車の再始動性:スムーズなエンジンの再始動のために
車のことを知りたい
先生、『再始動性』って、エンジンを止めてしばらくしてからまたかけ直す時の、エンジンの始動しやすさのことですよね?
車の研究家
その通りです。ただ、いつも問題になるわけではなく、特に暑い場所や高い場所でエンジンに負荷をかけた後に車を止めると、再始動性が悪くなることがあるんです。
車のことを知りたい
どうして暑い場所や高い場所で悪くなるんですか?
車の研究家
エンジンルームや燃料タンクの周りが熱くなって、空気を吸い込む温度が上がったり、燃料が蒸発して気泡ができたりするからだよ。逆に寒い時は、燃料がうまく気化しないので、これも始動しにくくなる原因になるんだ。
再始動性とは。
車を動かすための機械であるエンジンについて、一度止めてからしばらく置いて、再び動かし始める時のことを「再始動性」と言います。普段の気温で、普通に運転して止めた後なら、再び動かすのは簡単です。しかし、夏の暑い時や高い山のあたりで、エンジンをたくさん使って止めた後は、エンジンがある場所とその周りの温度が高くなります。このため、エンジンに取り込む空気の温度が上がり、燃料が蒸発してしまい、燃料の通り道に空気の泡ができてしまいます。そうすると、エンジンを動かす時に燃料が多すぎてしまい、うまく動かせなくなることがあります。反対に、寒い時には、エンジンを温めている途中で止めて置いておくと、燃料がうまく気体にならず、液体のままになってしまい、エンジンを動かしにくくなることがあります(プラグがかぶると言います)。どちらの場合も、外の気温と使っている燃料の蒸発しやすさが大きく関係します。
再始動性とは
車を走らせるために欠かせないのが、エンジンを始動させることです。このエンジンを一度止めてから、再び動かす時のスムーズさを再始動性と言います。普段の気温で、いつものように車を走らせている分には、エンジンを止めて少し時間を置いてから再び始動させても、特に問題はありません。
しかし、夏の暑い時期に長い時間走ったり、山の上のような空気の薄い場所で車を走らせたりすると、エンジンには大きな負担がかかります。このような状況で車をしばらく停めておくと、エンジンルームや燃料を入れるタンクの周りの温度が上がります。すると、エンジンが吸い込む空気の温度も上がり、燃料が気体になりやすくなります。この時、燃料が通る管の中に空気の泡ができてしまうことがあります。その結果、エンジンを始動させる時に燃料が必要以上にエンジンに送られてしまい、エンジン内部の空気と燃料の混合気が濃くなりすぎて、エンジンがかかりにくくなることがあります。これが、高温の環境での再始動性の問題です。
反対に、寒い地域では、エンジンが十分に温まっていない状態でエンジンを何度も止めたり、動かしたりすると、燃料がうまく気体になれず、液体のままエンジンの中に送られてしまいます。そのため、エンジンが始動しにくくなることがあります。これは、いわゆるプラグのかぶりや濡れと呼ばれる現象です。
このように、周りの気温や使っている燃料の気体になりやすさが、再始動性に大きく影響します。ですから、様々な環境でいつでもスムーズにエンジンが始動するように、自動車を作る会社は様々な工夫を凝らしています。
環境 | 状況 | 現象 | 原因 | 結果 |
---|---|---|---|---|
高温環境 | 長時間走行、高地走行後、一時停車 | 再始動性低下 | エンジンルーム温度上昇 → 燃料気化 → 燃料管内気泡発生 → 燃料過剰供給 → 混合気過濃 | エンジン始動困難 |
低温環境 | エンジン低温時、頻繁な始動/停止 | 再始動性低下(プラグのかぶり/濡れ) | 燃料気化不足 → 液体燃料供給 | エンジン始動困難 |
高温時の課題
真夏の炎天下、駐車しておいた車に乗り込み、エンジンをかけようとしてもなかなかかからない、そんな経験をされた方も少なくないのではないでしょうか。実はこれ、エンジンルーム内の温度上昇が引き起こす様々な要因が絡み合って発生する現象なのです。
まず、高温になったエンジンルーム内では、燃料系統に大きな影響が出ます。ガソリンなどの燃料は、温度が上がると蒸発しやすくなる性質を持っています。エンジンルーム内の配管内でも、この高温により燃料が蒸発し、気泡が発生しやすくなります。この気泡が、まるで血管の中の血栓のように、燃料の通り道を塞いでしまうのです。その結果、エンジンが始動するために必要な燃料がしっかりと供給されなくなり、エンジンがかかりにくくなってしまいます。
さらに、高温の影響は燃料系統だけにとどまりません。エンジンが作動するためには、燃料だけでなく空気も必要です。ところが、高温になったエンジンルーム内では、吸い込まれる空気の温度も上昇してしまいます。空気は温度が上がると膨張し、密度が低くなる性質があります。密度が低くなった空気は、酸素の含有量も相対的に少なくなり、エンジン内部で燃料としっかりと混ざり合う最適な混合気が作りにくくなってしまいます。燃料と空気のバランスが崩れると、これもまたエンジン始動の妨げとなります。
このように、燃料の気化による気泡の発生と吸入空気の温度上昇による空気密度の低下、この二つの要因が重なり合って、夏の暑い時期にはエンジンがかかりにくくなる、あるいは全くかからなくなるといった事態が発生してしまうのです。
しかし、近年の車は、このような高温環境下でのエンジンの始動性を向上させるための様々な技術が導入されています。例えば、燃料をエンジンに送り込む燃料噴射システムの改良や、エンジンを冷やす冷却システムの最適化などです。これらの技術革新により、以前と比べて夏の暑さによるエンジン始動不良は減少していると言えるでしょう。
低温時の課題
寒い地域では、気温の低下が車のエンジン始動に大きな影響を与えます。特に、真冬の厳しい冷え込みの中でエンジンを再始動させるのは困難な場合があります。これは、幾つかの要因が重なり合って起こる現象です。
まず、気温が低いと燃料が気化しにくくなります。ガソリンエンジンは、燃料と空気が適切な比率で混合された混合気を燃焼させることで動力を得ています。しかし、低温環境下ではガソリンが十分に気化せず、霧状にならずに液体のままエンジン内部に送り込まれてしまいます。液体のままではうまく燃焼せず、エンジンが始動しにくくなるのです。ディーゼルエンジンも同様に、軽油の霧化が悪くなり始動に悪影響が出ます。
次に、エンジンのオイルも低温で粘度が増加します。これは、まるで蜂蜜のようにドロドロとした状態になり、エンジンの各部品の動きを阻害します。この抵抗が大きくなると、エンジンを回転させるために必要な力が増え、始動が困難になります。
さらに、バッテリーの性能も低温環境では低下します。バッテリーは化学反応によって電気を発生させていますが、この化学反応の速度は温度に大きく左右されます。気温が低いと反応速度が遅くなり、バッテリーが本来の性能を発揮できなくなります。エンジンを始動させるにはクランキングという動作でエンジンを回転させる必要がありますが、バッテリーの力が弱いと十分な回転力を得られず、エンジンがかかりにくくなります。
これらの問題を解決するために、寒冷地仕様の車には様々な工夫が施されています。例えば、燃料を温める予熱装置が搭載されている車種もあります。予熱装置はエンジン始動前に燃料を温めて気化を促進し、始動性を向上させます。また、寒冷地仕様のバッテリーは低温下でも高い性能を発揮するように設計されています。さらに、エンジンオイルも低温で粘度が上昇しにくいものが使用されています。これらの工夫によって、寒冷地でもスムーズにエンジンを始動させることが可能になります。
燃料の特性
車の心臓部であるエンジンを再び動かすためには、燃料の性質が大きな役割を果たします。燃料がどれくらい容易に蒸気になるかは、周りの温度だけでなく、燃料の種類によっても変わってきます。
例えば、蒸発しやすい燃料を考えてみましょう。暑い時期には、燃料タンクの中で気泡が発生しやすくなります。これは、まるで沸騰したお湯の中に泡ができるように、燃料が液体から気体に変化しようとするからです。一方、寒い時期には、逆に燃料が気体になりにくくなります。まるで冷たい水はなかなか蒸発しないように、燃料も低い温度では液体のまま留まりがちです。
このような燃料の性質の違いは、エンジンの再始動に影響を与えます。暑い時期に気泡が多すぎると、燃料の流れが不安定になり、エンジンが始動しにくくなることがあります。また、寒い時期に燃料が気化しないと、エンジンに十分な燃料が供給されず、やはり始動が困難になります。
そこで、自動車を作る会社は、様々な気温の状況で安定してエンジンが始動するように、燃料の開発や燃料を扱う仕組みの改良に力を入れています。例えば、蒸発しにくい燃料を開発したり、燃料タンク内の圧力を調整する仕組みを導入したりすることで、気泡の発生を抑えたり、燃料の気化を促進したりしています。
車の持ち主も、使用する燃料の種類によってエンジンの再始動に違いが出ることがあるので注意が必要です。車の説明書には、推奨される燃料の種類が記載されています。これは、その車にとって最適な性能を発揮するために必要な情報です。推奨されている燃料を使うことで、エンジンの再始動性をはじめ、様々な性能を良好な状態に保つことができます。ですから、車の説明書をよく読んで、適切な燃料を選ぶことが大切です。
項目 | 内容 |
---|---|
燃料の蒸発 | 燃料は温度によって蒸発しやすさが変化する。高温では蒸発しやすく、低温では蒸発しにくい。 |
高温時の影響 | 燃料タンク内で気泡が発生し、燃料の流れが不安定になり、エンジンが始動しにくくなる場合がある。 |
低温時の影響 | 燃料が気化しにくく、エンジンに十分な燃料が供給されず、始動が困難になる。 |
自動車メーカーの対策 | 蒸発しにくい燃料の開発、燃料タンク内の圧力調整機構の導入などにより、気泡発生の抑制や燃料気化の促進を図っている。 |
車の持ち主への注意 | 使用する燃料の種類によってエンジンの再始動に違いが出ることがあるので、車の説明書をよく読んで適切な燃料を選ぶ必要がある。 |
技術開発の現状
自動車を動かす心臓部である機関の再始動をより滑らかに、より速く行うための技術開発は、様々な会社で盛んに行われています。目的は、どのような状況下でも、すぐに、そして静かに機関が目を覚ますようにすることです。そのために、様々な工夫が凝らされています。
まず、燃料を機関に送り込む仕組みに、精密な制御を取り入れることで、必要な量の燃料を、必要な時に、必要な場所に送り込むことが可能になりました。これにより、再始動時の無駄な燃料消費を抑え、より滑らかな始動を実現しています。
次に、機関を冷やす仕組みに目を向けると、ここでも効率化が進んでいます。機関が熱い状態でも、冷たい状態でも、最適な温度を保つことで、再始動時の負担を減らし、スムーズな始動を助けます。特に、暑い時期や寒い時期など、気温の変化が激しいときには、この冷却仕組の働きが重要になります。
さらに、寒い時期に効果を発揮するのが、燃料を温める仕組みの改良です。燃料をあらかじめ温めておくことで、寒い時期でもスムーズに燃焼が始まり、機関の再始動を容易にします。まるで寒い朝に温かい飲み物を飲むように、機関も温かい燃料を欲しているのです。
加えて、機関の始動を助ける仕組みも開発されています。これは、いわば始動時の助っ人です。機関が自力で動き出すのを助けることで、様々な環境、例えば気温が低い時や、バッテリーの力が弱い時でも、確実に機関を始動させることができます。
これらの技術革新は、暑い場所や寒い場所といった厳しい環境での再始動を確実なものにし、運転する人がより快適に車を使えるようにするためのものです。これからも、技術開発は進み、よりスムーズで、より快適な再始動の実現を目指して、様々な工夫が凝らされていくことでしょう。
技術 | 説明 | 効果 |
---|---|---|
燃料供給制御の精密化 | 必要な量の燃料を、必要な時に、必要な場所に送り込む。 | 無駄な燃料消費の抑制、滑らかな始動 |
冷却機構の効率化 | 機関を最適な温度に保つ。 | 再始動時の負担軽減、スムーズな始動、気温変化への対応 |
燃料予熱 | 燃料をあらかじめ温めておく。 | 寒い時期のスムーズな燃焼開始、容易な再始動 |
始動補助機構 | 機関の始動を助ける。 | 低温時やバッテリー弱化時でも確実な始動 |
運転者による対策
車は、気温の変化に大きく影響を受けます。真夏の炎天下や真冬の厳しい寒さの中では、エンジンの始動に問題が生じることがあります。しかし、運転者自身が行ういくつかの対策によって、このようなトラブルを未然に防ぎ、エンジンの再始動性を高めることが可能です。
高温下、例えば真夏の炎天下に駐車した車は、エンジンルーム内の温度が非常に高くなります。このような状態ですぐにエンジンを停止すると、エンジン内部の部品に負担がかかり、次回の始動時に支障をきたす可能性があります。そこで、エンジンを切る前に数分間アイドリングを行いましょう。そうすることで、エンジンルーム内の温度が下がり、部品への負担を軽減できます。また、直射日光を避けて駐車することも有効です。屋根のある駐車場や木陰などを選んで駐車することで、車内温度の上昇を抑えられます。
低温下、特に冬の寒い朝には、エンジンがかかりにくくなることがあります。これは、燃料がうまく燃焼しないことが原因の一つです。このような場合は、燃料の予熱システムを作動させましょう。予熱システムは燃料を温めることで燃焼効率を向上させ、エンジンの始動を助けます。もし予熱システムが搭載されていない車の場合は、数回に分けて短い時間クランキングを行う方法があります。一度に長くクランキングを行うよりも、短い時間で数回に分けて行った方がバッテリーへの負担を軽減し、始動性を高めることができます。また、バッテリーの状態も重要です。バッテリーは低温環境下で性能が低下しやすいため、日頃からバッテリー液の量や端子の腐食などを確認し、良好な状態を保つようにしましょう。
これらの運転者による対策に加えて、定期的な点検や整備を行うことも大切です。車の状態を常に良好に保つことで、様々な環境下でもスムーズなエンジンの始動を維持できます。日頃から車の状態に気を配り、適切なメンテナンスを行うように心掛けましょう。
気温 | 問題 | 対策 |
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高温 | エンジン停止直後の再始動困難 |
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低温 | エンジン始動困難 |
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