四輪駆動車の走破性を高めるセンターデフロック
車のことを知りたい
先生、「センターデフロック」って、どういう意味ですか?よくわからないんです。
車の研究家
簡単に言うと、滑りやすい道で車が動けなくなるのを防ぐ仕組みだよ。例えば、片方のタイヤが氷の上に乗っていて空回りした場合、そのままでは他のタイヤにも力が伝わらず、車は止まってしまうよね。
車のことを知りたい
なるほど。それで「センターデフロック」がそれを防ぐ、と。でも、どうやって防ぐんですか?
車の研究家
「センターデフロック」は、前後のタイヤの回転のずれをなくす装置なんだ。空回りしているタイヤがあっても、他のタイヤにしっかり力を伝えることで、車を動かすことができるんだよ。いくつか種類があって、常に繋がっているものや、コンピューターで自動的に切り替わるものなどがあるね。
センターデフロックとは。
車の中央にある、前後の車輪の回転の差を調節する装置「センターデフ」について説明します。センターデフが付いている車は、片方の車輪が滑りやすい路面に乗ると、空回りしてしまい、前後の車輪に力が伝わらず、車が動かなくなることがあります。これを防ぐために、前後の車輪の回転差をなくす「センターデフロック」という装置があります。
センターデフロックには、機械式、油圧を使ったもの、電磁石を使ったものなどがあります。機械式は、前後の軸をつなぐ部品を固定することで回転差をなくしますが、力がかかっているときは切り替えができません。油圧や電磁石を使ったものは、どんな状況でもすぐに切り替えができるので、コンピューターで自動的に制御するのに向いています。
駆動方式の解説
自動車を動かす仕組みである駆動方式には、大きく分けて前輪駆動、後輪駆動、四輪駆動の三種類があります。それぞれに異なる特徴と、向き不向きがありますので、詳しく見ていきましょう。前輪駆動は、エンジンの動力を前の車輪に伝える方式です。エンジンと駆動輪が車体の前方に集中するため、車内空間を広く取ることができ、燃費も良いという利点があります。また、雪道など滑りやすい路面でも比較的安定した走行が可能です。一方、急発進や急加速時に前輪が空回りしやすく、ハンドル操作が難しくなる場合もあります。
後輪駆動は、エンジンの動力を後ろの車輪に伝える方式です。前輪は操舵、後輪は駆動という役割分担が明確なため、スポーティーな走行に向いています。静粛性も高く、高級車に採用されることも多いです。しかし、前輪駆動と比べると燃費は劣り、雪道などでは駆動輪が滑りやすいという欠点もあります。
四輪駆動は、エンジンの動力を前後の車輪の両方に伝える方式です。通常走行時は、前後輪の回転数の差を吸収する装置である中央差動装置を介して動力が伝えられます。これにより、舗装路面でも滑らかに走ることができます。雪道やぬかるみなど、滑りやすい路面でも高い走破性を発揮します。急な坂道や悪路での走行安定性も抜群です。しかし、構造が複雑で部品点数も多いため、車両価格が高くなる傾向があります。また、燃費も前輪駆動や後輪駆動と比べると劣ります。中央差動装置の働きにより、片方の車輪が空転すると、もう片方の車輪にも駆動力が伝わらず、車が動けなくなることがあります。これを防ぐために、中央差動装置を固定する中央差動固定装置が備わっている車もあります。状況に応じて駆動方式を切り替えられる車もあり、路面状況に合わせて最適な駆動方式を選択することで、安全で快適な運転を楽しむことができます。
駆動方式 | 説明 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
前輪駆動 | エンジンの動力を前の車輪に伝える方式 | 車内空間が広い、燃費が良い、雪道など滑りやすい路面でも比較的安定した走行が可能 | 急発進や急加速時に前輪が空回りしやすい、ハンドル操作が難しくなる場合もある |
後輪駆動 | エンジンの動力を後ろの車輪に伝える方式 | スポーティーな走行に向いている、静粛性が高い、高級車に採用されることが多い | 燃費が劣る、雪道などでは駆動輪が滑りやすい |
四輪駆動 | エンジンの動力を前後の車輪の両方に伝える方式 | 滑りやすい路面や悪路での走破性が高い、走行安定性が高い | 車両価格が高い、燃費が劣る、片輪が空転すると動けなくなる場合がある |
センターデフロックの役割
車は通常、状況に応じて前輪と後輪に適切な駆動力を配分することで、スムーズな走行を実現しています。この駆動力の配分を調整しているのが差動装置、いわゆるデフです。センターデフは前輪と後輪の間にあるデフで、左右輪の回転差を吸収するだけでなく、前後輪の回転差も吸収する役割を担っています。例えばカーブを曲がるとき、外側のタイヤは内側のタイヤより長い距離を走らなければなりません。センターデフはこのような場合に、前後輪の回転差を吸収し、スムーズなコーナリングを可能にするのです。
しかし、滑りやすい路面や悪路などでは、このセンターデフの働きが逆効果になる場合があります。片方のタイヤが空転してしまうと、センターデフはその空転しているタイヤに駆動力を集中させてしまい、もう片方のグリップしているタイヤには駆動力が伝わらなくなってしまいます。結果として、車は前に進めなくなってしまいます。
そこで活躍するのがセンターデフロックです。センターデフロックを作動させると、センターデフの働きが制限もしくは停止され、前後輪の回転差がなくなります。常に前輪と後輪に均等に駆動力が伝わるようになるため、片方のタイヤが空転していても、もう片方のグリップしているタイヤに駆動力が伝わり、脱出することが可能になるのです。急な坂道発進時や、ぬかるみ、雪道など、タイヤがスリップしやすい状況で大きな効果を発揮します。オフロード車や一部の四輪駆動車に搭載されており、悪路走破性を高めるための重要な機構と言えるでしょう。
ただし、センターデフロックを作動させると、前後輪の回転差がなくなるため、舗装路など、高いグリップ力が得られる路面では、旋回時にタイヤや駆動系に負担がかかる可能性があります。そのため、センターデフロックは、滑りやすい路面や悪路といった、必要な時だけ作動させるべき機能です。路面状況に合わせて適切に使い分けることで、安全かつ快適な走行を楽しむことができます。
機構 | 機能 | メリット | デメリット | 使用場面 |
---|---|---|---|---|
センターデフ | 前後輪の回転差を吸収 | スムーズなコーナリング、通常走行時の安定性 | 滑りやすい路面での片輪空転時に駆動力が伝わらない | 一般的な舗装路 |
センターデフロック | センターデフの働きを制限/停止し、前後輪を直結 | 滑りやすい路面での走破性向上、片輪空転時の脱出 | 舗装路での旋回時にタイヤや駆動系に負担 | 滑りやすい路面、悪路(ぬかるみ、雪道、急な坂道発進時など) |
センターデフロックの種類
真ん中の車軸の差動歯車を固定する装置には、大きく分けて機械式、油圧式、電気式といった種類があります。 これらの装置は、左右の車輪の回転差をなくすことで、滑りやすい路面での走破性を高める効果があります。
機械式は、構造が単純です。歯車やレバーなどを用いて、直接差動歯車を固定します。費用が安く、確実に固定できるという利点があります。しかし、操作に力が必要な場合や、走行中に切り替えが難しいといった欠点もあります。四輪駆動車が本格的に普及し始めた初期の頃は、この方式が主流でした。最近では一部の業務用車両などで採用されています。
油圧式は、油の圧力を用いて差動歯車を固定する方式です。油圧を使うことで、機械式に比べて滑らかに切り替え操作を行うことができます。また、機械式ほど大きな力を必要としないため、運転席から手軽に操作できます。油圧系統の整備が必要になるなど、機械式と比べると構造はやや複雑です。
電気式は、電磁石の力で差動歯車を固定する方式です。コンピューター制御と組み合わせることで、路面状況に合わせて自動的に固定と解除を切り替えることができます。運転操作の負担を軽減できるため、近年多くの四輪駆動車で採用されています。また、他の電子制御装置との連携もしやすいという利点もあります。しかし、機械式や油圧式と比べると構造が複雑になりやすく、修理費用が高額になる場合もあります。
このように、真ん中の車軸の差動歯車を固定する装置には様々な種類があり、それぞれに利点と欠点があります。車種や用途、価格などを考慮して、最適な方式を選ぶことが大切です。
方式 | 仕組み | 利点 | 欠点 | 採用例 |
---|---|---|---|---|
機械式 | 歯車やレバーを用いて直接差動歯車を固定 | 費用が安い、確実に固定できる | 操作に力が必要、走行中切替 difficile | 初期の四輪駆動車、一部業務用車両 |
油圧式 | 油の圧力を用いて差動歯車を固定 | 滑らかな切替操作、手軽な操作 | 構造がやや複雑、油圧系統の整備が必要 | – |
電気式 | 電磁石の力で差動歯車を固定 | 路面状況に応じた自動切替、運転操作の負担軽減 | 構造が複雑、修理費用が高額 | 近年の多くの四輪駆動車 |
機械式センターデフロック
機械式中央差動固定装置は、その名前の通り、前後の車輪への動力を分配する中央差動装置を機械的に固定する仕組みです。構造が単純であるがゆえに、故障が少なく信頼性が高いことが大きな利点です。
この装置は、運転席にあるレバーやスイッチを操作することで、物理的にかみ合う部品を使って中央差動装置を固定します。これにより、前後の車輪に常に同じだけの動力が伝わるため、ぬかるみや雪道など、滑りやすい路面でも力強い駆動力を発揮します。例えば、片側の車輪が空転した場合でも、もう片側の車輪に確実に動力が伝わるため、スタックからの脱出に大きく貢献します。まさに、悪路走破性を重視する車にとって心強い味方と言えるでしょう。
一方で、機械式中央差動固定装置には、操作性という面で課題も残ります。多くの車種では、走行中に固定と解除の切り替えができない、もしくは切り替えに手間がかかるため、舗装路と悪路を頻繁に行き来するような状況では不便に感じる場面もあるでしょう。走行中に固定したまま舗装路を走行すると、カーブを曲がる際にタイヤが滑るような感覚を覚えることがあります。これは、タイトコーナーブレーキング現象と呼ばれるもので、前後の車輪の回転差が吸収されないことが原因です。この現象は、ハンドル操作を重く感じさせ、スムーズな運転を阻害する可能性があります。
このような特徴から、機械式中央差動固定装置は、オフロード走行を主眼に置いた車種、あるいは普段は舗装路を走りつつも、いざという時に高い走破性が必要となる車種に採用されることが多いです。日常的な使い勝手よりも、悪路走破性を優先するドライバーにとって、機械式中央差動固定装置は、頼もしい存在と言えるでしょう。
項目 | 内容 |
---|---|
名称 | 機械式中央差動固定装置 |
仕組み | 中央差動装置を機械的に固定し、前後の車輪への動力を分配 |
利点 | 構造が単純で故障が少ない、信頼性が高い、滑りやすい路面で力強い駆動力を発揮 |
欠点 | 操作性に課題、走行中の固定と解除の切り替えが難しい/できない、舗装路走行時にタイトコーナーブレーキング現象が発生する可能性 |
適した車種 | オフロード走行主体の車種、高い走破性が必要な車種 |
油圧・電磁式センターデフロック
四輪駆動車において、前後の車軸に動力を分配する装置であるセンターデフ。その働きを補助し、より強力な走破性を実現するのがセンターデフロックです。センターデフロックには様々な種類がありますが、近年主流になりつつあるのが油圧式と電磁式です。
油圧式は、油圧の力を用いてセンターデフをロックする機構です。油路を開閉するバルブを電子制御することで、路面状況や車両の挙動に応じて最適なロック率を自動的に調整できます。滑りやすい路面でタイヤが空転し始めた場合、瞬時にセンターデフをロックし、前後輪に均等に動力を分配することで、タイヤのグリップを回復させ、安定した走行を可能にします。
一方、電磁式は電磁クラッチを用いてセンターデフをロックします。電磁クラッチは電流を流すことで磁力を発生させ、クラッチを締結させる装置です。油圧式と同様に、電子制御によってロック率を緻密に制御することが可能です。また、電磁式は油圧式に比べて応答速度が速く、より迅速なロック制御を実現できます。
従来の機械式センターデフロックは、手動で操作する必要があり、走行中の切り替えが煩雑でした。また、ロック状態ではタイトコーナーブレーキング現象と呼ばれる、ハンドル操作が重くなる現象が発生しやすいため、舗装路での使用には注意が必要でした。しかし、油圧式と電磁式は電子制御により自動で、かつスムーズにロックを制御できるため、操作性と走破性を両立しています。このような利点から、近年の四輪駆動車、特にSUVやクロスカントリー車において、油圧式と電磁式のセンターデフロックが広く採用されています。
種類 | 機構 | 制御 | 利点 | 欠点 |
---|---|---|---|---|
油圧式 | 油圧の力を用いてセンターデフをロック | 電子制御によるロック率の自動調整 | 路面状況に応じて最適なロック率を実現 安定した走行が可能 |
– |
電磁式 | 電磁クラッチを用いてセンターデフをロック | 電子制御によるロック率の緻密な制御 | 応答速度が速く迅速なロック制御を実現 | – |
機械式 | – | 手動操作 | – | 走行中の切り替えが煩雑 タイトコーナーブレーキング現象が発生しやすい |
適切な使用方法
車は、様々な環境で走るために、多くの工夫が凝らされています。その一つに、前後車輪への動力の配分を調整する「中央差動制限装置」があります。これは、通常走行時は前後の車輪に適切な動力を配分し、滑りやすい路面やでこぼこ道では、片方の車輪が空転した場合でも、もう片方の車輪に動力を伝えることで、走破性を高める装置です。
この装置には、動力の配分を完全に固定する「締め付け機能」が備わっている車種もあります。この機能を使うと、前後車輪への動力の伝達が常に一定になり、ぬかるみや雪道など、非常に滑りやすい路面での脱出に役立ちます。しかし、この機能は常に使っておくべきではありません。
舗装路など、滑りにくい路面でこの機能を使ったまま走ると、タイヤや駆動系に大きな負担がかかります。これは、左右の車輪の回転差を吸収できなくなるためです。例えば、カーブを曲がるとき、外側の車輪は内側の車輪よりも長い距離を走りますが、締め付け機能が作動していると、この回転差を吸収できず、タイヤや駆動系に無理な力が加わってしまいます。その結果、部品の摩耗や破損を早め、故障の原因になることがあります。
また、締め付け機能を作動させたままカーブを曲がると、ハンドル操作が重くなる現象も起こります。これは、タイヤが路面をしっかりと捉えているため、ハンドルを切るのに大きな力が必要になるためです。特に、低速で急なカーブを曲がるときに顕著に現れ、運転しづらくなります。
そのため、締め付け機能は、ぬかるみや雪道で車が動けなくなった時、もしくは事前に悪路走行が予測される場合など、必要な時にのみ使うようにしましょう。そうでない場合は、解除しておくことが大切です。使い方をよく理解し、安全運転を心がけましょう。
機能 | メリット | デメリット | 使用場面 |
---|---|---|---|
中央差動制限装置 (締め付け機能) |
滑りやすい路面や でこぼこ道での走破性向上 |
タイヤや駆動系への負担大 部品の摩耗・破損促進 ハンドル操作が重くなる |
ぬかるみや雪道からの脱出時 悪路走行時 |