの間に送り込みます。この強制的に送り込まれた油によって油の膜を形成するため、軸の回転数に関係なく、常に一定の厚さの油膜を保つことができます。たとえ軸が止まっている時でも、油の膜はしっかりと保持されます。このため、静圧軸受けは、低速回転時や起動・停止を繰り返す機械、あるいは極めて高い精度が求められる機械に適しています。動圧軸受けのように、回転による油膜形成を待つ必要がないため、始動時の摩擦や摩耗を心配する必要もありません。

このように、動圧軸受けと静圧軸受けは、それぞれ異なる特徴を持っています。機械の用途や運転条件に合わせて、どちらの軸受けを使うかを決めることが、機械の性能と寿命を左右する上で重要な点となります。

項目 動圧軸受け 静圧軸受け
油膜の作り方 軸の回転によって油を巻き込む 外部ポンプで油を送り込む
油膜の厚さ 回転数に比例 一定
低速回転時 油膜が薄く、摩擦・摩耗しやすい 油膜が保持される
適した用途 高速回転する機械 低速回転、起動・停止が多い機械、高精度機械
メリット 構造が簡単 低速でも安定、高精度
デメリット 低速時に摩擦・摩耗しやすい ポンプなど付帯設備が必要

動圧軸受けの利点

動圧軸受けの利点

動圧軸受けは、回転する軸を油の膜で支える仕組みです。この油膜のおかげで、軸と軸受けが直接触れ合うことがなく、摩擦が非常に小さくなります。そのため、摩耗が少なく、軸受けの寿命が長くなるという大きな利点があります。軸受の交換頻度が減れば、機械全体の維持管理にかかる手間と費用も削減できます。

動圧軸受けは、その構造も大きな魅力です。単純な構造のため製造コストが安く抑えられます。複雑な部品を必要としないので、組み立てや調整も容易です。これは製造工程の簡素化につながり、製品価格の低減にも貢献します。

さらに、動圧軸受けには冷却効果もあります。軸が回転すると、潤滑油も一緒に動き、熱を運び去る働きをします。これにより、軸受けの温度上昇が抑えられ、安定した動作が可能になります。高温による部品の劣化を防ぐ効果もあり、機械全体の信頼性を高めます。

高速回転する機械では、軸受けにかかる負担が大きくなります。しかし、動圧軸受けは油膜によって軸を支えるため、高速回転にも対応できます。摩擦が少ないため、発熱も抑えられ、高速回転時でも安定した性能を発揮します。そのため、高速回転が求められるエンジンやタービンなどに最適です。

このように、動圧軸受けは長寿命、低コスト、冷却効果、高速回転への対応など、多くの利点を持つ優れた軸受けです。様々な機械に幅広く利用されており、特にメンテナンスの手間を減らしたい、あるいは高速回転が必要な場面で効果を発揮します。

メリット 説明
長寿命 油膜により軸と軸受けが非接触のため摩耗が少なく、軸受けの寿命が向上
低コスト 単純な構造のため製造コストが安く、組み立てや調整も容易
冷却効果 潤滑油が熱を運び去るため、軸受けの温度上昇を抑え、安定した動作が可能
高速回転対応 油膜による支持と低摩擦のため、高速回転時でも安定した性能を発揮

動圧軸受けの課題と対策

動圧軸受けの課題と対策

回転する軸を支える動圧軸受けは、軸と軸受けの間に油膜を作り、摩擦を少なくして滑らかに回転させる仕組みです。この油膜は軸の回転によって生まれる油の圧力(動圧)で支えられています。しかし、軸の回転速度が低い時や、動き始める瞬間は、油膜が十分に厚くならないため、軸と軸受けが直接触れ合ってしまい、摩擦や摩耗が起きやすいという問題があります。

この問題を解決するためには、いくつかの対策が考えられます。まず、軸受けの材料選びが重要です。摩擦に強く、摩耗しにくい材料を選ぶことで、軸受けの寿命を延ばすことができます。例えば、硬くて丈夫な特殊な鋼や、表面に摩擦を減らす被膜をつけた材料などが用いられます。

次に、使う油の種類や量の管理も大切です。適切な粘り気を持つ油を選ぶことで、油膜を形成しやすくし、摩擦を減らすことができます。また、油の量が少なすぎると油膜が薄くなり、多すぎると抵抗が増えてしまうため、最適な量を保つ必要があります。油の汚れ具合も定期的に確認し、必要に応じて交換することが大切です。

軸と軸受けの間の隙間(すきま)の調整も重要です。この隙間が狭すぎると油がうまく流れず、油膜が作られにくくなります。逆に隙間が広すぎると油膜が薄くなり、軸と軸受けが接触しやすくなります。最適な隙間を保つことで、安定した回転を維持することができます。

軸の回転速度が変わるような機械では、油の圧力変化にも注意が必要です。回転速度が上がると油圧も上がり、下がると油圧も下がります。油圧が大きく変化すると、油膜の厚さも不安定になり、摩擦や摩耗の原因となります。そこで、回転速度の変化に合わせて油圧を調整する仕組みを取り入れることで、常に最適な油膜を保ち、軸受けの性能を安定させることができます。例えば、油の量を自動的に調整する装置や、油の流れる道を制御する弁などを用いることで、油圧を一定に保つことができます。

問題点 対策 詳細
軸の回転速度が低い時や、動き始める瞬間は、油膜が十分に厚くならないため、軸と軸受けが直接触れ合ってしまい、摩擦や摩耗が起きやすい。 軸受けの材料選び 摩擦に強く、摩耗しにくい材料(硬くて丈夫な特殊な鋼や、表面に摩擦を減らす被膜をつけた材料など)を選ぶ。
使う油の種類や量の管理 適切な粘り気を持つ油を選び、最適な量を保つ。油の汚れ具合も定期的に確認し、必要に応じて交換する。
軸と軸受けの間の隙間の調整 最適な隙間を保つことで、安定した回転を維持する。
油の圧力変化への注意 回転速度の変化に合わせて油圧を調整する仕組み(油の量を自動的に調整する装置や、油の流れる道を制御する弁など)を取り入れる。

自動車への応用

自動車への応用

車は、様々な部品が組み合わさって動いています。その中で、エンジンは車の心臓部と言える重要な部品です。エンジン内部では、ピストンが上下運動を行い、その動きを回転運動に変換して車を動かしています。この回転運動を伝える重要な部品の一つが、です。軸は、大きな力を受けながら高速で回転するため、摩擦や摩耗による劣化を防ぐ必要があります。そこで活躍するのが動圧軸受けと呼ばれる技術です。

動圧軸受けは、回転する軸と軸受けの間に薄い油の膜を作ることで、軸を支える仕組みです。軸が回転すると、油が軸と一緒に動き、軸と軸受けの間に楔形の隙間を作ります。この隙間に油が流れ込むことで圧力が発生し、軸を持ち上げる力となります。この油の膜のおかげで、軸と軸受けは直接接触せずに回転できるため、摩擦が非常に小さくなります。摩擦が小さくなると、エネルギーの損失が減り、燃費が向上するだけでなく、部品の摩耗も抑えられ、エンジンの寿命を延ばすことにも繋がります。

動圧軸受けに使われる油は、潤滑油とも呼ばれ、摩擦を減らすだけでなく、冷却の役割も担っています。エンジンは、動いている最中に熱が発生しますが、潤滑油がその熱を吸収し、エンジンを冷やすことで過熱を防いでいます

動圧軸受けは、エンジンのクランクシャフトやカムシャフトなど、重要な回転部品の軸受けとして広く使われています。エンジンの他にも、車の様々な部分で動圧軸受けの技術が応用されており、車全体の性能向上に大きく貢献しています。静かでスムーズな乗り心地、高い燃費性能、そして長い寿命。これらは、動圧軸受けのような、小さな部品の技術革新によって支えられているのです。

自動車への応用