安定した走りの秘密:固定配分型常時4輪駆動
車のことを知りたい
先生、「固定配分型常時4輪駆動」って、どういう意味ですか?なんだか難しくてよくわかりません。
車の研究家
そうだね、少し難しいね。簡単に言うと、エンジンの力を常に4つのタイヤ全てに伝える駆動方式の一つなんだ。ただし、前のタイヤと後ろのタイヤに伝える力の割合は常に一定になっている点が特徴だよ。
車のことを知りたい
常に一定の割合で力を伝える、ということですね。ということは、状況によって力の配分が変化するタイプもあるんですか?
車の研究家
その通り!良いところに気がついたね。路面の状況などに応じて、前後のタイヤへの力の配分を変える「可変配分型常時4輪駆動」というのもあるんだよ。固定配分型と違って、より複雑な制御が必要になるんだ。
固定配分型常時4輪駆動とは。
車は常に四つのタイヤすべてで動力を伝える「常時四輪駆動」という仕組みがあります。その中でも、エンジンの力を前後のタイヤに伝える割合が常に一定のものを「固定配分型常時四輪駆動」と言います。たとえば、前後のタイヤに常に3:7の割合で力を配分する、といった具合です。これとは別に、道の状態や車の走り方に合わせて、前後のタイヤに伝える力の割合を変える「可変配分型常時四輪駆動」というものもあります。
変わらぬ力の配分
変わらぬ力の配分、すなわち固定配分型常時4輪駆動は、前後の車軸に常に一定の割合で動力を送り続ける駆動方式です。たとえば、前3後7といった具合に、あらかじめ決められた比率で力が配分されます。この比率は、路面の状態や車の速度、運転操作などに関わらず常に一定に保たれます。
エンジンの回転力は、まず変速機へと伝わり、その後、分動機と呼ばれる装置を通して前後の車軸に振り分けられます。分動機の中には、前後の車軸に動力を分配するための機構が備わっており、この機構によって固定された比率で動力が送られます。
この駆動方式の最大の利点は、安定した走行性能です。雪道や砂利道といった滑りやすい路面では、4つの車輪すべてに駆動力がかかるため、高い走破性を発揮します。ぬかるみや砂地など、タイヤが空転しやすい状況でも、しっかりと路面を捉え、車を前進させることができます。また、舗装路においても、安定したコーナリング性能を発揮します。カーブを曲がるとき、外側の車輪に大きな力がかかるため、前輪駆動車や後輪駆動車ではスリップしやすい状況でも、4輪駆動車は安定した姿勢を保ち、スムーズに曲がることができます。
一方、固定配分型常時4輪駆動は、常に全ての車輪に動力を伝えているため、燃費性能では他の駆動方式に劣る場合があります。また、タイトなコーナーでは、前後の車輪の回転差が生じにくいため、旋回性能が制限されることもあります。しかし、あらゆる路面状況で安定した走行性能を発揮するという点で、大きなメリットを持つ駆動方式と言えます。特に、雪国や山間部など、路面状況が変化しやすい地域では、その真価を発揮するでしょう。
駆動方式 | 固定配分型常時4輪駆動 |
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力の配分 | 前後の車軸に常に一定の割合で動力を送り続ける(例:前3後7) |
動力伝達機構 | エンジン → 変速機 → 分動機 → 前後車軸 |
メリット |
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デメリット |
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総評 | あらゆる路面状況で安定した走行性能を発揮。特に雪国や山間部で有効。 |
仕組みと構造
車は、様々な部品が組み合わさって動いています。その中でも、四つの車輪すべてに常に動力を伝える「固定配分型常時四輪駆動」の仕組みは、複雑ながらも巧妙に作られています。核となる部品は「中央差動装置」と呼ばれるもので、前後の車輪の回転数の違いを調整する重要な役割を担っています。
車はカーブを曲がるとき、内側と外側の車輪では進む距離が異なり、回転数に差が生じます。この時、四輪すべてに同じ力を伝え続けると、駆動系に大きな負担がかかり、スムーズに曲がることができません。中央差動装置はこの回転数の差を吸収することで、駆動系の負担を軽くし、滑らかな旋回を可能にします。
固定配分型四輪駆動では、この中央差動装置に、「粘性連結装置」や「遊星歯車機構」といった機構が組み込まれています。粘性連結装置は、シリコンオイルの粘性を利用して、回転数の差に応じて前後の車輪への動力の配分を自動的に調整します。遊星歯車機構は、複数の歯車が複雑に組み合わさることで、あらかじめ決められた比率で前後の車輪に動力を分配します。これらの機構により、前後の車輪への動力の配分比率は常に一定に保たれます。
これらの機構は、電子制御ではなく、機械的な構造によって動力の配分を制御するため、シンプルで壊れにくいという利点があります。また、常に四つの車輪に動力が伝わっているため、雪道やぬかるみなど、路面状況が悪い時でも安定した走行が可能です。このように、固定配分型常時四輪駆動は、様々な状況で高い走行性能を発揮できる仕組みとなっています。
項目 | 説明 |
---|---|
固定配分型常時四輪駆動の仕組み | 四つの車輪すべてに常に動力を伝える駆動方式。中央差動装置が前後の車輪の回転数の違いを調整し、駆動系の負担を軽減して滑らかな旋回を可能にする。 |
中央差動装置 | 前後の車輪の回転数の違いを調整する重要な部品。粘性連結装置や遊星歯車機構が組み込まれている。 |
粘性連結装置 | シリコンオイルの粘性を利用し、回転数の差に応じて前後の車輪への動力の配分を自動的に調整する機構。 |
遊星歯車機構 | 複数の歯車が複雑に組み合わさり、あらかじめ決められた比率で前後の車輪に動力を分配する機構。 |
利点 | 機械的な構造のためシンプルで壊れにくい。常に四輪に動力が伝わるため、悪路でも安定した走行が可能。 |
利点と欠点
常時四輪駆動方式には、機構の働きから常にすべての車輪に動力が伝わる仕組みを持つものと、前輪駆動もしくは後輪駆動を基本としつつ状況に応じて四輪駆動に切り替わるものがあります。常に四輪に動力が伝わる方式、いわゆる固定配分型常時四輪駆動には、様々な利点と欠点が存在します。
まずは利点ですが、もっとも大きな特徴は、その安定性と信頼性の高さです。機械仕掛けを中心としたシンプルな構造のため、電子制御に頼る複雑な仕組みに比べて故障のリスクが低く、整備の手間も比較的少なくて済みます。電子部品の劣化や不具合を心配する必要がないため、特に過酷な環境での使用に適しています。雪道や山道など、滑りやすい路面や起伏の激しい路面でも安定した走行が可能です。また、常に四輪に駆動力が伝わるため、発進時や加速時に強力なトラクション性能を発揮します。ぬかるみや砂地など、タイヤが空転しやすい状況でも、しっかりと路面を捉えて力強く進むことができます。
一方で、固定配分型常時四輪駆動には欠点も存在します。もっとも顕著な欠点は燃費性能です。常に四輪に駆動力がかかっているため、二輪駆動車に比べて駆動抵抗が大きくなり、燃費の悪化につながることがあります。舗装路面など、二輪駆動で十分な状況でも四輪を駆動し続けるため、無駄なエネルギー消費が発生してしまいます。また、路面状況に応じて前後の駆動力配分を変化させる可変配分型四輪駆動と異なり、常に一定の駆動力配分で走行するため、状況によっては走破性が劣る可能性があります。例えば、乾燥した舗装路面では、四輪駆動であることのメリットは少なく、むしろ燃費の悪化というデメリットが目立ちます。さらに、固定配分型は旋回時にタイトコーナーブレーキング現象と呼ばれる現象が発生しやすく、小回り性能が損なわれることもあります。このように、固定配分型常時四輪駆動は、高い安定性と信頼性を備える反面、燃費性能や状況に応じた走破性という点で課題も抱えています。車を選ぶ際には、使用する環境や求める性能を考慮し、総合的に判断することが重要です。
項目 | 内容 |
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利点 |
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欠点 |
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どんな車に搭載?
四輪駆動は、全ての車輪に動力を伝えることで、雪道やぬかるみといった悪路での走破性を高める技術です。その中でも、常に前後輪に一定の割合で動力を配分するものを「固定配分型常時四輪駆動」と呼びます。
では、どのような車にこの固定配分型常時四輪駆動が搭載されているのでしょうか。代表的なのは、スポーツ用途多目的車やクロスカントリー車です。これらの車は、舗装されていない道や山道など、様々な道を走ることを想定して作られています。そのため、高い走破性が求められるのです。固定配分型常時四輪駆動は、構造が単純で壊れにくいという利点もあり、こうした車には最適と言えるでしょう。
最近では、普段使いの乗用車にも四輪駆動が搭載される例が増えてきました。しかし、乗用車の場合は、燃費の良さや快適な走りも重視されるため、路面状況に応じて前後輪への動力の配分を変える「可変配分型」が主流です。これは、通常走行時は前輪駆動として燃費を良くし、滑りやすい路面では四輪駆動に切り替えることで、安定性を確保する仕組みです。
一方で、一部のスポーツカーや高級車では、固定配分型常時四輪駆動が採用されることもあります。これらの車は、速く、そして安定して走るために高度な技術が求められます。固定配分型は、常に四輪に駆動力が伝わるため、カーブでの安定性や加速性能を高める効果があり、こうした車の特徴に合っていると言えるでしょう。それぞれの車種が持つ目的や特性によって、最適な駆動方式が選ばれているのです。
駆動方式 | 種類 | 特徴 | 搭載車種 |
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四輪駆動 | 固定配分型常時四輪駆動 | 常に前後輪に一定の割合で動力を配分 構造が単純で壊れにくい カーブでの安定性や加速性能を高める |
スポーツ用途多目的車(SUV) クロスカントリー車 一部のスポーツカー 一部の高級車 |
可変配分型四輪駆動 | 路面状況に応じて前後輪への動力の配分を変える 通常走行時は前輪駆動 滑りやすい路面では四輪駆動 |
乗用車 |
他の駆動方式との比較
車は、タイヤに動力を伝える仕組みの違いで様々な種類に分けられます。その中でも四つのタイヤ全てに動力を伝える四輪駆動は、安定した走行性能で知られています。四輪駆動にも様々な方式があり、それぞれに特徴があります。
まず、常に四つのタイヤに動力を伝えている常時四輪駆動の中でも、動力の配分を固定している固定配分型常時四輪駆動は、機構が単純であることが大きな利点です。部品点数が少なく、故障のリスクも低いため、信頼性が高いと言えます。また、常に四輪に駆動力が伝わっているため、雪道やぬかるみといった悪路でも安定した走破性を発揮します。しかし、常に四輪を駆動するため、他の方式と比べると燃費性能で劣る面もあります。
次に、普段は二輪駆動で走り、運転者が任意で四輪駆動に切り替えるパートタイム四輪駆動について見てみましょう。この方式は、二輪駆動で走るため、燃費が良いというメリットがあります。また、機構も比較的単純で、価格も抑えられます。しかし、四輪駆動への切り替えは手動で行う必要があり、状況によっては切り替えが間に合わない場合もあります。さらに、舗装路面で四輪駆動の状態のままカーブを曲がると、タイヤや駆動系に負担がかかるため注意が必要です。
最後に、常時四輪駆動でありながら、路面状況に合わせて前後の駆動力配分を自動的に変える可変配分型常時四輪駆動があります。この方式は、燃費と走破性のバランスに優れています。乾いた路面では燃費を重視した配分にし、滑りやすい路面では走破性を重視した配分にすることで、様々な状況に対応できます。ただし、電子制御などを用いた複雑なシステムとなるため、機構が複雑になり、価格も高くなる傾向があります。
このように、四輪駆動には様々な方式があり、それぞれに得手不得手があります。車を選ぶ際には、自分の使い方や重視する点に合わせて最適な駆動方式を選ぶことが大切です。
四輪駆動方式 | メリット | デメリット |
---|---|---|
固定配分型常時四輪駆動 | 機構が単純で信頼性が高い、悪路走破性が高い | 燃費が悪い |
パートタイム四輪駆動 | 燃費が良い、価格が安い | 四輪駆動への切り替えが手動、舗装路面で四輪駆動のままカーブを曲がるとタイヤや駆動系に負担がかかる |
可変配分型常時四輪駆動 | 燃費と走破性のバランスが良い、様々な路面状況に対応可能 | 機構が複雑、価格が高い |
これからの技術
車は常に進化を続けており、その駆動方式も例外ではありません。特に四つの車輪すべてを駆動する方式は、様々な技術革新を経て、多様化が進んでいます。大きく分けて、路面状況や運転状況に応じて四つの車輪への力の配分を変化させるものと、常に一定の割合で四つの車輪に力を配分するものがあります。
近年、電子制御技術の進歩により、前者の可変配分型四輪駆動方式が主流となっています。コンピューターが様々なセンサーからの情報に基づき、瞬時に最適な駆動力配分を制御することで、安定した走行性能や燃費の向上を実現しています。乾いた舗装路では二つの車輪を駆動し燃費を向上させ、滑りやすい雪道などでは四つの車輪を駆動して安定性を高めるといった制御が可能です。
一方、後者の固定配分型常時四輪駆動方式も、根強い人気を誇っています。常に一定の割合で四つの車輪に力を配分するため、機構がシンプルで壊れにくく、整備しやすいという利点があります。また、悪路や未舗装路など、タイヤが滑りやすい状況でも、安定した駆動力を発揮することができます。
今後、固定配分型常時四輪駆動方式も更なる進化が期待されます。例えば、部品の材質を見直すことで、車全体の重さを軽くしたり、動力の伝達効率を高めたりすることが考えられます。これにより、燃費が向上し、より滑らかな走りを実現できるでしょう。また、電子制御技術を組み合わせることで、状況に応じてよりきめ細やかな駆動力制御を行う、新しい四輪駆動方式が生まれる可能性も秘めています。このように、それぞれの方式が持つ利点を活かしながら、技術開発は進んでいくでしょう。
駆動方式 | 説明 | メリット | デメリット | 今後の展望 |
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可変配分型四輪駆動方式 | 路面状況や運転状況に応じて四つの車輪への力の配分を変化させる。電子制御により最適な駆動力配分を制御。 | 安定した走行性能、燃費の向上、乾いた舗装路では二輪駆動、滑りやすい路面では四輪駆動と切り替え可能。 | 機構が複雑、電子制御への依存。 | – |
固定配分型常時四輪駆動方式 | 常に一定の割合で四つの車輪に力を配分する。 | 機構がシンプルで壊れにくい、整備しやすい、悪路や未舗装路でも安定した駆動力を発揮。 | 燃費が劣る場合がある。 | 部品の材質見直しによる軽量化、動力の伝達効率向上、電子制御技術との組み合わせ。 |