クルマの空気抵抗を減らす技術

クルマの空気抵抗を減らす技術

車のことを知りたい

『グランドシミュレーション』って、風の流れを再現する装置のことですか?

車の研究家

そうね、風の流れを再現する装置の一つである風洞試験において、実車走行の状況を再現するための工夫の一つと言えるわ。具体的には、車の下の空気の流れを再現しようとするものなの。

車のことを知りたい

普通の風洞試験だと、車の周りの空気は再現できても、車の下の空気の流れは再現できないということですか?

車の研究家

その通り。普通の風洞試験では路面が動かないから、車の下の空気の流れが実際と違って遅くなってしまうの。グランドシミュレーションでは、動くベルトや空気を吸い取る装置を使って、その違いをなくそうとしているのよ。

グランドシミュレーションとは。

自動車の開発で使われる「グランドシミュレーション」という言葉について説明します。グランドシミュレーションとは、風洞実験で、実際の走行状態を再現するための工夫のことです。

自動車が実際に道路を走るときは、車も地面も空気もそれぞれ動いています。しかし、風洞実験では車は止まったままで、空気だけが流れています。地面も動きません。このため、風洞実験では、車の床下付近の空気の流れが、実際に道路を走る時と比べて遅くなってしまいます。空気の流れが遅いと、車の後ろ側の空気の流れも変わってしまい、空気抵抗などの測定結果が、実際の走行状態とずれてしまうのです。

このずれをなくすため、風洞実験では、床下を車と同じ速さで動かすベルトを付けたり、床下付近の空気を吸い込んだりといった工夫をしています。これがグランドシミュレーションです。

空気抵抗とは

空気抵抗とは

車は走る時、常に空気の壁に立ち向かっています。この見えない壁との戦いが空気抵抗と呼ばれるもので、文字通り空気が車に及ぼす抵抗のことを指します。空気抵抗は、車が進む速度が上がれば上がるほど強くなります。自転車に乗った時を想像してみてください。ゆっくり走る時は風をあまり感じませんが、スピードを出すと向かい風が強く感じられるのと同じです。

空気抵抗は大きく分けて形状抵抗摩擦抵抗干渉抵抗の三種類に分けられます。形状抵抗とは、車の形によって空気が押し分けられる時に生じる抵抗です。例えば、箱のような角張った車と、流線型の車では、角張った車の方が大きな空気抵抗を受けます。空気はなめらかに車の表面を沿うように流れる方が抵抗が少ないのです。摩擦抵抗とは、空気と車の表面が擦れ合うことで生じる抵抗です。車の表面がザラザラしていると、空気との摩擦が大きくなり、抵抗も増えます。干渉抵抗とは、車の様々な部品(例えば、ドアミラーやワイパーなど)が空気の流れを乱すことで生じる抵抗です。これらの部品周りの空気の流れが乱れることで、抵抗が発生します。

空気抵抗が大きくなると、車はより大きな力を使って走らなければなりません。これは、燃費の悪化に直結します。また、加速性能や最高速度も低下し、快適な運転の妨げとなります。逆に空気抵抗を減らすことができれば、燃費が向上し、環境にも優しくなります。さらに、加速性能や最高速度も向上し、より気持ちの良い走りを実現できます。

そのため、自動車メーカーは空気抵抗を少しでも減らすために、様々な工夫を凝らしています。例えば、流線型のボディデザインを採用したり、車体表面を滑らかにしたり、部品の形状を工夫することで、空気抵抗を低減しています。また、最近では、走行状況に応じて車の高さを自動的に調整する技術なども開発され、空気抵抗の低減に貢献しています。空気抵抗は車の性能に大きな影響を与える要素であり、自動車開発において非常に重要な課題なのです。

空気抵抗とは

風洞実験の重要性

風洞実験の重要性

車を作る上で、空気の流れの影響を調べることはとても大切です。風の抵抗が大きければ燃費が悪くなりますし、車が浮き上がったり、横に流されたりして危険なこともあります。そこで、空気の流れを詳しく調べるために、風洞実験が行われます。風洞実験とは、模型の車に風を当てて、空気の動きや抵抗を測る実験です。

風洞実験では、実際に車を作って走らせるよりも、ずっと手軽に様々な条件を試すことができます。風の強さや向きを変えたり、車の形や部品の位置を変えたりすることで、空気抵抗を小さくするための最適な設計を見つけることができます。模型を使うので、実車を使うよりも費用を抑えることができ、時間も短縮できます。

風洞実験では、空気抵抗だけでなく、車に働く揚力や横風の影響も調べることができます。揚力は、飛行機の翼のように、車が浮き上がる力です。揚力が大きすぎると、高速で走るときに車が不安定になります。横風の影響も、車の安定性を左右する重要な要素です。風洞実験でこれらの力を正確に測ることで、安全で快適な車を作ることができます。

風洞実験で得られたデータは、コンピューターを使った車の設計にも役立ちます。実験で得られた空気の流れのパターンをコンピューターに取り込むことで、より正確な空気抵抗の予測が可能になります。また、コンピューター上で様々な車の形を試し、風洞実験の結果と比較することで、さらに効率的に車の設計を進めることができます。風洞実験とコンピューターシミュレーションを組み合わせることで、より高性能で安全な車を作ることが可能になるのです。

項目 内容
風洞実験の目的 模型の車に風を当て、空気の動きや抵抗、揚力、横風の影響を測ることで、空気抵抗を小さくし、安全で快適な車を作る。
風洞実験のメリット
  • 実車を使うよりも手軽に様々な条件を試せる
  • 費用を抑え、時間を短縮できる
  • 空気抵抗だけでなく、揚力や横風の影響も調べられる
風洞実験のデータ活用 コンピューターを使った車の設計に役立ち、より正確な空気抵抗の予測や効率的な設計が可能になる。
風洞実験とコンピューターシミュレーションの組み合わせ より高性能で安全な車を作ることができる。

グランドシミュレーションとは

グランドシミュレーションとは

空気の流れを再現する技術、グランドシミュレーションは、自動車の開発において無くてはならないものです。風の流れを調べる実験施設である風洞実験において、実際の走行状態を再現するために使われます。

通常の風洞実験では、自動車は固定され、風を当てて空気抵抗などを計測します。しかし、実際の走行では自動車が地面に対して移動しているため、地面近くの空気の流れは風洞実験とは大きく異なります。この違いが正確な空気抵抗の計測を難しくしていました。

グランドシミュレーションは、この問題を解決するために開発されました。風洞の床に、動くベルト(ムービングベルト)を設置することで、実際の走行のように地面が動いている状態を再現します。これにより、地面近くの空気の流れが実際の走行に近づき、より正確な空気抵抗の計測が可能になります。

さらに、床近くの空気を吸い込む装置を併用することで、より精密な空気の流れの制御を実現します。ムービングベルトの速度や空気の吸い込み量を調整することで、平坦な道路や起伏のある道路など、様々な道路状況を再現することも可能です。これにより、多様な走行条件における空気抵抗を調べることができ、より実走行に近いデータを得ることができます。

グランドシミュレーションによって得られた正確な空気抵抗データは、燃費向上のための車体の形状設計や、走行安定性向上のための部品開発などに役立てられます。例えば、自動車の前面投影面積を小さくしたり、車体表面の凹凸を減らすことで空気抵抗を低減できます。また、自動車の底面を平らにすることで、床下への空気の流れを整え、空気抵抗を減らすことも可能です。このように、グランドシミュレーションは、より環境に優しく、より安全な自動車の開発に大きく貢献しています。

グランドシミュレーションの要素 目的 効果
ムービングベルト 実際の走行のように地面が動いている状態を再現 地面近くの空気の流れが実際の走行に近づき、より正確な空気抵抗の計測が可能
床近くの空気を吸い込む装置 より精密な空気の流れの制御 平坦な道路や起伏のある道路など、様々な道路状況を再現し、多様な走行条件における空気抵抗を計測可能

グランドシミュレーションの課題

グランドシミュレーションの課題

実車の走行状態を再現する技術として、地面を模した装置の上で車を走らせる方法があります。これは地面を模した装置という意味から、地面模擬試験と呼ばれています。地面模擬試験は、実際の道路を走るのに近い状態を作り出せるため、様々な利点があります。しかし、いくつかの難しさも抱えています。

まず、地面を模した装置の動く速さと、空気を取り込む量をどのように調整すれば、実際の走行状態を忠実に再現できるかという問題があります。地面を模した装置の速さと空気の取り込み量は、車に働く空気の流れに大きく影響します。空気の流れを正確に再現することで初めて、実走行に近い状態を作り出すことができます。このため、地面を模した装置の速さと空気の取り込み量の最適な組み合わせを日々研究し、より正確な走行状態の再現を目指しています。

次に、地面模擬試験には大きな装置と高度な制御技術が必要です。そのため、試験を行うための費用と時間が多くかかります。特に、地面を模した装置は非常に大きく、設置や維持管理に費用がかかります。また、試験中の車の動きや空気の流れを精密に制御するために、高度な技術と装置が必要です。これらの費用と時間は、地面模擬試験を行う上での大きな課題となっています。

さらに、地面模擬試験では再現が難しい要素もあります。例えば、タイヤの回転や車の揺れを抑える部品の動きなどは、実走行中には常に変化しています。これらの要素は空気の流れに影響を与えますが、地面模擬試験で完全に再現することは困難です。タイヤの回転や車の揺れを抑える部品の動きを再現するための技術開発も進められていますが、未だに完璧な再現には至っていません。これらの要素が空気抵抗にどう影響するかを理解し、より正確な試験結果を得るための研究が必要です。

これらの難しさは、地面模擬試験技術の更なる発展によって克服されることが期待されています。より高度な技術によって、より実走行に近い状態を再現し、車の開発に役立つより多くの情報を得ることが可能になるでしょう。

項目 詳細
課題1 地面を模した装置の速さと空気取り込み量の調整による実走行状態の再現
課題2 試験に必要な費用と時間(大きな装置と高度な制御技術)
課題3 再現困難な要素(タイヤの回転、車の揺れを抑える部品の動き)
目標 更なる技術発展による実走行に近い状態の再現

今後の展望

今後の展望

自動車の開発において、空気との関わり合いを調べることは大変重要です。空気抵抗を少なくすることで燃費が良くなり、環境への負担も減らすことができます。また、風の影響による騒音を小さくしたり、走行中の安定性を高めることも大切です。このような研究をさらに進めるために、今後どのような方法が考えられるのでしょうか。

近年、計算機の性能が向上したことで、空気の流れを計算機で模擬する技術が進歩しています。これにより、実際に模型を使った風洞実験の一部を計算機上で行うことが可能になりつつあります。しかし、空気の流れは非常に複雑で、計算機だけで全てを再現することはまだ難しいのが現状です。そのため、模型を使った風洞実験は今後も重要な役割を担うと考えられます。

実走行に近い状態で空気の流れを再現するグランドシミュレーション技術も、計算機による模擬技術と組み合わせることで、更なる進化が期待されています。グランドシミュレーションとは、大きな回転するローラーの上に自動車を置き、実際に走行している状態を再現する実験方法です。タイヤの回転や路面との摩擦など、実際の走行状態を再現することで、より正確なデータを得ることができます。この技術をさらに発展させることで、空気抵抗の低減だけでなく、騒音の低減や走行安定性の向上など、自動車の性能向上に大きく貢献することが期待されます。具体的には、ローラーの表面をより路面に近づける工夫や、風を当てる装置の改良などが考えられます

風洞実験やグランドシミュレーションで得られた知見は、自動車だけでなく、飛行機や電車など、他の乗り物の開発にも役立てられています。空気や風の影響を受ける乗り物は多く、これらの技術は様々な分野で応用され、私たちの生活をより豊かにする技術開発に貢献しています。

研究対象 現状 今後の展望 関連技術
空気抵抗・騒音・走行安定性 風洞実験が主流。計算機による模擬技術も発展途上。 計算機による模擬技術と風洞実験の併用、グランドシミュレーション技術の進化 計算機による空気の流れの模擬、グランドシミュレーション(ローラー上の走行実験)、風洞実験
グランドシミュレーション 実走行に近い状態を再現可能。計算機による模擬技術との組み合わせが期待される。 ローラーの路面への近似化、送風装置の改良 タイヤの回転、路面との摩擦の再現