燃費向上!滑り制御の謎
車のことを知りたい
『すりっぷするロックアップ』って、ロックアップなのに、なぜすりっぷするんですか?ロックアップは固定って意味ですよね?
車の研究家
良い質問ですね。確かにロックアップは固定という意味ですが、この場合は完全に固定されているわけではなく、少しだけ滑るように調整されているんです。だから『すりっぷするロックアップ』と呼ばれています。
車のことを知りたい
少しだけ滑るって、どういうことですか?
車の研究家
例えば、自転車を漕いでいるときのことを想像してみてください。ペダルを漕ぐのを完全に止めずに、少しだけ力を弱めると、ペダルは少しだけ空回りしますよね? これと同じように、エンジンの力をタイヤに伝える装置を完全に固定するのではなく、少しだけ滑らせることで、燃費を良くしたり、滑らかに減速したりすることができるんです。この少し滑らせることを『すりっぷ』と言います。
スリッピングロックアップとは。
ボルボの電子制御5速オートマチックトランスミッションに搭載されている「スリッピングロックアップ」という技術について説明します。この技術は燃費向上を目的としたロックアップ機構のひとつです。時速50キロメートル前後で、トルクコンバーターが部分的に固定されることで、エネルギーの損失と滑りを減らします。様々な条件が揃うと、ロックアップの圧力を調整し、滑りの程度(毎分50~200回転)を制御します。完全な固定状態になるのは、時速90キロメートル前後です。トルクコンバーターの滑りによる損失を減らすためのロックアップクラッチに、ある程度の滑る部分を設けることで、減速時により低い速度までロックアップ領域を広げる制御技術は、他社のオートマチックトランスミッションにも多く採用されています。
滑り制御とは
車は、動力を効率よく路面に伝え、快適に走るために、様々な工夫が凝らされています。その一つに、エンジンの力を滑らかに車輪に伝える装置である、トルクコンバーターがあります。この装置は、液体を使って動力を伝えるため、どうしても動力の一部が損失として逃げてしまいます。この損失を減らすための技術が、滑り制御、つまりスリッピングロックアップです。
トルクコンバーターの中には、ロックアップクラッチと呼ばれる部品があり、これを使ってエンジンの動力を直接変速機に伝えることができます。従来の車は、ある程度の速度に達すると、このクラッチを完全に繋げて、動力の伝達効率を高めていました。しかし、完全に繋げた状態では、エンジンの回転のムラが車に直接伝わってしまうため、滑らかな走行が難しくなります。そこで、滑り制御が登場します。
滑り制御とは、ロックアップクラッチを完全に繋げるのではなく、わずかに滑りを残しながら繋げることで、動力の伝達効率を高めつつ、滑らかな走りも両立させる技術です。この制御により、これまでロックアップクラッチを繋げることができなかった、低い速度域でも動力の損失を減らすことができ、燃費の向上に繋がります。
さらに、滑り制御は、路面状況に合わせて細かく調整されます。例えば、雪道など、滑りやすい路面では、クラッチの繋ぎ方を調整することで、タイヤの空転を防ぎ、安定した走行を支援します。
このように、滑り制御は、燃費向上だけでなく、走行性能の向上にも貢献する、重要な技術と言えるでしょう。
項目 | 説明 |
---|---|
トルクコンバーター | エンジンの力を滑らかに車輪に伝える装置。液体を用いるため、動力の一部が損失となる。 |
ロックアップクラッチ | トルクコンバーター内の部品。エンジンの動力を直接変速機に伝える。 |
従来のロックアップ制御 | ある程度の速度に達するとクラッチを完全に繋ぎ、動力の伝達効率を高める。しかし、エンジンの回転ムラが車に伝わり、滑らかな走行が難しい。 |
滑り制御(スリッピングロックアップ) | ロックアップクラッチをわずかに滑りを残しながら繋げる技術。動力の伝達効率と滑らかな走りを両立。低速域での動力損失を減らし、燃費向上に貢献。 |
路面状況への対応 | 雪道など滑りやすい路面では、クラッチの繋ぎ方を調整し、タイヤの空転を防ぎ、安定した走行を支援。 |
効果 | 燃費向上、走行性能の向上 |
ボルボの技術
ボルボ車は、燃費の向上を目指し、様々な工夫を凝らした独自の技術を開発しました。その一つが、電子制御5速自動変速機に組み込まれた、滑りを抑える技術です。この技術は、速度に応じて変速機の動作を細かく調整することで、燃料の無駄な消費を抑えています。
具体的には、時速50キロメートルほどで、変速機内部の歯車を一部固定する状態を作り出します。これにより、動力の伝達効率を高め、エネルギーの損失と滑りを減らす効果があります。
しかし、ただ固定するだけでは、様々な道路状況や運転方法に対応できません。そこで、ボルボは、運転状況に合わせて歯車の固定の強さを調整する仕組みを導入しました。これにより、滑りの程度を毎分50回転から200回転の間で細かく制御し、常に最適な状態を保つことが可能になります。滑りが少ないと燃費が向上する一方で、滑りがないと乗り心地が悪くなる可能性があります。ボルボはこのバランスを緻密に調整することで、快適な走り心地と燃費性能の両立を実現しています。
さらに、高速道路などで時速90キロメートル程度に達すると、歯車は完全に固定された状態に移行します。これにより、高速走行時の燃費をさらに向上させる効果があります。
このように、ボルボは、滑りを抑える技術を電子制御5速自動変速機に採用することで、快適な運転と優れた燃費性能を両立しています。この技術は、ボルボの車作りにおける、環境性能への配慮と、乗る人への快適さを追求する姿勢を象徴する一つと言えるでしょう。
速度 | 歯車の状態 | 効果 |
---|---|---|
約50km/h | 一部固定(滑り50~200回転/分) | 動力伝達効率向上、エネルギー損失と滑り減少 |
約90km/h | 完全固定 | 高速走行時の燃費向上 |
他社への広がり
自動変速機を搭載した車は、滑らかで快適な走りを実現するために、トルクコンバーターという部品を使っています。トルクコンバーターは、エンジンの回転力を滑らかに変速機に伝える役割を果たしますが、この際にどうしても動力のロスが発生してしまいます。これを「滑り損失」と言います。ボルボはこの滑り損失を減らすために、「スリッピングロックアップ機構」という画期的な技術を開発しました。
この技術は、トルクコンバーター内部のロックアップクラッチを制御することで、滑り損失を最小限に抑える仕組みです。従来のロックアップ機構は、ある程度の速度に達しないと作動しませんでしたが、スリッピングロックアップ機構は、低速域でもロックアップクラッチを微細に制御することで、停止直前までロックアップ状態を維持することを可能にしました。これにより、燃費の大幅な向上を実現したのです。
ボルボの先進的な取り組みは、他の自動車製造会社にも大きな影響を与えました。現在では多くの会社が、トルクコンバーターの滑り損失を減らすために、ボルボが開発したスリッピングロックアップ機構とよく似た制御技術を取り入れています。特に、減速時にロックアップ領域を低速まで広げる制御技術は、燃費向上に大きく貢献するため、多くの自動変速機で採用されています。
各社は独自の制御方法を採用していますが、エンジンの回転力を効率的に伝えるとともに、燃費を向上させるという基本的な考え方は、ボルボが採用したスリッピングロックアップ機構と同じです。ボルボの技術が業界全体に広がり、自動車の進化に貢献していると言えるでしょう。滑らかな走行性能と燃費の両立は、自動車開発における永遠の課題です。今後も様々な技術革新が期待されます。
技術 | 概要 | 効果 | 影響 |
---|---|---|---|
トルクコンバーター | エンジンの回転力を滑らかに変速機に伝える部品 | 滑らかで快適な走りを実現 | 動力のロス(滑り損失)が発生 |
スリッピングロックアップ機構(ボルボ) | トルクコンバーター内部のロックアップクラッチを制御し、低速域でもロックアップ状態を維持 | 滑り損失を最小限に抑え、燃費を大幅に向上 | 他の自動車製造会社に大きな影響を与え、同様の技術が広く採用される |
減速時ロックアップ領域拡大制御 | 減速時にロックアップ領域を低速まで広げる | 燃費向上に大きく貢献 | 多くの自動変速機で採用 |
仕組みと利点
車は、エンジンが生み出した力をタイヤに伝えて走ります。その力の伝達経路にあるのがトルクコンバーターという装置です。トルクコンバーターは、エンジンの回転力を滑らかにタイヤへと伝達する役割を担い、発進時や加速時に重要な働きをします。トルクコンバーターの中には、ロックアップクラッチという部品があります。このロックアップクラッチは、エンジンとタイヤを直接繋げることで、動力の伝達効率を高める役割を果たします。従来の車は、このクラッチを繋げるか、切るか、どちらかしかできませんでした。
しかし、スリッピングロックアップという技術が登場したことで、クラッチの繋ぎ具合を細かく調整できるようになりました。まるで、電気を調整するボリュームのようなものだと考えてみてください。従来はスイッチのオンとオフだけだったものが、無段階に調整できるようになったのです。これにより、状況に応じて最適な滑り具合を保ちながら、エンジンの力を無駄なくタイヤに伝えることができるようになりました。
この技術の大きな利点は、燃費の向上です。エンジンの力を効率的に使えるようになったため、無駄な燃料の消費を抑えることができるのです。また、滑らかにロックアップ状態に移行することで、変速時のショックを和らげ、より快適な乗り心地を実現します。まるで、スムーズな水面を滑るボートのような感覚です。
さらに、ロックアップクラッチが働く速度域を低い速度まで広げることで、エンジンブレーキの効果を高めることもできます。下り坂などでブレーキペダルを踏む回数を減らすことができ、ブレーキの負担を軽減できます。このように、スリッピングロックアップは、燃費の向上、乗り心地の向上、そして安全性の向上に貢献する、重要な技術と言えるでしょう。
技術 | 従来の方式 | スリッピングロックアップ | メリット |
---|---|---|---|
ロックアップクラッチ | 接続/切断の2択 | 接続状態を無段階調整 | 燃費向上、乗り心地向上、安全性向上 |
動力の伝達 | 効率が低い | 状況に応じて最適な滑り具合で効率的に伝達 | |
エンジンブレーキ | – | 効果を高める | |
変速時のショック | あり | 滑らかに移行 |
今後の展望
車は、私たちを目的地まで速く快適に運んでくれるなくてはならない存在です。そして、車は常に進化を続けています。その進化の一つとして、燃費の向上が挙げられます。燃費が向上すれば、燃料代を抑えることができ、環境にも優しくなります。燃費向上のための技術は様々ありますが、その中でもスリッピングロックアップ機構は、今後さらに発展が期待される重要な技術です。
スリッピングロックアップ機構は、エンジンの動力をタイヤに伝える変速機の中で、動力の伝達効率を高める役割を果たします。従来の変速機では、エンジンの回転とタイヤの回転を完全に同期させていましたが、スリッピングロックアップ機構は、意図的にわずかな滑りを発生させることで、燃費を向上させています。
この技術は、今後ますます高度化していくと予想されます。例えば、ハイブリッドシステムとの組み合わせが考えられます。ハイブリッドシステムは、エンジンとモーターを併用することで燃費を向上させるシステムですが、スリッピングロックアップ機構と組み合わせることで、より効率的なエネルギー利用が可能になります。エンジンとモーター、そして変速機の連携を緻密に制御することで、状況に応じて最適な動力の伝達を実現し、燃費を最大限に高めることができるでしょう。
さらに、人工知能の活用も期待されています。人工知能は、様々な情報を基に、状況を判断し、最適な行動を選択することができます。この人工知能をスリッピングロックアップ機構の制御に活用することで、運転の仕方や道路の状態に合わせて、より精密な制御を行うことが可能になります。急な坂道や滑りやすい路面など、様々な状況に応じて最適な制御を行うことで、燃費向上効果を最大限に引き出すことができると期待されます。
スリッピングロックアップ機構は、環境に優しい車社会の実現に大きく貢献する技術です。今後も進化を続け、私たちの生活をより豊かにしてくれるでしょう。
技術 | 概要 | メリット | 今後の発展 |
---|---|---|---|
スリッピングロックアップ機構 | 変速機内でエンジンの回転とタイヤの回転を完全に同期させず、意図的にわずかな滑りを発生させることで、動力の伝達効率を高める機構。 | 燃費向上 | ハイブリッドシステムとの組み合わせ、人工知能の活用 |
ハイブリッドシステム | エンジンとモーターを併用することで燃費を向上させるシステム。 | 燃費向上 | スリッピングロックアップ機構との組み合わせによる、より効率的なエネルギー利用 |
人工知能 | 様々な情報を基に、状況を判断し、最適な行動を選択する技術。 | 様々な状況に応じて最適な行動を選択可能 | スリッピングロックアップ機構の制御への活用、運転の仕方や道路の状態に合わせた精密な制御 |
まとめ
自動車の燃費を向上させる技術として、トルクコンバーターの働きに着目した「すり滑り締結」という技術があります。これは、エンジンの動力を車輪に伝えるトルクコンバーターにおいて、動力の伝達効率を高めることで燃費の向上を図るものです。トルクコンバーターは、流体を使って動力を伝えるため、どうしても伝達時に動力の損失が発生してしまいます。この損失を減らすために考え出されたのが、この技術です。すり滑り締結は、トルクコンバーター内の部品を機械的に接続することで、まるで直接つなぎ合わせたかのように動力を伝達し、損失を最小限に抑えることができます。
従来のトルクコンバーターは、エンジンの回転数と車輪の回転数の差が大きい発進時や加速時には、流体による滑りを生じさせてスムーズな発進や加速を実現していました。しかし、この滑りは動力の損失につながるため、燃費の悪化を招いていました。そこで、すり滑り締結は、部分的な接続と滑り具合の制御を組み合わせることで、幅広い速度域で燃費を向上させることを可能にしました。低速時には、滑りを残してスムーズな発進と加速を確保し、高速時には、しっかりと接続することで燃費を向上させるという、状況に応じた最適な制御を実現しています。
この技術は、滑らかな変速と快適な乗り心地を実現しながら、燃費を向上させるという両立を可能にしました。快適な運転体験を損なうことなく、環境性能を高めることができるため、今では多くの自動車会社がこの技術を採用し、改良を重ねています。すり滑り締結は、ボルボという会社が初めて実用化し、その燃費向上効果が広く認められたことで、急速に普及しました。
今後、電子制御技術の進歩や、他の燃費向上技術との組み合わせにより、更なる燃費向上が期待されます。すり滑り締結は、環境に配慮した自動車社会の実現に向けて、なくてはならない技術と言えるでしょう。
技術名 | すり滑り締結 |
---|---|
目的 | 自動車の燃費向上 |
対象 | トルクコンバーター |
原理 | トルクコンバーター内の部品を機械的に接続することで、動力の伝達効率を高め、損失を最小限に抑える。部分的な接続と滑り具合の制御を組み合わせることで、幅広い速度域で燃費向上を実現。 |
従来の問題点 | トルクコンバーターは、発進時や加速時に流体による滑りを生じさせてスムーズな発進や加速を実現していたが、この滑りは動力の損失につながり燃費悪化を招いていた。 |
効果 | 滑らかな変速と快適な乗り心地を実現しながら燃費を向上。 |
現状 | 多くの自動車会社が採用・改良。 |
将来展望 | 電子制御技術の進歩や他の燃費向上技術との組み合わせにより更なる燃費向上が期待される。 |