忘れられた点火調整:ドエルアングル

忘れられた点火調整:ドエルアングル

車のことを知りたい

先生、「ドエルアングル」って言葉、車関係の本で読んだんですけど、よく分かりません。教えて下さい。

車の研究家

なるほど。「ドエルアングル」は、昔の車の点火装置の一部である「断続器」という部品に関係している言葉だね。断続器は、エンジンを動かすために必要な火花を飛ばすタイミングを調節する部品で、その部品が開いている角度のことを「ドエルアングル」と言うんだよ。

車のことを知りたい

断続器が開いている角度…ですか?なぜその角度が大事なんですか?

車の研究家

良い質問だね。この角度が適切でないと、火花が弱くなったり、エンジンがうまくかからなくなったりするんだ。だから、昔はエンジンの調子を良くするために、この角度を調整する必要があったんだよ。今は電子制御で火花を飛ばすから、断続器もドエルアングルもあまり聞かなくなったけどね。

ドエルアングルとは。

昔の車のエンジンで、点火装置の一部に『 dwellアングル』(ドエルアングル)というものがありました。これは、エンジンの回転に合わせて電気のスイッチの役目をする部品(断続器)が、電気を通さない状態になっている角度のことです。エンジンのクランクシャフトが回る速さの半分で回る、ディストリビューターという部品の中にカムというものがあり、カムによって断続器の接点が閉じたり開いたりします。この接点が離れている間の角度がドエルアングルです。例えば54度のように、適切な角度になるように調整されていました。火花は、この接点が離れる瞬間に飛びます。近年の車は電子制御になり、この仕組みは使われなくなりました。

点火装置の心臓部

点火装置の心臓部

車は、ガソリンと空気を混ぜたものに火をつけることで動力を生み出します。その火をつけるタイミングを細かく調整するのが点火装置です。昔は、この点火装置の重要な調整要素として「 dwell 角」(ドエル角)というものがありました。dwell 角とは、点火装置の中にある部品(ポイント)が接触している時間のことで、この時間が適切でないと、エンジンがスムーズに動かなかったり、十分な力が得られなかったりしました。 dwell 角の調整は、機械式の分配器を使っていた時代のエンジンにとって、とても重要な作業でした。

点火装置の中心には、イグニッションコイルという部品があります。これは、電気をためて高い電圧に変える装置です。そして、分配器は、この高い電圧をそれぞれの気筒(エンジンの部屋)に順番に送る役割を担います。dwell 角は、このイグニッションコイルに電気をためる時間を決めていました。dwell 角が小さすぎると、イグニッションコイルに十分な電気がためられず、火花が弱くなってエンジンの力が弱くなります。反対に、dwell 角が大きすぎると、イグニッションコイルやポイントが過熱してしまい、故障の原因になります。

しかし、現代の車では、コンピューターを使った電子制御が主流となり、機械式の分配器やポイントはほとんど使われなくなりました。電子制御によって、dwell 角の調整も自動で行われるようになり、私たちがdwell 角について意識することはなくなりました。dwell 角という言葉を知る人は少なくなりましたが、かつてはエンジンの調子を整える上で欠かせない要素でした。エンジンの仕組みや歴史を理解する上で、dwell 角は重要な知識と言えるでしょう。点火装置の進化の歴史を知ることで、現在のエンジンの技術の素晴らしさをより深く理解することができます。

ドエル角 影響
小さい イグニッションコイルに十分な電気が貯まらず、火花が弱くなりエンジンの力が弱まる
大きい イグニッションコイルやポイントが過熱し、故障の原因となる
適切 エンジンがスムーズに動き、十分な力が得られる

現代の車: コンピューター制御によりドエル角の調整は自動化されている

断続器の役割

断続器の役割

車はエンジンを動かすために、ガソリンと空気の混合気に点火する必要があります。その点火を担うのが点火プラグですが、点火プラグに火花を飛ばすには高い電圧が必要です。この高い電圧を作り出すのが点火装置であり、断続器はその重要な部品の一つです。断続器は、電気を一時的に蓄える点火コイルへの電流の流れを制御する役割を担っています。

断続器の仕組みは、ちょうど家の照明のスイッチのようなものです。スイッチをオンにすると電気が流れ、オフにすると電気が流れなくなります。断続器も同じように、電流を流したり止めたりすることで点火コイルに電気を蓄えたり、放出させたりしています。具体的には、断続器内部には二つの接点があり、エンジンが回転するとカムによってこの接点が押し下げられ、離れたりくっついたりします。接点がくっついている時は、点火コイルに電流が流れ込み、電気が蓄えられます。そして、カムによって接点が離れる瞬間、蓄えられた電気が一気に高電圧に変換され、点火プラグへと送られて火花が飛びます。

この接点がくっついている時間、つまり点火コイルに電気が流れ込んでいる時間を角度で表したものがドエル角です。ドエル角はエンジンの回転数などによって変化しますが、適切なドエル角が保たれていないと、点火プラグに十分な火花が飛ばなかったり、点火装置が過熱して故障する可能性があります。そのため、断続器はエンジンの安定した動作に欠かせない部品と言えるでしょう。

部品 役割 動作 結果
点火プラグ 混合気に点火 高電圧による火花発生 エンジン始動
点火装置 高電圧生成 断続器による電流制御 点火プラグへの高電圧供給
断続器 点火コイルへの電流制御 接点の開閉による電流制御
(接点閉: 電流蓄積、接点開: 高電圧放電)
点火コイルへの適切な電流供給
点火コイル 電気を一時的に蓄える 断続器により電流が蓄積・放出 高電圧生成

ドエル角: 点火コイルに電気が流れ込んでいる時間(角度)。適切なドエル角でないと、点火プラグの不点火や点火装置の故障につながる

角度調整の重要性

角度調整の重要性

自動車の調子を保つ上で、部品の角度を正しく整えることは欠かせません。その中でも、かつては「 dwell 角」(滞留角)と呼ばれる点火装置に関わる調整が、エンジンの性能を大きく左右する重要な作業でした。

この滞留角は、点火装置の部品である「遮断器」(開閉器)が接触している時間の長さを角度で表したものです。この接触時間の長さによって、点火プラグに送られる電気の量が変わり、ひいてはエンジンの力強さや燃費に影響します。

自動車を製造した会社ごとに、最適な滞留角の値が決められています。この値は、エンジンの回転数や負荷に関わらず一定に保つ必要がありました。もし滞留角が小さすぎると、点火プラグに送られる電気が足りなくなり、エンジンがかかりにくくなったり、力が弱くなったりします。最悪の場合は、エンジンが全く動かなくなってしまうこともあります。

反対に、滞留角が大きすぎると、点火装置の部品である「点火コイル」に負担がかかり、熱を持ちすぎて壊れてしまうことがあります。また、遮断器の接点が早くすり減ってしまう原因にもなります。

滞留角の調整は、点火時期の調整と並んで、かつては自動車の定期点検で欠かせない項目でした。熟練した整備士が専用の機器を使って、正確に調整していました。近年では、電子制御化が進み、滞留角を自動的に調整する装置が搭載されている自動車がほとんどです。そのため、以前のように整備士が手作業で調整することは少なくなりましたが、滞留角の重要性は変わりません。電子制御装置が正常に作動しているかを確認することは、今でも自動車の点検整備において大切なことです。

項目 説明 影響
dwell 角(滞留角) 点火装置の遮断器が接触している時間の長さを角度で表したもの。点火プラグに送られる電気量を調整する。 エンジンの力強さ、燃費に影響
滞留角が小さい場合 点火プラグへの電気不足 → エンジンがかかりにくい、力が弱い、最悪の場合はエンジン停止 エンジン始動不良、出力低下
滞留角が大きい場合 点火コイルへの負担増加 → 過熱、故障、遮断器の接点の摩耗 点火コイルの故障、遮断器の摩耗
滞留角の調整 かつては定期点検の必須項目。現在は電子制御化により自動調整が主流。 電子制御装置の正常動作確認は重要

調整方法

調整方法

点火時期を適切に調整することは、エンジンの調子を保つ上で欠かせません。その調整方法の一つに、断続器の接点の間隔を調整することで点火時期を変える方法がありました。この接点の間隔によって決まる点火時期を示す角度を「ドエル角」と言い、このドエル角を調整することでエンジンの調子を整えていました。

ドエル角の調整は、専用の測定器を用いて行います。まず、エンジンの回転数を一定に保つことが重要です。回転数が変動すると正確な測定ができないため、安定した回転数を維持しなければなりません。そして、測定器を接続し、エンジンの点火時期を示すドエル角を測定します。測定値が規定値から外れている場合は、断続器の接点の間隔を調整することでドエル角を修正します。この調整は非常に繊細な作業で、僅かな調整ミスでもエンジンに悪影響を及ぼす可能性がありました。そのため、専門の機器を使いこなし、エンジンの仕組みを熟知した整備士でなければ、正確な調整を行うことは難しかったのです。

適切な工具と知識がなければ、調整ミスによってエンジンが不調になるばかりか、最悪の場合は故障に繋がる恐れもありました。そのため、ドエル角の調整は慎重に行う必要があったのです。近年では、電子制御化が進み、断続器を用いた点火時期調整を行う機会は少なくなってきました。しかし、旧式のエンジンを搭載した車では、今でもこの調整方法が用いられていることがあります。過去の技術を理解することは、現在の技術をより深く理解するためにも重要と言えるでしょう。

項目 内容
点火時期調整方法 断続器の接点の間隔調整(ドエル角調整)
ドエル角 接点の間隔で決まる点火時期を示す角度
ドエル角調整手順 1. エンジン回転数を一定に保つ
2. 測定器を接続しドエル角を測定
3. 規定値から外れている場合は、断続器の接点の間隔を調整
調整の難易度 非常に繊細な作業で、僅かなミスでエンジンに悪影響
調整の重要性 慎重に行う必要あり(不調や故障に繋がる恐れ)
現代の状況 電子制御化が進み、断続器を用いた調整は減少

電子制御化による変化

電子制御化による変化

1980年代頃から、自動車は大きな変化を遂げました。電子制御技術の進歩により、様々な部分がコンピューターで制御されるようになったのです。その中でも特に大きな変化の一つが、点火システムの進化です。かつては、機械式の部品である分配器がエンジンの点火時期を調整していました。分配器の中にある遮断器の開閉するタイミングを調整することで、点火時期を最適化していたのです。この調整角度のことを、滞留角と呼び、熟練した整備士はこの滞留角を調整することで、エンジンの調子を整えていました。しかし、電子制御化の波は、この点火システムにも大きな変化をもたらしました。

コンピューター制御による点火システムの登場により、機械式の分配器は姿を消し、滞留角を手動で調整する必要もなくなりました。コンピューターがエンジンの回転数や負荷などの様々な情報をセンサーから受け取り、最適な点火時期を自動的に計算し、点火プラグに点火信号を送るようになったのです。この電子制御化による点火時期の精密な制御は、エンジンの性能向上に大きく貢献しました。より効率的な燃料の燃焼を実現し、エンジンの出力向上と燃費の向上を両立させたのです。同時に、排気ガス中の有害物質の排出量も削減され、環境保護にも大きく貢献しました。

かつては、自動車整備において滞留角の調整は重要な作業の一つであり、整備士にとって必須の知識でした。しかし、電子制御化が進んだ現代の自動車では、滞留角という言葉を知る人は少なくなっています。もはや、調整する必要がないからです。それでも、電子制御化以前の時代に、滞留角の調整を通じてエンジンの性能を最大限に引き出していた整備士たちの技術と知識は、自動車の歴史において重要な役割を果たしたことは間違いありません。そして、その技術は、現代の高度な電子制御システムの開発基盤にも繋がっていると言えるでしょう。

時代 点火システム 調整 メリット デメリット
1980年代以前 機械式(分配器、遮断器) 滞留角の手動調整(熟練整備士) 調整の難しさ
1980年代以降 コンピューター制御(センサー、電子制御ユニット) 自動調整 出力向上、燃費向上、排ガス削減

過去の技術への理解

過去の技術への理解

機械式の分配器が使われていた時代の点火装置を理解するために、「閉鎖時間」という概念は重要です。これは、点火装置の部品である遮断器の接点が閉じている時間のことを指します。最近の自動車整備では直接触れる機会は少なくなりましたが、エンジンの歴史や発展を学ぶ上で、その仕組みを理解することは役に立ちます。

閉鎖時間とは、簡単に言うと、イグニッションコイルに電気をためる時間のことです。この時間が適切でないと、十分な電気がたまらず、エンジンの点火がうまくいきません。閉鎖時間はエンジンの回転数と深く関係しており、回転数が上がると閉鎖時間も短くなります。回転数が低いときは閉鎖時間が長く、十分な電気をためることができます。しかし回転数が高くなると、閉鎖時間が短くなり電気が十分にたまらなくなるため、点火が弱くなってしまいます。そこで、回転数に応じて閉鎖時間を自動的に調整する装置が必要になります。

昔の車には、この調整を行うために遠心力を利用した装置や、吸気圧を利用した装置などが搭載されていました。これらの装置により、エンジンの回転数に関係なく、常に適切な閉鎖時間が保たれ、安定した点火を可能にしていました。現代の車は電子制御になり、これらの機械的な装置は姿を消しました。しかし、過去の技術を理解することで、現在の電子制御の点火装置がいかに優れているかをより深く理解することができます。

自動車の技術は常に進化しています。今後も新しい技術が次々と現れるでしょう。しかし、過去の技術を学ぶことで、未来の技術開発のヒントが隠されているかもしれません。過去の技術を理解することは、単に古い知識を学ぶだけでなく、未来の技術を見通す目を養うことにもつながるのです。

項目 説明
閉鎖時間 点火装置の遮断器の接点が閉じている時間。イグニッションコイルに電気をためる時間。
閉鎖時間と回転数の関係 回転数が高いほど閉鎖時間は短くなる。
回転数と閉鎖時間の調整 回転数に応じて閉鎖時間を自動調整する装置が必要。
過去の調整装置の例 遠心力利用装置、吸気圧利用装置
現代の調整装置 電子制御
過去の技術を学ぶ意義 現在の技術の理解、未来の技術開発のヒント