2ストロークエンジンの仕組みと魅力

2ストロークエンジンの仕組みと魅力

車のことを知りたい

2ストロークエンジンって、4ストロークエンジンに比べてどんな利点があるんですか?

車の研究家

良い質問だね。2ストロークエンジンは、同じ大きさでも4ストロークエンジンより大きな力が出せるんだ。それに、部品も少ないから、小さく軽く作れるんだよ。

車のことを知りたい

へえ、すごいですね!じゃあ、なんで今はあまり使われていないんですか?

車の研究家

確かにそうだね。2ストロークエンジンは燃費が悪くて、排気ガスに有害な物質が多いという欠点があるんだ。だから、環境への影響を考えて、最近は4ストロークエンジンが多く使われているんだよ。

2ストロークエンジンとは。

車に関する言葉「2ストロークエンジン」について説明します。2ストロークエンジンとは、ピストンが上下に2回動く間に、エンジンの回転を1周させて動力を発生させる仕組みのエンジンです。正式には2ストロークサイクルエンジンといい、2サイクルエンジンと呼ぶこともあります。ピストンが上下に動くのを行程といいますが、2ストロークエンジンは1回転に1回動力が発生します。4ストロークエンジンは2回転に1回なので、同じ大きさのエンジンであれば2ストロークエンジンのほうが大きな力を出しやすいです。また、エンジンの壁に開けた穴で空気の出し入れをするので、構造が簡単で小さく軽く作ることができます。燃料に火をつける方法には、圧縮して自然に火をつける方法と、火花で火をつける方法があり、大きな船などでは圧縮して火をつける方法が使われ、バイクなどでは火花で火をつける方法が使われています。2ストロークエンジンは、1880年にイギリスのデュガルト・クラークという人が発明したので、クラークサイクルとも呼ばれています。

2ストロークエンジンの基礎

2ストロークエンジンの基礎

2行程機関は、ピストンの上下運動2回で1仕事をこなす燃焼機関です。これは、クランク軸が1回転する間に吸気、圧縮、燃焼、排気の全行程が完了することを意味します。4行程機関ではクランク軸が2回転して1仕事となるため、2行程機関は同じ大きさでもより大きな力を出すことができます。

ピストンが下がる時、まず排気口が開き、燃焼後のガスが外に押し出されます。続いて掃気口が開き、新しい混合気がシリンダー内に入り、燃えカスを押し流しながらシリンダー内を満たします。ピストンが上死点に達すると、混合気は圧縮され、点火プラグによって燃焼が始まります。燃焼による爆発力はピストンを押し下げ、クランク軸を回転させます。この一連の動作がクランク軸の1回転ごとに繰り返されます。

この特性から、2行程機関は力強い加速が必要な乗り物によく使われます。例えば、オートバイやスクーター、チェーンソー、芝刈り機、一部の小型船舶などです。また、構造が単純なので、小型化や軽量化がしやすいという利点もあります。部品点数が少ないため、製造費用や修理費用を抑えることもできます。しかし、4行程機関に比べて燃費が悪く、排気ガスに燃え残りの燃料が含まれるため、環境への影響が大きいという欠点も持っています。近年では、環境規制の強化により、2行程機関を搭載した乗り物は減少傾向にあります。

項目 説明
動作原理 ピストンの上下運動2回(クランク軸1回転)で1仕事
行程
  • ピストン下降:排気、掃気
  • ピストン上昇:圧縮、燃焼
出力 同サイズの4行程機関より高出力
用途 オートバイ、スクーター、チェーンソー、芝刈り機、一部の小型船舶など
メリット
  • 力強い加速
  • 構造が単純
  • 小型・軽量化
  • 製造・修理費用が安い
デメリット
  • 燃費が悪い
  • 排気ガスに燃え残りの燃料が含まれる
  • 環境への影響が大きい

2ストロークエンジンの作動原理

2ストロークエンジンの作動原理

2ストローク機関は、その名の通り、ピストンの上下運動2回、つまりクランク軸の1回転で1サイクルの行程が完結する機関です。4ストローク機関のように吸気、圧縮、燃焼、排気の4行程を4つの行程に分けるのではなく、これらの行程を巧みに重ね合わせることで、小型軽量ながらも高い出力を実現しています。

ピストンが下がる行程では、まずピストンが下死点に近づくにつれて、シリンダー壁に開けられた排気口が開き、燃焼済みのガスが外部へ排出されます。同時に、ピストンの下降によってクランクケース内が負圧になり、吸気口から混合気がクランクケース内に吸い込まれます。ピストンがさらに下降すると、シリンダー壁の吸気口が開き、クランクケース内に吸い込まれていた混合気がシリンダー内へと送り込まれます。この時、ピストン上面は掃気口と呼ばれる部分で、吸気と排気を適切に流す役割を果たします。ピストンが上昇行程に転じると、吸気口と排気口が閉じられ、シリンダー内の混合気が圧縮されます。ピストンが上死点に達する直前に点火プラグによって混合気に点火され、燃焼、爆発が生じます。この爆発の圧力によってピストンが押し下げられ、クランク軸を回転させ、動力が発生します。これが2ストローク機関の基本的な作動原理です。

2ストローク機関は構造が単純であるため、部品点数が少なく、軽量コンパクトに仕上がります。また、4ストローク機関に比べて同じ排気量で高い出力を得ることができ、アクセル操作に対する反応も鋭いため、特に小型の乗り物や動力工具などで広く利用されてきました。しかし、混合気を燃焼させる際に、未燃焼の混合気が排気と一緒に排出されてしまうため、燃費が悪く、排気ガスも汚染物質が多いという欠点があります。そのため、近年では環境規制の強化に伴い、4ストローク機関への転換が進んでいます。

行程 説明
ピストン下降
  • 排気口が開き、燃焼ガスが排出
  • クランクケース内が負圧になり、混合気が吸入
  • 吸気口が開き、混合気がシリンダーへ
  • 掃気口が吸気と排気を制御
ピストン上昇
  • 吸気口と排気口が閉じる
  • 混合気が圧縮
  • 上死点直前で点火、燃焼、爆発
  • ピストンが押し下げられ、動力が発生
メリット
  • 構造が単純
  • 軽量コンパクト
  • 高出力
  • レスポンスが良い
デメリット
  • 燃費が悪い
  • 排気ガスが汚い
  • 未燃焼ガスを排出

2ストロークエンジンの種類

2ストロークエンジンの種類

2行程機関には、大きく分けて火花点火方式と圧縮点火方式の二種類があります。

火花点火方式は、点火栓を用いて混合気に点火する方式です。混合気とは、空気と燃料が混ぜ合わされた気体のことです。この方式は、構造が簡素で軽く、高回転までスムーズに回り、大きな出力を得られるという長所があります。そのため、比較的小型の機関に多く採用されています。例えば、オートバイや小型船舶、草刈り機、チェーンソーなど、様々な機械に搭載されています。混合気を燃焼室に送り込む方式には、クランクケース圧縮式、ピストンバルブ式、ロータリーバルブ式など、いくつかの種類があります。それぞれに利点と欠点があり、機械の特性に合わせて使い分けられています。しかし、燃焼行程の一部で、未燃焼の混合気が排気と一緒に排出されてしまうため、燃費が悪く、排気ガスも比較的汚れてしまうという短所があります。

一方、圧縮点火方式は、空気を圧縮して高温にし、そこに燃料を噴射して自己着火させる方式です。この方式は、火花点火方式に比べて熱効率が高く、燃費が良いという長所があります。また、より大きな出力を取り出すことも可能です。そのため、大型の機関に多く採用されています。例えば、大型船舶のディーゼル機関などが代表的な例です。圧縮点火方式は、燃料噴射のタイミングや圧力などを精密に制御することで、排気ガスの浄化にも取り組んでいます。しかし、火花点火方式に比べて構造が複雑で、重量も大きくなる傾向があります。また、低回転域での運転が苦手で、騒音や振動も比較的大きいという短所があります。

このように、二種類の2行程機関はそれぞれに特徴があり、用途に応じて使い分けられています。小型で高出力を必要とする場合は火花点火方式、大型で燃費を重視する場合は圧縮点火方式が選ばれることが多いです。

項目 火花点火方式 圧縮点火方式
点火方式 点火栓を用いて混合気に点火 空気を圧縮して高温にし、燃料を噴射して自己着火
長所 構造が簡素で軽く、高回転までスムーズに回り、大きな出力を得られる。 熱効率が高く、燃費が良い。より大きな出力を取り出すことも可能。
短所 未燃焼の混合気が排気と一緒に排出されるため、燃費が悪く、排気ガスも比較的汚れてしまう。 構造が複雑で、重量も大きくなる傾向がある。低回転域での運転が苦手で、騒音や振動も比較的大きい。
用途 比較的小型の機関に多く採用(オートバイ、小型船舶、草刈り機、チェーンソーなど) 大型の機関に多く採用(大型船舶のディーゼル機関など)

2ストロークエンジンの利点

2ストロークエンジンの利点

2ストロークエンジンは、その独特の構造から生まれるいくつもの利点を持っています。中でも特筆すべきは、その小さな排気量から想像もつかないほどの高い出力です。4ストロークエンジンが4つの行程で1サイクルなのに対し、2ストロークエンジンは2つの行程で1サイクルを完結させます。つまり、クランクシャフトが1回転するごとに爆発が起こるため、同じ排気量の4ストロークエンジンに比べて、より大きな出力を得ることが可能になります。この高い出力は、特に力強い加速が必要とされる場面で大きな効果を発揮します。

また、2ストロークエンジンは軽量かつ小型であることも大きな利点です。4ストロークエンジンには吸気、圧縮、爆発、排気の4つの行程を制御するための複雑なバルブ機構が必要ですが、2ストロークエンジンはピストンが上下する動きに合わせて吸気と排気を行うため、バルブ機構が不要です。このため、エンジン全体の部品点数が少なくなり、結果としてエンジンは軽く小さく仕上がります。この軽量コンパクトさは、持ち運びが求められる機器や、限られたスペースに搭載する必要がある機器にとって大きなメリットとなります。

さらに、構造の簡素さも2ストロークエンジンの魅力です。部品点数が少ないため、組み立てや分解が容易で、メンテナンスにかかる手間や費用を抑えることができます。また、部品が少ないということは故障する箇所も少ないことを意味し、高い信頼性につながります。ただし、混合気を用いる2ストロークエンジンは、4ストロークエンジンに比べて燃費が劣る傾向があり、排気ガスに未燃焼の燃料が含まれるため、環境への影響も考慮する必要があります。しかしながら、これらのデメリットを補って余りある利点があるため、現在でも様々な分野で2ストロークエンジンは活躍を続けています。

メリット 詳細
高出力 2行程で1サイクルのため、クランクシャフト1回転ごとに爆発し、同じ排気量の4ストロークエンジンより大きな出力を得られる。力強い加速が必要な場面で効果を発揮。
軽量・小型 バルブ機構が不要なため部品点数が少なく、軽く小さく仕上がる。持ち運びやスペースが限られた機器に最適。
構造の簡素さ 部品点数が少ないため組み立てや分解が容易で、メンテナンスの手間や費用が抑えられ、信頼性も高い。

2ストロークエンジンの欠点

2ストロークエンジンの欠点

2ストロークエンジンは、構造が単純で軽量という長所を持つ一方で、いくつかの欠点も抱えています。その中でも特に顕著な欠点は燃費の悪さです。4ストロークエンジンは吸気、圧縮、爆発、排気の4つの行程を1サイクルとしていますが、2ストロークエンジンは吸気と圧縮、爆発と排気の2つの行程を1サイクルで行います。このため、2ストロークエンジンは1回転ごとに爆発が起こり、高出力なのが特徴です。しかし同時に、排気と一緒に未燃焼の混合気が排出されてしまい、燃料を効率的に使えません。これが燃費の悪さに繋がっています。

また、環境性能の低さも大きな課題です。排気ガスに未燃焼の混合気が多く含まれるため、大気汚染の原因となる炭化水素や一酸化炭素などの排出量が多くなってしまいます。さらに、エンジンオイルを燃料に混ぜて潤滑を行うため、燃焼したオイルによる白煙も排出されます。これらの要素が、環境規制の強化に伴い、2ストロークエンジンの採用を減少させている主要な原因となっています。

さらに、出力特性にも特有の欠点があります。高回転域では力強い出力を発揮する一方、低回転域ではトルクが細く、スムーズな発進や低速走行が難しいという側面も持っています。これは、2ストロークエンジンの構造上、低回転域では排気と一緒に混合気が出てしまいやすく、十分な圧縮が行えないことに起因します。

これらの欠点を克服するために、様々な技術開発が行われてきました。例えば、排気ポートの形状を工夫したり、電子制御による燃料噴射システムを導入したりすることで、燃費や排気ガスの改善が図られています。しかし、4ストロークエンジンと比較すると依然として課題が残るのも事実です。そのため、現在では、環境規制の厳しい地域を中心に、2ストロークエンジンの利用は限定的となっています。

項目 内容
長所 構造が単純、軽量、高出力
短所 燃費が悪い、環境性能が低い、出力特性に難あり
燃費が悪い理由 2行程で1サイクルのため、未燃焼の混合気が排気と一緒に排出される。
環境性能が低い理由 未燃焼の混合気が多く含まれるため、炭化水素や一酸化炭素の排出量が多い。オイルを燃料に混ぜるため、白煙も排出される。
出力特性の欠点 高回転域では力強い出力だが、低回転域ではトルクが細く、スムーズな発進や低速走行が難しい。
改善策 排気ポートの形状工夫、電子制御燃料噴射システム導入など
現状 環境規制の厳しい地域を中心に利用は限定的

2ストロークエンジンの歴史

2ストロークエンジンの歴史

二行程機関は、百数十年前にイギリスの技術者、デュガルト・クラーク氏によって生み出されました。クラークサイクルとも呼ばれるこの画期的な機構は、ピストンが一度上下する間に吸気、圧縮、爆発、排気の全行程を行うという、四行程機関とは異なる独特の動作をします。この構造上の特徴から、同じ大きさの四行程機関に比べて軽量かつ簡素に作ることができ、高い出力を得られるという利点があります。

クラーク氏がこの機関を開発した当時は、主に船舶の動力源として用いられました。その後、小型で高出力という特性が注目され、様々な乗り物や機械に活躍の場を広げていきます。特に、オートバイにおいては、軽快な走りを実現する上で重要な役割を担い、長年にわたり多くの名車に搭載されてきました。また、チェーンソーや草刈り機などの林業・農業機械、スノーモービルなどにも広く採用され、人々の生活を支えてきました。手軽に使える模型飛行機ラジコンカーにも多く使われています。

しかし、二行程機関は、未燃焼の燃料が排気と共に排出されるため、環境への負荷が大きいという課題も抱えています。そのため、近年の環境規制の強化に伴い、乗用車などからは姿を消しつつあります。それでも、現在でもその独特の利点から、一部の競技用オートバイや船外機など、特定の分野では必要不可欠な存在であり続けています。高い出力密度とシンプルな構造という特徴を活かし、現在も様々な用途で活躍を続けており、今後も特定の分野では重要な動力源であり続けるでしょう。

項目 内容
発明者 デュガルト・クラーク
別名 クラークサイクル
動作 ピストンが一度上下する間に吸気、圧縮、爆発、排気の全行程を行う
メリット 軽量、簡素、高出力
用途 船舶、オートバイ、林業・農業機械(チェーンソー、草刈り機)、スノーモービル、模型飛行機、ラジコンカー、一部の競技用オートバイ、船外機
デメリット 未燃焼燃料の排出による環境負荷