車の後端部:トレーリングエッジ

車の後端部:トレーリングエッジ

車のことを知りたい

先生、「トレーリングエッジ」って、車の最後端部のことですよね?でも、ただ最後端といっても、形はいろいろあるんですよね?

車の研究家

その通りです。トレーリングエッジは車の一番後ろの部分を指しますが、その形状は車種によって様々です。空気の流れを良くするために、様々な工夫が凝らされているのです。

車のことを知りたい

例えば、具体的にどんな形があるんですか?

車の研究家

例えば、後ろが跳ね上がった「ダックテール型」や、小さく折り曲げたような形などがあります。空気の流れをスムーズにして、燃費を良くしたり、走行安定性を高めたりするために、最適な形が選ばれているんですよ。

トレーリングエッジとは。

車のお尻の部分、一番後ろの端のことを『トレーリングエッジ』と言います。車の周りを流れてきた空気は、ここでやっと車体から離れていきます。このお尻の部分の形は車によって様々です。アヒルの尻尾みたいに上に跳ね上がっているものもあれば、小さく折り曲げたようなものもあります。

空気の流れと後端部

空気の流れと後端部

自動車の設計において、空気との摩擦を少なくすることは、燃費を良くし、安定した走りを実現するために欠かせません。空気は自動車の先端でぶつかり、側面を通り過ぎ、最終的に後部で車体から離れます。この後部、つまり車体後端の形状は、空気がスムーズに離れるか、乱れた流れを作るかで、空気との摩擦に大きく影響します。空気がスムーズに離れれば摩擦は小さくなり、燃費の向上に繋がります。逆に、空気が乱れた流れを作ると、摩擦が増加し、燃費が悪化するだけでなく、安定した走りにも悪影響を与える可能性があります。

自動車の後端部で空気が乱れる原因の一つに、渦の発生が挙げられます。渦は、空気の流れが急激に変化する際に発生しやすく、後端部で空気が車体から剥離する際に発生しやすい傾向があります。この渦は、自動車の後ろに引きずるように発生し、まるで自動車が空気を引きずっているような状態を作り出します。これが空気抵抗を増大させる要因となります。この渦の発生を抑えるためには、後端部の形状を滑らかにすることが重要です。例えば、後端部を緩やかに傾斜させる、角を丸くするなどの工夫が有効です。

また、自動車の底面の形状も空気の流れに影響を与えます。底面が平らでなく、凹凸があると、空気の流れが乱れやすくなります。底面を平らにする、あるいはカバーで覆うことで、空気の流れをスムーズにすることができます。最近では、自動車メーカー各社が、これらの点を考慮した空気力学に基づいた設計を行い、空気抵抗を極限まで低減した自動車を開発しています。その結果、燃費が向上し、環境性能にも貢献しています。空気の流れを制御することは、自動車の性能向上に欠かせない要素と言えるでしょう。

空気の流れと後端部

後端部の様々な形状

後端部の様々な形状

車の後端の造形は、車種や設計思想によって多種多様であり、車の性能に大きな影響を与えます。大きく分けて、跳ね上がった形状小さく折り畳まれた形状、そして滑らかに傾斜した形状の三種類に分類できます。

跳ね上がった形状は、スポーツカーによく見られる特徴です。この形状は、鳥の尾羽に似ていることから「かも尻尾型」とも呼ばれ、空気の流れを車体の上面に導くことで、車体を地面に押し付ける力を発生させます。この力は、高速走行時に車体を安定させる効果があり、特にカーブを曲がる際に威力を発揮します。しかし、空気抵抗が大きくなる傾向があるため、燃費には不利に働くこともあります。

小さく折り畳まれた形状は、主に小型車や燃費を重視する車種に採用されています。この形状は、車体後端で発生する空気の渦を小さくすることで、空気抵抗を減らす効果があります。空気抵抗が減ることで、燃費が向上し、静粛性も高まります。ただし、車体を地面に押し付ける力が小さくなるため、高速走行時の安定性は、かも尻尾型に比べると劣る場合があります。

滑らかに傾斜した形状は、セダンやクーペなど、様々な車種に見られます。この形状は、空気抵抗と車体を地面に押し付ける力のバランスが取れた設計と言えるでしょう。極端な性能は追求せず、様々な状況での走行安定性と燃費の両立を目指しています。

このように、後端部の形状は、空気の流れを制御することで、車の性能を大きく左右します。設計者は、それぞれの車種の特性に合わせて、最適な形状を追求しています。そして、その形状は、車の個性的な外観を形作る上でも重要な要素となっています。

形状 別名 主な車種 効果 デメリット
跳ね上がった形状 かも尻尾型 スポーツカー 高速走行時の安定性向上 (特にカーブ) 空気抵抗増加、燃費低下
小さく折り畳まれた形状 小型車、燃費重視車 空気抵抗減少、燃費向上、静粛性向上 高速走行時の安定性低下
滑らかに傾斜した形状 セダン、クーペ 走行安定性と燃費のバランス 極端な性能は追求しない

後端部の設計の重要性

後端部の設計の重要性

車の後端部の設計は、車の見た目だけでなく、性能や乗り心地にも大きな影響を与えます。空気の流れを整えることで空気抵抗を減らし、燃費を良くしたり、走行安定性を高めたりすることができます。また、後部座席の広さや荷物の積みやすさといった快適性にも関わってきます。

後端部の屋根のラインから後端にかけての傾斜は特に重要です。屋根のラインを後方まで長く、緩やかに傾斜させることで、後部座席の頭上の空間を広くすることができます。セダン型の車では、この設計がよく用いられています。これにより、ゆったりとした後部座席を実現しながら、空気抵抗も抑えることができます。

一方、スポーツカーなどでは、空気抵抗を減らすだけでなく、車体を地面に押し付ける力(ダウンフォース)を生み出すために、後端部を少し跳ね上げた形状にすることがあります。高速走行時に車体が浮き上がってしまうのを防ぎ、安定した走行を可能にするためです。

後端部の設計は、単に空気抵抗を減らすだけでなく、車の用途や求める性能に合わせて最適な形が選ばれます。例えば、荷物をたくさん積むことを重視する車では、後端部を垂直に近づけることで、荷室の容量を大きくすることができます。しかし、この形状は空気抵抗が増加してしまうため、燃費が悪くなる可能性があります。

後端部のデザインは、車の個性も表します。滑らかな曲線で構成された優美な形状や、シャープな直線で構成されたスポーティーな形状など、後端部のデザインは、その車の第一印象を大きく左右します。そのため、デザイナーは、性能だけでなく、見た目にもこだわって後端部の形状を決定します。つまり、後端部の設計は、車の性能、快適性、デザインといった様々な要素が複雑に絡み合った、非常に重要な部分なのです。

要素 詳細 影響
傾斜 屋根のラインから後端にかけての傾斜 後部座席の広さ、空気抵抗 セダン:長く緩やかな傾斜で空気抵抗を抑えつつ後部座席を広く
スポーツカー:跳ね上げ形状でダウンフォースを発生させ走行安定性向上
形状 後端部の形状 空気抵抗、荷室容量、デザイン 垂直:荷室容量大だが空気抵抗増加
滑らかな曲線:優美なデザイン
シャープな直線:スポーティーなデザイン

今後の技術開発

今後の技術開発

車の燃費向上や走行性能を高めるための技術開発競争は、これまで以上に激しくなっています。車体の後ろ側の空気の流れを調整する部品、すなわち後端部の設計は、空気抵抗を減らす上で非常に重要であり、技術革新の中心となっています。

コンピューターを使った模擬実験技術の進歩によって、空気の流れをより細かく調べることができるようになりました。空気の流れを目に見えるようにして、どこに抵抗が生じているのかを正確に把握することで、最も効果的な形を追求できるようになり、開発は大きく加速しています。

さらに、「 active 空気力学」と呼ばれる、走行状況に合わせて後端部の形を自動的に変える技術も開発が進んでいます。例えば、高速で走る時には空気抵抗を減らす形に、低速で走る時には安定性を高める形に、自動的に変化させることを目指しています。このような技術によって、空気抵抗を極限まで減らし、燃費向上だけでなく、走行中の安定性も高めることが期待されています。

将来の車は、今よりももっと複雑な形をした後端部を持つようになるでしょう。まるで生き物が環境に合わせて姿を変えるように、車の形も状況に応じて最適な状態に変化する、そんな時代が来るかもしれません。空気の流れを自在に操る技術によって、車の設計はますます自由になり、より高性能で環境にも優しい車の実現につながると期待されます。

技術 説明 効果
コンピューターを使った模擬実験技術 空気の流れを可視化し、抵抗発生箇所を特定。最適な形状を追求。 開発の加速
Active 空気力学 走行状況に合わせて後端部の形状を自動変更(高速:空気抵抗減、低速:安定性向上) 空気抵抗減、燃費向上、走行安定性向上

まとめ

まとめ

車の後端部、空気と別れを告げる箇所、それがトレーリングエッジです。一見すると単純な構造に見えますが、実は車の性能を大きく左右する重要な役割を担っています。

まず、空気抵抗の低減という重要な役割があります。車は走行中、常に空気の壁を切り裂いて進んでいます。この時、車体の後方で空気が渦を巻いてしまうと、進行を邪魔する抵抗力が生まれます。トレーリングエッジは、この渦の発生を抑え、スムーズに空気を流すことで、空気抵抗を減らす働きをします。空気抵抗が減れば、少ない燃料でより遠くまで走ることができる、つまり燃費が向上するのです。

次に、ダウンフォースの発生にも大きく関わっています。ダウンフォースとは、車体を地面に押し付ける力のことで、高速走行時の安定性に大きく影響します。トレーリングエッジを適切に設計することで、車体の上面と下面の空気の流れに差を作り出し、車体を地面に押し付ける力を生み出すことができます。これにより、高速走行時でも安定した走行が可能となるのです。

さらに、トレーリングエッジはデザイン性にも影響を与えます。近年の車は、空気力学に基づいた滑らかな曲線を描くデザインが主流となっています。トレーリングエッジは、この美しい曲線を完成させる重要な要素の一つであり、車の全体的な印象を左右します。

コンピューターによる模擬実験技術や、走行状況に応じて形状を変化させる可変空力装置の進化により、トレーリングエッジの設計はさらに高度化しています。燃費向上や走行性能向上への要求が高まる中、トレーリングエッジは、車の未来を形作る重要な要素と言えるでしょう。空気の流れを整える、一見目立たないこの部分が、実は車の性能を大きく左右する重要な役割を担っているのです。

トレーリングエッジの役割 詳細
空気抵抗の低減 車体後方の渦の発生を抑え、スムーズに空気を流すことで空気抵抗を減らし、燃費向上に貢献する。
ダウンフォースの発生 車体の上面と下面の空気の流れに差を作り出し、車体を地面に押し付ける力を発生させ、高速走行時の安定性を向上させる。
デザイン性 滑らかな曲線を描くデザインを完成させる重要な要素であり、車の全体的な印象を左右する。
技術の進化 コンピューターによる模擬実験技術や可変空力装置により、トレーリングエッジの設計はさらに高度化している。