ポンピングロス低減の技術
車のことを知りたい
先生、「ポンピングロス」って、エンジンが空気を吸ったり吐いたりする時にエネルギーを使うって意味ですよね?でも、大きなエンジンって、小さなエンジンよりポンピングロスが大きいって、ちょっと変じゃないですか?
車の研究家
いいところに気がつきましたね。確かに、大きなエンジンはポンピングロスが大きくなる傾向があります。 小さなエンジンは少ない空気で済むので、吸ったり吐いたりするのも楽ですが、大きなエンジンはたくさんの空気を吸ったり吐いたりしないといけないので、より多くのエネルギーが必要になるんです。
車のことを知りたい
なるほど。でも、同じパワーを出すなら、大きなエンジンは回転数が少なくて済みますよね?それだと、ポンピングロスは少なくなるんじゃないですか?
車の研究家
その通り。同じパワーを出すなら、大きなエンジンは回転数が少なくて済みます。しかし、大きなエンジンはスロットルバルブをあまり開かないので、吸入負圧が大きくなってしまうんです。この吸入負圧が大きいことが、ポンピングロスを大きくする原因なんです。つまり、回転数は少ないけど吸入負圧が大きいので、結果的にポンピングロスが大きくなるんです。
ポンピングロスとは。
エンジンの働きで『ポンピングロス』と呼ばれるエネルギーの損失について説明します。エンジンは、空気を吸い込み、排気ガスを押し出すポンプのような動きをしています。この吸い込みと押し出しの動作にもエネルギーが必要で、これをポンピングロス、またはポンプ損失と言います。
吸い込む力が弱いほど、ポンピングロスは大きくなります。同じパワーを出す場合でも、大きなエンジンの車は、空気の吸い込み口をあまり開けなくても良いので、吸い込む力が強くなります。そのため、小さなエンジンよりもポンピングロスが大きくなります。
排気ガスの一部を吸気側に戻す仕組み(EGR)を使う場合は、空気の吸い込み口を大きく開けることができるので、吸い込む力が弱まり、ポンピングロスが小さくなります。
同様に、6つの気筒を持つエンジンで3つの気筒を停止させた場合、アクセルを踏んでパワーを保つため、吸い込む空気の通り道内の圧力が高くなるので、ポンピングロスは小さくなります。
ポンピングロスとは
自動車の心臓部であるエンジンは、ピストンという部品が上下に動くことで動力を生み出しています。このピストンの動きによって、エンジン内部の容積が変化し、空気を吸い込んだり、燃えカスを外に出したりしています。まるでポンプのように空気を吸入し、排気ガスを排出しているのです。このポンプのような働きをする際に、どうしてもエネルギーの損失が発生してしまいます。この損失をポンピングロスといいます。ポンピングロスはエンジンの力を弱め、燃費を悪くする原因となるため、自動車開発においては、いかにこのロスを少なくするかが重要な課題となっています。
エンジンが空気を吸い込むとき、吸気側の圧力が低いと、エンジンはより大きな力で空気を吸い込まなければなりません。これは、自転車のタイヤに空気を入れる場面を想像すると分かりやすいでしょう。タイヤの空気が少ない状態では、ポンプを押すのに大きな力が必要になります。同じように、エンジンも吸気側の圧力が低いほど、多くのエネルギーを使って空気を吸い込む必要があり、ポンピングロスが大きくなります。
反対に、排気ガスを出すとき、排気側の圧力が高いと、エンジンは大きな力で排気ガスを押し出さなければなりません。これは、風船の口を小さくして息を吐き出す様子に似ています。風船の中の圧力が高いほど、息を吐き出すのが大変になります。同様に、エンジンも排気側の圧力が高いほど、多くのエネルギーを使って排気ガスを押し出す必要があり、ポンピングロスが大きくなります。
このように、吸い込む空気の圧力と、吐き出す排気ガスの圧力の差が大きいほど、ポンピングロスは大きくなります。この圧力差を小さくするために、様々な技術が開発されています。例えば、吸気側の圧力を高く保つためにターボチャージャーやスーパーチャージャーなどの過給機が使われたり、排気側の圧力を低くするために排気管の形状を工夫したりするなど、様々な方法でポンピングロスを減らす努力が続けられています。
排気量とポンピングロス
自動車の心臓部である原動機において、排気量とポンピングロスは切っても切れない関係にあります。ポンピングロスとは、ピストンが混合気を吸い込む際にかかる抵抗損失のことで、原動機の出力や燃費に大きく影響します。
一般的に、排気量が大きい原動機は、同じ出力を得るために必要な吸気弁の開度は小さくて済みます。これは、一度に多くの混合気を吸い込めるためです。しかし、吸気弁の開度が小さいと、吸気側の圧力が大気圧より低くなり、ピストンが混合気を吸い込む際に大きな抵抗が生じます。これがポンピングロスを増大させる要因となります。まるで細いストローでジュースを飲むように、たくさんのジュースを飲むにはより大きな力を必要とするのと同じです。
反対に、排気量が小さい原動機は、必要な出力を得るために吸気弁の開度を大きく開ける必要があります。吸気弁の開度が大きいと、吸気側の圧力は大気圧に近づき、ピストンにかかる抵抗は小さくなります。そのため、ポンピングロスは小さくなります。太いストローでジュースを飲むように、楽にたくさんのジュースを飲むことができます。
しかし、排気量が小さい原動機は、同じ出力を得るために高い回転数まで回す必要があります。高回転で原動機を回すと、摩擦や空気抵抗など、他の様々なエネルギー損失が増加する可能性があります。さらに、高回転まで回すための部品の強度や耐久性も考慮する必要があります。
このように、原動機の排気量とポンピングロスの関係は単純ではなく、様々な要因が複雑に絡み合っています。出力、燃費、耐久性、製造費用など、様々な要素を考慮しながら、最適な排気量とポンピングロスのバランスを見つけることが、高性能な自動車を開発する上で非常に重要です。
排気量 | 吸気弁開度 | ポンピングロス | 回転数 | その他損失 |
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大 | 小 | 大 | 低 | 小 |
小 | 大 | 小 | 高 | 大 |
排気再循環(EGR)の影響
排気再循環、略して排気還流は、排出ガスの一部を吸気側に戻すことで、窒素酸化物の排出量を減らす技術です。窒素酸化物は、高温高圧な環境で空気中の窒素と酸素が化合して生成されるため、燃焼温度を下げることが生成を抑える鍵となります。排気還流は、排気ガス中に含まれる不活性ガスを吸気に混ぜ込むことで燃焼温度を下げ、窒素酸化物の生成を抑制する効果があります。
排気還流によって吸気ガス量が増えるため、同じ出力を得るために必要な空気の吸入量を調整する弁、いわゆる絞り弁の開き具合を大きくすることができます。絞り弁の開き具合が大きくなると、吸気側の圧力が高くなります。エンジンはピストンで空気を吸い込む際に抵抗を受けていますが、この抵抗による損失をポンピングロスと言います。吸気側の圧力が高くなると、ピストンの吸気行程における抵抗が減り、ポンピングロスが小さくなるため、燃費の向上に繋がるのです。
一方で、排気還流にはデメリットも存在します。排気ガスには燃え残りの粒子状物質が含まれており、これらが吸気側に戻されることでエンジンの内部が汚れる可能性があります。また、燃焼温度が下がることで燃焼が不安定になり、出力の低下や燃費の悪化を招く場合もあります。これらのデメリットを抑制するために、排気還流を行う量を細かく調整する制御装置が備えられています。 排気ガスの温度、エンジン回転数、アクセルの踏み込み量など、様々な運転状況に応じて排気還流の量を最適化することで、窒素酸化物の排出量を抑えつつ、燃費の向上も実現しています。
つまり、排気還流は排気ガスの浄化だけでなく、燃費向上にも貢献する技術と言えるでしょう。しかし、制御が複雑で、適切なメンテナンスが必要となる技術でもあります。
項目 | 内容 |
---|---|
名称 | 排気再循環 (排気還流/EGR) |
目的 | 窒素酸化物(NOx)排出量削減、燃費向上 |
原理 | 排気ガスの一部を吸気側に戻す |
NOx削減メカニズム |
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燃費向上メカニズム |
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デメリット |
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制御 | 排気ガスの温度、エンジン回転数、アクセルの踏み込み量に応じてEGR量を最適化 |
気筒休止の仕組み
車の燃費を良くする技術の一つに、気筒休止という工夫があります。これは、状況に応じてエンジンの燃焼室の一部を停止させる仕組みです。例えば、6つの燃焼室を持つエンジンであれば、道路が空いていて加速する必要がない時などは、そのうち3つだけを使うように切り替えます。そして、力強く加速したい時などには、6つ全てを使うように戻します。
では、どうやって燃焼室を停止させるのでしょうか? いくつかの方法がありますが、代表的なのは、吸気バルブと排気バルブの動きを制御するやり方です。バルブとは、空気や排気ガスの通り道を開け閉めする扉のような部品です。このバルブを閉じたままでいることで、燃焼室への空気の供給と排気ガスの排出を止め、実質的に燃焼室を停止させているのです。
気筒休止には、いくつかの利点があります。まず、燃費が向上することが挙げられます。これは、使っていない燃焼室での燃料消費がなくなるためです。特に、街中での走行のように、停止と発進を繰り返す状況や、一定の速度で走る状況では、大きな効果を発揮します。次に、排気ガスが減ることもメリットです。燃料の消費が減れば、当然、排出される排気ガスも少なくなります。
一方で、気筒休止によるデメリットもあります。停止している気筒と作動している気筒では、どうしても振動に差が出てしまいます。この振動を乗員が不快に感じる可能性があります。そのため、各自動車メーカーは、この振動をいかに抑えるか、様々な工夫を凝らしています。例えば、エンジンマウントの改良や、車体の構造を見直すことで、振動を吸収しやすくしています。また、気筒休止の切り替えをスムーズに行う制御システムの開発も進められています。これにより、乗員が気筒休止の切り替えに気づきにくく、快適な乗り心地を実現しています。
項目 | 内容 |
---|---|
気筒休止とは | 状況に応じてエンジンの燃焼室の一部を停止させる仕組み |
方法 | 吸気バルブと排気バルブの動きを制御する |
利点 |
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デメリット | 停止している気筒と作動している気筒で振動に差が出る |
デメリットへの対策 |
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可変バルブタイミング機構
エンジンの吸気と排気の効率を高める技術の一つに、吸排気バルブの開閉タイミングを最適化する技術があります。これは、可変バルブタイミング機構と呼ばれ、エンジンの回転数や負荷といった運転状況に合わせて、バルブの開閉タイミングを調整する仕組みです。
エンジンの吸気行程では、ピストンが下降することでシリンダー内に空気を吸い込みますが、この際、吸気バルブが開いている必要があります。しかし、バルブが開いている時間が長すぎると、せっかく吸い込んだ空気が排気行程で逆流してしまうことがあります。逆に、バルブが開いている時間が短すぎると、十分な量の空気を吸い込めません。そこで、可変バルブタイミング機構によってバルブの開閉タイミングを最適化することで、吸気効率を高めることができます。
同様に、排気行程では、燃焼後のガスをシリンダー外に排出するために排気バルブを開きます。バルブの開閉タイミングが適切でないと、燃焼ガスがシリンダー内に残ってしまい、次の吸気行程で吸い込める空気の量が減ってしまいます。可変バルブタイミング機構は、排気バルブの開閉タイミングも最適化することで、排気効率を高めます。
これらの吸排気効率の向上は、ポンピングロスと呼ばれるエンジンの損失を低減することに繋がります。ポンピングロスとは、ピストンが空気を吸い込んだり、排気ガスを押し出したりする際に生じる抵抗のことです。吸排気効率を高めることで、この抵抗を小さくすることができます。
近年の技術革新により、より精密なバルブ制御を行うことで、ポンピングロスを極限まで抑える技術も開発されています。これにより、エンジンの出力向上と燃費向上が実現されています。この技術は、環境保護の観点からも重要な役割を果たしています。
機構 | 目的 | 効果 | 詳細 |
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可変バルブタイミング機構 | 吸排気バルブの開閉タイミングを最適化 | 吸気効率向上 |
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排気効率向上 |
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ポンピングロス低減 | 出力向上と燃費向上 | ピストンが空気を吸い込んだり、排気ガスを押し出したりする際の抵抗を小さくする |
今後の展望
自動車の将来を考える時、避けて通れないのが燃費向上です。環境への配慮が世界的に高まる中、自動車メーカー各社は燃費を良くする技術開発にしのぎを削っています。その中で、エンジンの吸排気抵抗、つまりポンピングロスを減らすことが大きな課題となっています。
ポンピングロスを小さくすれば、エンジンの仕事量が減り、結果として燃費が良くなります。このロスを減らすための技術開発は、様々な方向から進められています。例えば、エンジンの吸排気バルブをより精密に制御する技術。従来の技術よりも更に緻密に制御することで、エンジンの状態に合わせて吸排気の効率を高め、ポンピングロスを減らすことが期待できます。
また、一部の気筒の動きを止める気筒休止技術も進化を続けています。エンジンの負荷が小さい時には、必要な数だけの気筒で動かすことで、燃料の無駄な消費を抑え、燃費を向上させることができます。状況に応じて、必要な気筒数だけを効率的に動かす制御技術の向上が重要になります。
さらに、燃料を燃やす方法そのものを見直すことで、ポンピングロスを減らす研究も進んでいます。より効率的に燃料を燃焼させ、エネルギーロスを最小限にすることで、燃費を飛躍的に向上させる可能性を秘めています。これらの技術開発に加えて、電気で動く自動車や、電気とエンジンの両方を組み合わせた自動車の普及も加速しています。
これらの自動車は、エンジンを使う場面を減らす、あるいは全く使わないことで、燃費向上に貢献しています。このように、様々な技術革新と新しい動力源の登場によって、自動車業界全体で燃費向上の取り組みが加速しています。地球環境を守るためにも、より燃費の良い自動車の開発は今後ますます重要になっていくでしょう。
燃費向上技術 | 概要 |
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エンジンの吸排気抵抗(ポンピングロス)低減 |
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新しい動力源 |
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