クルマ設計の要!人体模型

クルマ設計の要!人体模型

車のことを知りたい

先生、2次元マネキンと3次元マネキンの違いがよくわからないのですが、教えていただけますか?

車の研究家

なるほど。簡単に言うと、2次元マネキンは体の輪郭を単純化した平面的な図形で、3次元マネキンは立体的な人体模型のことだよ。たとえば、体の厚みを考えずに横から見たときの体の形を型紙にしたようなものが2次元マネキンで、人体模型のように奥行きもあるものが3次元マネキンだね。

車のことを知りたい

ということは、2次元マネキンは平面で、3次元マネキンは立体ということですね。でも、車の設計でなぜマネキンを使うのですか?

車の研究家

それは、様々な体格の人にとって運転しやすい車を作るためだよ。例えば、シートの位置やハンドルの位置、ペダルの配置などを設計する際に、マネキンを使って様々な体格の人でも快適に運転できるかを確認するんだ。2次元マネキンは主に設計の初期段階で、3次元マネキンはより詳細な設計の段階で使われることが多いよ。

2次元マネキン、3次元マネキンとは。

自動車の設計に使われる人体模型や模式図である『二次元マネキン、三次元マネキン』について説明します。これらの模型は、各国で定められた成人男性の体格の上位95%から成人女性の体格の下位1%までをカバーするように作られています。それぞれの国や性別に合わせた様々な規格サイズを基に設計されていて、AM85、JM85、JF10といった名前で呼ばれるのが一般的です。例えば、AM95はアメリカ人男性の上位95%の体格を、JF90は日本人女性の体格の下位10%を、小柄な人から順にカバーしています。ちなみに、JF90は日本人男性の90%ではなく日本人女性の10%を表しています。AM/AFはSAE規格、JM/JFは日本規格に基づいています。二次元マネキンは、横から見た体の輪郭を簡略化して寸法を定めたもので、三次元マネキンは、座っている姿勢を基準として、様々な方向から寸法を測って立体的に標準化したものです。

人体模型の種類

人体模型の種類

乗り物の設計において、人の形をした模型は欠かせない道具です。大きく分けて、平面の人形と立体の人形の二種類があります。

平面の人形は、横から見た人の姿の外形を単純化したもので、設計の最初の段階で使われます。特に、乗り降りするときの様子や、運転席からどれくらい見えるかを確認するのに役立ちます。限られたスペースの中で、人が無理なく乗り降りできるか、運転席から周囲がよく見えるかなどを、この平面の人形で確かめるのです。例えば、ドアの開口部の大きさや、窓の配置などを検討する際に活用されます。

立体の人形は、椅子に座ったときの姿勢や、体重のかかり具合など、より詳しい体の情報を表しています。この立体の人形を使うことで、椅子のかたちやハンドルの位置など、より人に優しい設計ができるようになります。例えば、長時間の運転でも疲れにくい椅子の形状や、様々な姿勢でも操作しやすいハンドルの位置などを決める際に役立ちます。

これらの模型は、ただ人の形を真似ているだけではありません。様々な体格の人を想定して作られています。背の高い人や低い人、体の大きい人や小さい人など、様々な体格の人でも快適に車を使えるように、これらの模型を使って設計者は様々なことを検証します。例えば、小柄な人でもペダルに足が届くか、大柄な人でも窮屈に感じないかなどを確認します。そのため、これらの模型は様々な大きさや種類が用意されており、設計の目的や対象に合わせて使い分けられています。模型を使うことで、誰にとっても使いやすい乗り物を目指して設計が進められています。

模型の種類 形状 使用目的 設計箇所例 対象
平面の人形 横から見た人の姿の外形を単純化 乗り降りするときの様子や、運転席からの視界確認 ドアの開口部の大きさ、窓の配置 様々な体格の人
立体の人形 椅子に座ったときの姿勢や、体重のかかり具合を再現 椅子のかたちやハンドルの位置など、人間工学に基づいた設計 椅子の形状、ハンドルの位置 様々な体格の人

様々な体格に対応

様々な体格に対応

クルマの設計において、乗る人の体格に合わせた設計は非常に重要です。快適性や安全性を確保するためには、様々な体格の人にとって使いやすいクルマでなければなりません。そこで、人体模型を用いて、様々な体格を想定した設計が行われています。

人体模型には、様々な種類があり、それぞれ特定の体格を代表するように作られています。例えば、「AM95」という表記の模型は、アメリカ人の成人男性の上位95%の体格を模倣しています。これは、アメリカ人の成人男性の95%がこの模型よりも小柄であることを意味し、この模型を基準にすることで、大柄な人にも対応できる設計が可能になります。逆に、「JF10」という表記の模型は、日本人の成人女性の下位10%の体格を模倣しています。つまり、日本人の成人女性の10%がこの模型よりも小柄です。小柄な人の体格を基準にすることで、操作しづらい、届かないといった問題を防ぐことができます。

このように、人体模型は国籍や性別ごとに、様々な体格を模倣したものが用意されています。さらに、それぞれの模型は、身長や体重だけでなく、座高、腕の長さ、脚の長さなど、様々な体型の指標に基づいて精密に作られています。これらの多様な人体模型を活用することで、様々な体格の運転者や同乗者にとって、快適で安全なクルマ作りが可能になるのです。例えば、運転席のペダル配置やハンドル位置、シート形状、シートベルトの調整機構などは、これらの模型を用いたテストで最適な設計が検討されます。また、衝突安全性を評価する際にも、様々な体格の模型を用いることで、あらゆる体型の人の安全を確保するための設計が可能になります。

人体模型 代表体格 設計への活用
AM95 アメリカ人成人男性上位95% 大柄な人にも対応できる設計
JF10 日本人成人女性下位10% 小柄な人でも操作しやすい設計
その他 国籍や性別ごとに様々な体格 多様な体格の乗員にとって快適で安全な設計

規格の名称

規格の名称

クルマの設計において、乗る人の体の大きさに合わせた規格はとても大切です。この規格は、国によって様々です。例えば、アメリカではSAE規格、日本ではJIS規格が使われています。これらの規格は、それぞれの国の人々の体の寸法を測ったデータに基づいて作られています。そのため、国ごとの体格の特徴がしっかりと反映されています。

SAE規格の中には、AMとAFという種類があります。AMはアメリカ人男性の体の特徴を表し、AFはアメリカ人女性の特徴を表しています。同様に、JIS規格には、JMとJFという種類があります。JMは日本人男性、JFは日本人女性を表しています。これらの規格を使うことで、それぞれの国の人々の体格に合ったクルマ作りが可能になります。

例えば、シートの位置や高さ、ハンドルの大きさや位置、ペダルの配置などは、これらの規格を参考に設計されます。JM規格を基に設計すれば、日本人にとって運転しやすいクルマになり、AM規格を基に設計すれば、アメリカ人にとって運転しやすいクルマになります。また、エアバッグの大きさや展開の仕方なども、体格差を考慮して設計する必要があります。

世界中でクルマを販売する自動車メーカーは、多くの国の規格を考慮しながら設計を行います。世界中の人々が快適に、そして安全に運転できるクルマを作るためには、様々な体格に対応できる設計が求められます。そのため、複数の規格を満たすように設計することで、世界中の人々に受け入れられるクルマ作りを目指しています。つまり、世界中で販売されるクルマは、多くの人の体格に合うように、様々な工夫が凝らされているのです。

規格 対象
SAE (AM) アメリカ人男性 アメリカ
SAE (AF) アメリカ人女性 アメリカ
JIS (JM) 日本人男性 日本
JIS (JF) 日本人女性 日本

設計への活用例

設計への活用例

車の設計において、人体模型は欠かせない存在です。様々な場面で、設計をより良いものにするために活用されています。

まず、運転席周りの設計では、人体模型は運転のしやすさを確認するために役立ちます。アクセルやブレーキの踏み心地、ハンドルの回しやすさ、運転席からの視界などを、人体模型を使って細かく調べます。シートの位置や角度も、人体模型を使って最適な位置を探し出すことで、誰でも運転しやすい車を作ることができます。

後部座席の設計でも、人体模型は重要な役割を果たします。座り心地や広々とした空間を作るために、人体模型を座らせてみて、どのくらい快適かを評価します。長時間座っても疲れにくい座席や、ゆったりとくつろげる空間を作るために、人体模型による検証は欠かせません。

安全性を高めるためにも、人体模型は活躍します。衝突実験では、人体模型を使って、事故が起きた時の乗員の動きを調べます。この結果をもとに、シートベルトやエアバッグなどの安全装置を改良し、乗員への衝撃を少なくする工夫を凝らしています。

さらに、近年では様々な種類の人体模型が開発されています。子供や高齢者など、様々な体格の人体模型を使うことで、より多くの人に使いやすい車を作ることができるようになりました。また、体格だけでなく、体の動き方も考慮した人体模型も開発されており、より現実に近い状況での検証が可能になっています。このように、人体模型は車の設計において、なくてはならない存在であり、進化を続けることで、より安全で快適な車づくりに貢献しています。

場面 人体模型の用途
運転席周り アクセルやブレーキの踏み心地、ハンドルの回しやすさ、運転席からの視界、シートの位置や角度の確認
後部座席 座り心地や空間の広さの評価
安全性向上 衝突実験での乗員の動きの検証、シートベルトやエアバッグなどの安全装置の改良
様々な人体模型 子供や高齢者など様々な体格の人体模型、体の動きを考慮した人体模型

進化する技術

進化する技術

近ごろ、計算機の技術が大きく進歩したおかげで、立体の人体模型を数値化したものが、広く使われるようになってきました。これらの数値化された人体模型は、まるで人形のように、姿勢や体の大きさを自由に変えることができるため、より細かい設計が可能になります。例えば、シートの設計では、様々な体格の人の座り心地を数値化された人体模型を使って確かめることで、多くの人に快適なシートを作ることができます。

また、仮想の空間で衝突のまねごとをする時にも、この人体模型が役立ちます。本物の人間を使う代わりに、数値化された人体模型を使うことで、安全に、そして何度も実験を繰り返すことができます。これにより、開発にかかる費用を抑えることにもつながります。

さらに、人体模型には、体の形だけでなく、筋肉や骨の構造まで再現したものもあります。まるで本物の人間のように、体の内部まで精密に作られた模型です。このような高度な模型を使うことで、例えば衝突時に人体がどのように動くかをより正確に予測することができます。これにより、乗っている人の安全性をより高くしたり、より快適に過ごせる車を作ったりすることに役立ちます。

このように、人体模型は常に進化を続けており、自動車の設計においてなくてはならないものとなっています。数値化された人体模型は、開発の費用や時間を節約するだけでなく、より安全で快適な車を作るためにも、重要な役割を担っているのです。

種類 用途 メリット
数値化された人体模型 シート設計、衝突シミュレーション 様々な体格への対応、安全な実験、開発費用削減
筋肉や骨の構造まで再現した人体模型 衝突時の挙動予測 安全性向上、快適性向上

安全性向上への貢献

安全性向上への貢献

自動車の安全性を高めるために、人体模型はなくてはならない存在です。まるで生きている人間の代わりに、様々な試験に用いられることで、安全な車づくりに大きく貢献しています。

まず、衝突の際に人が受ける衝撃を詳しく調べる衝突試験では、人体模型が欠かせません。人体模型に様々な測定器を取り付けることで、衝突時に人がどのくらいの衝撃を受けるのか、どこに大きな力が加わるのかを正確に知ることができます。このデータに基づいて、衝撃を和らげるエアバッグやシートベルトなどの安全装置の改良、そして車体そのものの構造の改良が行われます。

近年では、様々な体格の人体模型が開発されています。子供や高齢者は、大人とは体の大きさや骨の強さが違います。そこで、子供や高齢者を模した人体模型を用いることで、それぞれの体格に合わせた安全対策を検討することが可能になりました。例えば、子供の体格に合わせたチャイルドシートの開発や、高齢者にとって負担の少ないシートの開発など、様々な場面で人体模型が役立っています。

人体模型の活躍の場は、衝突試験だけにとどまりません。例えば、乗り降りのしやすさを検証するためにも人体模型は活用されています。特に、高齢者にとって楽に乗り降りできるシートの形状や、子供を安全に乗せ降ろしできる工夫などを考える際に、人体模型は貴重な情報源となります。

このように、人体模型は様々な試験を通して、あらゆる人が安全で快適に車を利用できるよう、陰ながら支えているのです。

人体模型の用途 詳細 対象
衝突試験 衝突時の衝撃を測定し、エアバッグやシートベルト、車体構造の改良に役立てる 人間全般
体格別安全対策 子供や高齢者など、様々な体格の人体模型を用いて、それぞれの体格に合わせた安全対策を検討 子供、高齢者など
乗り降りの検証 高齢者や子供にとって楽に乗り降りできるシート形状や乗せ降ろしの工夫を検討 高齢者、子供など