燃費向上を実現する技術：フレックスロックアップ制御

燃費向上を実現する技術：フレックスロックアップ制御

はじめに

車は、私たちの生活に欠かせない移動手段となっています。快適な移動を実現するために、車は様々な技術によって支えられています。その中でも、燃料を効率的に使うことは、環境保護と家計の負担軽減という二つの側面から、大変重要な課題です。

車の燃費を良くするために、様々な技術開発が行われています。エンジンの改良、車体の軽量化、空気抵抗を減らす工夫など、多岐に渡ります。これらの技術の中でも、変速機は燃費向上に大きく貢献しています。変速機は、エンジンの動力をタイヤに伝えるための装置で、エンジンの回転数を適切に調整することで、燃費を向上させることができます。

今回は、自動変速機、つまりオートマチック車に搭載されている燃費向上技術の一つである「フレックスロックアップ制御」について説明します。車は、発進時や加速時には大きな力が必要ですが、一定の速度で走る時には、それほど大きな力は必要ありません。従来の自動変速機では、エンジンの動力は、トルクコンバーターと呼ばれる装置を通してタイヤに伝えられていました。トルクコンバーターは、流体を使って動力を伝えるため、どうしても動力の伝達ロスが発生してしまいます。そこで登場したのがロックアップ機構です。これは、トルクコンバーターを介さずに、エンジンと変速機を直接連結させることで、動力の伝達ロスを減らす機構です。

しかし、従来のロックアップ機構は、高速走行時など、限られた条件でしか作動しませんでした。そこで開発されたのが「フレックスロックアップ制御」です。これは、より幅広い速度域で作動するように改良されたロックアップ機構です。これにより、従来よりも燃費が向上し、環境にも家計にも優しい車を実現することが可能となりました。フレックスロックアップ制御は、まるでエンジンの力を無駄なく路面に伝えるかのように、スムーズで力強い走りを実現する、重要な技術なのです。

ロックアップ機構の役割

自動変速機（ＡＴ）は、滑らかな変速が持ち味ですが、その仕組み上、どうしても動力の伝達効率が下がってしまう欠点があります。これは、ＡＴがオイルの力を用いて動力を伝えていることが原因です。オイルを介した動力伝達は、滑らかな変速には有効ですが、どうしても slippage （滑り）が生じてしまい、エンジンの力が無駄になってしまう部分が出てきてしまいます。そこで登場するのが「ロックアップ機構」です。

ロックアップ機構は、ＡＴの心臓部とも言えるトルクコンバーターと呼ばれる部品の中に組み込まれています。トルクコンバーターは、ポンプ、タービン、ステーターと呼ばれる３つの主要部品から構成され、これらがオイルの流れを制御することで変速を行います。ロックアップ機構は、このトルクコンバーター内部に設置されたクラッチを繋げることで、エンジンと変速機を直接連結する役割を果たします。

普段の走行では、トルクコンバーターによって滑らかに変速が行われますが、高速道路など、一定速度で巡航する場面では、ロックアップ機構が作動します。クラッチが繋がることで、エンジンと変速機が直結し、まるで手動変速機（ＭＴ）車のようにエンジンの力がダイレクトにタイヤに伝わるようになります。これにより、オイルを介した動力伝達による slippage が解消され、燃費の向上に繋がります。また、エンジンの回転数も下がるため、静粛性も向上するという利点もあります。

近年では、ロックアップ機構の制御技術も進化しており、より広い速度域で作動するようになっています。これにより、燃費向上効果もますます高まっており、環境性能にも大きく貢献しています。滑らかな変速と燃費性能の両立を目指した、ＡＴの進化を支える重要な機構と言えるでしょう。

従来のロックアップ制御の課題

昔の自動変速機では、ロックアップクラッチは完全に繋がるか、完全に離れるかのどちらかしかありませんでした。これは、ちょうど電灯のスイッチのように、オンとオフしかない状態です。このような単純な仕組みであるがゆえに、ロックアップクラッチが使える速度の範囲は狭く、多くの場面で活用できていませんでした。速度が遅い状態でロックアップクラッチを繋ぐと、車が震えたり、大きな音がしたりして、乗っている人が不快に感じるからです。ガタガタとした振動や、耳障りな音が車内に響き渡り、快適な運転とは程遠いものになってしまいます。また、完全に繋がった状態から急に離れる時にも、ドンと衝撃が発生することがありました。まるで急ブレーキをかけた時のような、不快なショックです。このような繋がるときの振動や、離れるときの衝撃といった問題があったため、ロックアップクラッチは限られた速度域でしか使えず、燃費向上効果も限定的でした。例えば、高速道路で一定の速度で走っている時などに限られていました。街中を走るような、速度の変化が激しい場面では、これらの問題によってロックアップクラッチを使うことができませんでした。そのため、せっかく燃費を良くする機能があるにもかかわらず、その効果を十分に発揮することができませんでした。より燃費の良い、そして快適な車にするためには、これらの問題を解決し、ロックアップクラッチをより広い速度域で使えるようにすることが重要でした。

フレックスロックアップ制御の仕組み

自動変速機を持つ車で重要な役割を担うのが、フレックスロックアップ制御です。これは、エンジンの動力を車輪に伝えるトルクコンバータ内部にあるロックアップクラッチの制御技術を進化させたものです。

トルクコンバータは、流体を使って動力を伝達するため、滑りが発生し、どうしても動力の一部が損失してしまいます。そこで、ロックアップクラッチの出番です。このクラッチを締結させることで、エンジンと変速機を直接連結し、まるで手動変速機のように動力の伝達効率を高めることができます。

従来のロックアップクラッチは、「完全に締結」しているか「完全に解放」しているかの二択でした。完全に締結した状態では燃費は向上しますが、速度が低いと振動や騒音が発生し、乗り心地が悪くなってしまう問題がありました。逆に、完全に解放した状態では滑りが発生するため、燃費が悪化してしまいます。

そこで登場したのがフレックスロックアップ制御です。この技術は、従来の二択制御に加え、「中間領域」を作り出すことで、ロックアップクラッチを部分的に締結させることを可能にしました。この中間領域では、クラッチにわずかな滑りを意図的に発生させることで、振動や騒音、ショックを抑えつつ、ロックアップ状態を維持します。

この制御によって、従来よりも低い速度域からロックアップクラッチを作動させることができるようになりました。つまり、燃費が向上する速度域を広げることができたのです。これにより、従来技術よりも更に燃費を向上させ、快適な運転を実現しています。

フレックスロックアップ制御のメリット

車の燃費を良くする技術の一つに、フレックスロックアップ制御というものがあります。これは、自動変速機の中で、エンジンとタイヤをつなぐ重要な部品であるロックアップクラッチの制御方法を進化させたものです。

従来のロックアップ制御では、ある程度の速度に達すると、ロックアップクラッチが完全に繋がる仕組みでした。しかし、街中など、速度変化の激しい状況では、頻繁にロックアップクラッチが繋がったり、切れたりする必要があり、これが燃費の悪化や、乗っている人が感じる振動の原因となっていました。

フレックスロックアップ制御では、このロックアップクラッチを繋ぐ、切るを細かく制御することで、より広い速度域で、エンジンの回転とタイヤの回転を同期させることが可能になりました。これにより、エンジンの回転数が下がり、燃料の消費を抑えることができるため、燃費が向上します。

また、この制御方式は、滑らかな変速にも貢献しています。従来の制御では、ロックアップクラッチの繋がったり、切れたりする際のショックが、乗っている人に不快な振動として伝わることがありました。フレックスロックアップ制御では、クラッチの滑りを細かく制御することで、このショックを軽減し、スムーズな変速を実現しています。結果として、乗っている人は、より快適な乗り心地を体感することができます。

さらに、フレックスロックアップ制御は、ロックアップクラッチ自体の寿命も延ばす効果があります。従来のように、クラッチが繋がったり、切れたりする動作を繰り返すと、クラッチに大きな負担がかかり、摩耗や劣化が早まる原因となります。フレックスロックアップ制御では、クラッチの滑りを制御することで、この負担を軽減し、耐久性を向上させています。部品の寿命が延びることは、車全体の維持費用を抑えることにも繋がります。

今後の展望

変わり続ける車の流れの中で、燃費の良さは特に大切になってきています。今、多くの自動変速機付きの車に搭載されているフレックスロックアップ制御は、燃費を良くする技術として活躍しています。この技術は、エンジンの力を滑らかにタイヤに伝えることで、エネルギーの無駄を減らし、燃費を向上させているのです。しかし、私たちは現状に満足することなく、更なる燃費向上を目指して、技術を高め続けています。

例えば、フレックスロックアップ制御をより精密に、より賢くすることで、エンジンの力をもっと効率的に使えるようにする研究が進んでいます。まるで熟練の職人が、無駄なく材料を使うように、エンジンの力を最大限に活用するのです。また、他の技術と組み合わせることで、更に大きな効果を生み出すことも期待されています。

電気で走るモーターとエンジンを組み合わせたハイブリッド車に、このフレックスロックアップ制御を組み合わせることで、より燃費の良い車を作ることができます。エンジンの良いところとモーターの良いところを、フレックスロックアップ制御が上手に繋ぐことで、燃費が飛躍的に向上するのです。

さらに、人が運転するのではなく、車が自動で運転する自動運転技術との組み合わせにも注目が集まっています。自動運転車は、周りの状況をしっかりと把握し、これから先の道路状況を予測することができます。この予測に基づいて、フレックスロックアップ制御を最適に調整することで、無駄なエネルギー消費を抑え、燃費を向上させることが可能になります。まるで未来を見通すかのように、最適な走りを実現するのです。

このように、フレックスロックアップ制御は、様々な技術と組み合わさり、進化を続けています。未来の車は、もっと環境に優しく、もっと燃費の良い車になるでしょう。私たちは、その未来に向けて、技術開発に励み続けます。