6モード排出ガス試験のすべて
車のことを知りたい
先生、「6モード」って初めて聞きました。どんなものですか?
車の研究家
自動車から出る排気ガスに含まれる有害物質の量を測る試験方法の一つだよ。昔、日本で初めて排気ガス規制が始まった時に使われていたんだ。6つの決まった運転状態を再現して、排気ガスに含まれる有害物質の量を測っていたんだよ。
車のことを知りたい
6つの運転状態というのは、どういう状態ですか?
車の研究家
例えば、アイドリング状態や、加速、減速など、街中を走る車を想定した色々なパターンがあるんだよ。 こういった複数の状態での測定結果を総合して、排気ガスの良し悪しを判断していたんだ。今はもっと複雑な「13モード」という測定方法に変わっているけどね。
6モードとは。
「6モード」とは、日本で初めて車の排気ガス規制が始まったとき、排気ガスの量を測る方法のひとつです。6つの決まった運転状態での排気ガスを測るやり方です。具体的には、車をローラーの上、あるいはエンジンだけを専用の装置に設置し、エンジンが温まった状態から測定を始めます。一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物といった有害なガスの濃度を調べます。この6モードという測定方法は、ガソリンやLPGを燃料とする重さ2.5トンを超える車に対して、1973年から使われ始めました。しかし、1992年からはより詳しい13モードという方法に切り替えられました。ディーゼル車の場合は、1974年からすべての車種で6モードが採用されましたが、1986年からは順次、10モードや13モードといった新しい測定方法に変更されています。
はじまり
昭和四十八年、自動車の排気ガスによる大気汚染が社会問題となっていました。経済が急速に発展する中で、自動車の数が急激に増え、それに伴って排気ガスによる空気が汚れることも深刻になってきていました。人々の健康への影響も心配されていました。そこで、きれいな環境を守ろうという機運が高まり、国は自動車を作る会社に対し、排気ガスをきれいにする技術を開発し、車に取り付けることを義務付ける法律を作りました。これが、日本で初めての排気ガス規制の始まりです。
この時に、排気ガスに含まれる有害な物質の量を測る方法として採用されたのが、「六つの状態」と呼ばれる試験方法です。これは、六つの異なる運転状態、例えば、止まっている状態、ゆっくり走る状態、速く走る状態など、を設定し、それぞれの状態で排気ガスに含まれる有害物質の量を測るというものです。この六つの状態での測定結果を総合的に評価することで、自動車から排出される有害物質の量をより正確に把握することができるようになりました。
この「六つの状態」試験は、その後の排気ガス規制の進化に大きな影響を与えました。より厳しい規制へと段階的に引き上げられていく中で、自動車を作る会社は、より高度な排気ガス浄化技術を開発することを迫られました。例えば、排気ガスに含まれる有害物質を触媒という装置を使って無害な物質に変える技術や、エンジンの燃焼効率を上げて有害物質の排出量を減らす技術などが開発され、自動車に取り付けられるようになりました。
昭和四十八年に導入された排気ガス規制と「六つの状態」試験は、日本の自動車の歴史における重要な出来事です。これは、自動車の環境性能向上への第一歩であり、その後の技術革新の基礎を築きました。現在も、自動車の環境性能は進化し続けており、電気自動車や燃料電池自動車など、排気ガスを全く出さない車も登場しています。これらの技術の進歩は、昭和四十八年に始まった排気ガス規制の歴史の上に成り立っていると言えるでしょう。
年度 | 出来事 | 詳細 | 影響 |
---|---|---|---|
昭和48年 | 自動車排ガス規制開始 | 大気汚染の社会問題化を受け、排気ガス浄化技術の開発・搭載を義務付ける法律制定。 「六つの状態」試験方法を採用。 |
日本の自動車の環境性能向上への第一歩。 その後の技術革新(触媒技術、燃焼効率向上技術など)の基礎を築く。 |
試験のやり方
自動車の排気ガス測定試験、6つの運転状態を再現した試験方法について詳しく説明します。この試験は、自動車全体を大きな回転台の上に固定する車両回転台、またはエンジンだけを取り出して回転させるエンジン回転台を用いて行います。車両回転台は、タイヤを回転させることで実際の道路を走る状態を再現する装置であり、エンジン回転台はエンジン単体の回転数を調整する装置です。どちらの装置を使う場合でも、エンジンを十分に温めてから試験を始めます。
試験は、止まった状態でのエンジン回転、速度を上げること、速度を下げること、一定の速度で走ることなど、6つの異なる運転状態を一定時間ずつ繰り返すことで行われます。それぞれの運転状態において、排気ガスの中に含まれる有害物質を採取し、濃度を測定します。測定対象となる有害物質は、主に一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物です。これらは大気を汚染する主な原因物質であり、私たちの健康にも悪影響を与えることが知られています。
有害物質の濃度は、百万分率や百分率といった単位で表されます。そして、得られた測定値が国の定めた基準値以下であるかどうかを確認することで、その自動車が排気ガス規制を満たしているかを判断します。この6つの運転状態を再現した試験方法は、比較的簡単な方法ですが、開発当時の技術では、自動車の排気ガス特性を評価する上で有効な手段でした。今ではより高度な試験方法が用いられていますが、この試験方法は自動車の排気ガス規制の歴史を語る上で重要な役割を果たしました。
項目 | 内容 |
---|---|
試験概要 | 自動車の排気ガス測定試験。6つの運転状態を再現し、排気ガス中の有害物質濃度を測定。 |
試験方法 | 車両回転台またはエンジン回転台を使用。エンジンを十分に温めてから、6つの異なる運転状態を一定時間ずつ繰り返す。 |
試験装置 | 車両回転台:タイヤを回転させ、実際の道路走行状態を再現。 エンジン回転台:エンジン単体の回転数を調整。 |
運転状態 | 止まった状態でのエンジン回転、速度上昇、速度下降、一定速度走行など、6つの状態。 |
測定対象 | 一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物(大気汚染の原因物質であり、健康への悪影響も懸念される) |
測定単位 | 百万分率、百分率など |
合否判定 | 測定値が国の定めた基準値以下であるかどうかを確認。 |
試験の意義 | 開発当時の技術では有効な排気ガス特性評価方法。現在はより高度な方法が用いられるが、自動車の排気ガス規制の歴史において重要な役割を果たした。 |
適用される自動車
自動車から出る排気ガスに含まれる有害物質の量を測る試験方法の一つに、六種類の走行状態を模擬した六モード試験があります。この試験は、元々、燃料にガソリンや液化石油ガスを使う自動車を対象としていました。具体的には、車両全体の重さが二・五トンを超える比較的大型の自動車が、この試験の対象でした。これは、一九七三年、この試験が始まった当初は、主に大型の貨物自動車や乗合自動車を対象としていたためです。
その後、この試験の対象範囲は広がり、普段私たちが利用する乗用車にも適用されるようになりました。しかし、軽油を使うディーゼル自動車については、当初、この試験の対象とはなりませんでした。ディーゼルエンジンはガソリンエンジンとは燃料を燃やす仕組みが違い、排気ガスに含まれる物質の種類や量も異なるため、ガソリン車と同じ試験方法では正確に測ることができなかったからです。ディーゼル自動車に対する排気ガス規制は一九七四年から始まり、六モード試験とは別の方法で測定が行われていました。
その後、ディーゼル自動車にも六モード試験が適用されるようになり、排気ガス規制の対象となる自動車の種類は更に増えました。ただし、ディーゼルエンジンとガソリンエンジンでは排気ガスの性質が異なるため、ディーゼル自動車に六モード試験を適用する際には、試験方法の一部が変更されました。例えば、試験時のエンジンの回転数や負荷をかける時間などが調整されました。
このように、六モード試験は様々な種類の自動車に対し、排気ガス規制を適用するための重要な役割を果たしました。この試験により、自動車メーカーは排気ガスを減らす技術開発を進め、大気汚染の防止に貢献してきました。六モード試験は、その後のより精密な試験方法の開発の土台にもなっており、環境保護の観点からも重要な役割を担ったと言えるでしょう。
対象車両 | 燃料 | 車両重量 | 適用開始年 | 備考 |
---|---|---|---|---|
大型貨物自動車、乗合自動車 | ガソリン、液化石油ガス | 2.5トン超 | 1973年 | |
乗用車 | ガソリン、液化石油ガス | – | 1973年以降 | |
ディーゼル自動車 | 軽油 | – | 1974年 | 六モード試験とは別の方法で測定(後に六モード試験適用、一部変更) |
その後の変化
日本の排気ガス規制において、長らく中心的な役割を担ってきた6種類の運転状態を想定した試験は、技術の進展や世界的な流れを受けて、より高度な試験方法へと移り変わっていきました。今では過去の存在となった6種類の運転状態を想定した試験ですが、1992年からは、より実際に近い運転状態を再現した13種類の運転状態を想定した試験が導入されました。
この13種類の運転状態を想定した試験では、速度の上げ下げの回数や強さを細かく設定することで、街中での走行など、様々な運転状況を再現できるようになりました。従来の6種類の運転状態を想定した試験に比べて、より現実に近い状況での排気ガスの量を測ることができるようになったのです。
ディーゼル車を対象とした排気ガス規制についても変化がありました。1986年以降、ディーゼル車専用の10種類の運転状態を想定した試験や、ガソリン車と共通の13種類の運転状態を想定した試験へと、段階的に切り替えられました。ディーゼル車専用の10種類の運転状態を想定した試験も、13種類の運転状態を想定した試験と同様に、複雑な運転状況を再現できる試験方法です。
これらの新しい試験方法は、より厳しい排気ガス規制に対応するために生まれたものです。自動車を作る会社は、より高度な排気ガス浄化技術の開発に取り組む必要に迫られました。結果として、技術革新が進み、より環境に優しい自動車が作られるようになりました。
6種類の運転状態を想定した試験は、その役割を終えましたが、日本の排気ガス規制の歴史において重要な役割を果たした試験方法として、決して忘れられることはないでしょう。その後のより高度な試験方法の礎となり、日本の大気環境の改善に大きく貢献しました。
試験の種類 | 開始年 | 対象車種 | 詳細 |
---|---|---|---|
6モード試験 | (過去の試験) | ガソリン車 | 6種類の運転状態を想定。日本の排ガス規制の初期段階で中心的な役割を果たした。 |
13モード試験 | 1992年 | ガソリン車 | 13種類の運転状態を想定。より実際に近い運転状態を再現。 |
10モード試験 | 1986年以降 | ディーゼル車 | ディーゼル車専用の試験。複雑な運転状況を再現。 |
13モード試験 | 1986年以降 | ディーゼル車 | ガソリン車と共通の試験。 |
現代の試験方法
自動車の排出ガス測定試験は、時代と共に大きく変わってきました。かつては実験室の中だけで行われていた試験も、今ではより実際に近い道路状況を再現したり、実際に道路を走りながら測定するなど、様々な方法が取り入れられています。
世界的に統一された試験方法である世界統一軽車両試験手順(WLTC)は、より実路に近い走行パターンを再現することで、従来の試験方法よりも正確な排出ガス量の測定を可能にしています。急加速や減速、高速走行といった、私たちが普段運転する際の様々な状況を想定して試験を行うため、実際の道路での排出ガス量をより正確に予測することができます。
また、実路走行排出ガス試験(RDE)は、実際に公道を走行しながら排出ガスを測定する試験方法です。実験室の中だけでは再現が難しい、上り坂や下り坂、渋滞といった様々な道路状況や、気温や湿度といった気象条件も考慮に入れることで、より現実的な排出ガス性能の評価を可能にしています。
日本では、かつて6種類の走行モードで排出ガスを測定する試験が行われていました。しかし、技術の進歩や環境への意識の向上に伴い、より厳しい基準が求められるようになりました。そこで、世界基準に合わせたWLTCやRDEといった、より高度な試験方法が導入されるようになったのです。
これらの新しい試験方法は、より厳しい排出ガス規制を支えるとともに、自動車メーカーによる環境性能の高い自動車の開発を促進しています。 地球環境を守るためには、自動車の排出ガスを減らすことが不可欠です。今後も、技術の進歩に合わせて、試験方法も進化していくことでしょう。
試験方法 | 内容 | メリット |
---|---|---|
従来の試験方法 | 実験室の中で行う | – |
世界統一軽車両試験手順(WLTC) | 実路に近い走行パターンを再現(急加速、減速、高速走行など) | 従来の試験方法よりも正確な排出ガス量の測定、実際の道路での排出ガス量をより正確に予測 |
実路走行排出ガス試験(RDE) | 実際に公道を走行しながら排出ガスを測定(上り坂、下り坂、渋滞、気温、湿度など) | より現実的な排出ガス性能の評価 |
日本の旧試験方法 | 6種類の走行モードで排出ガスを測定 | – |