9モード試験:過去の排ガス規制

9モード試験:過去の排ガス規制

車のことを知りたい

先生、『9モード』って、車の何についての用語ですか?

車の研究家

『9モード』は、主に大型トラックやバスの排気ガスに含まれる有害物質の量を測る試験方法のことだよ。アメリカやオーストラリアで使われていたものだね。

車のことを知りたい

どうやって測るんですか?

車の研究家

エンジンの回転数や負荷を一定に保ちながら、9つの異なる運転状態を再現して、それぞれの状態で排出される有害物質の量を測定するんだ。昔はよく使われていたけど、今はもっと実際の運転に近い方法で測るようになっているよ。

9モードとは。

『9モード』とは、昔、アメリカやオーストラリアで使われていた、大型トラックやバスの排気ガスを測る方法です。ガソリンで動く車の排気ガスを測るもので、9つの決まった運転状態でのテストで排気ガスの量を調べます。テストでは、エンジンの部分を専用の装置に固定し、エンジンが冷えている状態からテストを始めます。そして、一酸化炭素や炭化水素、窒素酸化物といった排気ガスの量を測り、エンジンの出力1馬力あたり、1時間あたりのグラム数で表します。ただし、この方法は1983年より前の古い方法で、今はもっと実際の運転に近い状態を再現したテスト方法が使われています。

試験の目的

試験の目的

9つの走行形態を模擬した試験、通称9モード試験は、かつてアメリカ合衆国とオーストラリアで実施されていた大型車両の排気ガス規制における重要な試験方法でした。この試験は、主に大型トラックやバスといった重量のある車両を対象として、排出される有害物質の量を精密に測定することを目的としていました。その究極の目標は、大気汚染を抑制し、人々と環境を守ることにありました。

この9モード試験では、車両が実際に道路を走行している状況を再現するために、停止、発進、加速、減速、定速走行など、様々な運転パターンを組み合わせていました。これにより、実運転に限りなく近い状態で排気ガスを測定することが可能となり、より正確な排出量の把握に繋がりました。具体的には、一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物といった、人体や環境に悪影響を及ぼす物質の排出量を重点的に検査していました。一酸化炭素は、血液中の酸素運搬能力を低下させ、めまいや頭痛を引き起こす可能性があります。炭化水素は、光化学スモッグの原因物質の一つであり、呼吸器系の疾患を悪化させる恐れがあります。窒素酸化物は、酸性雨や呼吸器疾患の原因となる有害物質です。これらの有害物質の排出量を制限することで、より環境に優しい車両の開発を促進し、大気の質の改善を目指していました。

9モード試験は、環境保護の観点から極めて重要な役割を果たしていましたが、実路走行状態を完全に再現するには限界がありました。そのため、技術の進歩と共に、より高度な測定方法が求められるようになり、現在では、実路走行に近い状態を再現できる新しい試験方法に移行しています。しかし、9モード試験は、過去の排ガス規制において重要な役割を果たし、環境保護への意識向上に大きく貢献したと言えるでしょう。

項目 内容
試験名称 9モード試験
実施国 アメリカ合衆国、オーストラリア
対象車両 大型車両(トラック、バスなど)
目的 有害物質の排出量測定、大気汚染抑制、人々と環境保護
試験内容 停止、発進、加速、減速、定速走行など9つの走行形態を模擬
測定物質 一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物
測定物質の影響 一酸化炭素:めまいや頭痛、炭化水素:光化学スモッグ、呼吸器疾患悪化、窒素酸化物:酸性雨、呼吸器疾患
限界 実路走行状態の完全な再現が困難
現状 より高度な測定方法に移行
評価 過去の排ガス規制で重要な役割、環境保護意識向上に貢献

試験の方法

試験の方法

{試験の方法}

自動車の排ガス規制を評価するための試験方法の一つとして、「9つの様態による試験」というものがありました。この試験は、実際に路上を走る代わりに、試験場内の特別な装置を使って行われました。

この装置は「機関動力計」と呼ばれ、エンジンの出力や回転数を計測しながら、様々な運転状況を人工的に作り出すことができます。具体的には、停止状態、発進、加速、定速走行、減速といった、街中や郊外を走る時に起こる状況を再現し、それぞれを「様態」として設定します。全部で9つの様態があり、それぞれの様態でエンジンに異なる負荷と速度を与えます。

試験は、エンジンが冷えている状態ではなく、普段の運転と同じように温まった状態から始めます。そして、各様態でエンジンを運転し、排気ガスを採取して成分を分析します。具体的には、一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物といった有害物質の排出量を測定します。

測定結果は、エンジンの出力に対する排出ガス量の比率で表します。これは、エンジンの出力1時間あたりに排出される有害物質のグラム数で示され、単位は「グラム毎馬力時」となります。こうして得られた数値を、あらかじめ定められた規制値と比較することで、その自動車が排ガス規制を満たしているかどうかを判断します。

この「9つの様態による試験」は、様々な運転状況を再現することで、より実態に近い排出ガス量を把握することを目指していました。しかし、時代の変化とともに、技術の進歩や交通状況の変化が生じ、より精緻な評価方法が必要となりました。そのため、現在では、より複雑で現実的な走行パターンを模擬した試験方法が採用されています。

項目 説明
試験名称 9つの様態による試験
目的 自動車の排ガス規制評価
装置 機関動力計
試験内容 停止、発進、加速、定速走行、減速など9つの様態でエンジンを運転し、排気ガスを採取・分析
エンジン状態 温まっている状態
測定対象 一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物
測定結果 エンジンの出力1時間あたりに排出される有害物質のグラム数(グラム毎馬力時)
評価方法 測定結果を規制値と比較
備考 現在はより複雑で現実的な走行パターンを模擬した試験方法が採用されている。

試験の対象

試験の対象

9モード試験は、主に大型の貨物自動車や乗合自動車を対象としていました。これらの車は、荷物を運んだり、多くの人を一度に運んだりするのに欠かせないものですが、同時に、排気ガスによる大気汚染の原因の一つでもありました。そのため、これらの車には、他の車よりも厳しい排気ガス規制が求められていました。9モード試験は、そうした大型車の環境への影響を測るための大切な試験でした。

この試験の対象となった車は、ほとんどがガソリンを燃料とするものでした。ガソリン車は、軽油を使うディーゼル車に比べて、窒素酸化物や一酸化炭素といった有害物質の排出量が多い傾向があります。特に、都市部で多くの人が利用する乗合自動車や、大量の荷物を運ぶ貨物自動車は、排出ガスによる大気汚染への影響が大きいため、より厳しい排出ガス規制が必要とされていました。9モード試験は、そうした大型車の環境性能を正しく評価するために重要な役割を果たしていました。

乗用車と大型車では、エンジンの仕組みや車の使われ方が大きく違います。乗用車は、比較的短い距離を走るのに対し、貨物自動車や乗合自動車は長距離を走ることも多く、エンジンの回転数や負荷も異なります。また、停止や発進を繰り返す都市部の路線バスと、高速道路を長距離走る長距離バスでも、走行パターンは大きく異なります。9モード試験は、大型車特有のエンジンの特性や、様々な走行パターンを考慮した試験方法でした。実際の走行状態に近い形で排出ガスを測定することで、より正確な環境性能評価を実現していました。この試験は、大型車の環境性能向上を促す上で、重要な役割を担っていたと言えるでしょう。

試験対象 大型貨物自動車、乗合自動車(主にガソリン車)
試験目的 排気ガスによる大気汚染への影響測定、環境性能評価
試験の重要性
  • 大型車の環境への影響を測る
  • 大型車の環境性能を正しく評価する
  • 大型車特有のエンジンの特性や、様々な走行パターンを考慮
  • 実際の走行状態に近い形で排出ガスを測定
  • 大型車の環境性能向上を促す

試験の限界

試験の限界

自動車の排気ガス測定試験は、環境への影響を評価する上で非常に重要です。かつて広く行われていた9種類のモード試験は、エンジン回転数と負荷を一定に保った状態で測定する「定常モード」と呼ばれる方法を用いていました。しかし、実際の道路を走る車は、停止や発進、加速、減速を繰り返すため、エンジン回転数と負荷は常に変化しています。このため、一定の条件下で測定する9種類のモード試験では、実際の走行状態での排気ガスの量を正確に捉えることができませんでした。

例えば、信号待ちからの発進や高速道路への合流など、急加速が必要な場面では、エンジンに大きな負荷がかかり、多くの排気ガスが排出されます。また、下り坂でのエンジンブレーキの使用や渋滞時の停止など、エンジン回転数が低い状態でも、排気ガスの量は変動します。このような状況は、定常モードである9種類のモード試験では再現できず、試験結果と実際の走行状態での排気ガス量との間に大きなずれが生じる原因となっていました。

この問題点を解決するために、より現実に近い走行状態を再現した試験方法が求められました。そこで開発されたのが、様々な走行パターンを模擬した「過渡モード」による試験方法です。この方法は、実際の道路における様々な運転状況を想定し、加速、減速、停止といった動作を含む走行パターンを再現することで、より正確な排気ガス量を測定することを可能にしました。現在では、この過渡モード試験が9種類のモード試験に代わり、世界中で広く採用されています。これにより、自動車メーカーはより環境に配慮した車の開発を進めることができ、地球環境保全に貢献しています。

試験方法 モード 走行状態 排気ガス測定の正確性 現状
9種類のモード試験 定常モード エンジン回転数と負荷を一定に保った状態 実際の走行状態を反映していないため、不正確 過去に広く行われていたが、現在は廃止
過渡モード試験 過渡モード 実際の道路における様々な走行パターンを模擬 実際の走行状態に近い測定が可能 現在世界中で広く採用

規制の変遷

規制の変遷

排気ガス規制は、時代と共に変化し、より厳しいものへと進化してきました。かつて、昭和58年より前は、9つの運転モード(アイドリング、加速、減速など)を想定した9モード試験が行われていました。これは、当時の技術水準において実現可能な測定方法であり、一定の成果を上げました。具体的には、各モードにおける排気ガスを採取し、それぞれの排出量を測定することで、自動車からの排出ガスによる大気汚染の抑制に貢献しました。

しかし、9モード試験には限界がありました。実際の道路状況は複雑で多様であり、9つのモードだけでは現実の運転状態を十分に反映できないという問題点が指摘されるようになりました。例えば、急発進や急ブレーキ、渋滞時の低速走行など、9モード試験では想定されていない状況は数多く存在します。そのため、9モード試験で得られた排出ガス量は、必ずしも実際の走行状態における排出量を正確に反映しているとは言えませんでした。

技術の進歩に伴い、より精密な測定方法が求められるようになりました。昭和58年以降は、より複雑な走行パターンを再現できる過渡モード試験が開発され、主流となりました。この試験方法は、実路走行に近い状態を再現することで、より正確な排出ガス量の測定を可能にしました。これにより、環境規制への適合性をより確実に評価できるようになりました。

9モード試験は、過去の排出ガス規制における重要な一歩でした。その後の、より高度な試験方法の開発へと繋がる礎となったのです。環境規制は常に進化しており、技術革新と共に、より厳格で正確な測定方法が求められています。今後も、技術の進歩に合わせて、より高度な測定方法が開発され、自動車からの排出ガスによる環境への影響を最小限に抑えるための努力が続けられるでしょう。

試験方法 期間 概要 利点 欠点
9モード試験 昭和58年以前 9つの運転モード(アイドリング、加速、減速など)を想定した試験。各モードにおける排気ガスを採取し、それぞれの排出量を測定。 当時の技術水準において実現可能な測定方法。自動車からの排出ガスによる大気汚染の抑制に貢献。 実際の道路状況を十分に反映できない。急発進や急ブレーキ、渋滞時の低速走行など、想定されていない状況が多い。
過渡モード試験 昭和58年以降 より複雑な走行パターンを再現できる試験。実路走行に近い状態を再現。 より正確な排出ガス量の測定が可能。環境規制への適合性をより確実に評価できる。 記載なし

現状と将来

現状と将来

現在、自動車の排ガス測定方法としてかつて主流であった9モード試験は、時代遅れの方法と考えられています。世界各国では、より実際の走行状態に近い過渡モード試験が採用されており、より正確な排ガス量の測定が可能になっています。この過渡モード試験は、停止、発進、加速、減速といった、実際の道路状況を想定した試験方法であり、9モード試験よりも複雑でより高度な技術が求められます。

自動車技術の進歩は目覚ましく、電気自動車やガソリンと電気を組み合わせた動力を持つ自動車など、環境への負荷が少ない自動車の開発が急速に進んでいます。これらの自動車は、従来のガソリン車に比べて排ガスが少なく、地球温暖化対策としても大きな期待が寄せられています。このような新しい技術の登場に伴い、将来の排ガス規制は、これらの自動車に対応できるよう、より厳しい基準が設けられると予想されます。例えば、電気自動車の充電方法による電力消費量や、電池の製造過程における環境負荷なども考慮される可能性があります。

9モード試験は、古い技術ではありますが、環境規制の歴史を理解する上で重要な役割を果たしています。9モード試験によって得られたデータは、大気汚染の現状把握や、規制の効果測定に役立ち、その後の規制強化へと繋がりました。過去の規制方法やその効果を分析することで、将来の規制をより効果的に設計するための知見を得ることができます。過去の失敗や成功から学び、より良い規制を作り、より環境に優しい自動車社会を実現することが重要です。

今後の自動車開発においては、排ガス規制への対応だけでなく、資源の有効活用やリサイクルなども重要な課題となります。限られた資源を有効に活用し、環境への負荷を最小限に抑える持続可能な社会の実現に向けて、自動車業界全体で取り組んでいく必要があります。

項目 内容
排ガス測定方法の変遷 時代遅れの9モード試験から、より現実的な過渡モード試験に移行。
自動車技術の進歩 電気自動車やハイブリッド車など、環境負荷の少ない自動車の開発が急速に進展。
将来の排ガス規制 より厳しい基準が予想され、電気自動車の充電方法や電池製造時の環境負荷も考慮される可能性あり。
9モード試験の意義 古い技術だが、環境規制の歴史を理解する上で重要。過去のデータは規制強化に繋がり、将来の規制設計に役立つ知見を提供。
今後の自動車開発の課題 排ガス規制への対応だけでなく、資源の有効活用やリサイクルも重要。持続可能な社会の実現に向けて業界全体で取り組む必要あり。