車の変速機:副軸式の種類と仕組み

車の変速機:副軸式の種類と仕組み

車のことを知りたい

先生、「副軸式トランスミッション」って、どんなものですか?名前からすると、軸が2つあるってことでしょうか?

車の研究家

そうですね。はす歯歯車を使って変速する時に、主軸と副軸の2本の軸を使うから「副軸式」と呼ぶんです。軸が1本だけの遊星歯車式とは違うんですよ。

車のことを知りたい

なるほど。ということは、すべての車に副軸式が使われているわけではないんですね。具体的には、どんな車に使われているのですか?

車の研究家

主に、後輪駆動車や前輪駆動車の、手動で変速するタイプの車に広く使われています。最近の後輪駆動車では、副軸を車輪側で回転させる方式が増えてきていますね。これは、部品の動きを軽くして、燃費を良くするためなんですよ。

副軸式トランスミッションとは。

くるまの変速機で使われる『副軸式変速機』について説明します。はす歯歯車という、斜めに歯が切られた歯車を組み合わせて変速する方式の場合、メインの軸とサブの軸、合わせて二つの軸を使うので、副軸式と呼ばれています。遊星歯車という、太陽の周りを惑星が回るように動く歯車を使うと、軸を一つにした変速機を作ることができ、後輪駆動のくるまの自動変速機はこの方式です。副軸式変速機は、後輪駆動や前輪駆動のくるまの手動変速機でよく使われています。最近では、変速操作を軽くするために、後輪駆動のくるまでは、サブの軸をエンジンの側で常に回転させる方式から、タイヤの側で回転させる方式に変えたものがたくさん作られるようになっています。これは、回転するものの重さの影響を減らし、サブの軸がオイルをかき混ぜる時の抵抗を小さくするためです。前輪駆動のくるまの自動変速機では、全体の長さを短くするために、メインの軸の出力をサブの軸にUターンさせて、その軸で四速や五速の部分を作るものや、はす歯歯車を使って、メインの軸とサブの軸の二つの軸で三速の自動変速機、三つの軸で四速や五速の自動変速機を作るホンダの方式などがあります。

副軸式変速機とは

副軸式変速機とは

副軸式変速機は、読んで字のごとく主軸と副軸、二つの軸を使って回転速度を変える装置です。自動車の変速機は、エンジンの回転速度を調整してタイヤに伝える重要な役割を担っています。その中で、副軸式変速機は、斜めに歯が刻まれた「はす歯歯車」を組み合わせて変速を行います。

このはす歯歯車は、噛み合いが滑らかで静かなのが特徴です。そのため、多くの車種で採用されています。はす歯歯車の滑らかな噛み合いは、変速時のショックや騒音を抑え、快適な運転を実現する上で重要な役割を果たしています。

副軸式変速機では、主軸から副軸へ、そして副軸から再び主軸へ、あるいは別の軸へと回転を伝えます。このように複数の軸と歯車を組み合わせることで、多様なギア比を作り出すことができます。ギア比を変えることで、エンジンの力を効率的に路面に伝え、燃費の向上や力強い加速を実現することが可能になります。例えば、発進時や登り坂では低いギア比を使って大きな力を発生させ、高速走行時には高いギア比を使って燃費を向上させるといった制御が可能です。

近年の技術進歩により、副軸の配置や回転のさせ方にも様々な工夫が凝らされています。例えば、副軸を複数配置したり、遊星歯車機構と組み合わせることで、より滑らかで素早い変速、そして幅広いギア比を実現しています。これにより、運転者は意識することなく最適なギア比で走行することができ、快適な運転体験を得られます。また、変速機全体の小型化、軽量化も進み、自動車の燃費向上にも貢献しています。

項目 説明
副軸式変速機 主軸と副軸、二つの軸を使って回転速度を変える装置。はす歯歯車を組み合わせて変速を行う。
はす歯歯車 斜めに歯が刻まれた歯車。噛み合いが滑らかで静かなのが特徴。変速時のショックや騒音を抑え、快適な運転を実現。
ギア比 主軸と副軸、そして歯車を組み合わせることで多様なギア比を作り出す。ギア比を変えることで、エンジンの力を効率的に路面に伝え、燃費の向上や力強い加速を実現。
近年の技術進歩 副軸の配置や回転のさせ方に様々な工夫が凝らされている。副軸を複数配置したり、遊星歯車機構と組み合わせることで、より滑らかで素早い変速、そして幅広いギア比を実現。変速機全体の小型化、軽量化も進み、自動車の燃費向上にも貢献。

手動変速機における副軸

手動変速機における副軸

手動変速機、つまり自分でギアを選び、繋いだり切ったりする操作が必要な変速機では、副軸と呼ばれる部品が重要な役割を担っています。副軸とは、複数の歯車を持ち、エンジンの回転を車輪に伝えるための軸です。この副軸を用いた構造は、後輪駆動の車でも前輪駆動の車でも広く使われています。

運転者がギアを変える時、内部では副軸が回転したり止まったりを繰り返しています。ギアを変える際に回転の差を吸収し、スムーズな変速を可能にするのが同期機構と呼ばれる部品です。近年、この同期機構の操作を軽くするために、副軸の配置や回転の仕方に工夫が凝らされています。

例えば、後輪駆動の車では、以前はエンジンの側で回転していた副軸を、最近では車輪の側で回転させる方式が増えてきています。このように配置を変えることで、回転する部分の重さを軽くし、副軸がオイルの中を回るときに生じる抵抗を小さくすることができます。その結果、ギアチェンジがより滑らかになり、部品全体も軽くすることができるのです。

副軸の回転は、エンジンの回転を適切な速度とトルクに変換するために欠かせない要素です。副軸の回転速度は、選択されたギアによって変化し、最終的に車輪に伝わる回転速度を決定します。この精巧な仕組みが、手動変速機をスムーズに動作させ、運転者が意図した通りの速度で車を走らせることを可能にしています。つまり、副軸は、手動変速機にとって無くてはならない重要な部品と言えるでしょう。

項目 説明
副軸の役割 エンジンの回転を車輪に伝えるための複数の歯車を持つ軸。後輪駆動車と前輪駆動車の両方で使用されている。
同期機構の役割 ギアを変える際の回転の差を吸収し、スムーズな変速を可能にする。
最近の副軸配置の工夫(後輪駆動車) 以前はエンジンの側で回転していた副軸を、車輪の側で回転させる方式が増えている。
車輪側配置のメリット 回転部分の軽量化、オイル抵抗の減少、滑らかなギアチェンジ、部品全体の軽量化。
副軸の回転速度 選択されたギアによって変化し、車輪に伝わる回転速度を決定する。
副軸の重要性 エンジンの回転を適切な速度とトルクに変換するために欠かせない、手動変速機にとって無くてはならない部品。

自動変速機における副軸

自動変速機における副軸

自動変速機、つまり人の操作を介さず自動で変速を行う機構を持つ変速機にも、副軸という仕組みは用いられています。副軸とは、主軸と平行に配置された回転軸のことで、主軸と共に変速機の要となる部品です。特に前輪を駆動させる車においては、変速機の全体の長さを短くするために、この副軸が重要な役割を果たします。

具体的には、主軸から出力された回転を副軸へと伝え、そこで方向をUの字型に反転させることで、四速や五速といった高い段の歯車機構を配置する手法がとられています。これは、限られた機械室の空間を最大限に活用するための工夫と言えます。前輪駆動車では、機械室にエンジンと変速機が横並びに配置されるため、変速機の全長を短くすることが、配置の自由度を高める上で重要になります。副軸を用いることで、高い段の歯車を主軸の延長線上に配置するよりも、変速機の全長を短くすることが可能になります。

また、斜めに歯が切られたはす歯歯車を巧みに組み合わせることで、主軸と副軸の二軸だけで三速の変速機構を作り、さらに別の軸を追加した三軸で四速や五速の変速機構を実現する方式も存在します。少ない軸で多くの段を実現することで、変速機の小型化・軽量化に繋がり、燃費の向上にも貢献します。このように、副軸は自動変速機においても重要な役割を担っており、多様な歯車比、つまり回転速度の変換比率を実現することで、燃費向上だけでなく、走行性能の向上にも貢献しているのです。

滑らかで違和感のない変速と、快適な運転を実現するために、副軸を含めた変速機の技術は、常に開発が進められ、進化を続けています。近年の自動変速機は、非常に複雑な構造を持ち、高度な制御技術によって緻密に制御されています。これにより、燃費の向上、走行性能の向上、そして快適な運転体験といった、様々な恩恵をドライバーにもたらしています。

項目 内容
副軸の役割 主軸と平行に配置された回転軸で、変速機の要となる部品。特に前輪駆動車では、変速機の全長を短くするために重要。
副軸の機能 主軸からの回転をU字型に反転させ、高段の歯車機構を配置。限られた空間を有効活用。
副軸の効果 変速機の全長短縮、配置自由度の向上。はす歯歯車の組み合わせで多段変速を実現し、小型化・軽量化、燃費向上に貢献。
近年の自動変速機 複雑な構造と高度な制御技術により、燃費向上、走行性能向上、快適な運転体験を実現。

遊星歯車式との比較

遊星歯車式との比較

自動変速機には、遊星歯車機構を用いた方式と副軸歯車機構を用いた方式の二種類が存在します。それぞれに特徴があり、車種や目的に合わせて使い分けられています。

まず、遊星歯車機構について説明します。遊星歯車機構は、太陽歯車、遊星歯車、遊星キャリア、内歯車といった複数の歯車を組み合わせることで、複雑な回転運動を生み出すことができます。この機構の最大の特徴は、単一の軸で変速できることです。そのため、副軸歯車機構と比べてコンパクトで軽量な変速機を作ることが可能になります。この特徴は、限られたスペースに様々な部品を配置しなければならない自動車にとって大きなメリットとなります。特に、後輪駆動車では、駆動軸と変速機を繋ぐためのプロペラシャフトの配置の自由度を高めることができるため、遊星歯車機構が好んで採用されています。また、複数のギアを同時に噛み合わせることができるため、滑らかな変速が可能になるという利点もあります。

一方、副軸歯車機構は、複数の軸に配置された歯車を噛み合わせることで変速を行います。構造が比較的単純であるため、遊星歯車機構と比べて製造コストが低いというメリットがあります。また、耐久性が高いという特徴もあり、大きな力を伝える必要があるトラックやバスなどの大型車にも多く採用されています。さらに、手動変速機にも応用しやすい機構であるため、スポーツカーなど、運転者が自分で変速操作を楽しみたい車にも適しています。

このように、遊星歯車機構と副軸歯車機構にはそれぞれ長所と短所があります。遊星歯車機構は小型軽量化に優れ、滑らかな変速を実現できる一方、構造が複雑で製造コストが高くなります。副軸歯車機構は構造が単純で製造コストが安く、耐久性が高い一方、大きくて重くなりがちです。自動車メーカーは、車種や用途、価格帯などを考慮して、最適な方式を選択しています。

項目 遊星歯車機構 副軸歯車機構
構造 太陽歯車、遊星歯車、遊星キャリア、内歯車 複数の軸に配置された歯車
特徴 単一の軸で変速
コンパクトで軽量
複数のギアを同時に噛み合わせ
滑らかな変速
構造が比較的単純
製造コストが低い
耐久性が高い
メリット 小型軽量化
滑らかな変速
製造コストが低い
耐久性が高い
手動変速機にも応用しやすい
デメリット 構造が複雑
製造コストが高い
大きくて重くなりがち
適用例 後輪駆動車 トラック、バスなどの大型車
スポーツカー

今後の展望

今後の展望

車の電動化が進むにつれて、動力を伝えるしくみである変速機の役割も大きく変わっていくと見られています。電気で走る車では、エンジンがないため、従来の複雑な多段変速機は必要なく、速度を落とすための簡単なしくみだけで済む場合もあります。

しかし、エンジンとモーターを組み合わせた車では、依然として変速機は重要な役割を果たします。このような車では、エンジンとモーターの動力をうまく組み合わせて、燃費を良くし、力強い走りを実現するために、より効率が高く、小型で軽量な変速機の開発が求められています

副軸式の変速機も、今後さらに進化していくと考えられます。新しい技術が取り入れられることで、将来の車においても重要な役割を担っていくでしょう。例えば、変速機の歯車に使われる材料の改良や、潤滑油の性能向上などにより、抵抗となる摩擦を減らし、燃費をさらに良くすることが期待されています。また、コンピューターによる変速機の制御技術が進化することで、より滑らかで、運転者の思い通りの変速操作を実現することも可能になるでしょう。

さらに、環境への配慮も重要な課題です。変速機に使われる材料のリサイクルや、製造過程でのエネルギー消費の削減など、環境負荷を低減するための取り組みも、今後ますます重要になっていくでしょう。これらの技術革新により、副軸式変速機は、将来の車においても、快適な走りを実現するための重要な部品として、進化を続けていくと期待されます。

分類 内容
電気自動車の変速機 エンジンがないため、複雑な多段変速機は不要。速度を落とすための簡単なしくみで済む場合も。
エンジンとモーターを組み合わせた車の変速機 燃費向上と力強い走りの実現のため、効率が高く小型軽量な変速機の開発が必要。
副軸式変速機の進化 歯車材料の改良、潤滑油の性能向上による摩擦低減、コンピューター制御による滑らかな変速操作などが期待される。
環境への配慮 材料のリサイクル、製造過程でのエネルギー消費削減など、環境負荷低減の取り組みが重要。

まとめ

まとめ

車は、速さを変えながら走ります。その速さの切り替えを担うのが変速機で、自動車の心臓部とも言えるエンジンと車輪をつなぐ重要な部品です。変速機には様々な種類がありますが、その中で広く使われているのが副軸式変速機です。この変速機は、複数の軸と、はす歯歯車と呼ばれる斜めに歯が切られた歯車を組み合わせることで、動力の伝達比率を変え、エンジンの回転数を車輪の回転数に変換します。

副軸式変速機は、複数の歯車を組み合わせることで、様々な速度域に対応した多段変速を可能にしています。これにより、市街地での低速走行から高速道路での高速走行まで、状況に応じて最適なエンジン回転数を選択することができ、燃費の向上とスムーズな加速を実現します。また、手動でギアを切り替える手動変速機と、自動でギアを切り替える自動変速機のどちらにも採用されており、様々な車種で活躍しています。車種によって求められる性能は異なるため、エンジンの出力特性や車の大きさ、用途に合わせて、歯車の組み合わせや配置、変速機の大きさなどが工夫されています

近年では、運転の快適性を高めるための技術開発も進んでいます。例えば、手動変速機ではギアチェンジの際に必要な操作力を軽くするための機構が取り入れられています。また、変速機全体の大きさを小さくすることで、車内のスペースを広くしたり、軽量化による燃費向上を図ったりする工夫も凝らされています。

副軸式変速機以外にも、遊星歯車を使った変速機など、異なる方式の変速機も存在します。しかし、副軸式変速機は構造が比較的単純であるため、製造コストを抑えることができるという大きな利点があります。このため、今後も様々な車種で採用され続けると考えられます。

自動車技術は常に進化を続けており、変速機も例外ではありません。今後、副軸式変速機は、更なる効率向上や小型化、静粛性の向上など、様々な改良が加えられていくでしょう。より快適で環境に優しい車を実現するために、副軸式変速機は重要な役割を担い続けるはずです。

項目 説明
変速機の役割 エンジンの回転数を車輪の回転数に変換し、速度の切り替えを担う。自動車の心臓部とも言えるエンジンと車輪をつなぐ重要な部品。
副軸式変速機の仕組み 複数の軸とはす歯歯車を組み合わせることで、動力の伝達比率を変え、エンジンの回転数を車輪の回転数に変換する。
副軸式変速機のメリット
  • 多段変速により、市街地での低速走行から高速道路での高速走行まで、状況に応じて最適なエンジン回転数を選択できる。
  • 燃費の向上とスムーズな加速を実現する。
  • 手動変速機と自動変速機のどちらにも採用できる。
  • 構造が比較的単純で製造コストを抑えることができる。
副軸式変速機の応用 エンジンの出力特性や車の大きさ、用途に合わせて、歯車の組み合わせや配置、変速機の大きさなどが工夫されている。
副軸式変速機の進化 ギアチェンジ操作力の軽減、変速機全体の小型化による車内スペースの拡大と軽量化による燃費向上など、技術開発が進んでいる。
今後の展望 更なる効率向上や小型化、静粛性の向上など、様々な改良が加えられていくと考えられる。