排気をきれいにする工夫:CHCシステム

排気をきれいにする工夫:CHCシステム

車のことを知りたい

CHCシステムって、なんだか難しそうだけど、簡単に言うとどういう仕組みなのですか?

車の研究家

簡単に言うと、排気ガスをきれいにするための仕組みだよ。エンジンをかけはじめの時に出る汚れを早く減らすために、排気ガスをきれいにする装置をすばやく温めるんだ。

車のことを知りたい

なるほど。でも、どうやって温めるのですか?

車の研究家

水を分解して作った水素を燃やして温めるんだよ。水素は使い切ったら、また水を分解して作るから繰り返し使えるんだ。

CHCシステムとは。

『CHCシステム』とは、化学反応を使って触媒を温める自動車の仕組みのことです。エンジンをかけたばかりの時の排気ガスに含まれる有害物質を減らすための決まりに対応するために考えられました。触媒は温まらないと効果が出ないので、素早く温める必要があるのです。例えば、ボルボの車では、水を電気で分解して水素を作り、それをタンクに貯めておきます。エンジンをかけると、この水素を排気管に送り込んで燃やし、触媒を温めます。触媒が十分に温まると水素の供給は止まり、次にエンジンをかける時に備えて再び水素を作り始めます。この仕組みは、北米向けボルボ70と80シリーズの2001年モデルから使われています。

はじめに

はじめに

自動車の出す排気ガスによる空気の汚れは、地球全体にとって大きな心配事です。世界中の国々で排気ガスに関する決まりが厳しくなる中、自動車を作る会社は様々な新しい技術を開発しようと一生懸命です。その新しい技術の一つが、今回ご紹介するCHC方式です。これは、エンジンをかけたばかりの時の排気ガスをきれいにする画期的な方法です。一体どのような方法なのか、詳しく見ていきましょう。

自動車のエンジンを始動した直後は、エンジンがまだ温まっていないため、排気ガスに含まれる有害物質の量が多くなってしまいます。この有害物質は、空気中の酸素と結びつきにくいため、三元触媒という排気ガスの浄化装置では十分に処理することができません。そこで、CHC方式は、排気ガスを一旦ためておき、エンジンが温まってから浄化する仕組みになっています。

CHC方式の心臓部は、セラミック製のハニカム構造を持つ吸着材です。この吸着材には、排気ガス中の有害物質を吸い付ける無数の小さな穴が開いています。エンジンが始動してしばらくの間、排気ガスはこの吸着材を通過し、有害物質が吸着されます。そして、エンジンが温まり、三元触媒が十分に機能する温度に達すると、吸着材に蓄えられた有害物質は、加熱されて排気ガス中に放出されます。この時、排気ガスは十分に温まっているため、三元触媒で効率的に浄化されるのです。

CHC方式は、エンジン始動直後の有害物質の排出を大幅に減らすことができます。これにより、都市部の大気汚染の改善に大きく貢献することが期待されています。また、この技術は比較的小型でシンプルな構造であるため、様々な種類の自動車に搭載することが可能です。今後、ますます厳しくなる排気ガス規制に対応するために、CHC方式は重要な役割を果たしていくことでしょう。

課題 自動車の排気ガスによる大気汚染
解決策 CHC方式(エンジン始動直後の排気ガス浄化技術)
CHC方式の仕組み
  1. エンジン始動直後、エンジンが冷えているため、排気ガスに含まれる有害物質が多い。
  2. 三元触媒では、低温状態の有害物質を十分に処理できない。
  3. CHC方式は、セラミック製ハニカム構造の吸着材を用いて、有害物質を一時的に吸着。
  4. エンジンが温まり、三元触媒が有効に機能する温度になると、吸着材から有害物質を放出。
  5. 温まった排気ガスは三元触媒で効率的に浄化される。
CHC方式の効果 エンジン始動直後の有害物質排出を大幅に削減、都市部の大気汚染改善に貢献
CHC方式のメリット 小型でシンプルな構造のため、様々な車種に搭載可能

排気ガス浄化の課題

排気ガス浄化の課題

自動車の排出ガス対策は、環境保全の観点から非常に重要です。特に、エンジンを始動した直後は、浄化装置の働きが十分でないため、多くの有害物質が排出されてしまいます。この浄化装置は、触媒と呼ばれ、排気ガス中の有害な物質を無害な物質に変える働きをしています。しかし、触媒は、ある程度の温度に達しないと、その働きを十分に発揮することができません。

エンジンが始動した直後は、触媒の温度が低い、いわゆる冷間始動の状態です。この冷間始動時に、どのようにして有害物質の排出量を少なくするかは、自動車を作る会社にとって大きな課題でした。以前は、エンジンを早く温めるために、余分な燃料を噴射する方法がよく使われていました。しかし、この方法は、燃費が悪くなるという欠点がありました。つまり、燃料を多く使うため、環境に良くないばかりか、運転する人にとっても燃料代がかさんでしまうという問題があったのです。

近年では、技術の進歩により、様々な対策がとられています。例えば、触媒をエンジンの近くに配置することで、排気ガスの熱で触媒を早く温める工夫がされています。他にも、排気ガスをエンジンに戻して燃焼させる方法や、電気ヒーターで触媒を直接温める方法など、様々な技術が開発されています。これらの技術により、冷間始動時でも有害物質の排出量を大幅に削減することが可能となりました。

自動車メーカーは、より環境に優しい車を作るために、日々研究開発に取り組んでいます。将来は、有害物質を全く排出しない車の開発も期待されています。私たちも、環境を守るために、自動車の排出ガス問題に関心を持ち、環境に配慮した運転を心がけることが大切です。

時期 対策 メリット デメリット
以前 余分な燃料噴射 エンジンを早く温める 燃費が悪い
近年 触媒のエンジン近傍配置 排気ガスの熱で触媒を早く温める
近年 排気ガス還流 燃焼効率向上
近年 電気ヒーターによる触媒加熱 触媒を直接温める 電力消費

CHCシステムの概要

CHCシステムの概要

排気浄化装置の心臓部ともいえる触媒。その働きを最大限に引き出すために、いかに早く高温状態にするかが重要な課題です。通常、エンジンが始動した直後は排気温度が低いため、触媒の浄化効率は十分に発揮されません。そこで開発されたのが、化学反応熱を利用した触媒加熱装置、CHCシステムです。

この画期的なシステムは、水の電気分解で水素を作り出すことから始まります。装置内に組み込まれた電気分解装置では、少量の水を電気分解し、水素と酸素を発生させます。生成された水素は、排気管の中に直接噴射されます。排気管内には、エンジンが始動した直後から排気ガスが流れています。この排気ガスの中に水素を噴射することで、水素と排気ガス中の酸素が反応し、燃焼が起こります。

水素の燃焼熱は非常に高く、この熱によって触媒の温度は急速に上昇します。従来のエンジンでは、排気ガスのみで触媒を温めていたため、触媒が十分な温度に達するまでに時間がかかっていました。しかし、CHCシステムでは水素の燃焼熱を利用することで、触媒を短時間で活性化温度まで温めることが可能になります。これにより、排気ガスが浄化され始めるまでの時間を大幅に短縮し、有害物質の排出量を抑制することができます。

さらに、CHCシステムは必要な時に必要な量の水素を生成できるため、非常に無駄がありません。水素を外部から供給する必要がないため、システム全体の簡素化にもつながっています。また、触媒が早く活性化温度に達することで、燃費の向上にも寄与します。これは、冷えた触媒による排気抵抗の増加を抑えることができるためです。このように、CHCシステムは環境性能と燃費性能の両立を実現する、未来志向の技術と言えるでしょう。

CHCシステムの仕組み

CHCシステムの仕組み

車は、寒い時期の始動時に排気ガスが多く出てしまうことが課題でした。これを解決するために、CHCと呼ばれる仕組みが開発されました。CHCとは、冷間始動時に水素を使って排気ガスの浄化を助ける仕組みです。

CHCの働きは、エンジンを始動する前から始まります。まず、車に搭載された装置で水から水素を作り出します。これは、水を電気分解することで実現されます。生成された水素は、すぐに使わずに小さなタンクに一時的に保管されます。

エンジンが始動すると、保管しておいた水素が排気管に送り込まれ、そこで燃焼します。水素が燃える時に発生する熱は、排気ガス浄化の要となる触媒に伝わり、触媒の温度を上げます。触媒は温まっていないと十分に機能しないため、この加熱が重要になります。触媒がある一定の温度に達すると、水素の供給は止まり、通常の排気ガス浄化が始まります。

エンジンが温まると、排気ガス浄化は水素の助けを借りなくても効率的に行えるようになります。水素の生成と供給は、次の冷間始動時に備えて再び行われます。このように、CHCは水素の力を借りて、寒い時期でもスムーズかつ効率的に排気ガスを浄化し、大気を守る役割を果たしているのです。

この一連の動作は、まるでエンジン始動時の儀式のように繰り返されます。水素を作る、水素を貯める、水素を燃やす、触媒を温める。そして、通常の排気ガス浄化に切り替える。このサイクルこそが、CHCシステムの核心であり、環境に優しい車の運転を支える重要な技術と言えるでしょう。

CHCシステムの利点

CHCシステムの利点

排気ガス浄化装置の加熱を早める仕組み、CHC方式には様々な利点があります。自動車のエンジンが始動した直後は、排気ガス浄化装置である触媒の温度が低いため、十分な浄化性能を発揮できません。そこで、CHC方式は水素を使って触媒を素早く温めることで、この問題を解決します。

CHC方式の最も大きな利点は、冷間時の排気ガス浄化性能を飛躍的に向上させることです。従来の加熱方法と比べて、触媒を適切な温度にまで加熱する速度が格段に速いため、有害物質の排出量を大幅に抑えられます。有害物質には、一酸化炭素や窒素酸化物、未燃焼の炭化水素などがあり、これらは大気を汚染し、人の健康にも悪影響を及ぼす物質です。CHC方式は、これらの排出量を効果的に削減することで、環境保全に大きく貢献します。

CHC方式は、地球温暖化対策にも有効です。触媒の加熱に用いる水素は、電気分解によって生成します。電気分解は、水を電気分解して水素と酸素を作り出す方法で、二酸化炭素などの温室効果ガスを排出しないクリーンなエネルギー生成方法です。そのため、CHC方式全体で見ても温室効果ガスの排出削減に繋がり、地球環境への負荷を低減することに貢献します。

環境性能だけでなく、経済的なメリットも見逃せません。触媒が早く温まることで、エンジンがより効率的に稼働するようになり、燃費の向上に繋がります。燃料消費量が減れば、家計の負担軽減にもなります。

CHC方式は、環境性能と経済性を両立させた、次世代の排気ガス浄化装置です。地球環境の保全と持続可能な社会の実現に向けて、CHC方式は重要な役割を担うと考えられます。

項目 内容
概要 エンジン始動直後の低温な触媒を水素を用いて加熱し、排気ガス浄化性能を向上させる方式。
利点
  • 冷間時の排気ガス浄化性能向上:一酸化炭素、窒素酸化物、未燃焼炭化水素などの有害物質排出量を大幅削減。
  • 地球温暖化対策:水素生成に電気分解を用いるため、温室効果ガス排出なし。
  • 経済的メリット:触媒早期加熱によるエンジン効率向上、燃費向上。
効果 環境保全、持続可能な社会の実現に貢献。

CHCシステムの採用事例

CHCシステムの採用事例

排気ガス中の有害物質を減らす画期的な装置として注目を集める「CHCシステム」は、既に幾つかの自動車会社で採用され始めています。中でも先駆けとなったのが、北欧の自動車会社であるボルボです。ボルボ社は、2001年式の70型車と80型車にこの装置を組み込み、北米で売り出しました。北米では排気ガスに関する厳しい決まりがあるため、この装置の採用は大きな反響を呼びました。

CHCシステムは、排気ガスに含まれる有害物質を、高温の触媒で化学反応させて無害な物質に変える仕組みです。従来の装置では、排気ガスが出てすぐは温度が低いため、触媒が十分に働かず、有害物質を処理しきれませんでした。しかし、CHCシステムでは、排気ガスが出てすぐの部分に触媒を温める仕組みが備わっています。これにより、排気ガスが出てすぐでも触媒が十分に働き、有害物質を効率的に処理できるようになりました。

ボルボ社はこの装置を採用することで、環境への負担が少ない自動車を作り、販売することに成功しました。この成功は他の自動車会社にも大きな影響を与え、現在では多くの会社がこの装置の導入を検討しています。CHCシステムは環境問題への関心の高まりとともに、今後ますます重要な技術となると考えられます。近い将来、多くの自動車にこの装置が搭載され、世界の空気がよりきれいになることが期待されます。自動車業界全体の環境への取り組みを加速させる、まさに未来への希望となる技術と言えるでしょう。

項目 内容
装置名 CHCシステム
機能 排気ガス中の有害物質を高温の触媒で化学反応させて無害な物質に変える。排気ガスが出てすぐの部分に触媒を温める仕組みを備えている。
効果 排気ガスが出てすぐでも触媒が働き、有害物質を効率的に処理できる。
採用企業 ボルボ(2001年式70型車と80型車、北米で販売開始)
背景 北米の厳しい排ガス規制
将来性 環境問題への関心の高まりとともに重要な技術となる。多くの自動車への搭載が期待される。