観音開き:車の扉の独特な様式
車のことを知りたい
先生、観音開きって車のどんなドアのことを言うんですか?
車の研究家
良い質問だね。観音開きとは、中央から左右に開くドアのことだよ。ちょうど、お寺の観音様を安置している厨子の扉が開く様子に似ていることから、この名前が付いたんだ。
車のことを知りたい
なるほど。左右に開くドアなら、みんな観音開きって言うんですか?
車の研究家
そうとも限らないんだ。観音開きと言うのは、主に後部座席のドアが、前から後ろに向かって開くタイプのものを指すことが多いね。前部座席のドアが左右に開くものは、観音開きとはあまり言わないよ。
観音開きとは。
車のドアの開き方の種類で「観音開き」というものがあります。これは、お寺にある観音様をまつる仏壇などによく使われている扉と同じように、真ん中から左右に内側に折れるようにして開くドアのことです。最初にこの名前が使われたのは、トヨタの初代クラウンという車の両開きドアでした。このことから、左右両方に開くドアのことを「観音開き」と呼ぶ人が多くなりました。
観音開きの由来
観音開きとは、扉が真ん中から左右に開く形式のことを指します。この呼び名は、お寺でよく見かける観音様がまつられている厨子の扉の開き方に由来しています。厨子の扉は、中央で二つに折れ曲がり、左右に開く構造になっています。この様子が、まるで観音様が両手を広げて私たちを迎え入れてくれているように見えることから、観音開きと呼ばれるようになりました。
観音開きの扉は、左右均等に開くため、開口部が広く取れるという利点があります。そのため、大きな仏像や仏具などを出し入れする際に大変便利です。また、扉を開けた際に左右に広がる優美な姿も、観音開きの魅力の一つと言えるでしょう。
この観音開きという呼び名は、今では車の扉にも使われるようになりました。特に、トヨタの初代クラウンに採用された観音開きのドアは、当時としては画期的なデザインとして話題を呼びました。左右両方のドアを開けた姿は、堂々とした風格を漂わせ、高級車にふさわしい印象を与えました。
現在では、ミニバンや軽自動車など、様々な車種で観音開きのドアを見かけることができます。左右に大きく開くことで、乗り降りがしやすいだけでなく、荷物の積み下ろしもしやすいため、実用性も高く評価されています。
このように、観音開きという呼び名は、寺院の厨子から始まり、車のデザインにも取り入れられるようになりました。その優美な姿と実用性の高さから、現代まで広く愛されている扉の形式と言えるでしょう。
名称 | 由来 | 特徴 | メリット | 用途例 |
---|---|---|---|---|
観音開き | 寺院の厨子の扉 | 扉が中央から左右に開く | 開口部が広く取れる、優美な姿 | 寺院の厨子、車のドア(トヨタ初代クラウン、ミニバン、軽自動車など) |
車の観音開きの利点
観音開きという扉の形式は、車の使い勝手を大きく向上させる効果があります。まるで寺院の扉のように左右に開くこの扉は、特に後部座席への出入りを格段に楽にします。通常の扉ではどうしても狭い開口部で苦労することがありますが、観音開きではその心配がいりません。大きく開くことで、まるで家の玄関のように広々とした空間が生まれます。
この広い開口部は、足元のスペースも広げる効果があります。高齢の方や小さなお子さんにとって、狭い足元での乗り降りは負担が大きいものですが、観音開きならスムーズに乗り降りできます。足腰への負担を軽減できるので、乗り物酔いをしやすいかたにも優しい設計と言えるでしょう。また、スカートをはいた女性にとっても、乗り降りが楽になるという利点があります。
さらに、観音開きは荷物の積み下ろしにも大変便利です。大きな荷物や長い荷物も、広い開口部のおかげで楽に積み込むことができます。例えば、自転車や大きなスーツケース、ベビーカーなどもスムーズに積み込めます。これは、家族での旅行や買い物など、荷物の多いシーンで特に役立ちます。また、ペットを飼っているかたにとっても、ペットの乗せ降ろしが楽になるというメリットがあります。
このように、観音開きは様々な場面で利点を発揮します。乗り降りのしやすさ、荷物の積み下ろしの利便性、そして独特のデザイン性。これらの要素が組み合わさることで、観音開きは実用性と美しさを兼ね備えた優れた設計となっています。近年では、電気自動車や高級車などで採用される例も増えてきており、今後の自動車設計における重要な選択肢の一つと言えるでしょう。
メリット | 対象者 | 具体的な例 |
---|---|---|
乗り降りのしやすさ | 後部座席利用者 | 広い開口部で楽に乗り降りできる |
高齢者・子供 | 足元のスペースが広く、負担が少ない | |
乗り物酔いしやすい人 | 足腰への負担軽減 | |
スカート着用者 | 乗り降りが楽 | |
荷物の積み下ろしの利便性 | 荷物が多い人 | 自転車、スーツケース、ベビーカーなど大きな荷物の積み込みが楽 |
ペットを飼っている人 | ペットの乗せ降ろしが楽 |
車の観音開きの欠点
観音開き式の扉は、その見た目や乗り降りのしやすさから人気がありますが、いくつかの難点も抱えています。まず、扉を開閉する際に広い空間が必要となることが挙げられます。特に、駐車場のような限られた空間では、隣の車との間隔が狭い場合、扉を完全に開けられないという問題が生じます。場合によっては、乗り降りすることさえ難しいケースもあるでしょう。狭い路地での開閉も同様で、後続車や歩行者の通行を妨げる可能性があります。
風の強い日には、開いた扉が風を受けて勢いよく動いてしまう危険も潜んでいます。思わぬ方向へ扉が開いてしまい、自身や周囲の人々、物にぶつかって損傷させてしまうかもしれません。また、ヒンジや部品点数が増える複雑な構造のため、通常の扉に比べて製造費用が高額になる傾向があります。これは、観音開きを採用する車種が少ない理由の一つと言えるでしょう。さらに、複雑な構造であるがゆえに、故障のリスクも高まります。万一、扉の開閉機構が故障した場合、修理費用も高額になることが予想されます。
衝突時の安全性も考慮すべき点です。側面衝突時に、通常の扉よりも開口部が広いため、衝撃の影響を受けやすい構造と言えるでしょう。そのため、より強固な車体構造が必要となり、車体重量の増加や製造コストの上昇につながる可能性があります。これらの欠点を理解した上で、観音開きの扉の採用を検討する必要があります。
メリット | デメリット |
---|---|
見た目 | 広い空間が必要 |
乗り降りのしやすさ | 風の影響を受けやすい |
製造費用が高額 | |
故障のリスクが高い | |
衝突時の安全性 |
観音開きを採用した車種
観音開き、つまり左右に開くドアは、その目を引く姿と使い勝手の良さから、数多くの車で採用されてきました。古くは昭和を代表する高級車、トヨタの初代クラウンで採用され、当時としては大変珍しい機構が話題を呼びました。まるで神社仏閣の扉を思わせるその重厚な開き方は、高級車にふさわしい風格を演出していたのです。
クラウン以外にも、観音開きを採用した車はいくつか存在します。例えば、マツダがかつて販売していたロードペーサー。オーストラリアのホールデン社から車体を購入し、そこに自社製のロータリーエンジンを搭載した異色の車で、観音開きのドアが特徴的でした。大きく横に開くドアは、後部座席への乗り降りを容易にするだけでなく、風格も醸し出していました。しかし、車体が大きく小回りがあまり利かず、燃費も良くなかったことから、販売はあまり振るいませんでした。
また、近年ではトヨタのFJクルーザーも観音開きを採用した車のひとつです。こちらは、前席のドアが通常の前開きなのに対し、後部座席へのアクセスは観音開きのドアとなっています。この独特なドアの配置は、オフロード走行時における利便性と、FJクルーザーの個性的な外観を際立たせる役割を担っています。大きな荷物を積載する際や、狭い場所での乗降に大変便利です。
最近では、観音開きを採用する車は少なくなりました。車のデザインの流行や、安全性の向上といった時代の流れの中で、前開き式ドアが主流となっています。しかし、観音開きのドアを持つ車は、その独特の魅力から、現在でも多くの愛好家から支持されています。彼らは、観音開きのドアの持つ、唯一無二の個性を愛し、その車を大切に乗り続けているのです。
車種 | 特徴 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
トヨタ クラウン(初代) | 昭和を代表する高級車。当時としては珍しい観音開きを採用。 | 高級感を演出。 | – |
マツダ ロードペーサー | ホールデン社から車体を購入し、ロータリーエンジンを搭載。観音開きのドアが特徴的。 | 後部座席への乗り降りが容易。風格を醸し出す。 | 車体が大きく小回りがあまり利かない。燃費が悪い。 |
トヨタ FJクルーザー | 前席は通常の前開き、後部座席は観音開き。 | オフロード走行時の利便性が高い。個性的な外観。大きな荷物の積載や狭い場所での乗降に便利。 | – |
観音開きの将来
観音開きという扉の形式は、左右両方の扉が中央から外側に向かって開くという、他に類を見ない独特の構造を持っています。この扉の開閉方法は、確かに見た目には美しく、乗り降りもしやすいという利点があります。しかし、その一方で、製造には高い費用がかかり、実用面でもいくつかの問題を抱えています。
まず、観音開きを採用するには、車体の構造を扉の開閉機構に適応させる必要があり、これが製造費用を押し上げています。通常の横に開く扉に比べて、複雑な部品や特別な設計が必要となるため、どうしても製造コストは高くなってしまうのです。また、狭い場所に駐車した場合、扉を大きく開くことが難しく、乗り降りが不便になることもあります。さらに、開いた扉が隣の車や壁にぶつかる危険性も考慮しなければなりません。
しかし、技術の進歩は、これらの問題を解決する糸口を示しています。近年では、電気の力を利用した開閉機構が開発され、扉の開閉をスムーズかつ容易にすることが可能になりました。さらに、軽い素材を用いることで、扉の開閉に必要な力を小さくし、開閉機構への負担を軽減することも実現しています。これらの技術革新によって、観音開きの扉の使い勝手は飛躍的に向上し、これまで敬遠されていた欠点が克服されつつあります。
観音開きの扉は、そのデザイン性の高さから、高級車や個性的な車を演出する手段としても注目を集めています。左右に大きく開く扉は、車体の存在感を際立たせ、乗る人の特別感を演出する効果があります。今後、新しい材料や設計技術の進歩によって、さらに斬新で美しい観音開きの扉が登場する可能性も秘めています。これらの要素を総合的に見ると、観音開きの扉は、克服すべき課題を抱えながらも、技術の進歩とともに進化を続け、将来、より多くの車種で採用される可能性を秘めていると言えるでしょう。
メリット | デメリット | 技術革新による改善 | 将来性 |
---|---|---|---|
|
|
|
|