2ストローク機関の仕組みと歴史

2ストローク機関の仕組みと歴史

車のことを知りたい

先生、「クラークサイクルエンジン」って、どんな仕組みのエンジンですか?

車の研究家

クラークサイクルエンジンは、2ストロークエンジンの別名だよ。ピストンが上下する間に、吸気、圧縮、爆発、排気のすべてを行うエンジンなんだ。

車のことを知りたい

4ストロークエンジンとは違うんですか?

車の研究家

そうだよ。4ストロークエンジンは、ピストンが上下する2回で1サイクルなのに対して、クラークサイクルエンジンは1往復で1サイクルになっている。だから、同じ回転数なら2倍の爆発を起こせるんだ。

クラークサイクルエンジンとは。

二行程機関という種類のエンジンについて説明します。このエンジンは、イギリスのデュガルド・クラークさんが1878年に発明したため、「クラークサイクルエンジン」とも呼ばれています。ちなみに、私たちがよく目にする四行程機関は、ドイツのニコラス・アウグスト・オットーさんが1876年に発明したことから「オットーサイクル」と呼ばれています。ディーゼルやパンケル、ミラーサイクルなども、同様に発明者の名前が由来となっています。

2ストローク機関とは

2ストローク機関とは

2行程機関とは、ピストンの上下運動2回で、クランク軸が1回転するごとに1回の爆発を起こす原動機のことです。ピストンが1回上下するのを1行程というので、2行程機関と呼ばれています。4行程機関に比べると構造が簡単で軽く小さく作れるという長所があります。また同じ大きさのエンジンであれば、4行程機関よりも大きな力を出すことができます。

2行程機関はどのように動いているのでしょうか。ピストンが上に向かって進む時、燃料と空気が混ざった物が燃焼室に送り込まれ、同時に前の爆発で発生した排気ガスが外に押し出されます。ピストンが上死点に達すると、燃焼室で爆発が起こります。爆発の力でピストンが下がり、クランク軸を回転させます。ピストンが下がりきると再び燃料と空気が送り込まれ、この動きを繰り返すことで動力を生み出します。

このような仕組みのため、2行程機関は同じ大きさの4行程機関よりも大きな力を出すことができます。このため、以前は自動二輪車や小型船舶、鎖鋸など、軽くて力強い原動機が必要とされる機械で広く使われていました。しかし、排気ガスに燃え残った燃料が含まれているため、環境への影響が大きいという問題がありました。

近年では、環境規制に対応するため、排気ガスをきれいにする工夫が凝らされた2行程機関も開発されています。例えば、燃料を噴射する方式を改良したり、排気ガスを再び燃焼室に戻して燃やす排気ガス還流装置を取り付けたりすることで、排気ガス中の有害物質を減らす技術が開発されています。このように、2行程機関は小型軽量、高出力という利点を生かしつつ、環境性能も向上させて、様々な分野で活躍が期待されています。

項目 内容
定義 ピストンの上下運動2回(2行程)で、クランク軸が1回転するごとに1回の爆発を起こす原動機。
動作原理 1. ピストン上昇時:燃料と空気の混合気が燃焼室に送り込まれ、同時に排気ガスが排出。
2. 上死点:燃焼室で爆発。
3. ピストン下降:爆発力でピストンが下降し、クランク軸を回転。
4. ピストン下降後:再び燃料と空気が送り込まれる。
長所 ・構造が簡単で軽く小さく作れる
・同じ大きさのエンジンであれば、4行程機関よりも大きな力を出すことができる。
短所/課題 排気ガスに燃え残った燃料が含まれるため、環境への影響が大きい。
用途 自動二輪車、小型船舶、鎖鋸など、軽くて力強い原動機が必要とされる機械。
環境対策 燃料噴射方式の改良、排気ガス還流装置などにより、排気ガス中の有害物質を削減。
将来展望 小型軽量、高出力という利点を生かしつつ、環境性能も向上させて、様々な分野での活躍が期待される。

2ストローク機関の仕組み

2ストローク機関の仕組み

2行程機関は、その名の通り、ピストンの上下運動2回で一連の動作を完結させる原動機です。これは、吸気、圧縮、爆発、排気の4つの行程を、4行程機関のように4回ではなく、2回で行うことを意味します。この効率的な動作サイクルは、構造の簡素化にも繋がっています。

ピストンが下降していく過程を見てみましょう。ピストンが下がり始めると、シリンダー壁にある吸気口と排気口が同時に開きます。この時、クランクケース内には事前に吸入されていた新鮮な混合気(空気と燃料の混合物)が満たされており、ピストンの下降によって生じた圧力差によってシリンダーへと送り込まれます。同時に、燃焼によって生じた排気ガスは排気口から排出されます。この行程は、新しい混合気をシリンダー内に送り込みながら、古い排気ガスを排出する重要な役割を担っています。

ピストンが下死点に達すると、今度は上昇を始めます。ピストンが上昇すると、吸気口と排気口は閉じられ、シリンダー内の混合気は圧縮されます。ピストンが上死点に近づくと、点火プラグから火花が飛び、圧縮された混合気に点火、爆発させます。この爆発の力によってピストンは再び下降し、クランク軸を回転させます。これが、エンジンの動力を生み出す行程です。2行程機関はこのように、ピストンが上下する2行程の間に、吸気、圧縮、爆発、排気のすべてを巧みに行っているのです。

4行程機関と比較すると、2行程機関は同じ回転数で2倍の爆発回数を生み出します。これは、より大きな出力を得られることを意味します。また、構造が単純であるため、軽量かつ小型であることも利点です。しかし、未燃焼の混合気が排気ガスと共に排出されるため、燃費が悪く、排気ガスも汚染物質が多いという欠点も持ち合わせています。

行程 ピストンの動き 動作
1 下降
  • 吸気口と排気口が開く
  • クランクケース内の混合気がシリンダーへ
  • 排気ガスが排出
上昇
  • 吸気口と排気口が閉じる
  • 混合気が圧縮
  • 上死点付近で点火・爆発
2行程機関と4行程機関の比較
項目 2行程機関 4行程機関
出力 大きい 小さい
爆発回数 同じ回転数で2倍
構造 単純・軽量・小型 複雑
燃費 悪い 良い
排気ガス 汚染物質が多い 汚染物質が少ない

クラークサイクル機関の歴史

クラークサイクル機関の歴史

2行程機関は、西暦1878年にイギリスの技術者であるデュガルド・クラーク氏によって発明されました。このことから、クラークサイクル機関という別名でも知られています。クラーク氏は、それまでの機関にはなかった画期的な仕組みを考え出しました。それは、ピストンの上下運動そのものを利用して、混合気の吸入と排気を行うという画期的な発想でした。

この発明は、小型軽量の動力源を求めていた様々な分野で急速に広まりました。特に、オートバイや船舶の外付け動力、チェーンソーや刈払機などの農林業機械、そして模型飛行機や模型自動車など、小型軽量であることが利点となる分野で広く採用されるようになりました。2行程機関は、部品点数が少なく構造が単純であるため、製造コストが低いという利点もありました。このため、手軽で安価な動力源として、世界中で広く使われるようになったのです。

しかし、初期の2行程機関には、解決すべき課題も存在しました。それは、ピストンの上下運動で吸気と排気を同時に行う構造上、どうしても吸い込んだばかりの未燃焼の混合気が排気と共に出て行ってしまうという点です。このことは、燃費の悪化や排気ガスの有害物質増加といった問題につながっていました。

その後、技術者たちは様々な改良に取り組みました。掃気方式の改良や排気ポートの形状変更、燃料噴射装置の導入など、多くの技術革新が積み重ねられました。これらの努力により、未燃焼混合気の排出量は徐々に減り、燃費の向上や排気ガスの浄化が進みました。現在でも、2行程機関は特定の用途で利用され続けており、その歴史は技術の進歩と共に今も刻まれ続けています。

項目 内容
発明者 デュガルド・クラーク
発明年 1878年
別名 クラークサイクル機関
画期的な仕組み ピストンの上下運動を利用した混合気の吸入と排気
利用分野 オートバイ、船舶の外付け動力、チェーンソー、刈払機、模型飛行機、模型自動車など
利点 小型軽量、部品点数が少なく構造が単純、製造コストが低い
初期の課題 未燃焼の混合気が排気と共に出て行ってしまう (燃費悪化、排気ガス悪化)
改良点 掃気方式の改良、排気ポートの形状変更、燃料噴射装置の導入など

4ストローク機関との比較

4ストローク機関との比較

自動車の心臓部とも言えるエンジンには、大きく分けて二つの種類があります。一つは4行程機関、もう一つは2行程機関です。この二つの機関は、どちらも燃料を燃焼させて動力を得るという点では同じですが、その仕組みには大きな違いがあります。ここでは、4行程機関を基準に、2行程機関との違いを詳しく見ていきましょう。

4行程機関は、ピストンが上下に二回ずつ、合計四回動く間に一つの行程が完結します。これはクランク軸の二回転に相当します。まずピストンが下がり、空気と燃料の混合気を吸い込みます(吸気行程)。次にピストンが上がり、混合気を圧縮します(圧縮行程)。そして、圧縮された混合気に点火し、爆発させます(爆発行程)。この爆発の力でピストンが押し下げられ、クランク軸が回転し、動力が生み出されます。最後にピストンが再び上がり、燃えカスを外に排出します(排気行程)。これが4行程機関の動作原理です。

一方、2行程機関では、ピストンが上下に一回ずつ、合計二回動く間に、つまりクランク軸が一回転する間に一つの行程が完結します。ピストンが上下する間に、吸気、圧縮、爆発、排気のすべてが行われます。そのため、4行程機関に比べて構造が単純で、部品点数が少なく、軽量に作ることができます。また、同じ排気量であれば、4行程機関よりも高い出力を得ることができます。しかし、吸気と排気が同時に行われるため、未燃焼の燃料が排気ガスと一緒に排出されてしまい、燃費が悪く、排出ガスも汚れてしまいます。さらに、潤滑油が燃焼室に混入しやすく、オイルの消費量も多くなります。これらのデメリットから、環境への配慮が重視される現代においては、自動車をはじめ多くの分野で4行程機関が主流となっています。

項目 4ストローク機関 2ストローク機関
行程 ピストンが上下2回ずつ、計4回(クランク軸2回転)で1行程 ピストンが上下1回ずつ、計2回(クランク軸1回転)で1行程
構造 複雑 単純
部品点数 多い 少ない
重量 重い 軽い
出力 低い 高い
燃費 良い 悪い
排気ガス きれい 汚い
オイル消費量 少ない 多い
吸気 吸気行程で空気と燃料の混合気を吸い込む ピストンが下降する際に吸気ポートから吸入
圧縮 圧縮行程で混合気を圧縮 ピストンが上昇する際に圧縮
爆発 爆発行程で圧縮された混合気に点火・爆発 圧縮された混合気に点火・爆発
排気 排気行程で燃えカスを排出 ピストンが下降する際に排気ポートから排出

他の熱力学サイクル

他の熱力学サイクル

燃焼機関で使われる熱の動きを表すには、様々な熱力学サイクルが考えられています。よく知られているもの以外にも、色々な種類があります。例えば、よく使われている四行程機関の基本となっているのは、オットーサイクルです。これは、ドイツのニコラス・アウグスト・オットーという人が、1876年に考え出したものです。吸気、圧縮、爆発、排気の四つの行程で動力を生み出します。ガソリン機関の多くはこのサイクルを元に作られています。

また、ディーゼル機関で使われているのは、ディーゼルサイクルです。こちらは、同じくドイツのルドルフ・ディーゼルという人が1892年に考え出しました。オットーサイクルと同様に四行程ですが、圧縮した空気の中に燃料を噴射して自己着火させるという点が違います。この違いによって、ディーゼル機関はガソリン機関よりも高い圧縮比を実現でき、燃費の向上に繋がっています。

他にも、様々な熱力学サイクルがあります。例えば、パンケルサイクルは、フランスのシャルル・ルネ・パンケルという人が考案したもので、定圧燃焼と定積燃焼を組み合わせたサイクルです。航空機用の発動機などで使われていました。また、ミラーサイクルは、アメリカのラルフ・ミラーという人が考案したもので、オットーサイクルを改良して、圧縮行程中に吸気バルブを閉じるタイミングを遅らせることで、実質的な圧縮比を下げることでノッキングを防ぎ、効率を向上させる工夫がされています。

このように、様々な熱力学サイクルは、それぞれに利点と欠点があり、用途や目的に合わせて使い分けられています。自動車の進化と共に、これらの熱力学サイクルも改良が重ねられ、より効率的で環境に優しいエンジンが開発されています。

サイクル名 考案者 考案年 特徴 用途
オットーサイクル ニコラス・アウグスト・オットー(ドイツ) 1876年 吸気、圧縮、爆発、排気の四行程。ガソリン機関の基本。 ガソリン機関
ディーゼルサイクル ルドルフ・ディーゼル(ドイツ) 1892年 圧縮した空気の中に燃料を噴射して自己着火。高圧縮比を実現。 ディーゼル機関
パンケルサイクル シャルル・ルネ・パンケル(フランス) 記載なし 定圧燃焼と定積燃焼を組み合わせたサイクル。 航空機用発動機など
ミラーサイクル ラルフ・ミラー(アメリカ) 記載なし オットーサイクルを改良。圧縮行程中に吸気バルブを閉じるタイミングを遅らせる。ノッキングを防ぎ効率向上。 記載なし

将来の展望

将来の展望

環境への配慮が世界的に高まる中、自動車の排気ガス規制はますます厳しくなっています。この流れの中で、かつて広く使われていた2行程機関は、その排出ガスの多さから姿を消しつつありました。しかし、小型軽量で高い出力を生み出すという優れた特性を持つ2行程機関は、改良を加えることで環境性能を高め、再び活躍の場を広げる可能性を秘めています。

近年、2行程機関の排気ガス性能を改善するための技術開発が積極的に進められています。その一つが、燃料を直接燃焼室に噴射する直接噴射方式です。従来の2行程機関では、燃料と潤滑油を混合した混合気をクランクケース内で生成し、シリンダーに送り込んでいました。この方式では、未燃焼の混合気が排気ガスと共に排出されるため、排出ガス性能が悪化する原因となっていました。直接噴射方式では、燃料を直接燃焼室に噴射するため、未燃焼の混合気が排出されるのを抑え、排出ガス性能を大幅に向上させることができます。

また、排気ガス後処理装置の採用も有効な手段です。排気ガス後処理装置は、排気ガスに含まれる有害物質を浄化する装置です。2行程機関の場合、触媒を用いて有害物質を無害な物質に変換する触媒コンバーターが用いられています。触媒コンバーターは、排気ガス中の炭化水素、一酸化炭素、窒素酸化物などを浄化し、排出ガス性能を向上させます。これらの技術革新により、2行程機関の排気ガス性能は大幅に向上し、環境規制に対応できるレベルに達しつつあります。

さらに、2行程機関の小型軽量という特性を活かした新たな用途への応用も期待されています。例えば、ハイブリッドシステムでは、2行程機関を発電機として用いることで、エンジンの小型軽量化と高効率化を両立することができます。また、レンジエクステンダーとしても、2行程機関は小型軽量という利点を活かすことができます。レンジエクステンダーは、電気自動車の航続距離を延長するために搭載される小型の発電機です。2行程機関は小型軽量であるため、レンジエクステンダーに最適です。

このように、技術革新と新たな用途への応用により、2行程機関は再び様々な分野で活躍する可能性を秘めています。環境性能の向上、小型軽量という特性を活かした新たな用途への展開など、今後の更なる技術革新に期待が寄せられています。

項目 内容
課題 排気ガスの多さ
メリット 小型軽量、高出力
技術革新 直接噴射方式、排気ガス後処理装置(触媒コンバーター)
効果 排気ガス性能向上、環境規制対応
新たな用途 ハイブリッドシステムの発電機、レンジエクステンダー
将来性 更なる技術革新と新たな用途への展開