クランクシャフトの曲げ振動とその対策
車のことを知りたい
クランクシャフトの曲げ振動って、クランクシャフトがムチのようにしなる現象のことですよね?でも、なぜそんなことが起こるのですか?
車の研究家
そうです。ムチのようにしなる、つまり曲がったり戻ったりを繰り返す現象ですね。ピストンに力が加わることでクランクシャフトに曲がる力が発生し、これが振動の引き金になります。また、クランクシャフト自身も重さや硬さがあるので、特定の振動数で振動しやすい性質があります。
車のことを知りたい
なるほど。つまり、ピストンからの力とクランクシャフト自身の振動しやすい性質が合わさって、大きな振動になることがあるんですね。でも、エンジンの回転数によって振動したりしなかったりするんですか?
車の研究家
その通りです。エンジンの回転数が変わると、ピストンからの力の周期も変わります。この周期がクランクシャフトの振動しやすい周期と一致すると、共振と呼ばれる大きな振動が発生します。この共振を避けるため、振動を抑える部品などを付けています。
クランクシャフトの曲げ振動とは。
車のエンジン部品である「クランクシャフト」の「曲げ振動」について説明します。クランクシャフトとは、エンジンのピストンの動きを回転力に変える軸のことです。この軸が、まるで鞭のようにある平面内で曲がって振動する現象を「曲げ振動」といいます。
ピストンは、燃焼ガスによる力や運動による力を受けます。これらの力がクランクシャフトを曲げようとする力を生み出し、軸を歪ませます。これが曲げ振動の始まりです。
クランクシャフト自身にも重さや弾性があり、これらがバネと重りのような振動しやすい性質を持っています。この性質による振動の速さ(固有振動数)と、ピストンから伝わる力の振動の速さが一致、あるいは特定の関係になると、クランクシャフトの曲げ振動が激しくなります。
一般的に、この曲げ振動の速さは、軸のねじれ振動の速さよりも速いです。特に、直列4気筒エンジンでは、クランクシャフトの部品配置の関係で、ある平面方向の曲げ振動が起こりやすくなっています。
また、クランクシャフトが長くなると、曲げやねじれに対する強さが弱くなり、振動しやすくなります(固有振動数が低くなる)。エンジンが動いている時に、ピストンからの振動とクランクシャフトの固有振動が一致、あるいは特定の関係になると、非常に激しい振動が発生し、エンジンが壊れる可能性があります。
このような激しい振動を抑えるために、「複合式ダイナミックダンパー」という部品が使われています。
曲げ振動とは
回転運動を動力源とする乗り物には、ほぼ必ず動力発生装置から回転力を伝えるための軸が備わっています。この軸は、一般的に「回し軸」と呼ばれ、動力発生装置の回転力をタイヤなどの駆動部分へと伝達する重要な役割を担っています。しかし、この回し軸は、回転中に様々な力を受け、まるで鞭がしなるように曲がったり、たわんだりする現象が発生します。これが「曲げ振動」です。回し軸の曲げ振動は、動力発生装置のピストン運動や、回し軸自身の回転によって発生する力によって引き起こされます。ピストンが上下に動くたびに、その力は回し軸を介して伝えられます。同時に、回し軸自身の回転によっても力が発生します。これらの力が組み合わさって、回し軸を曲げる方向の力が発生し、回転と共に力が繰り返し加わることで振動が発生するのです。この振動は、回転数が一定の値になると特に大きくなることがあります。これは「共振」と呼ばれる現象で、ちょうどブランコを漕ぐように、タイミング良く力が加わることで振動が増幅されるのです。ブランコをタイミングよく押すと大きく揺れるのと同じように、回し軸の回転数と振動の周期が一致すると、共振が発生し振動が大きくなります。この共振状態では、回し軸にかかる負担が非常に大きくなり、最悪の場合は回し軸が折損してしまうこともあります。回し軸の折損は、乗り物の走行に重大な支障をきたすだけでなく、大きな事故につながる可能性もあります。そのため、乗り物の設計段階では、この曲げ振動をいかに抑えるかが重要な課題となります。回し軸の形状や材質を工夫したり、振動を吸収する部品を追加するなど、様々な対策が施されています。これにより、回し軸の耐久性を高め、安全で快適な走行を実現しています。
振動の原因
車の運転中、不快な揺れを感じたことはありませんか?車体の振動は様々な要因で起こりますが、エンジン内部の部品である回転軸の歪みによる振動は、特に注意が必要です。この回転軸は、エンジンの力をタイヤに伝える重要な役割を担っています。
回転軸の歪みによる振動は、主に二つの力によって引き起こされます。一つ目は、ピストン運動による力です。エンジン内部では、ピストンが上下に激しく動いていますが、このピストンの動きは、回転軸に接続された棒を通して回転運動に変換されます。この変換の過程で、回転軸を歪ませようとする力が発生するのです。
二つ目は、回転軸自身の回転による力です。回転軸が高速で回転すると、遠心力が発生します。この遠心力は、回転軸を外側に引っ張るように作用し、これもまた回転軸を歪ませる原因となります。
これらの二つの力が、回転軸の持つ固有の振動数と一致すると、共振と呼ばれる現象が発生します。共振とは、物体が特定の振動数で激しく振動する現象のことです。ブランコを想像してみてください。タイミングよく力を加えると、ブランコは大きく揺れますよね?これと同じように、回転軸も特定の振動数で力が加わると、振動が大幅に増幅されてしまうのです。
回転軸の歪みによる振動は、車の乗り心地を悪くするだけでなく、エンジン全体の寿命を縮めることにも繋がります。日頃から車の状態に気を配り、異変を感じたら早めに整備工場で点検を受けるようにしましょう。
固有振動数
あらゆる物は、それぞれ固有の揺れやすさを持っています。これを固有振動数と言います。この揺れやすさは、物の形、材料、大きさなどによって決まります。例えば、太鼓を想像してみてください。小さな太鼓は高い音で振動し、大きな太鼓は低い音で振動します。これは、太鼓の大きさによって固有振動数が異なるからです。
車のエンジン内部にあるクランクシャフトも、固有振動数を持っています。クランクシャフトは、エンジンのピストン運動を回転運動に変換する重要な部品です。このクランクシャフトも、その形や大きさ、材質によって、特定の振動数で揺れやすい性質を持っています。
エンジンが作動すると、ピストンの上下運動や爆発力によって、様々な振動が発生します。これらの振動の振動数が、クランクシャフトの固有振動数と一致すると、共振という現象が起こります。共振とは、物体が固有振動数と同じ振動数の力を受けると、振動の幅が急激に大きくなる現象です。ブランコを漕ぐ時、タイミング良く力を加えると、ブランコの揺れが大きくなるのも共振の一種です。
クランクシャフトで共振が発生すると、振動の幅が大きくなり、クランクシャフトに大きな負担がかかります。最悪の場合、クランクシャフトが破損してしまうこともあります。エンジンの回転数は変化するため、様々な振動が発生します。そのため、エンジンの設計段階では、様々な回転数で発生する振動がクランクシャフトの固有振動数と一致しないように、細心の注意が払われています。
クランクシャフトの形状を工夫したり、材質を調整することで固有振動数を変化させることができます。また、ダンパーと呼ばれる振動吸収装置を取り付けることで、共振による振動の拡大を抑える工夫もされています。これらの工夫によって、クランクシャフトの共振を防ぎ、エンジンの耐久性を高めているのです。
項目 | 説明 |
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固有振動数 | あらゆる物が持つ固有の揺れやすさ。物の形、材料、大きさなどによって決まる。 |
クランクシャフトの固有振動数 | クランクシャフトも固有振動数を持つ。形状、大きさ、材質によって決まる。 |
共振 | 物体が固有振動数と同じ振動数の力を受けると、振動の幅が急激に大きくなる現象。 |
クランクシャフトの共振 | エンジンの振動とクランクシャフトの固有振動数が一致すると発生。クランクシャフトに大きな負担がかかり、破損する可能性もある。 |
共振対策 | クランクシャフトの形状や材質の調整、ダンパーの取り付けなど。 |
直列4気筒エンジンの場合
直列4気筒エンジンは、その名の通り、4つの筒が一直線に並んだ構造です。このシンプルな構造は、製造コストの低減や搭載スペースの縮小に大きく貢献していますが、一方で振動に関する課題も抱えています。直列4気筒エンジンは、他のエンジン形式と比べて、クランクシャフトの曲げ振動が発生しやすいのです。
この振動は、エンジンの回転運動から生じるもので、4つのピストンが上下に動く際に発生する力が原因となっています。直列に配置されたピストンは、同じ方向に力が加わりやすく、その結果、クランクシャフトに負担がかかり、曲げようとする力が発生します。特に、すべてのピストンが同時に同じ方向に動いた時、この曲げようとする力は最大となり、不快な振動や騒音、さらにはエンジン部品の損傷につながる可能性があります。
また、クランクシャフトの形状も振動発生に影響を与えます。クランクシャフトは、ピストンの往復運動を回転運動に変換する重要な部品で、クランクピンとクランクジャーナルという部分で構成されています。直列4気筒エンジンの場合、これらの部品が同一平面上に配置されているため、特定の方向への強度が低くなります。これは、特定方向からの力に対して、クランクシャフトが「たわみ」やすく、曲げ振動が発生しやすくなることを意味します。
このような特性を持つ直列4気筒エンジンでは、曲げ振動を効果的に抑制するための対策が重要となります。具体的には、クランクシャフトの材質や形状を工夫したり、バランスシャフトと呼ばれる部品を追加して振動を打ち消したりするなど、様々な手法が用いられています。これらの技術により、快適な乗り心地とエンジンの耐久性を両立させているのです。
項目 | 説明 |
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構造 | 4つの筒が一直線に並んだシンプルな構造。製造コストの低減、搭載スペースの縮小に貢献。 |
振動の課題 | クランクシャフトの曲げ振動が発生しやすい。 |
振動発生原因 | ピストンの往復運動時に発生する力がクランクシャフトに負担をかけ、曲げようとする力が発生。ピストンが同時に同じ方向に動くと力が最大になる。 |
振動の影響 | 不快な振動や騒音、エンジン部品の損傷。 |
クランクシャフト形状の影響 | クランクピンとクランクジャーナルが同一平面上に配置されているため、特定方向への強度が低く、曲げ振動が発生しやすい。 |
振動抑制対策 | クランクシャフトの材質や形状の工夫、バランスシャフトの追加など。 |
対策
回転する軸であるクランク軸は、エンジンの心臓部とも言える重要な部品ですが、その回転運動に伴い、曲げ振動という厄介な問題が発生することがあります。この曲げ振動は、エンジンの回転数が特定の値に達した時に共振を起こし、最悪の場合にはクランク軸の破損に繋がる恐れもあるため、様々な対策がとられています。
まず、動吸振器の設置が挙げられます。動吸振器は、クランク軸に取り付けられた小さな錘とばねで構成されており、クランク軸の固有振動数と反対の振動を発生させることで、あたかも振動を吸収するかのように振動を抑え込む働きをします。この動吸振器は、比較的簡単な構造ながら大きな効果を発揮するため、多くのエンジンで採用されています。
次に、クランク軸の形状の工夫も重要な対策です。クランク軸の断面形状を最適化することで、曲げに対する強さを高めることができます。例えば、断面を円形ではなく楕円形にすることで、同じ材料でもより高い曲げ剛性を得ることが可能です。また、クランクピンやクランクジャーナルと呼ばれる、クランク軸から突き出た回転軸の配置や寸法を調整することで、振動特性を変化させ、曲げ振動を抑制することも可能です。
さらに、エンジン全体の釣り合いも重要となります。ピストンや連接棒といった、クランク軸と連結する部品の重さを細かく調整することで、クランク軸にかかる力を均一化し、振動の発生を抑えることができます。これは、回転運動のバランスを整えることで、振動の発生源そのものを小さくするアプローチと言えるでしょう。
これらの対策は、単独で用いられることもありますが、複数を組み合わせることで、より効果的に曲げ振動を抑えることができます。エンジンの設計者は、これらの対策を適切に組み合わせ、エンジンの性能と耐久性を両立させる努力を続けています。
対策 | 説明 |
---|---|
動吸振器の設置 | クランク軸に取り付けられた錘とばねで、逆振動を発生させ振動を抑制 |
クランク軸の形状の工夫 | 断面形状(例:楕円形)の最適化やクランクピン、クランクジャーナルの配置・寸法調整により曲げ剛性向上と振動特性変更 |
エンジン全体の釣り合い | ピストン、連接棒の重量調整でクランク軸にかかる力を均一化し振動発生を抑制 |
複数対策の組み合わせ | 上記の対策を組み合わせることで相乗効果を発揮 |
まとめ
回転運動から力を生み出す機関の主要部品である軸は、滑らかに回転しているように見えても、実際には微細な振動を常に繰り返しています。この軸の振動の中でも、曲げ方向に発生する振動は「曲げ振動」と呼ばれ、機関にとって重大な問題を引き起こす可能性があります。
曲げ振動は、機関の回転速度の変化に伴い大きさが変化します。そして、特定の回転速度に達すると、振動が急激に増幅する現象、「共振」が発生します。この共振状態では、軸に非常に大きな力が加わり、最悪の場合、軸が折損してしまうこともあります。このような事態を避けるため、機関の設計段階から曲げ振動への対策を綿密に施す必要があります。
曲げ振動を抑える方法の一つとして、「動吸振器」の設置が挙げられます。これは、軸に小さな錘を取り付け、軸の振動を吸収する仕組みです。錘の重さや取り付け位置を調整することで、特定の回転速度における振動を効果的に抑制できます。また、軸自体の形状を工夫することも有効な手段です。軸の太さや形状を最適化することで、振動しにくい構造を実現できます。
これらの対策は単独で用いられるだけでなく、組み合わせて効果を高めることも可能です。例えば、動吸振器の設置と軸形状の最適化を組み合わせることで、より広範囲の回転速度で振動を抑制できます。
近年では、計算機の性能向上により、設計段階で振動の特性を精密に予測する技術が確立されてきました。これにより、様々な運転条件における振動を事前に把握し、最適な対策を施すことが可能となっています。この技術の進歩は、より高性能で信頼性の高い機関の開発に大きく貢献しています。
問題点 | 発生原因 | 対策 |
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軸の曲げ振動による共振 | 回転速度の変化に伴う振動の増幅、特定回転速度での共振発生 |
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近年は、設計段階で振動特性を精密に予測する技術が確立され、最適な対策が可能に |