車の心臓部、オーバーヘッドバルブ式の仕組み

車の心臓部、オーバーヘッドバルブ式の仕組み

車のことを知りたい

先生、『オーバーヘッドバルブ』って、結局どういう仕組みなんですか? よくわからなくて…

車の研究家

簡単に言うと、エンジンのバルブがシリンダーヘッドの上にあるって意味だよ。 バルブを開け閉めする部品が、タペット、プッシュロッド、ロッカーアームって順番につながってて、カムシャフトの動きをバルブに伝えてるんだ。

車のことを知りたい

あ、上の部分にあるから『オーバーヘッド』なんですね。でも、なんでわざわざそんな仕組みになっているんですか?

車の研究家

良い質問だね。昔は『サイドバルブ』っていう、バルブが横にあった方式が主流だったんだけど、それより燃焼室を小さくできて、空気の出入りがスムーズになるから、力が出て燃費も良くなるんだ。 ただ、部品が多くて動きが複雑だから、エンジンを速く回すのにはあまり向いていないんだよ。

オーバーヘッドバルブとは。

自動車のエンジンで、『吸排気バルブ』を動かす仕組みの一つである『オーバーヘッドバルブ』について説明します。

エンジンの吸気と排気を調整する『吸排気バルブ』は、エンジンの『シリンダーヘッド』(エンジンの上部の蓋のような部分)についています。このバルブを動かすための『カムシャフト』という部品は、エンジン本体の『シリンダーブロック』の中に収められています。『カムシャフト』の回転する力は、『タペット』、『プッシュロッド』、『ロッカーアーム』という部品を順番に経由して、『吸排気バルブ』を開け閉めします。バルブがシリンダーヘッドの上についているため、『オーバーヘッドバルブ』と呼ばれます。

この方式は、『サイドバルブエンジン』という古い形式のエンジンから、『OHCエンジン』という現在主流のエンジンに移り変わる時期によく使われていました。アメリカの自動車メーカー『GM』が開発し、『シボレー』という車に搭載して、当時人気だった『T型フォード』よりも性能が良くなった理由の一つと言われています。

『サイドバルブエンジン』に比べて、エンジンの燃焼室を小さくでき、吸気と排気の効率が良くなるため、出力と燃費を良くする可能性がありました。しかし、バルブを動かす部品の強度が低いため、エンジンを高回転で回すのには向いていませんでした。

ちなみに、現在の自動車用エンジンの主流である『OHCエンジン』も、広い意味では『オーバーヘッドバルブ』の一種と考えることができます。

バルブ配置の進化

バルブ配置の進化

自動車の心臓部であるエンジンにおいて、空気と燃料の混合気を吸い込み、燃焼後の排気ガスを吐き出すバルブの配置は、エンジンの性能を大きく左右する重要な要素です。バルブの配置は時代と共に変化し、より効率的な燃焼を実現するために改良が重ねられてきました。

初期のエンジンでは、側弁式(サイドバルブ式)が主流でした。この方式では、バルブが燃焼室の横に配置されています。構造が単純であるため、製造コストが抑えられるという利点がありました。しかし、燃焼室の形状が複雑になりやすく、混合気の吸気と排気ガスの排出がスムーズに行われないため、燃焼効率が低いという欠点がありました。燃焼室の形状が複雑なため、火炎が隅々まで均一に広がりにくく、異常燃焼(ノッキング)が発生しやすいという問題もありました。

側弁式の欠点を克服するために開発されたのが、頭上弁式(オーバーヘッドバルブ式OHV)です。OHV式では、バルブを燃焼室の上部に配置することで、燃焼室をコンパクトな半球状に近づけることが可能となりました。これにより、混合気と排気ガスの流れがスムーズになり、燃焼効率が大幅に向上しました。また、燃焼室の形状が単純化されたことで、異常燃焼も抑制され、エンジンの出力と燃費が向上しました。プッシュロッドと呼ばれる棒を使って、カムシャフトの回転運動をバルブを開閉する上下運動に変換する機構が、OHV式の特徴です。

OHV式は、その後、SOHC式やDOHC式へと進化を遂げ、吸排気効率をさらに高める工夫が凝らされてきました。バルブ配置の進化は、自動車エンジンの性能向上に大きく貢献し、現代の高性能エンジンの礎となっています。これらの技術革新により、私たちはより速く、より燃費の良い自動車を享受できるようになったのです。

バルブ配置方式 説明 メリット デメリット
側弁式(サイドバルブ式) バルブが燃焼室の横に配置 構造が単純で製造コストが低い 燃焼室形状が複雑になりやすく、燃焼効率が低い。異常燃焼が発生しやすい。
頭上弁式(OHV式) バルブが燃焼室の上部に配置。プッシュロッドでカムシャフトの回転をバルブ開閉の上下運動に変換。 燃焼室形状がコンパクトになり、燃焼効率が向上。異常燃焼も抑制され、出力と燃費が向上。 プッシュロッド機構の複雑さ、高回転時の追従性の問題
SOHC式 / DOHC式 OHV式から進化。吸排気効率をさらに向上。 OHV式よりもさらに高回転、高出力化が可能。 構造が複雑で製造コストが高い。

オーバーヘッドバルブ式の仕組み

オーバーヘッドバルブ式の仕組み

自動車の心臓部である原動機には、様々な種類がありますが、その中でも広く使われているのが、吸気と排気を弁で調整する原動機です。この弁の配置方法によって、原動機の性能は大きく変わります。今回は、頭上式弁機構と呼ばれる仕組みについて詳しく説明します。

頭上式弁機構とは、吸排気弁を原動機の頭の部分である燃焼室の上部に配置した仕組みです。この配置の仕方には、大きく分けて二つの種類があります。一つは、カム軸を燃焼室の横に配置する方式です。もう一つは、カム軸を燃焼室の上に配置する方式です。どちらも、吸排気弁を動かすための軸であるカム軸が、燃焼室に比較的近い位置にあることが特徴です。

カム軸を燃焼室の横に配置する方式では、カム軸の回転運動を、押し棒と揺動腕という部品を使って、弁の開閉運動に変換します。押し棒は、カム軸の回転によって上下に動き、その動きを揺動腕に伝えます。揺動腕は、シーソーのように動き、吸排気弁を開閉します。この方式は、部品点数が多くなるという欠点がありますが、燃焼室を小さく設計できるため、原動機全体をコンパクトにできるという利点があります

一方、カム軸を燃焼室の上に配置する方式では、カム軸が直接吸排気弁を動かします。そのため、押し棒や揺動腕のような部品は必要ありません。この方式は、部品点数が少なく、構造が単純なため、高回転までスムーズに回り、高い出力を得ることができます。また、弁の開閉時期を細かく調整できるため、燃焼効率を高めることも可能です。

このように、頭上式弁機構には二つの種類があり、それぞれに利点と欠点があります。自動車メーカーは、車の用途や性能に合わせて、最適な方式を選択しています。近年では、高出力と低燃費を両立できる、カム軸を燃焼室の上に配置する方式が主流となっています。

項目 カム軸を燃焼室の横に配置する方式 カム軸を燃焼室の上に配置する方式
カム軸の位置 燃焼室の横 燃焼室の上
吸排気弁の駆動方式 カム軸→押し棒→揺動腕→吸排気弁 カム軸→吸排気弁
部品点数 多い 少ない
メリット 燃焼室を小さく設計できるため、原動機全体をコンパクトにできる 高回転までスムーズに回り、高い出力を得ることができる。弁の開閉時期を細かく調整できるため、燃焼効率を高めることも可能。
デメリット 部品点数が多くなる
その他 近年では主流となっている

歴史的背景と進化

歴史的背景と進化

自動車の心臓部であるエンジンは、長い年月をかけて大きく発展してきました。その進化を語る上で欠かせないのが、吸気バルブと排気バルブを動かす仕組みである弁機構の進化です。初期の自動車エンジンでは、サイドバルブ式と呼ばれる方式が主流でした。この方式では、バルブがエンジンの側面に配置され、燃焼室の形状が制限されるため、効率的な燃焼が難しいという欠点がありました。

そこに登場したのが、オーバーヘッドバルブ(頭上弁)式、略して頭上弁式です。この方式では、バルブが燃焼室の上部に配置されるため、燃焼室の形状を自由に設計することができ、より効率的な燃焼を実現することが可能となりました。頭上弁式は、ゼネラル・モーターズ社が開発し、シボレー車に搭載されたことで一躍有名になりました。当時、市場を席巻していたT型フォードは、旧式のサイドバルブ式エンジンを搭載していました。頭上弁式エンジンを搭載したシボレー車は、T型フォードに比べて高い動力性能を発揮し、瞬く間に人気車種となりました。これが、フォード社がサイドバルブ式エンジンに見切りをつけ、頭上弁式エンジンを開発するきっかけとなったと言われています。

頭上弁式には、大きく分けて二つの方式があります。一つは、カムシャフトをエンジンの側面に配置し、プッシュロッドとロッカーアームを介してバルブを駆動する方式です。もう一つは、カムシャフトを燃焼室の上部に配置し、直接バルブを駆動する方式です。前者は、部品点数が多く複雑な構造となりますが、製造コストが比較的安価であるため、多くの自動車メーカーで採用されました。後者は、部品点数が少なく、高回転化に有利であるため、高性能エンジンに多く採用されています。頭上弁式の登場は、自動車エンジンの進化における大きな転換点となりました。その後、カムシャフトをシリンダーヘッドに配置する頭上カム軸式が登場し、現在ではこちらが主流となっていますが、この頭上カム軸式も広義では頭上弁式に含まれると考えられています。このように、頭上弁式は、自動車エンジンの進化に大きな貢献を果たした、重要な技術と言えるでしょう。

弁機構のタイプ バルブ位置 燃焼室形状 燃焼効率 動力性能 製造コスト 代表例
サイドバルブ式 エンジンの側面 制限される 低い 低い 低い T型フォード
オーバーヘッドバルブ式
(頭上弁式)
燃焼室の上部 自由に設計可能 高い 高い 低い (プッシュロッド式) / 高い (カムシャフト直動式) シボレー / 高性能エンジン
オーバーヘッドカムシャフト式
(頭上カム軸式)
燃焼室の上部 自由に設計可能 高い 高い 現代の主流

利点と欠点

利点と欠点

空冷式や水冷式といった冷却方式に関係なく、自動車のエンジンには、吸気と排気を司るバルブ機構が不可欠です。そのバルブ機構の一つに、OHV式と呼ばれるものがあります。 OHV式は、オーバーヘッドバルブ式の略称で、カムシャフトをエンジンのシリンダーブロックに配置し、プッシュロッドとロッカーアームを介してバルブを駆動する方式です。この方式の大きな利点は、燃焼室の形状を自由に設計できることです。コンパクトな燃焼室を実現できるため、燃焼効率が向上し、出力と燃費の改善に繋がります。また、OHV式が登場する以前の主流であったサイドバルブ式と比べて、吸気と排気の経路がよりスムーズになり、これも出力向上に貢献しています。

しかし、OHV式には欠点もあります。バルブを駆動するための部品点数が多いことがその一つです。カムシャフトからバルブまでの間に、プッシュロッドやロッカーアームといった部品が介在するため、特にエンジンの回転数が上がった際に、バルブの開閉動作の正確さが損なわれやすくなります。部品点数が多いということは、それだけ重量が増えることも意味しており、エンジンの回転数上昇を阻害する要因となります。高回転を多用するスポーツカーなどでは、より精密なバルブ制御が求められるため、OHC式のような、カムシャフトをシリンダーヘッドに配置する方式が採用されることが多いです。OHC式は、バルブ駆動の部品点数を減らすことができ、高回転時でも正確なバルブ制御を実現できます。OHV式は、構造が単純で製造コストが低いという利点がある一方、高回転時の性能や燃費効率の面では、OHC式に劣る部分もあると言えるでしょう。それぞれの方式には、異なる特徴があり、自動車の用途や求められる性能によって、最適な方式が選択されています。

項目 OHV式 OHC式
カムシャフト位置 シリンダーブロック シリンダーヘッド
バルブ駆動方式 プッシュロッド、ロッカーアーム カムシャフトが直接駆動
燃焼室形状 自由度が高い 自由度が低い
部品点数 多い 少ない
高回転時の性能 低い 高い
製造コスト 低い 高い
メリット 燃焼効率が良い、製造コストが低い 高回転時の性能が良い、バルブ制御が正確
デメリット 高回転時の性能が低い、部品点数が多い 製造コストが高い

現代における位置づけ

現代における位置づけ

現代の車は、多くの部品が精巧に組み合わさって動いています。その心臓部とも言えるエンジンには、様々な種類がありますが、近年主流となっているのはOHC式です。OHC式は、吸気と排気を調整するバルブを、エンジンの上部に配置したカムシャフトで直接駆動する仕組みです。この方式は、高回転までスムーズに回り高い出力を得られるため、多くの乗用車に採用されています。

一方、かつて主流であったOHV式は、エンジンの側面に配置したカムシャフトから、プッシュロッドとロッカーアームと呼ばれる部品を介してバルブを駆動します。OHC式と比べると部品点数が多く、複雑な構造に見えますが、部品一つ一つが頑丈に作られており、低い回転数でも力強いのが特徴です。そのため、大きな荷物を運ぶトラックや悪路を走る一部の四輪駆動車など、高い耐久性と低速での力強さが求められる車種には、現在でもOHV式が採用されています。

OHV式は、自動車の歴史において重要な役割を果たしました。かつては多くの車に搭載され、人々の生活を支えてきました。そのシンプルな構造は製造費用を抑えることができ、多くの車が大衆に普及していく上で大きく貢献しました。現在ではOHC式が主流となりましたが、OHV式で培われた技術は、その後のエンジン開発に大きな影響を与え、現代の自動車技術の礎となっています。

近年の自動車業界は、環境への配慮がますます重要になっています。燃費を良くし、排気ガスを減らすための技術開発が盛んに行われています。このような状況下で、OHV式のシンプルな構造は、再び注目を集める可能性があります。部品点数が少ないため、軽量化につながり、燃費向上に貢献する可能性があるからです。また、燃焼効率を高めるための改良も続けられており、OHV式は環境性能の向上にも貢献できる可能性を秘めています。

エンジンタイプ 駆動方式 特徴 メリット デメリット 採用車種
OHC式 カムシャフトがバルブを直接駆動 高回転までスムーズに回転、高出力 高回転域での出力向上、燃費向上 構造が複雑 多くの乗用車
OHV式 カムシャフトからプッシュロッドとロッカーアームを介してバルブを駆動 部品が頑丈、低回転で力強い、シンプルな構造 耐久性が高い、低速トルクが強い、製造コストが低い、軽量化の可能性、燃費向上、環境性能向上 高回転時の効率が低い トラック、一部の四輪駆動車