エンジンの心臓部、バルブクリアランス
車のことを知りたい
先生、「バルブクリアランス」ってなんですか?難しそうです。
車の研究家
簡単に言うと、エンジンの部品であるバルブと、それを押す部品との間の隙間のことだよ。この隙間がないと、エンジンが熱くなった時に部品が膨張して、バルブがうまく動かなくなってしまうんだ。
車のことを知りたい
なるほど。でも、なんで隙間が必要なんですか?くっついていた方が良さそうに思えます。
車の研究家
いいところに気がついたね。エンジンは動いているととても熱くなる。金属は熱くなると膨張するから、隙間がないと、バルブが常に押された状態になってしまい、きちんと閉じなくなって、エンジンの調子が悪くなってしまうんだよ。だから、冷えている時に少し隙間を空けておく必要があるんだ。
バルブクリアランスとは。
エンジン部品の『バルブクリアランス』について説明します。バルブクリアランスとは、エンジンが熱くなった時に、バルブとシリンダーヘッドという部品が膨張するのを考えて、あらかじめ設けておく隙間のことです。
エンジンの種類によって、この隙間の位置は異なります。バルブを直接動かすタイプのエンジンでは、カムという部品の山の低い部分と、タペットという部品の間の隙間になります。ロッカーアームという部品を使うエンジンでは、ロッカーアームの先とバルブの軸の間、あるいはカムの山低い部分とロッカーアームが接触する部分の間の隙間になります。
一般的に、排気バルブは吸気バルブよりも熱で膨張しやすいため、排気バルブ側の隙間を吸気バルブ側よりも大きく設定します。
カムが回転してバルブを押し上げる時に、この隙間があると音が発生します。そのため、最近では油圧を使ってこの隙間をなくす『オイルタペット』という部品がよく使われています。
バルブクリアランスとは
自動車の心臓部である発動機の中には、吸気と排気を司る弁と、その弁が納まる頭部があります。発動機が動いている時は、摩擦や燃焼によって内部の温度が上がり、これらの部品も熱で膨らみます。ところが、弁と頭部は同じ熱を受けても膨らみ方が違います。頭部は全体が大きく熱せられるため膨張も大きい一方、弁は頭部に比べ細長く、先端は燃焼室にさらされているため冷却されやすく、膨張は小さくなります。
この膨張の差を調整するために、弁と頭部の間に「弁隙間」と呼ばれるわずかな隙間が設けられています。この隙間は、発動機が冷えている時に調整する必要があります。なぜなら、発動機が温まっている時は、すでに部品が膨張しているため、正確な隙間を測ることができないからです。冷えた発動機は、いわば部品たちが平常時の状態にある時と言えます。この時に隙間を調整することで、温まった時に弁が頭部にきちんと密着し、正常な働きを保つことができます。
弁隙間は、車種や発動機の型式によって適正な値が異なります。これは、部品の材質、形状、大きさなどが車種によって異なるためです。適切な弁隙間値は、自動車に付属の整備手帳に記載されています。もし、弁隙間が適正値からずれていると、弁が完全に閉じなくなり、圧縮漏れを起こすことがあります。すると、発動機の力が十分に出なくなったり、最悪の場合は発動機が壊れてしまうこともあります。また、弁隙間が狭すぎると、温まった時に弁が頭部に押さえつけられ、開いたままになってしまうこともあります。これもまた、発動機に深刻な損傷を与える原因となります。そのため、定期的に整備手帳を確認し、必要に応じて専門の整備工場で調整してもらうことが大切です。
項目 | 説明 |
---|---|
弁隙間 | 発動機の弁と頭部の間の隙間。発動機が冷えている時に調整する。 |
調整理由 | 弁と頭部は熱膨張率が異なるため。温まった時に弁が頭部に密着し、正常な働きを保つために必要。 |
冷間時調整の必要性 | 発動機が温まっている時は部品が膨張しているため、正確な隙間を測れないから。 |
適正値 | 車種や発動機の型式によって異なる。整備手帳に記載されている。 |
隙間が大きすぎる場合 | 弁が完全に閉じなくなり、圧縮漏れを起こし、出力低下や発動機破損の可能性がある。 |
隙間が小さすぎる場合 | 温まった時に弁が頭部に押さえつけられ、開いたままになり、発動機に深刻な損傷を与える可能性がある。 |
バルブクリアランスの役割
車の心臓部であるエンジン。その滑らかな動きを支える重要な部品の一つに、吸気と排気を司るバルブが存在します。このバルブが適切に作動するために、バルブクリアランスと呼ばれる隙間が重要な役割を果たしています。
エンジン内部は、燃料の燃焼によって高温になります。金属で出来ているバルブと、それを取り囲むシリンダーヘッドは、この熱によって膨張します。ところが、これらの部品は材質が異なるため、膨張する割合も違います。もし、バルブとシリンダーヘッドの間に隙間がなければ、高温になった際にバルブが膨張してシリンダーヘッドに押さえつけられ、完全に閉じることができなくなってしまうのです。
バルブクリアランスは、この熱による膨張差を吸収するための隙間です。適切な隙間を設けることで、高温になってもバルブがシリンダーヘッドに干渉することなく、しっかりと閉じることができます。
バルブがしっかりと閉じることが出来なければ、エンジンの圧縮が漏れてしまい、本来の力を発揮することができません。また、排気ガスが漏れてしまうと、燃費が悪化したり、有害物質が排出されたりする原因にもなります。さらに、バルブとシリンダーヘッドが常に接触した状態だと、摩擦によってバルブが損傷したり、シリンダーヘッドに不具合が生じる可能性もあります。
バルブクリアランスはエンジンによって適正な値が異なり、定期的な点検と調整が必要です。適切なバルブクリアランスを維持することで、エンジンの性能を最大限に引き出し、寿命を延ばすことに繋がります。滑らかで力強い走りを維持するためにも、バルブクリアランスの役割を理解し、適切な整備を心がけることが大切です。
バルブクリアランスの役割 | 問題点 | 影響 |
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熱によるバルブとシリンダーヘッドの膨張差を吸収する | バルブクリアランスがない |
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バルブが閉じない |
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バルブクリアランスの測定
車の心臓部であるエンジン。その滑らかな動きを支える重要な要素の一つに、バルブクリアランスと呼ばれる隙間が存在します。今回は、このバルブクリアランスの測定方法について詳しく解説します。
まず、エンジンが冷えている状態であることを確認してください。熱いエンジンでは金属部品が膨張しているため、正確な測定ができません。エンジンを十分に冷ましてから作業に取り掛かりましょう。測定には、シックネスゲージと呼ばれる薄い金属板を使用します。このゲージは様々な厚さのものがセットになっており、まるで定規のように目盛りが刻まれています。このシックネスゲージを、バルブとロッカーアーム、あるいはタペットと呼ばれる部品の隙間に挿入し、クリアランスを測定します。隙間が狭すぎる場合は、部品同士がぶつかり合って異音が発生したり、最悪の場合は部品が破損する恐れがあります。逆に隙間が広すぎる場合は、エンジンの出力が低下したり、燃費が悪化することがあります。
測定箇所はエンジンによって異なりますが、多くの場合、空気を取り込む吸気バルブと、排気ガスを排出する排気バルブそれぞれに適切なクリアランスが定められています。具体的な数値は、車の整備手帳に記載されていますので、必ず確認しましょう。シックネスゲージを隙間に挿入する際には、規定値に最も近い厚さのゲージが、スムーズに挿入できるかどうかで判断します。きつすぎず、緩すぎず、適度な抵抗感がある状態が理想です。
正確な測定を行うためには、エンジンの回転位置を規定の位置に合わせる必要があります。エンジンの回転位置は、クランクシャフトと呼ばれる部品を回転させることで調整します。この作業は、整備手帳に記載されている手順に従って慎重に行うことが重要です。間違った手順で作業を行うと、エンジンに損傷を与える可能性があります。もし手順に不安がある場合は、無理せず専門の整備工場に依頼しましょう。バルブクリアランスの測定は、エンジンの性能維持に欠かせない作業です。適切なクリアランスを保つことで、エンジンを良好な状態で長く使用することができます。
項目 | 詳細 |
---|---|
エンジン状態 | 冷えている状態であること |
測定器具 | シックネスゲージ |
測定箇所 | 吸気バルブ、排気バルブ(エンジンにより異なる) |
測定方法 | シックネスゲージをバルブとロッカーアーム/タペットの隙間に挿入 |
適切なクリアランス | 規定値に最も近い厚さのゲージがスムーズに挿入できる状態 |
クリアランス値 | 車の整備手帳に記載 |
エンジンの回転位置 | 規定の位置に合わせる(整備手帳参照) |
注意点 | 手順に不安がある場合は専門の整備工場に依頼 |
バルブクリアランスの調整
吸排気弁と揺り腕の間にある隙間、弁隙間、つまりバルブクリアランスの調整について詳しく説明します。この隙間は、エンジンが熱で膨張しても弁が確実に閉じ、燃焼室を密閉するために必要です。この隙間が適切でないと、エンジンの出力低下や燃費悪化、最悪の場合、弁の焼き付きやエンジンの故障につながる可能性があります。
まず、バルブクリアランスの調整は、エンジンが冷えた状態で行います。エンジンが温まっていると、部品が膨張して正確な測定ができません。調整の前に、必ず整備手帳でエンジンの種類や型式に応じた規定値を確認してください。規定値はエンジンによって異なり、適切な値は整備手帳に記載されています。
次に、シックネスゲージと呼ばれる薄い金属製の測定器を用いて、現在のバルブクリアランスを測定します。測定する弁に応じてクランク軸を回し、測定位置に合わせます。シックネスゲージを弁と揺り腕の間に挿入し、適度な抵抗感がある厚さが現在のクリアランスです。この測定値と整備手帳の規定値を比較し、調整が必要かどうかを判断します。
クリアランスが規定値よりも大きい場合は、調整ネジを締め付けることで隙間を狭めます。反対に、クリアランスが規定値よりも小さい場合は、調整ネジを緩めることで隙間を広げます。調整ネジの位置や形状、調整方法はエンジンによって異なるため、必ず整備手帳で確認してください。調整ネジを回す際には、ロックナットを緩めてから行い、調整後はロックナットを確実に締め付けてください。調整後は再度シックネスゲージでクリアランスを測定し、規定値になっていることを確認します。
バルブクリアランスの調整は、専用の工具と正確な作業が求められる精密な作業です。もし自信がない場合は、無理に自分で行わず、専門の整備工場に依頼することを強くお勧めします。適切なバルブクリアランスを保つことは、エンジンの性能と寿命を維持する上で非常に重要です。定期的な点検と調整を行い、エンジンの調子を最適な状態に保ちましょう。
項目 | 説明 |
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弁隙間(バルブクリアランス) | 吸排気弁と揺り腕の間の隙間。エンジンの熱膨張を吸収し、弁の密閉性を確保するために必要。 |
調整の必要性 | 不適切な隙間は出力低下、燃費悪化、弁の焼き付き、エンジンの故障につながる可能性があるため、適切なクリアランスを維持する必要がある。 |
調整手順 |
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調整時の注意点 |
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油圧式タペットの登場
かつて、車の心臓部であるエンジンの吸気と排気の調整を行う部品、弁のすき間は、機械式の手法で調整されていました。これは、定期的に整備工場で調整をしてもらう必要があり、車を持つ人にとって手間と費用がかかるものでした。しかし、油圧を使った自動調整機構を持つ部品が登場したことで、この状況は大きく変わりました。これが、油圧式タペットです。
油圧式タペットは、エンジンを潤滑するオイルの圧力を巧みに利用して、弁と駆動部品の間のすき間を自動的に調整します。この部品の中に小さな油だまりがあり、エンジンオイルの圧力で満たされます。この油圧が、弁の動きに合わせてすき間を常に適切な状態に保つのです。これにより、ドライバー自身で調整する必要がなくなり、整備の手間が大幅に軽減されました。まるで優秀な整備士が常にエンジン内部で働いているかのようです。
油圧式タペットの利点は、整備の手間が省けるだけではありません。常に最適なすき間を保つことで、エンジンの性能も向上します。吸気と排気の効率が上がり、力強さと燃費の良さが両立されるのです。さらに、機械式の調整機構に比べて部品同士の衝突音が少なくなるため、エンジン音も静かになります。静粛性の向上は、車内の快適さを大きく高める要素です。
このように、油圧式タペットは、エンジンの性能向上、燃費向上、静粛性向上、そして整備性の向上に大きく貢献しました。これは、まさに自動車技術の進化における大きな一歩と言えるでしょう。小さな部品ですが、ドライバーの負担軽減と快適な運転環境の実現に大きく貢献している、縁の下の力持ちと言える存在です。
項目 | 内容 |
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従来の方式 | 機械式。定期的な整備が必要で、手間と費用がかかる。 |
油圧式タペット | オイルの圧力を利用し、弁と駆動部品の間のすき間を自動調整。 |
利点 |
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効果 | ドライバーの負担軽減、快適な運転環境の実現 |
まとめ
車は、心臓部であるエンジンによって動力を得ています。エンジンの内部では、ピストンが上下運動を繰り返し、その動きに合わせて吸気バルブと排気バルブが開閉し、空気と排気ガスの流れを制御しています。このバルブとバルブを駆動する部品の間には、わずかな隙間(バルブクリアランス)が設けられています。この隙間がエンジンの性能、燃費、そして寿命に大きく関わってくるのです。
バルブクリアランスには、機械式と油圧式の二つの方式があります。機械式は、部品の熱膨張を考慮して、適切な隙間を手で調整する必要があります。この調整は、専用の工具を用いて行われ、ある程度の知識と技術が求められます。手間はかかりますが、エンジンの状態を直接確認できるという利点があります。隙間が狭すぎると、バルブが完全に閉じなくなり、圧縮漏れを起こしてエンジンの出力が低下したり、最悪の場合はバルブが燃焼室に突き出てエンジンが破損する可能性があります。反対に、隙間が広すぎると、バルブを開閉する音が大きくなり、エンジンの出力も低下します。
一方、油圧式は、油圧によって自動的に隙間を調整するため、定期的な調整は不要です。メンテナンスの手間がかからないという大きなメリットがあります。常に最適なクリアランスを保つことができるため、エンジンの性能も安定します。
どちらの方式であっても、バルブクリアランスはエンジンにとって非常に重要です。適切なクリアランスを維持することで、エンジンの性能を最大限に引き出し、燃費を向上させ、エンジンの寿命を延ばすことができます。ご自身の車のエンジンがどちらの方式を採用しているかは、取扱説明書などで確認できます。機械式の場合は、定期的な点検と調整を行い、油圧式の場合は、オイルの状態を適切に保つことが重要です。バルブクリアランスを適切に管理することで、愛車のエンジンを健全な状態で長く保つことができるでしょう。
項目 | 機械式 | 油圧式 |
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クリアランス調整 | 手動調整(専用工具必要) | 油圧による自動調整 |
メリット | エンジンの状態を直接確認できる | メンテナンスフリー、性能安定 |
デメリット | 手間と技術が必要 | – |
隙間狭すぎ | 圧縮漏れ、出力低下、エンジン破損の可能性 | – |
隙間広すぎ | 異音、出力低下 | – |
維持管理 | 定期的な点検と調整 | オイルの状態管理 |