四輪駆動を支える歯車たち:トランスファーギヤ
車のことを知りたい
先生、『トランスファーギヤ』って、何ですか?なんだか難しそうです。
車の研究家
簡単に言うと、エンジンの力をタイヤに伝えるための歯車のセットだよ。特に、普通の乗用車では前輪だけを動かすことが多いけど、四輪駆動車のように全てのタイヤを動かす必要がある時に、エンジンの力を後ろのタイヤにも伝える役割をするんだ。
車のことを知りたい
前輪を動かすための歯車とは別物なんですか?
車の研究家
そうだよ。前輪を動かす歯車は変速機と繋がっているけど、トランスファーギヤは変速機から更に分岐して後ろのタイヤへ動力を伝えるんだ。四輪駆動だけでなく、前輪駆動車でも後ろのタイヤを動かす場合に必要になるんだよ。
トランスファーギヤとは。
横置きエンジンで前輪駆動の車に、後輪も駆動させるための装置を追加する場合、その装置にある、動力を90度向きを変えて後ろの車軸に伝えるための歯車などを『トランスファーギヤ』と呼びます。
さらに、速度を切り替える副変速機が付いている場合は、その歯車も『トランスファーギヤ』に含まれます。
また、エンジンが縦置きで後輪駆動の車に、前輪も駆動させるための装置を追加する場合、その装置全体を『トランスファーギヤ』と呼び、変速機からの動力を伝える歯車や、前輪を駆動させるための歯車なども含まれます。
駆動方式の種類
車は、心臓部である原動機が生み出した力を車輪に伝えることで走ります。この力をどのように伝えるかによって、車の駆動方式は大きく分けられます。代表的な駆動方式をいくつか紹介します。
まず、前輪駆動方式です。これは、前側の車輪だけに原動機が生み出した力を伝える方式です。前輪駆動方式は、原動機の配置や伝達機構が簡素なため、製造費用を抑えられます。また、部品点数が少ないため車体が軽く、燃費の向上にも繋がります。さらに、車体の中央に大きな伝達部品を配置する必要がないため、車内の空間を広く取れることも大きな利点です。
次に、後輪駆動方式です。これは後側の車輪だけに原動機が生み出した力を伝える方式です。後輪駆動方式は、発進時や加速時に後輪に荷重がかかり、駆動力が路面に伝わりやすいという特徴があります。そのため、力強い発進や加速を可能にし、スポーティーな運転を楽しむことができます。高級車やスポーツカーに多く採用されている方式です。
さらに、四輪駆動方式があります。これは、四つ全ての車輪に原動機が生み出した力を伝える方式です。四輪駆動方式は、前後全ての車輪で駆動力を路面に伝えるため、雪道やぬかるんだ道などの悪路でも安定した走行が可能です。そのため、スポーツ用多目的車やオフロード車などに多く採用されています。四輪駆動方式には、常に四つの車輪を駆動させるものと、通常は二輪駆動で、路面状況に応じて四輪駆動に切り替えるものがあります。切り替え式の四輪駆動方式では、切り替え装置である副変速機が重要な役割を果たします。
このように、駆動方式にはそれぞれ特徴があり、車の用途や走行環境に適した方式が選ばれています。それぞれの利点と欠点を理解することで、自分に合った車選びができます。
駆動方式 | 説明 | メリット | 主な採用車種 |
---|---|---|---|
前輪駆動方式 | 前側の車輪だけに原動機が生み出した力を伝える方式 | 製造費用が安い、燃費が良い、車内空間が広い | 一般的な乗用車 |
後輪駆動方式 | 後側の車輪だけに原動機が生み出した力を伝える方式 | 力強い発進・加速が可能、スポーティーな運転ができる | 高級車、スポーツカー |
四輪駆動方式 | 四つ全ての車輪に原動機が生み出した力を伝える方式 | 悪路走破性が高い、安定した走行が可能 | SUV、オフロード車 |
トランスファーギヤの役割
動力源である機関から生み出された力は、まず変速機へと送られます。変速機は、状況に応じて力の大きさを調整する役割を担っています。そして、変速機で調整された力が次に送られるのが、駆動輪です。多くの車は前輪もしくは後輪のどちらか二輪を駆動輪としていますが、四輪駆動車は四輪全てが駆動輪となります。
四輪駆動車の場合、前輪と後輪のどちらにも適切に力を分配する必要があります。この重要な役割を担うのが、まさに伝達装置です。伝達装置は、変速機から送られてきた力を前輪と後輪に分配する装置であり、四輪駆動システムにおいて中心的な役割を果たしています。
伝達装置の内部には、傘歯車やはすば歯車といった様々な歯車が組み合わされており、これらの歯車が噛み合うことで力の伝わる向きを変え、前輪と後輪へ適切に力を分配します。傘歯車は、互いに直角に交わる軸の間で力を伝える際に用いられる歯車であり、はすば歯車は、軸がずれた位置にある場合に力を伝えるために使われます。これらの歯車の組み合わせによって、複雑な力の伝達を可能にしています。
さらに、副変速機を備えた伝達装置もあります。副変速機は、より低い歯車比を生み出す機構です。歯車比を低くすることで、より強い駆動力を得ることが可能になります。急な登り坂や、ぬかるみ、雪道など、通常よりも大きな駆動力が必要な悪路を走行する際に、この副変速機が大きな力を発揮します。
このように、伝達装置は四輪駆動車にとって必要不可欠な部品であり、様々な路面状況に対応した走行を可能にする重要な役割を担っているのです。伝達装置の働きによって、四輪駆動車は高い走破性と安定した走行性能を発揮することができるのです。
横置きエンジン車での配置
車を真上から見て、エンジンを車幅方向、つまり左右に配置するのが横置きエンジンです。この配置では、エンジンルーム内の空間を効率的に使うことができ、小型車や経済的な車によく用いられています。横置きエンジン車で四輪駆動を実現する場合、前輪だけでなく後輪にも動力を伝える必要があります。その際に重要な役割を果たすのが変速機に組み込まれた部品、変速機接続差動装置です。
横置きエンジンを前輪駆動に使う場合、エンジンから出力された動力は、まず変速機で速度調整されます。そして、この変速機に接続された変速機接続差動装置が、前輪への駆動力と後輪への駆動力を分配する役割を担います。前輪へは比較的単純に動力を伝えることができますが、後輪へ動力を伝えるには工夫が必要です。なぜなら、エンジンが横置きであるため、後輪へは動力の流れを90度曲げる必要があるからです。
そこで登場するのが、傘歯車やハイポイド歯車といった特殊な歯車です。傘歯車は、その名の通り傘のように広がった形をした歯車で、動力の流れを90度スムーズに曲げることができます。また、ハイポイド歯車は、二つの歯車の軸が交わらないように配置することで、滑らかに動力を伝えるとともに、車高を低く抑える効果も持ちます。これらの歯車は、変速機接続差動装置の中に組み込まれ、コンパクトながらも効率的に動力の向きを変え、後輪へと伝えます。変速機接続差動装置から出た動力は、回転軸を介して後輪に伝えられます。この回転軸は、エンジンの出力軸と平行に配置されるため、車体後方まで伸びる長い回転軸が必要となります。
このように、傘歯車やハイポイド歯車、そして変速機接続差動装置といった技術の組み合わせによって、横置きエンジン車でも四輪駆動を実現することが可能となっています。これらの技術は、コンパクトな車体設計と四輪駆動による走破性の両立を可能にし、様々な路面状況に対応できる車作りに貢献しています。
縦置きエンジン車での配置
車を前から見ると、エンジンが縦方向に配置されている車を縦置きエンジン車と言います。縦置きエンジン車は、後輪を駆動する形式の車(後輪駆動車)に多く採用されています。この後輪駆動車で四輪駆動を実現するために、変速機の後方にトランスファーという装置が配置される場合がほとんどです。
変速機は、エンジンの回転力をタイヤに伝えるための装置で、速度に合わせて回転力を調整する役割を担います。この変速機の後方に配置されたトランスファーは、後輪だけでなく前輪にもエンジンの動力を伝える重要な役割を果たします。
エンジンの動力は、まず変速機に伝わります。変速機の中で速度に合わせた調整が行われた後、動力は変速機の出力軸からトランスファーへと送られます。トランスファーの中には、複数の歯車が組み合わされています。これらの歯車は、変速機の出力軸につながる歯車、その歯車とかみ合う中間歯車、そして前輪の駆動軸につながる歯車などで構成されています。
変速機の出力軸から伝わった動力は、まずトランスファー内部の歯車に伝わり、次に中間歯車へと伝わります。そして、この中間歯車から前輪の駆動軸へと動力が伝わることで、前輪も駆動するようになります。
このように、複数の歯車が複雑に組み合わさり、かみ合うことで、後輪だけでなく前輪にも動力を伝えることができ、四輪駆動を実現しています。これらの歯車の組み合わせや大きさなどを調整することで、前輪と後輪への動力の配分を変化させることも可能です。状況に応じて最適な駆動力を配分することで、様々な路面状況に対応できる車を作ることができるのです。
副変速機付きの仕組み
四輪駆動車の中には、副変速機と呼ばれる機構を持つものがあります。副変速機とは、通常の変速機とは別に、もう一つ変速機が付いているようなものだと考えてください。普通の変速機は、速度に合わせてエンジンの回転力をタイヤに伝える役割を担っています。一方、副変速機は、さらにエンジンの力を増幅させる働きをします。
具体的には、副変速機を使うと、より低いギア比で車を走らせることができます。ギア比とは、エンジンの回転数とタイヤの回転数の比率です。ギア比が低いほど、タイヤの回転数は遅くなりますが、その分大きな力が発生します。これは、自転車で急な坂道を上る時に軽いギアを使うのと同じ原理です。低いギアを使うことで、ペダルは重くなりますが、少ない力で坂道を上ることができます。
副変速機は、まさにこのような状況で役立ちます。急な坂道やぬかるんだ道など、タイヤが空転しやすい状況では、大きな駆動力が必要になります。このような時に副変速機を使うことで、エンジンの力を効率的にタイヤに伝え、車を力強く走らせることができるのです。ですから、副変速機は、オフロード走行、つまり舗装されていない道を走ることを得意とする車に多く搭載されています。
副変速機を使うかどうかは、運転席にあるレバーやスイッチで切り替えることができます。通常走行時は副変速機をオフにしておき、必要な時だけオンにすることで、燃費を節約しつつ、走破性を高めることができます。まさに、悪路走破の心強い味方と言えるでしょう。
項目 | 説明 |
---|---|
副変速機の機能 | エンジンの力を増幅し、より低いギア比で車を走らせる。 |
ギア比 | エンジンの回転数とタイヤの回転数の比率。低いほどタイヤの回転数は遅くなるが大きな力が発生。 |
副変速機のメリット | 急な坂道やぬかるんだ道など、タイヤが空転しやすい状況で大きな駆動力を得られる。 |
副変速機の使用方法 | 運転席のレバーやスイッチでオン/オフを切り替え。 |
副変速機の効果 | 燃費を節約しつつ、走破性を高める。 |
四輪駆動の進化への貢献
四輪駆動車は、前後すべての車輪にエンジンからの動力を伝えることで、雪道やぬかるみといった悪路での走破性を高めてきました。この四輪駆動の仕組みを支える重要な部品の一つが変速機です。変速機は、前輪と後輪への動力の伝達を切り替えたり、配分を調整する役割を担っています。
初期の四輪駆動車に搭載されていた変速機は、構造が単純で、主に手動で操作されていました。しかし、技術の進歩に伴い、変速機の構造も複雑化し、高度な制御システムと連携するようになりました。以前は、運転手が自分の経験と勘を頼りに変速機の操作を行っていましたが、今では電子制御を取り入れることで、機械が自動的に最適な駆動力配分を判断し、調整してくれるようになりました。
近年では、電子制御式の変速機が普及し、路面の状況や車の状態に合わせて、前後の車輪への動力の配分を瞬時に調整することが可能になっています。例えば、乾燥した舗装路では燃費を向上させるために後輪駆動に切り替え、滑りやすい雪道では安定性を高めるために四輪駆動に切り替えるといった制御を自動で行います。また、急な坂道やカーブを走行する際にも、車輪の空転を防ぎ、スムーズな走行を維持するために、変速機が重要な役割を果たします。
このように、変速機は四輪駆動車の進化に大きく貢献してきました。そして、これからも安全性や快適性をさらに向上させるための重要な技術として、進化を続けていくでしょう。
時代 | 変速機の特徴 | 駆動力配分 | メリット |
---|---|---|---|
初期 | 単純な構造、手動操作 | 運転手による手動調整 | 悪路走破性の向上 |
現代 | 複雑な構造、電子制御 | 機械による自動調整 | 路面状況に応じた最適な駆動力配分、燃費向上、安定性向上、スムーズな走行 |