10・15モード排出ガス試験

10・15モード排出ガス試験

車のことを知りたい

『10・15モード』って、車の何についているんですか?

車の研究家

『10・15モード』は、車の排気ガスに含まれる有害物質の量を測る試験方法の名前だよ。主に、3.5トン以下のガソリン車やLPG車、2.5トン以下のディーゼル車が対象だね。

車のことを知りたい

どうやって測るんですか?

車の研究家

車を特別な装置(シャシーダイナモメーター)の上に置いて、街中と高速道路の両方を走っている時の状態を再現して、排気ガスを集めて、有害物質の量を測るんだよ。街中を走る『10モード』と、高速道路を走る『15モード』を組み合わせているから、『10・15モード』っていう名前なんだ。

10・15モードとは。

『10・15モード』という言葉について説明します。これは、日本で現在使われている車の排気ガス量を測る試験方法の名前です。重さが3.5トン以下のガソリン車やLPG車、そして2.5トン以下のディーゼル車に適用されます。この試験方法は1991年から使われています。街中を走る時と同じような走り方(10モード、最高速度は時速40キロメートル)と、高速道路を走る時と同じような走り方(15モード、最高速度は時速70キロメートル)の二つを組み合わせた試験です。具体的なやり方としては、まず車を専用の装置(シャシーダイナモメーター)に設置します。エンジンの温度が上がった状態から運転を始めて、一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物といった排気ガスの量を測ります。そして、1キロメートル走行した時に排出されるガスの量をグラムで計算します。

排出ガス規制の概要

排出ガス規制の概要

自動車の排気ガスは、大気汚染の大きな要因の一つであり、人々の健康や周囲の環境に深刻な影響を与える可能性があります。そのため、世界各国で排気ガス規制が定められており、自動車を作る会社はこれらの規制を満たすように車を設計、製造しなければなりません。これらの規制は、排気ガスに含まれる有害な物質の量を制限することで、大気汚染を抑え、よりきれいな環境を作ることを目的としています。

排気ガス規制は年々厳しくなっており、自動車を作る会社は常に最新の技術を取り入れて、より環境に優しい車を開発する努力を続けています。規制の対象となる物質には、一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物、粒子状物質などがあります。一酸化炭素は、血液中の酸素を運ぶ能力を低下させ、めまいや頭痛を引き起こすことがあります。炭化水素は、光化学スモッグの主な原因物質であり、呼吸器系の病気を悪化させる可能性があります。窒素酸化物は、呼吸器を刺激し、喘息などの病気を引き起こす可能性があります。また、酸性雨の原因にもなります。粒子状物質は、肺の奥深くまで入り込み、呼吸器疾患や心臓血管疾患などの健康問題を引き起こす可能性があります。

これらの物質は、呼吸器の病気や心臓、血管の病気などの健康問題を引き起こす可能性があるだけでなく、地球の温暖化や酸性雨などの環境問題にも繋がっています。例えば、二酸化炭素は地球温暖化の主な原因物質であり、排出ガス規制によってその排出量を削減することは、地球環境の保全に大きく貢献します。また、窒素酸化物は酸性雨の原因物質の一つであり、排出ガス規制によってその排出量を削減することは、森林や湖沼の生態系を守ることに繋がります。

そのため、排気ガス規制は、私たちの健康と地球環境を守る上で非常に重要な役割を果たしていると言えるでしょう。自動車を作る会社は、これらの規制に対応するために、エンジン技術の改良や排気ガス浄化装置の開発など、様々な取り組みを行っています。また、電気自動車や燃料電池車など、排気ガスを全く出さない車の開発も進められています。これらの技術革新は、よりクリーンな社会の実現に向けて、重要な役割を果たしていくでしょう。

有害物質 健康への影響 環境への影響
一酸化炭素 血液中の酸素運搬能力低下、めまい、頭痛
炭化水素 光化学スモッグの原因、呼吸器系疾患の悪化 光化学スモッグ
窒素酸化物 呼吸器刺激、喘息、呼吸器系疾患の悪化 酸性雨
粒子状物質 呼吸器疾患、心臓血管疾患
二酸化炭素 地球温暖化

10・15モード試験の解説

10・15モード試験の解説

昭和六十六年から平成二十三年までの二十年間主に小型乗用車の排気ガス測定方法として「十・十五モード試験」が用いられていました。この試験は、街中での車の流れを想定した「十モード」と、郊外や高速道路での車の流れを想定した「十五モード」の二つの試験を組み合わせたものです。より実際に近い形で排気ガスを測ることを目指していました。

具体的な流れとしては、まず車両を「シャーシダイナモメーター」と呼ばれる装置の上に設置します。これは、タイヤを回転させながら地面と接地している状態を再現する装置です。この装置を使い、あらかじめ決められた速度の変化や、アクセルの踏み込み、ブレーキ操作を再現することで、実際に車を走らせているのと近い状況を作り出し、排気ガス量を測定します。「十モード」では最高速度が時速四十キロメートル、「十五モード」では最高速度が時速七十キロメートルに設定されており、それぞれのモードで排出される一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物といった有害物質の量が測定されます

この「十・十五モード試験」は、長年にわたり日本の排気ガス規制の中心的な役割を果たしてきました。しかし、技術の進歩とともに、より実際に近い走行状況を再現した試験方法が求められるようになりました。そのため、平成十九年からは「JC08モード」と呼ばれるより厳しい試験方法が導入され、さらに平成二十六年からは国際基準である「WLTCモード」へと移行しました。

現在では「十・十五モード試験」は使われていませんが、日本の自動車の排気ガス規制の歴史において、環境保護の向上に大きく貢献した重要な試験方法であったと言えるでしょう。

試験名称 期間 最高速度 測定物質 備考
十・十五モード試験 昭和66年~平成23年 十モード:40km/h
十五モード:70km/h
一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物 街中と郊外/高速道路の走行を想定
シャーシダイナモメーターを使用
JC08モード 平成19年~ より実走行に近い試験
WLTCモード 平成26年~ 国際基準

試験方法の詳細

試験方法の詳細

「10・15モード試験」とは、車の排気ガスに含まれる有害物質の量を測る試験方法です。この試験では、まず検査する車を装置に固定します。この装置は「シャーシダイナモメーター」と呼ばれ、タイヤを回転させることで、実際に道路を走る状況を再現できます。

エンジンを温めた後、あらかじめ決まった速度で走らせ始めます。この速度の変化は実際の道路の状況を考え、速くなったり遅くなったり、一定の速度で走ったりする状態が組み合わされています。この速度の変化は「10・15モード」と呼ばれ、都心部での車の動きを想定して作られています。

試験中は、排気ガスを集めて、その中に含まれる有害物質の量を調べます。有害物質には、一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物などがあり、これらは大気汚染の原因となる物質です。これらの量は、1キロメートル走行した時に排出されるグラム数で表されます。この値が小さければ小さいほど、環境への負担が少ない車と言えるでしょう。

試験を行う部屋は、温度や湿度が常に一定に保たれています。これは、測定結果に影響を与える外的要因をなくすためです。また、試験の手順も細かく決められており、正確なデータを得るための工夫が凝らされています。試験に使う車は、お店で売られている車の中からランダムに選びます。これにより、実際に人々が乗っている車の排気ガス性能を正しく評価することができます。

このように、10・15モード試験は、環境や手順を細かく管理することで、信頼できるデータを得られるように設計されていました。しかし、この試験方法は実際の走行状態を完全には再現できないという問題点もあったため、現在ではより実走行に近い試験方法が導入されています。

項目 内容
試験名称 10・15モード試験
目的 自動車の排気ガスに含まれる有害物質量の測定
装置 シャーシダイナモメーター(タイヤ回転で走行状況再現)
手順 1. エンジンを温める
2. 10・15モード(都心部走行パターン)で走行
3. 排気ガスを収集
4. 有害物質量(CO,HC,NOxなど)を分析(単位:g/km)
試験環境 温度・湿度一定
試験車両 市販車からランダムに選定
評価指標 有害物質排出量(g/km)
備考 現在はより実走行に近い試験方法に移行

規制値と基準

規制値と基準

車は、私たちにとって大変便利な乗り物ですが、同時に排気ガスによる大気汚染の原因ともなります。そのため、排気ガスに含まれる有害物質の量を制限する様々な決まりが設けられています。10・15モード試験という燃費測定方法が行われていた時代には、車の大きさやエンジンの種類ごとに細かく定められた排出ガス量の制限値がありました。この制限値は、大気汚染を少しでも減らすために設けられており、時代とともにだんだんと厳しいものになっていきました。

自動車を作る会社は、この制限値をクリアしなければ車を売ることができません。そのため、エンジンの性能を高めて燃費を良くしたり、排気ガスをきれいにする装置を開発したりと、様々な工夫を凝らしてきました。決められた排出ガス量の制限値を達成することは、自動車を作る会社にとって、とても重要な課題だったのです。

10・15モード試験の排出ガス量の制限値は、日本の空気のきれいさを守る上で大きな役割を果たしました。しかし、技術の進歩や世界的な流れに合わせて、より詳しい検査方法へと変わっていく必要がありました。たとえば、JC08モード試験では、実際の道路状況を想定した、より厳しい条件で燃費や排出ガス量が測定されます。加えて、WLTCモード試験は世界共通の試験方法であり、国際的な基準に合わせたより厳しい排出ガス規制に対応しています。これらの新しい試験方法は、より実走行に近い状態で測定を行うことで、排出ガス量の正確な把握を可能にし、環境保護への貢献度を高める役割を果たします。このように、時代とともに変化する環境基準に対応するために、自動車業界は常に技術革新を続けています。

時代 試験方法 排出ガス規制 自動車メーカーの取り組み 目的
10・15モード試験時代 10・15モード試験 車種別排出ガス量の制限値 エンジンの性能向上、排気ガス浄化装置の開発 大気汚染の軽減
JC08モード試験時代 JC08モード試験 より厳しい排出ガス規制 実走行に近い状態での燃費・排出ガス量の測定 より正確な排出ガス量の把握
WLTCモード試験時代 WLTCモード試験 国際基準に合わせた排出ガス規制 世界共通の試験方法への対応 環境保護への貢献

将来の展望

将来の展望

かつて、日本の自動車の排ガス量の測定には、10・15モード試験という方法が使われていました。これは、一定の速度変化を想定した試験です。しかし、実際の道路を走る状況とは異なるため、より実態に即した測定方法が求められるようになりました。そこで導入されたのが、国際的に調和された試験方法であるダブリューエルティーシーモードです。この試験方法は、より複雑な速度変化や停車、発進といった実際の運転状況を反映しており、より厳しい排出ガス基準が設定されています。

この変化は、自動車を作る会社にとって大きな課題です。より厳しい基準をクリアするためには、技術の進歩が不可欠です。例えば、電気で走る車や、水素を使って走る車など、排出ガスを出さない車の開発がますます重要になります。このような車が普及すれば、排ガスそのものを測る必要性は薄れていくでしょう。代わりに、車のエネルギー効率や、車を作る過程でどれだけの環境負荷がかかるかといった点が重視されるようになると考えられます。

自動車業界は、常に変化していく環境規制に対応しながら、環境への負担が少ない社会を作るために、技術開発を進めていく必要があります。また、国によって環境規制が異なるため、世界各国が協力して取り組むことも大切です。地球環境を守るためには、自動車を作る会社だけでなく、車を使う一人ひとりが環境への意識を高め、環境に優しい車を選ぶことが重要になります。

日本の自動車排ガス測定の変遷 詳細 自動車業界への影響
10・15モード試験 一定の速度変化を想定した試験。
実際の道路状況とは乖離があった。
WLTCモード 国際的に調和された試験方法。
複雑な速度変化や停車、発進といった実際の運転状況を反映。
より厳しい排出ガス基準。
技術の進歩が不可欠。
排出ガスを出さない車(電気自動車、水素自動車など)の開発促進。
常に変化していく環境規制への対応が必要。
世界各国との協力が重要。
将来の評価 排出ガスそのものよりも、車のエネルギー効率や製造過程での環境負荷が重視される。