進化する点火コイル:開磁路鉄心型の解説
車のことを知りたい
先生、『開磁路鉄心型点火コイル』って、鉄の心がループじゃなくて棒状って書いてあるけど、どうしてループ状にしないんですか?ループの方が効率がいいんですよね?
車の研究家
そうだね、ループ状、つまり閉磁路の方が磁力が漏れにくく効率はいいんだ。でも、棒状にすることで、点火コイルを細長く作ることができる。これは、DOHCエンジンの狭いプラグホールの中にコイルを入れるのに都合がいいんだよ。
車のことを知りたい
なるほど。でも、効率が悪くなるのは大丈夫なんですか?
車の研究家
確かに効率は少し下がるけど、装着性の向上というメリットの方が大きい場合もあるんだ。それに、最近では棒状の鉄心の周りを鉄の筒で覆って、閉磁路に近づけることで効率を上げたものもあるんだよ。
開磁路鉄心型点火コイルとは。
車の点火プラグに火花を飛ばす部品である『開磁路鉄心型点火コイル』について説明します。この点火コイルは、鉄の芯を輪っか状ではなく棒状にして、その周りに一次コイルと二次コイルを巻き付けて作られています。芯を輪っか状にする『閉磁路』に比べると、磁力が流れにくいため効率は下がりますが、設置しやすいという利点があります。そのため、このタイプの点火コイルが広く使われるようになりました。この棒状の構造のおかげで、DOHCエンジンという形式のエンジンのプラグホールという狭い場所に収まるように、点火コイルを棒状にすることもできるようになりました。さらに、棒状のコイルの外側を鉄の筒で覆って、磁力があまり漏れないようにすることで、効率を向上させた棒状の点火コイルも登場しました。
点火コイルの役割
車は、ガソリンと空気を混ぜ合わせたものに火花を飛ばしてエンジンを動かしています。この火花を飛ばすために必要な高い電圧を作るのが点火コイルの役割です。点火コイルは、エンジンの心臓部とも言える点火プラグに電気を送るための変圧器のような働きをしています。家庭で使われている電気よりもはるかに高い電圧を作り出すことで、確実に混合気に火花を飛ばし、エンジンの力強い動きを生み出します。
点火コイルは、大きく分けて一次コイルと二次コイル、鉄心と呼ばれる部品からできています。一次コイルに電気が流れると、鉄心の中に磁力が発生します。この一次コイルへの電気が遮断されると、磁力が急激に変化し、二次コイルに高い電圧が発生する仕組みです。この高い電圧が点火プラグに送られ、火花が飛び、混合気に点火します。
近年の自動車技術の進歩により、点火コイルも小型化、高性能化が進んでいます。かつては、一つの点火コイルで複数の点火プラグを制御する方式が主流でしたが、現在は一つの点火プラグに一つの点火コイルを対応させるダイレクトイグニッション方式が主流となっています。この方式は、より精密な点火時期の制御を可能にし、エンジンの出力向上や燃費の改善、排気ガスの浄化に貢献しています。
安定した点火は、燃費の向上や排気ガスの浄化に大きく関わっています。点火コイルが正常に働かないと、エンジンの出力低下や燃費の悪化、排気ガスの増加につながる可能性があります。そのため、点火コイルは自動車にとって非常に重要な部品と言えるでしょう。定期的な点検と適切な交換が、車の性能を維持するために重要です。
開磁路鉄心型の特徴
開磁路鉄心型点火装置の特徴は、鉄心を輪の形ではなく棒状にしているところにあります。この棒状の鉄心は、磁気の通り道となる「磁路」が閉じていないため、「開磁路」と呼ばれています。従来広く使われていた閉磁路鉄心型では、鉄心を輪のようにすることで磁気の通り道を閉じ、磁力を効率よくコイルに集中させていました。しかし、開磁路鉄心型は磁路が閉じられていないため、どうしても磁力が外に漏れやすくなってしまいます。磁力が漏れるということは、それだけエネルギーの損失が大きくなることを意味します。一見すると欠点のように思えるこの構造ですが、実は大きな利点をもたらします。それは小型化と軽量化です。閉磁路型に比べて開磁路型は構造が単純なため、装置全体を小さく軽くすることが可能になりました。
近年の自動車は、エンジンルームの小型化が進んでいます。より多くの機能を小さな空間に詰め込む必要があり、点火装置も例外ではありません。開磁路鉄心型点火装置の小型軽量という特徴は、この流れにまさに合致しており、様々な車種への搭載を容易にしています。特に、高性能エンジンである二重カム軸式エンジン(ツインカムエンジン)では、この特徴が際立ちます。二重カム軸式エンジンは、空気を取り込む吸気バルブと排気ガスを出す排気バルブをそれぞれ別々に制御することで、エンジンの高回転化と高出力を実現しています。しかし、この機構のために点火栓を取り付ける穴、つまり点火栓穴が小さくなってしまいます。限られたスペースに点火装置を収めるためには、小型軽量な開磁路鉄心型点火装置が不可欠なのです。このように、開磁路鉄心型点火装置は、エネルギー損失というデメリットを差し引いても、小型軽量というメリットによって、現代の自動車に広く採用されています。
項目 | 開磁路鉄心型点火装置 | 閉磁路鉄心型点火装置 |
---|---|---|
鉄心形状 | 棒状 | 輪状 |
磁路 | 開磁路(磁力が漏れやすい) | 閉磁路(磁力が漏れにくい) |
エネルギー効率 | 損失が大きい | 効率が良い |
サイズ・重量 | 小型軽量 | 大型重量 |
構造 | 単純 | 複雑 |
メリット | 小型軽量化、省スペース化 | 高エネルギー効率 |
デメリット | エネルギー損失 | 大型重量 |
適応エンジン | 二重カム軸式エンジンなど、点火栓穴が小さいエンジン | – |
閉磁路型との比較
点火装置は、ガソリンエンジンにとって無くてはならない重要な部品です。混合気に点火するための火花を生み出す点火コイルには、大きく分けて閉磁路型と開磁路型があります。この二つの型は、それぞれ異なる特徴を持っています。
閉磁路型点火コイルは、その名の通り、磁石の通り道である鉄心が輪のように閉じた形をしています。この輪のような構造のおかげで、磁力が外部に漏れるのを最小限に抑え込むことができます。磁力が効率よく利用されるため、強力な火花を発生させることが可能です。つまり、エンジンの燃焼効率を高め、より大きな力を引き出すことに繋がります。しかし、この閉じた鉄心であるが故にコイル全体がどうしても大きくなってしまいます。そのため、限られたエンジンルーム内では設置場所の自由度が低いという難点があります。
一方、開磁路型点火コイルは鉄心がU字型で、磁気の通り道が途中で途切れています。そのため、閉磁路型に比べると小型軽量であるという利点があります。エンジンルーム内の様々な場所に設置することができ、設計の自由度を高めることができます。しかし、開いた鉄心の構造であるが故に、磁力の一部が外部に漏れてしまいます。結果として、閉磁路型に比べて火花のエネルギーが小さくなる傾向にあります。
このように、閉磁路型と開磁路型点火コイルは、それぞれに長所と短所を持っています。強力な火花が必要な高性能エンジンには閉磁路型が、省スペース化が求められる小型車には開磁路型が採用されるなど、車種やエンジンの特性、設計思想に合わせて最適なタイプが選ばれています。
項目 | 閉磁路型 | 開磁路型 |
---|---|---|
鉄心形状 | 輪状(閉) | U字型(開) |
磁力 | 外部漏れが少ない | 一部外部漏れ |
火花 | 強力 | 閉磁路型より弱い |
サイズ | 大きい | 小型軽量 |
設置場所 | 自由度低い | 自由度高い |
適用エンジン | 高性能エンジン | 小型車 |
開磁路鉄心型の進化
開磁路鉄心型の点火装置は、その名の通り磁気の通り道が途中で途切れた構造をしています。この構造は、点火プラグに近いところに配置しやすいという利点がある一方、磁力が外部に漏れやすく、点火に必要なエネルギー効率が低いという欠点がありました。
初期の開磁路鉄心型点火装置は、閉磁路鉄心型と比べてエネルギーの損失が大きいため、強い点火エネルギーを生み出すことが難しかったのです。そのため、安定した燃焼を確保するために、点火装置自体を大きくしたり、点火時間を長くするなどの工夫が必要でした。しかし、これらの工夫は装置全体の大きさを増大させ、エンジンの設計自由度を制限する要因にもなっていました。
近年、このエネルギー効率の問題を解決するために、鉄製の筒状カバーで点火装置を覆う、スティック型の点火装置が開発されました。このカバーは、磁力の通り道となる鉄心の一部として機能し、磁力の漏れを大幅に抑制します。この構造により、開磁路鉄心型でありながら、閉磁路鉄心型に近い高いエネルギー効率を実現することが可能となりました。
スティック型点火装置は、従来の開磁路鉄心型の利点である小型軽量という特徴を維持しつつ、エネルギー効率を向上させた点で画期的です。二つのカムシャフトを持つDOHCエンジンの狭い点火プラグの穴にも容易に取り付けることができます。また、高いエネルギー効率により、より強力な点火エネルギーを発生させることができるため、燃費の向上や排気ガスの浄化にも貢献します。
小型軽量で高効率という利点を兼ね備えたスティック型点火装置は、様々な種類の車への搭載が期待されています。今後、自動車の電動化が進む中でも、内燃機関を搭載する車においては、点火装置の進化が燃費向上や環境性能の向上に重要な役割を果たしていくでしょう。
点火装置の種類 | 特徴 | 利点 | 欠点 |
---|---|---|---|
開磁路鉄心型 | 磁気の通り道が途中で途切れた構造 | 点火プラグに近いところに配置しやすい | 磁力が外部に漏れやすく、点火に必要なエネルギー効率が低い |
閉磁路鉄心型 | 磁気の通り道が閉じた構造 | エネルギー効率が高い | – |
スティック型 (開磁路鉄心型) | 鉄製の筒状カバーで点火装置を覆う | 小型軽量、高効率(磁力の漏れを大幅に抑制) DOHCエンジンの狭い点火プラグ穴にも取り付けやすい 燃費向上、排ガス浄化に貢献 |
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将来の展望
車はこれから大きく変わろうとしています。今まではガソリンで走る車がほとんどでしたが、電気で走る車や、ガソリンと電気の両方で走る車が増えてきています。ガソリンで走る車はだんだん少なくなっていくでしょう。
しかし、世界にはまだたくさんのガソリン車が走っています。ですから、ガソリン車に欠かせない部品である点火コイルは、しばらくの間は必要とされ続けるでしょう。点火コイルは、ガソリンに火花を飛ばして爆発させる、エンジンの大切な部品です。
車は、燃費をよくしたり、排気ガスをきれいにしたりするために、いつも進化を続けています。点火コイルも例外ではなく、より良い性能のものへと進化していくでしょう。小さくて軽いのに、力強く、壊れにくい点火コイルが求められています。このような高性能な点火コイルは、これからの車の進化を支える重要な部品となることは間違いありません。
点火コイルの技術は、将来、他の分野でも役立つかもしれません。例えば、ガスコンロやボイラーなど、火を使う機器にも応用できる可能性があります。また、全く新しい分野で活用される可能性もあります。点火技術がどのように発展していくのか、これからも目が離せません。自動車の未来、そして点火技術の未来は、私達に明るい展望を見せてくれるでしょう。
車の変化 | ガソリン車から電気自動車、ハイブリッドカーへの移行 |
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ガソリン車の現状 | 依然として多数が走行しており、点火コイルは重要な部品 |
点火コイルの進化 | 小型化・軽量化・高出力化・高耐久化 |
点火コイル技術の将来 | ガスコンロ、ボイラーなど他分野への応用可能性 |