11モード排出ガス試験の解説
車のことを知りたい
先生、『11モード』ってよく聞くんですけど、何のことかよく分かりません。教えてください。
車の研究家
『11モード』は、車の排気ガスに含まれる有害な物質の量を測る試験方法の名前だよ。11種類の運転パターンでテストをするから、『11モード』っていうんだ。
車のことを知りたい
11種類の運転パターンですか?具体的にはどんなことをするんですか?
車の研究家
例えば、止まっている状態から走り出す、加速する、減速する、一定の速度で走るといった、街中での運転を想定したパターンを組み合わせてテストするんだよ。 車を暖機運転せずに、冷えた状態から始めることで、より実際の運転に近い状態で排気ガスを測定できるんだ。
11モードとは。
『11モード』とは、日本で1975年から現在まで使われている、自動車の排気ガス量の測定方法の一つです。これは、11種類の運転パターンに基づいてテストを行う方法です。具体的には、郊外を走る時のような走り方(最高速度は時速60キロメートル)を想定したテストで、ガソリンやLPガスを燃料とする、車両総重量3.5トン以下の車に適用されます。テストを行う際は、室温25度の場所に車を6時間以上置いておき、その後、シャーシダイナモメーターという装置に車を設置します。エンジンの温度が常温の状態でエンジンをかけ始め、一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物といった排気ガスの量を測定します。
排出ガス規制の概要
自動車の出す煙による空気の汚れは、私たちの体や周りの自然に大きな悪い影響を与えるため、世界のどの国でも煙に関する決まりが厳しく決められています。日本では、1960年代から自動車の出す煙に関する決まりが始まり、時代とともに決まりは厳しくなってきました。特に近頃では、地球が暖かくなることや空気の汚れ問題への関心の高さから、より厳しい目標値が設けられています。
このため、自動車を作る会社は煙をきれいにする技術の開発に力を入れており、排気ガスをきれいにする装置や排気ガスを再び使う仕組みなど、色々な技術が使われています。例えば、排気ガスをきれいにする装置は、自動車の煙突に取り付けられ、煙の中の有害な物を無害な物に変える働きをします。排気ガスを再び使う仕組みは、エンジンから出た煙の一部を再びエンジンに戻すことで、有害な煙の発生を抑えることができます。
これらの技術の進歩によって、自動車から出る煙は大きく減り、空気の状態の改善に役立っています。たとえば、かつて都心の道路では、自動車の煙で空がかすんで見えにくくなることもありましたが、今ではそのようなことはほとんどありません。また、ぜんそくなどの呼吸器系の病気で苦しむ人も減ってきています。
これから先も、更なる技術開発や決まりの強化によって、よりきれいな自動車社会が実現すると期待されます。例えば、電気自動車や燃料電池自動車など、煙を全く出さない自動車の普及も進んでいます。また、バイオ燃料など、環境に優しい燃料の開発も進められています。これらの技術や燃料が広く使われるようになれば、空気はもっときれいになり、人々の健康も守られるでしょう。
項目 | 内容 |
---|---|
問題点 | 自動車の排気ガスによる大気汚染 |
対策 | 排気ガス規制の強化、排気ガス浄化装置、排気ガス再利用技術、電気自動車・燃料電池自動車の普及、環境に優しい燃料の開発 |
効果 | 大気汚染の減少、ぜんそく等の呼吸器系疾患の減少 |
将来の展望 | 更なる技術開発、規制強化、クリーンな自動車社会の実現 |
11モード試験とは
11種類走行様式試験は、昭和50年から現在に至るまで、日本で採用されている排出ガス測定方法の一つです。この試験は、主に郊外の道路を想定した走行を再現しており、最高速度は時速60キロメートルに制限されています。都市部での走行は想定されていません。11種類の異なる運転の組み合わせによって、実際の走行状態に近い形で排出ガス量を測ることができます。
具体的には、停止状態からの発進、速度を上げていく加速、一定の速度での走行、速度を落としていく減速といった一連の動作を繰り返すことで、様々な走行状況を再現します。これにより、停止時、発進時、加速時、定速走行時、減速時など、それぞれの状況における排出ガス量を総合的に評価することが可能となります。この試験方法は、ガソリンを燃料とする車や液化石油ガスを燃料とする車を対象としており、車両総重量が3.5トン以下の自動車に適用されます。大型車やディーゼル車は対象外です。
11種類走行様式試験は、実際の道路状況を完璧に再現するものではありませんが、一定の基準に基づいて排出ガス量を測定することで、自動車メーカー各社が排出ガス低減技術の開発に取り組むための指標として、重要な役割を果たしてきました。長年にわたり、日本の排出ガス規制の土台を支え、大気汚染の防止に貢献してきた重要な試験方法と言えるでしょう。しかし、技術の進歩や環境問題への意識の高まりとともに、より実走行に近い形で排出ガス量を測定できる試験方法の必要性が高まってきており、今後の動向が注目されます。
項目 | 内容 |
---|---|
試験名称 | 11種類走行様式試験 |
実施時期 | 昭和50年~現在 |
想定走行環境 | 郊外の道路 (最高速度60km/h) |
測定目的 | 実際の走行状態に近い排出ガス量の測定 |
評価対象 | 停止時、発進時、加速時、定速走行時、減速時など、様々な状況における排出ガス量 |
対象車両 | ガソリン車、液化石油ガス車 (車両総重量3.5トン以下) |
非対象車両 | 大型車、ディーゼル車 |
試験の意義 | 排出ガス低減技術開発の指標、日本の排出ガス規制の土台、大気汚染防止に貢献 |
今後の展望 | より実走行に近い試験方法の必要性が高まっている |
試験方法の詳細
自動車の排ガス検査方法のひとつである11種類走行模擬試験について、詳しく説明します。この試験は、気温25度の一定温度に保たれた部屋に車を6時間以上置いて行います。これは、エンジンが冷え切った状態、よく冷間始動と呼ばれる状態を再現するためです。長時間置くことで、エンジン内部の温度が十分に下がり、実際の使用状況に近い状態を作り出すことができます。
試験を行う際は、シャーシダイナモメーターと呼ばれる装置に車を載せます。この装置は、タイヤを回転させることで、実際の道路を走る状況を再現します。タイヤの回転速度や負荷を調整することで、様々な走行状態を作り出すことが可能です。試験が始まると、あらかじめ決められた11種類の運転パターンに従って車を走らせます。この11種類の運転パターンには、発進、停止、加速、減速、定速走行など、街中や郊外での一般的な走行状態が含まれています。そして、各パターンで排出されるガスを採取し、成分ごとに分析します。
排出ガスには、一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物など、大気を汚染する様々な物質が含まれています。これらの物質は、地球温暖化や大気汚染の原因となるため、その排出量を厳しく規制することが重要です。試験では、高度な分析機器を用いて、これらの物質の濃度を精密に測定します。得られた測定値は、国の定める環境基準値と比較され、その車が規制を満たしているかどうかが判断されます。11種類走行模擬試験は、環境保護のために重要な役割を担っており、正確な測定が不可欠です。そのため、試験を行う設備や手順は厳格に管理され、常に高い精度が保たれるように努められています。
項目 | 内容 |
---|---|
試験名 | 11種類走行模擬試験 |
目的 | 自動車の排ガス成分の測定・環境基準適合判定 |
事前準備 | 車両を25℃の恒温室に6時間以上保管(冷間始動状態の再現) |
試験装置 | シャーシダイナモメーター(タイヤ回転速度・負荷調整による様々な走行状態再現) |
試験手順 | 11種類の運転パターン(発進、停止、加速、減速、定速走行など)に沿って走行 各パターンで排出ガスを採取・分析 |
測定対象 | 一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物など |
合否判定 | 測定値と国の環境基準値を比較 |
備考 | 地球温暖化、大気汚染物質の排出規制のため、試験設備・手順は厳格に管理・高精度維持 |
他の試験方法との比較
自動車の排ガス測定試験は、大気汚染を防ぐ上で非常に大切な役割を担っています。世界各国で様々な試験方法が採用されていますが、それぞれ走行パターンや測定項目が異なり、その国の交通事情や環境問題に合わせたものとなっています。日本では長年、11モード試験が採用されてきました。これは、市街地でのストップ・アンド・ゴーを想定した試験で、信号の多い日本の道路状況を反映したものと言えます。
しかし、11モード試験は実際の走行状態を十分に再現できていないという指摘もありました。より実態に近い排出ガス量を測定するため、ヨーロッパではJC08モード、アメリカではFTP-75モードといった試験方法が開発され、活用されています。JC08モードは、より高い速度域や加速・減速を含む走行パターンを採用しており、高速道路での走行も考慮されています。一方、FTP-75モードは、都市部での走行を想定したもので、渋滞時の影響なども評価に組み込まれています。
このように各国で異なる試験方法を用いることは、自動車メーカーにとって負担となっています。試験ごとに車両を調整する必要があり、開発コストの増加につながるからです。そこで、国際的な調和の観点から、世界共通の試験方法であるWLTP(乗用車等の国際調和排出ガス・燃費試験法)への移行が進められています。WLTPは、より現実的な走行パターンを採用し、排出ガス量だけでなく燃費も測定することで、地球環境の保全に貢献することが期待されています。
11モード試験はすでに廃止され、日本もWLTPに移行しました。これにより、国際基準に合わせたより精度の高い排出ガス測定が可能となり、地球規模での環境問題解決への取り組みが一層強化されるでしょう。また、自動車メーカーにとっても、開発の効率化やコスト削減につながることが期待されます。
試験方法 | 地域 | 特徴 |
---|---|---|
11モード試験 | 日本(廃止) | 市街地走行(ストップ・アンド・ゴー)を想定。日本の道路状況を反映。だが、実走行との乖離が指摘された。 |
JC08モード | ヨーロッパ | 高速度域、加速・減速を含む走行パターン。高速道路走行も考慮。 |
FTP-75モード | アメリカ | 都市部走行を想定。渋滞時の影響も評価。 |
WLTP | 世界共通 | 現実的な走行パターン。排出ガス量と燃費を測定。国際的な調和を目指し、各国へ移行が進められている。 |
今後の展望と課題
排出ガス規制の中心を担ってきた11種類のパターンで排出ガスを計測する試験方法は、長い年月をかけて日本の大気を守る役割を果たしてきました。しかし、時代の流れと共に、技術の進歩と共に、新たな問題点が浮かび上がってきています。近年、街中でよく見かけるようになった電気で走る車や、電気とガソリンの両方で走る車など、従来のガソリンで走る車とは異なる排出ガスの特徴を持つ車が数多く普及してきました。そのため、これらの新しいタイプの車に対応した試験方法を新たに作る必要に迫られています。
また、実際の道路を走る時の状況をより正確に再現した試験方法を作ることも大きな課題です。11種類のパターンで排出ガスを計測する試験は、あらかじめ決められた走行パターンに基づいた試験なので、実際の道路状況での排出ガス量を完全に再現できているとは言えません。より実際に近い走行条件を考えた試験方法を作ることは、これからの排出ガス規制の正確さを高める上で欠かせません。
さらに、世界各国で足並みを揃えることも重要な課題です。世界各国で異なる試験方法が使われている現状は、車の製造会社の開発負担を増やすだけでなく、世界での競争力を弱めることにも繋がりかねません。世界共通の試験方法を作ることで、これらの問題を解決し、より効果的な排出ガス規制を実現できると期待されています。例えば、WLTCモードと呼ばれる試験方法は、世界的に統一化の流れにある試験方法であり、より実走行に近い排出ガス量を計測できるとされています。この方法を導入することで、国際的な調和を図りつつ、より精度の高い排出ガス規制が可能となります。日本の自動車産業が国際競争力を維持するためにも、WLTCモードへの移行は重要な課題と言えるでしょう。
課題 | 詳細 |
---|---|
新しいタイプの車への対応 | 電気自動車やハイブリッド車など、新しいタイプの車に対応した排出ガス試験方法の開発が必要。 |
実走行への適合 | 従来の11モード試験では実際の道路状況を再現できないため、より実走行に近い試験方法の開発が求められる。 |
国際的な調和 | 世界各国で異なる試験方法を統一し、WLTCモードのような世界共通の試験方法を導入することで、開発負担の軽減や国際競争力の強化を図る。 |
まとめ
自動車から出る排出ガスを測るやり方の一つに、11モード試験というものがあります。この試験は、日本の郊外を想定した道路を走る時のように、自動車の速度を変化させながら、排出ガスに含まれる有害物質の量を測るものです。これまで、ガソリン車や液化石油ガス車といった、広く使われている自動車から出る排出ガスを測ることで、空気の汚れを減らすことに役立ってきました。
この11モード試験は、街中を走る自動車を想定して作られた試験です。そのため、信号待ちで止まっている時や、発進・加速する時、一定速度で走る時など、様々な運転状況を再現しています。このようにして測られた排出ガス量は、自動車の環境性能を示す大切な指標となり、国が定めた排出ガス規制の基準を満たしているかを確かめるために使われてきました。
しかし、自動車の技術は日々進歩し、種類も多様化しています。ハイブリッド車や電気自動車、燃料電池車など、新しいタイプの自動車が登場する中で、従来の11モード試験だけでは、すべての自動車の環境性能を正確に測ることが難しくなってきています。また、世界各国で環境規制の基準を統一しようという動きがある中で、国際的な基準に合わせた試験方法の導入も求められています。
より正確で、様々な種類の自動車に対応できる新しい排出ガス測定技術を開発することが、これからの課題です。自動車を作る会社や研究機関、国などが協力して、より高度な技術を生み出す必要があります。それと同時に、私たち一人ひとりが環境問題について真剣に考え、環境に優しい自動車を選ぶことも大切です。一人ひとりの行動が、地球環境を守ることにつながるのです。
項目 | 内容 |
---|---|
11モード試験概要 | 日本の郊外を想定した道路を走る際の様々な速度変化を再現し、排出ガスに含まれる有害物質の量を測定する試験。 |
11モード試験の目的 | 自動車の環境性能を評価し、排出ガス規制の基準適合性を確認。 |
11モード試験の運転状況 | 信号待ち、発進・加速、一定速度走行など、街中での様々な運転状況を再現。 |
11モード試験の課題 |
|
今後の展望 |
|