接点式点火装置:古き良き時代の火花

接点式点火装置:古き良き時代の火花

車のことを知りたい

先生、『接点式点火装置』ってよくわからないのですが、簡単に説明してもらえますか?

車の研究家

簡単に言うと、エンジンの中の火花を飛ばす装置の一つだよ。火花を飛ばすタイミングを決める部品が、機械仕掛けで動いているのが特徴だね。

車のことを知りたい

機械仕掛けというと、どういうことですか?

車の研究家

回転する部品でタイミングを調整しているんだ。例えば、昔使われていたレコードプレーヤーの針がレコードの溝の上を移動するように、部品が動いて電気のスイッチをパチパチと切り替えているイメージだよ。今はコンピューターで制御されているものが多いから、この方式はあまり見かけなくなったけどね。

接点式点火装置とは。

機械式の点火装置の一つである『接点式点火装置』について説明します。この装置は、配電器の中に組み込まれた山のような部品によって開閉器の腕が押し広げられ、開閉器の接点が離れた瞬間に、火花を出す部品に高い電圧が送られて、火花が飛びます。点火のタイミングを早めるのも機械で行います。今では、コンピューターでエンジンを制御する方法が広く使われるようになり、この装置は見かけることが少なくなってきました。

はじめに

はじめに

自動車の心臓部であるエンジンは、ガソリンと空気の混合気に点火することで生まれる爆発力を動力源としています。この混合気に火花を飛ばし、爆発を促す重要な役割を担うのが点火装置です。近年の自動車では電子制御式点火装置が広く採用されていますが、少し時代を遡ると、接点式点火装置が主流でした。

接点式点火装置は、機械的な仕組みで火花を発生させる装置です。ディストリビューターと呼ばれる部品の中に回転する軸があり、この軸に取り付けられたカムが接点を押し下げたり離したりすることで、点火コイルへの電流を断続します。電流が断続されることでコイルに高電圧が発生し、この高電圧が点火プラグへと送られ、火花が飛びます。これはまるで鍛冶屋が槌で鉄を叩くように、正確なタイミングで火花を発生させる、機械仕掛けの精巧な技術と言えるでしょう。

接点式点火装置は、構造が単純であるため整備がしやすく、頑丈であるという利点がありました。しかし、接点は物理的に接触と分離を繰り返すため、摩耗や腐食が起こりやすく、定期的な調整や交換が必要でした。また、エンジンの回転数が上がるにつれて、接点の開閉速度が追いつかなくなり、点火のタイミングがずれてしまうという問題もありました。これらの欠点を克服するために開発されたのが、電子制御式点火装置です。電子制御式は機械的な接点を持たないため、摩耗や腐食の心配がなく、高回転時でも正確な点火タイミングを維持できます。

現代の自動車においては、電子制御式点火装置が当たり前となり、接点式点火装置を見る機会は少なくなりました。しかし、かつて自動車の心臓部を支えていた接点式点火装置の技術は、機械式点火装置の時代を象徴する重要な技術として、自動車の歴史に深く刻まれています。

項目 接点式点火装置 電子制御式点火装置
点火方式 機械式 (ディストリビューター、接点、カム) 電子制御式
仕組み カムが接点を開閉 → 点火コイルへの電流断続 → 高電圧発生 → 点火プラグへ 電子制御で正確な点火タイミングを制御
利点 構造が単純、整備が容易、頑丈 摩耗・腐食なし、高回転でも正確な点火、メンテナンスフリー
欠点 接点の摩耗・腐食、定期的な調整・交換が必要、高回転時の点火タイミングのずれ なし

仕組み

仕組み

自動車の心臓部である原動機を動かすには、適切な時期に混合気に点火する必要があります。その点火装置の核心とも言えるのが、分配器です。この分配器は、まるで精密な時計仕掛けのように、様々な部品が組み合わさり、正確な動作を刻みます。分配器の中心には、原動機の回転と連動して回る回転子があります。この回転子には、出っ張りが設けられており、この出っ張りが遮断器腕を押し上げます。遮断器腕の先端には接点があり、回転子の出っ張りによって遮断器腕が押し上げられると、この接点が離れます。

この接点が離れる瞬間が、点火の引き金となります。接点が離れると、点火コイルに蓄えられていた高電圧が解放されます。この高電圧は、分配器内部にある回転板を通り、適切な時期に各々の燃焼室にある点火栓へと送られます。こうして、燃焼室内の混合気に点火するための火花が飛び、原動機が力強く動きます。

さらに、この分配器は点火時期を進める装置も備えています。原動機の回転数が上がると、点火時期を早める必要があります。従来の機械式の装置では、この点火時期の調整も機械仕掛けで行っていました。回転子の動きに合わせて、機械的な仕組みによって点火時期を進めることで、原動機の回転数に最適な点火時期を実現していました。この精巧な仕組みが、原動機の滑らかで力強い動きを支えているのです。

利点

利点

接点式点火装置は、その単純な構造ゆえに、いくつかの大きな利点を持っていました。まず、整備や修理が容易だったことが挙げられます。複雑な電子機器や計算機などを必要としないため、どこかがおかしくなった時でも、比較的簡単に原因を突き止め、直すことができました。これは、専門的な知識や高度な技術を持たない人でも、ある程度の整備を行うことができた、ということを意味します。

次に、当時の技術レベルにおいては、十分な信頼性と耐久性を備えていた点も重要です。故障が少ないということは、自動車を安心して利用できることに繋がります。長期間にわたって安定した性能を発揮してくれるため、交換の頻度も少なく、維持費用を抑えることができました。これは、現代の高度に電子化された装置と比べても遜色のない性能でした。

特に、電子部品がまだ高価で信頼性が低かった時代においては、この接点式点火装置のシンプルな構造は大きなメリットでした。電子部品は高価なだけでなく、故障した場合の修理も複雑で費用がかかりがちでした。それに比べて、接点式点火装置は部品点数が少なく、それぞれの部品も比較的安価で入手できたため、修理費用を大幅に抑えることができました。部品交換も容易であり、専門の整備工場に頼らずとも、自身で交換することも可能でした。

このように、接点式点火装置は、単純な構造、高い信頼性と耐久性、そして低い維持費用といった数々の利点を持っていました。特に、電子技術が未成熟だった時代においては、自動車の普及に大きく貢献した重要な技術と言えるでしょう。

メリット 詳細
整備性の良さ シンプルな構造のため、原因特定や修理が容易。専門知識不要で整備可能。
高い信頼性と耐久性 故障が少なく、長期間安定した性能を発揮。交換頻度も低く、維持費用を抑えることができた。
低い維持費用 部品点数が少なく、安価に入手可能。修理費用が安く、自身で交換も可能。

欠点

欠点

機械式の点火装置には、いくつかの避けられない短所がありました。まず、構造上、機械的な接点を多く使うため、部品の擦り減りや錆びによる劣化が必ず発生しました。これは、使用に伴う宿命的な問題で、定期的な手入れが欠かせませんでした。具体的には、接点部分の汚れ落としや調整、そして部品の交換といった作業が必要でした。部品交換には費用も発生するため、維持していく上で負担となっていました。

次に、点火時期の調整も機械式で行われていたため、部品の劣化や経年変化によってズレが生じやすかった点も問題でした。点火時期がずれると、エンジンの調子に悪影響を及ぼし、本来の性能を発揮できなくなる可能性がありました。最悪の場合、エンジンがかからなくなることもありました。これは、自動車の利用者にとって大きな悩みの種でした。

さらに、エンジンの回転数が上がった際の点火性能が、電子制御式と比べて劣ることも欠点でした。機械的な動作には限界があり、回転数が上がると点火のタイミングが正確に制御できないことがありました。電子制御式に比べると、高回転での点火は苦手分野だったと言えるでしょう。このため、高回転を多用するような運転状況では、エンジンの性能を十分に引き出すことができませんでした。

これらの欠点は、機械式の点火装置が抱える構造的な問題であり、当時の技術では克服が難しい課題でした。そのため、より性能の高い点火装置の開発が求められていました。

欠点 詳細 影響
部品の劣化 機械的接点の擦り減りや錆びによる劣化。定期的な手入れ(汚れ落とし、調整、部品交換)が必要。 維持費の負担
点火時期のズレ 機械式調整のため、部品の劣化や経年変化でズレが生じやすい。 エンジン不調、性能低下、エンジン始動不良
高回転時の点火性能の低下 機械的な動作の限界により、高回転時の点火タイミング制御が不正確。 高回転時のエンジン性能低下

衰退と現在

衰退と現在

かつて自動車のエンジンには、点火装置に接点を使う方式が広く使われていました。これは、回転する部品の動きに合わせて機械的に接点が繋がり、電気が流れて火花が飛ぶ仕組みです。しかし、この方式にはいくつかの欠点がありました。接点は使うほどに摩耗してしまうため、定期的な調整や交換が必要でした。また、エンジンの回転数が上がると、接点が正確に動作しにくくなり、点火のタイミングがずれてしまうこともありました。さらに、接点の開閉によって火花が発生するため、電波ノイズが発生しやすく、ラジオなどの電波機器に影響を与えることもありました。

このような接点式点火装置の欠点を克服するために、電子技術を応用した新しい点火装置が開発されました。これが電子制御式点火装置です。電子制御式では、コンピューターがエンジンの状態を監視し、最適なタイミングで点火するように制御します。そのため、接点式に比べて燃費が向上し、排気ガスもきれいになりました。また、機械的な接点が不要になったため、耐久性が向上し、メンテナンスの手間も大幅に減りました。これらの長所から、電子制御式点火装置は急速に普及し、現在ではほとんどの自動車で採用されています。

しかし、古い車や、趣味で古い車を維持している人たちの間では、今でも接点式点火装置が使われていることがあります。彼らにとって、接点式点火装置特有の作動音や、調整の手間さえもが、古い車の魅力の一部となっています。まるで生き物のような、細やかな調整を必要とする機械を操る喜びは、電子制御式では味わえない独特のものと言えるでしょう。こうして、接点式点火装置は、主流からは姿を消しつつも、一部の愛好家の間で生き続けているのです。

項目 接点式点火装置 電子制御式点火装置
点火方式 機械的な接点の開閉 コンピューター制御
燃費 低い 高い
排気ガス 汚い きれい
耐久性 低い 高い
メンテナンス 手間がかかる (定期的な調整・交換が必要) 手間がかからない
電波ノイズ 発生しやすい 発生しにくい
その他 作動音、調整の手間が一部の愛好家にとって魅力 現在主流の方式

まとめ

まとめ

かつて自動車のエンジンに火花を散らしていた装置、それが接点式点火装置です。これは、機械仕掛けで火花を飛ばす仕組みをもっていました。カムが回転すると、接点がくっついたり離れたりする動きを繰り返し、その動きに合わせて高電圧が発生し、火花が飛びます。この仕組みは、長い間多くの自動車で使われてきました。

この装置の優れた点は、構造が単純で壊れにくいことでした。当時の技術では、複雑な電子部品を作るのが難しかったため、単純な構造は大きな利点でした。部品が少ないので、修理も比較的簡単でした。また、特別な道具がなくても調整ができるので、どこでも整備することができました。

しかし、接点式点火装置には弱点もありました。接点は使ううちにすり減ってしまうため、定期的に交換や調整が必要でした。すり減った接点は、火花の強さを弱めてしまい、エンジンの調子を悪くすることもありました。また、回転する部品があるため、どうしても摩擦や振動が発生してしまい、これが装置の寿命を縮める原因にもなっていました。

その後、電子部品の技術が進歩すると、より精密で高性能な電子制御式点火装置が登場しました。電子制御式は、接点の摩耗や調整といった手間がなく、エンジンの性能も向上させることができました。そのため、現在ではほとんどの自動車で電子制御式が採用されています。

接点式点火装置は、今ではほとんど見かけることはなくなりましたが、古い自動車や、趣味で古い自動車を維持する人々の間では、今でも大切に扱われています。これらの自動車を動かすためには、接点式点火装置の知識や技術が欠かせません。接点式点火装置を知ることで、自動車技術の進歩をより深く理解することができます。かつて自動車の心臓部を支えていたこの技術は、自動車の歴史を語る上で、なくてはならない存在なのです。

項目 内容
名称 接点式点火装置
仕組み カムの回転により接点がくっついたり離れたりする動きを繰り返し、高電圧を発生させ火花を飛ばす。
メリット 構造が単純で壊れにくい、修理が比較的簡単、特別な道具がなくても調整が可能
デメリット 接点がすり減るため定期的な交換・調整が必要、火花の強さが弱まる、摩擦や振動で寿命が縮まる
後継技術 電子制御式点火装置
現状 古い自動車や趣味で古い自動車を維持する人々の間で使われている