2ストロークエンジンの掃気方式

2ストロークエンジンの掃気方式

車のことを知りたい

先生、掃気方式がよくわからないです。横断掃気、ループ掃気、ユニフロー掃気の違いを教えてください。

車の研究家

そうですね。どれも2ストロークエンジンで新しい空気をシリンダー内に送り込み、古い空気を出すための方法です。横断掃気は、空気がシリンダーを横切って流れるイメージです。ループ掃気は、空気がループを描くようにシリンダー内を流れます。ユニフロー掃気は、空気が一方向に流れるので、効率が良いです。

車のことを知りたい

なるほど。横断掃気は単純な流れで、ループ掃気は渦を巻くような流れですね。ユニフロー掃気は、空気の流れが整然としているイメージでしょうか?

車の研究家

その通りです。ユニフロー掃気は、新気と排気が混ざりにくいため、燃焼効率が良いというメリットがあります。それぞれの方式にはメリット、デメリットがあるので、用途によって使い分けられています。

掃気方式とは。

二行程エンジンで、少ない空気の量で効率よく燃焼させるためには、シリンダー内に適切な空気の流れを作る必要があります。そのための空気の流れの作り方には、三つの種類があります。一つ目は、横断掃気です。新しい空気は吸気口から入り、シリンダー内を上に進み、シリンダーの上部を回って下に降り、吸気口の反対側にある排気口へとシリンダー内を横切って流れます。二つ目は、ループ掃気です。入った新しい空気はピストンの上を通った後、排気口と反対側のシリンダー壁に沿って上がり、シリンダーの上部で向きを変えて排気口に燃えカスを押し出します。三つ目は、ユニフロー掃気です。新しい空気を一方向に流して燃えカスを押し出す方法です。

掃気方式の必要性

掃気方式の必要性

車は、動力を得るためにエンジンを使います。エンジンには大きく分けて二つの種類があり、一つは四行程機関、もう一つは二行程機関です。二行程機関は、四行程機関と違い、クランク軸が一回転する間に吸気、圧縮、燃焼、排気の全行程を行います。これは、四行程機関が二回転で同じ行程を行うのと比べると、倍の速さで動力が発生することを意味します。

しかし、二行程機関には、排気と吸気を同時に行わなければならないという課題があります。そこで重要になるのが「掃気」と呼ばれる技術です。掃気とは、燃焼を終えたガスをシリンダーの外に出しつつ、同時に新しい混合気をシリンダー内に送り込む作業です。いかに効率よく掃気を行うかが、二行程機関の性能を大きく左右します

掃気がうまくいかないと、新しい混合気が燃え切らずに排気と一緒に出て行ってしまう「ショートサーキット」という現象が起こります。これは、エンジンの出力低下と燃費悪化に繋がります。また、排気ガスに有害物質が含まれる原因にもなります。 効率的な掃気は、エンジンの出力と燃費を向上させるだけでなく、環境保護にも貢献するのです。

そのため、様々な掃気方法が開発されてきました。シリンダー内に適切な空気の流れを作り、燃焼済みのガスを確実に排出しつつ、新しい混合気を効率よく取り込む工夫が凝らされています。それぞれのエンジンの特性に合わせて最適な掃気方式を選ぶことで、二行程機関の性能を最大限に引き出すことが可能になります。 適切な掃気方式の採用は、高出力、低燃費、そして環境性能の向上という、相反する要求を両立させる鍵と言えるでしょう。

機関の種類 行程 クランク軸回転数 掃気 ショートサーキット メリット・デメリット
四行程機関 吸気、圧縮、燃焼、排気 2回転 構造が複雑
二行程機関 吸気、圧縮、燃焼、排気 1回転 必要 発生しやすい 高出力、構造が簡単、燃費が悪い、環境負荷が高い

横断掃気方式

横断掃気方式

横断掃気方式は、二輪車や汎用エンジンなどに使われる、比較的簡素な構造を持つエンジンで採用されている燃焼方式です。この方式では、シリンダーの片側に吸気口、反対側に排気口が配置されています。ピストンが下降すると、吸気口から新鮮な混合気がシリンダー内に吸い込まれます。その後、ピストンが上昇すると、吸い込まれた混合気はシリンダー内を横断するように流れて排気口へと押し出されます。この一連の流れが燃焼ガスをシリンダー外に掃き出す役割を果たします。

横断掃気方式の大きな利点は、その構造の単純さにあります。部品点数が少なく、製造工程も簡略化できるため、製造コストを抑えることができます。そのため、価格競争力の求められる製品には適した方式と言えるでしょう。また、構造が単純なため、小型軽量化しやすい点もメリットです。

しかし、横断掃気方式には掃気効率が低いという欠点があります。混合気の流れがシリンダーを横切る形になるため、吸気と排気が完全に分離されず、新しい混合気の一部が排気口からそのまま出てしまうことがあります。特にエンジンの回転数が低い領域ではこの傾向が顕著で、未燃焼の混合気が排出されることで燃費の悪化や排気ガスの汚染につながります。エンジンの回転数が上がると掃気効率は幾分向上しますが、他の掃気方式と比較すると依然として劣ります。ループ掃気方式やユニフロー掃気方式のように、シリンダー内をらせん状に流れたり、一方向に流れたりする方式に比べると、燃焼効率の面では不利と言えるでしょう。そのため、高い出力や燃費性能が求められるエンジンには不向きです。

項目 内容
方式 横断掃気方式
構造 シリンダー片側に吸気口、反対側に排気口
動作 ピストン下降で吸気、上昇で排気(混合気はシリンダー内を横断)
メリット
  • 構造が単純
  • 部品点数が少なく、製造コストが低い
  • 小型軽量化しやすい
デメリット
  • 掃気効率が低い
  • 吸気と排気の分離が不完全
  • 低回転域で燃費悪化、排気ガス汚染
  • 高出力・高燃費エンジンには不向き
適用例 二輪車、汎用エンジン

ループ掃気方式

ループ掃気方式

ループ掃気方式は、エンジン内部の空気の流れを巧みに利用した技術です。この方式では、ピストンが下降する際に吸気孔から入った新鮮な混合気は、シリンダー壁に沿ってらせん状に流れます。まるで渦巻を描くように、混合気はピストン頂面の周りをぐるりと回り込み、シリンダー上部で向きを変えて排気孔へと向かいます。この流れが、ループ、つまり輪のような形をしていることから、ループ掃気方式と呼ばれています。

この渦巻状の流れが、エンジンの性能向上に大きく貢献します。従来の横断掃気方式では、新しい混合気と燃え残った排気ガスが混ざりやすく、未燃焼の混合気が排気孔から出てしまうという問題がありました。しかし、ループ掃気方式では、混合気の流れが整理されているため、排気ガスを効率的に押し出しながら、新しい混合気と排気ガスが混ざるのを防ぎます。その結果、より多くの混合気を燃焼に利用できるようになり、燃費の向上と排気ガスのきれいさにつながります。

ただし、ループ掃気方式にも課題はあります。シリンダーヘッドの内部構造が複雑になるため、横断掃気方式に比べて製造の手間と費用がかかりやすいという点です。また、エンジンを高回転で回した際の掃気効率の向上には限界があります。横断掃気方式に比べれば高回転域でも効率の低下は少ないですが、更なる高回転化を目指すには、更なる技術開発が必要となるでしょう。

項目 説明
名称 ループ掃気方式
原理 ピストン下降時に吸気孔から入った混合気がシリンダー壁に沿ってらせん状に流れ、ピストン頂面の周りを回り込み、シリンダー上部で向きを変えて排気孔へと向かう。
メリット
  • 排気ガスを効率的に押し出し、新しい混合気と排気ガスが混ざるのを防ぐ。
  • 燃費の向上と排気ガスのきれいさにつながる。
デメリット
  • シリンダーヘッドの内部構造が複雑になるため、製造の手間と費用がかかりやすい。
  • 高回転時の掃気効率向上には限界があり、更なる技術開発が必要。
比較対象 横断掃気方式

ユニフロー掃気方式

ユニフロー掃気方式

ユニフロー掃気方式は、シリンダー内を空気の流れが一方向に流れるように設計された、内燃機関の換気方式です。シリンダーの下部から上部へと、まるで一陣の風が吹き抜けるように、新鮮な混合気がシリンダー内を満たしていきます。この方式の最大の特徴は、吸気と排気がしっかりと分離されている点にあります。

シリンダーの下部には吸気口が設けられ、そこから新しい混合気が送り込まれます。一方、シリンダーの上部には排気口が配置され、燃焼後の排気ガスがここから排出されます。このように、吸気と排気が異なる位置に配置されていることで、新しい混合気と排気ガスが混ざり合うのを防ぎ、シリンダー内を効率的に換気することができます。

この効率的な換気は、燃費の向上と排気ガスの清浄化に大きく貢献します。燃焼後の排気ガスがシリンダー内に残留してしまうと、次の燃焼サイクルに悪影響を及ぼしますが、ユニフロー掃気方式ではそのような心配がありません。また、特にエンジン回転数が高い領域では、その効果が顕著に現れ、高い出力を得るのに適しています。

しかし、構造が複雑になりやすく、製造にかかる費用が高くなるという欠点も存在します。吸気と排気のタイミングを精密に制御する必要があり、高度な技術が求められます。さらに、エンジン回転数が低い領域では、換気の効率が低下する傾向があります。そのため、ユニフロー掃気方式は、高性能エンジンなど、高い出力を必要とする用途に適していると言えるでしょう。

項目 説明
概要 シリンダー内を空気が一方向に流れる換気方式。吸気と排気が分離され、シリンダー下部から上部へ空気が流れる。
吸気 シリンダー下部に吸気口を設置。
排気 シリンダー上部に排気口を設置。
メリット
  • 吸気と排気の分離による効率的な換気
  • 燃費向上
  • 排気ガスの清浄化
  • 高回転域での高出力
デメリット
  • 構造が複雑で製造費用が高い
  • 低回転域での換気効率低下
適した用途 高性能エンジンなど、高出力を必要とする用途

各方式の比較とまとめ

各方式の比較とまとめ

自動車の心臓部であるエンジンにおいて、燃焼を終えたガスを排出し、新鮮な空気をシリンダー内に送り込む掃気方法は、エンジンの性能を大きく左右する重要な要素です。大きく分けて横断掃気、ループ掃気、ユニフロー掃気の三つの方式があり、それぞれに長所と短所が存在するため、用途に応じて適切な方式を選択する必要があります。

まず、横断掃気は、その構造の単純さが大きな特徴です。部品点数が少なく、製造コストを抑えることができるため、価格重視の小型エンジンなどに採用されています。しかし、吸気と排気がシリンダー内を横切るように流れるため、燃焼済みのガスがシリンダー内に残留しやすく、掃気効率は低いと言わざるを得ません。その結果、燃費の悪化や排気ガスの増加につながる可能性があります。

次にループ掃気は、シリンダー内にループ状の空気の流れを作り出すことで、横断掃気に比べて掃気効率を向上させた方式です。これにより、燃費の向上と排気ガスの低減を実現しています。ただし、空気の流れを制御するための部品が必要となるため、構造はやや複雑になり、製造コストも横断掃気に比べると高くなります。中型エンジンなどで広く採用されています。

最後にユニフロー掃気は、シリンダーの一方から吸気し、反対側から排気することで、最も効率的な掃気を実現する方式です。燃焼済みのガスをほぼ完全に排出できるため、高出力化に適しており、大型エンジンや高性能エンジンに採用されています。しかし、吸気バルブと排気バルブをシリンダーの両端に配置する必要があるため、構造が複雑になり、製造コストも高くなります。

このように、それぞれの掃気方式には得手不得手があります。エンジンの特性や用途、求められる性能、そして製造コストなどを考慮し、最適な方式を選択することが、高性能で環境にも配慮したエンジン開発には不可欠です。近年、環境規制の強化に伴い、燃費向上と排気ガス清浄化への要求はますます高まっています。そのため、それぞれの掃気方式の利点を活かしつつ、欠点を克服する新たな技術開発が期待されています。もしかしたら、将来は全く新しい革新的な掃気方式が登場するかもしれません。

掃気方式 特徴 長所 短所 用途
横断掃気 吸気と排気がシリンダー内を横切るように流れる 構造が単純、部品点数が少なく、製造コストが低い 掃気効率が低い、燃費が悪い、排気ガスが多い 価格重視の小型エンジン
ループ掃気 シリンダー内にループ状の空気の流れを作り出す 横断掃気に比べて掃気効率が良い、燃費が良い、排気ガスが少ない 構造がやや複雑、製造コストが横断掃気に比べて高い 中型エンジン
ユニフロー掃気 シリンダーの一方から吸気し、反対側から排気する 最も効率的な掃気、高出力化に適している 構造が複雑、製造コストが高い 大型エンジン、高性能エンジン