快適な走りを実現する車体制御の技術

快適な走りを実現する車体制御の技術

車のことを知りたい

『アクティブサスペンション用油圧アクチュエーター』って、車体をジャッキみたいに上下させる部品ってことで合ってますか?

車の研究家

そうだね。ただ、ジャッキとは違って、上下だけでなく、前後左右の動きにも対応しているんだよ。車に備え付けられた「油圧アクチュエーター」という部品が、油の力を利用して、まるで車体が浮いているかのように、細かく制御しているんだ。

車のことを知りたい

油の力で制御…って、具体的にはどのように動くんですか?

車の研究家

簡単に言うと、油圧アクチュエーターの中には油が蓄えられていて、その油の出し入れを細かく調整することで、車高や動きを制御しているんだ。例えば、車が右に傾こうとすると、右側の油圧アクチュエーターに油を送って車体を支え、傾きを少なくする。この油の出し入れの調整がとても速いので、路面の凹凸や車の動きに合わせて、滑らかに制御できるんだよ。ちなみに、普段はばねも併用して、油圧の負担を減らしているんだ。

アクティブサスペンション用油圧アクチュエーターとは。

車体を支える仕組みに関する言葉「アクティブサスペンション用油圧アクチュエーター」について説明します。これは、外部から力を与えられた油を使って、車体をジャッキのように持ち上げる装置です。油の力の制御が速いという特徴を生かしています。日産シーマで使われているこの装置は、油の力を使う筒、自由に動く壁のついた小さな油だめ、そして揺れを抑える弁が一つになった、支柱のような形をしています。車の高さや前後左右の動き、揺れの速さなどを調べて、前後の油の圧力を調整する弁で、大きな油だめと小さな油だめの間の油の圧力のバランスをとりながら、油の圧力の強さと出し入れを調整します。この装置のそばには、油の力が働いていない時に車の高さを保ち、必要な油の力を減らすための、コイルばねが備えられています。

油圧式アクチュエーターとは

油圧式アクチュエーターとは

油圧式作動装置とは、油の圧力を用いて機械を動かす装置のことです。油圧とは、閉じ込められた油に力を加えると、その力が油全体に伝わる性質を利用したものです。この装置は、自動車をはじめ、建設機械や航空機など、様々な分野で幅広く活用されています。

自動車においては、古くからブレーキシステムやパワーステアリングなどに油圧式作動装置が採用されてきました。ブレーキペダルを踏むと、その力が油の圧力に変換され、ブレーキパッドをディスクに押し付けて車を停止させます。パワーステアリングも同様に、油圧を利用することで、ハンドル操作を軽く滑らかにしています。

近年では、乗り心地の向上と走行安定性の確保を両立させるために、サスペンションシステムにも油圧式作動装置が用いられるようになってきました。従来の金属バネや空気バネを用いたサスペンションとは異なり、油圧式作動装置は、路面状況や運転状況に応じて、車体の姿勢をきめ細かく調整することが可能です。

例えば、急ブレーキを踏んだ際に、車体が前のめりになるのを抑え、安定した姿勢を保つことができます。また、カーブを曲がるときには、車体の傾きを抑制し、乗員に不快感を与えることなく、スムーズなコーナリングを実現します。

さらに、路面の凹凸に合わせて、各車輪にかかる力を個別に調整することで、振動を吸収し、快適な乗り心地を提供します。高速道路では車高を低くして空気抵抗を減らし、燃費を向上させることも可能です。このように、油圧式作動装置は、自動車の安全性、快適性、そして環境性能の向上に大きく貢献していると言えるでしょう。

装置 用途 メリット
油圧式作動装置 機械を動かす 様々な分野で活用
安全性、快適性、環境性能の向上
ブレーキシステム ブレーキペダルを踏むと、油圧でブレーキパッドをディスクに押し付け停止
パワーステアリング 油圧を利用しハンドル操作を軽く滑らかにする
サスペンションシステム 路面状況や運転状況に応じて車体の姿勢を調整 急ブレーキ時の姿勢制御
カーブ時の傾き抑制
路面凹凸への対応
車高調整

アクティブサスペンションの仕組み

アクティブサスペンションの仕組み

車は路面を走る以上、どうしても振動が発生してしまいます。この振動を抑え、快適な乗り心地と走行安定性を確保するのが、ばねと油圧緩衝器(ショックアブソーバー)で構成されたサスペンションです。

従来のものは、ばねの硬さや緩衝器の減衰力が固定された受動的なものでした。これを受動サスペンションと呼びます。一方、能動サスペンションと呼ばれるものがあり、これは路面状況や走行状態、運転操作に合わせて、ばねの硬さや緩衝器の減衰力を自動的に調整する機構を備えています。

能動サスペンションの心臓部は、油圧式作動装置です。この作動装置は、コンピューターからの指示で伸縮し、車高やばねの硬さを変える役割を担います。コンピューターは、車体各所に設置されたセンサーからの情報に基づいて油圧式作動装置を制御します。

これらのセンサーは、路面の凹凸や車体の傾き、加速度、旋回速度、運転操作などを常時監視しています。例えば、路面の凹凸を検知すると、コンピューターは油圧式作動装置を制御し、緩衝器の減衰力を柔らかくすることで衝撃を吸収します。また、カーブを曲がるときには、車体の傾きを抑えるために外側の緩衝器を硬く、内側の緩衝器を柔らかく調整します。

このように、能動サスペンションは、様々な状況に合わせてサスペンションの特性を変化させることで、常に最適な状態を保ちます。これにより、乗員に快適な乗り心地を提供するだけでなく、高い走行安定性優れた操縦性も実現しています。急ブレーキや急ハンドルといった場面でも、車体の姿勢を安定させ、運転者の負担を軽減する効果も期待できます。

サスペンションの種類 説明 構成要素 制御 効果
受動サスペンション ばねの硬さや緩衝器の減衰力が固定 ばね、油圧緩衝器(ショックアブソーバー)
能動サスペンション 路面状況や走行状態、運転操作に合わせて、ばねの硬さや緩衝器の減衰力を自動的に調整 ばね、油圧緩衝器、油圧式作動装置、センサー、コンピューター センサーの情報に基づき、コンピューターが油圧式作動装置を制御 路面凹凸の衝撃吸収、車体傾きの抑制、乗り心地向上、走行安定性向上、操縦性向上、急ブレーキ/急ハンドル時の姿勢安定

日産シーマの事例

日産シーマの事例

日産自動車を代表する高級車、シーマは、その快適な乗り心地と優れた走行性能で知られています。この性能を支える重要な技術の一つが、独自のアクティブサスペンションシステムです。

この画期的なシステムは、油圧を利用した装置を緻密に制御することで、路面からの様々な衝撃を吸収し、まるで魔法のじゅうたんに乗っているかのような滑らかな乗り心地を実現しています。

システムの心臓部には、油圧で動く力発生装置、圧力を蓄える小さな圧力タンク、そして揺れを調整する弁が一体となった、柱のような形をした装置が採用されています。この一体構造により、各部品の連携が強化され、まるで熟練の職人の手仕事のように、きめ細やかな制御を可能にしています。

自動車は走行中に様々な動きをします。上下に揺れたり、前後に加速したり、カーブでは横に傾いたり、また、乗員数や荷物の量によって車高も変化します。このシステムは、これらの動きを様々な装置で常時監視しています。そして、得られた情報に基づいて、前後の油圧制御弁が、大きな圧力タンクと小さな圧力タンクの間の圧力のバランスを調整し、油圧の力加減と油の出し入れを制御します。

路面の凹凸などによる振動が発生すると、システムは瞬時に反応し、油圧を制御することで衝撃を吸収します。これにより、乗員はまるで静かな水面を滑るボートに乗っているかのような、フラットな乗り心地を体感できます。

また、カーブを曲がるときや車線を変更するときには、車体が傾きがちですが、このシステムは油圧を調整することで車体の傾きを抑え、安定した走行を維持します。これにより、乗員は急な動きによる不快感を感じることなく、快適で安全なドライブを楽しむことができます。まさに、シーマの快適性と走行性能を象徴する技術と言えるでしょう。

日産シーマの事例

補助的なコイルばねの役割

補助的なコイルばねの役割

日産シーマに搭載されている先進的な乗り心地制御装置は、油圧の力を用いて車体の揺れを抑えています。しかし、この装置は常に油圧を使うと、燃費が悪くなってしまうという課題がありました。そこで、油圧を使う装置に加えて、コイルばねも一緒に使うことで、この課題を解決しています。

普段、車は、このコイルばねによって支えられています。コイルばねは、ちょうど、体重計に乗った時のように、車の重さを常に支え続ける役割を果たしています。そのため、油圧を使う装置は、車が大きく揺れた時など、特別な場合にだけ働くように設計されています。これは、家の照明と同じで、必要な時だけ点灯することで電気を節約するのと似ています。

このコイルばねのおかげで、油圧を使う装置が常に高い圧力を出す必要がなくなり、装置全体の大きさと重さを減らすことにも成功しました。小さな装置は、車の中の限られた場所に設置しやすいため、設計の自由度も高まります。

もし、コイルばねが無かったとしたら、油圧の装置だけで車の重さを支え続けなければなりません。これは、常に重い荷物を持って立っているようなもので、非常に多くの力が必要です。油圧の装置に常に大きな負担がかかると、装置の寿命が短くなってしまうだけでなく、燃費も悪化してしまいます。

このように、一見すると単純なコイルばねですが、先進的な乗り心地制御装置と組み合わせることで、燃費の向上、装置の小型化・軽量化、そして快適な乗り心地の実現に大きく貢献しているのです。まるで縁の下の力持ちのように、目立たないながらも重要な役割を担っていると言えるでしょう。

構成要素 役割 メリット
油圧制御装置 車体の大きな揺れを抑える(必要な時だけ作動) 燃費向上、装置の小型化・軽量化
コイルばね 常に車の重さを支える 油圧制御装置の負担軽減、燃費向上、快適な乗り心地

快適性と操縦性の向上

快適性と操縦性の向上

乗り物の揺れを抑え、心地よい乗り感と優れた操縦性を両立させる技術、アクティブサスペンションについて詳しく見ていきましょう。

従来のサスペンションは、あらかじめ決められた硬さで衝撃を吸収するだけでしたが、アクティブサスペンションは違います。路面の状況や、車の速度、ブレーキやハンドルの操作など、刻々と変化する状況に合わせて、サスペンションの硬さを自動的に調整します。

デコボコ道では、サスペンションを柔らかくすることで、路面の凹凸をしっかりと吸収し、まるで絨毯の上を走るような滑らかな乗り心地を実現します。車体が上下に揺すられる不快感を最小限に抑えるので、長距離の運転でも疲れにくく、乗っている人みんなが快適に過ごせます。

一方、急ブレーキをかけたり、急にハンドルを切ったりする場面では、サスペンションを硬くすることで、車体の傾きや揺れを抑え、安定した姿勢を保ちます。これにより、ドライバーは的確に車を操ることができ、危険を回避しやすくなります。

さらに、スポーティーな走りを楽しむときにも、アクティブサスペンションは大きな役割を果たします。カーブを曲がるときには、外側のサスペンションを硬く、内側のサスペンションを柔らかく調整することで、車体を路面にしっかりと密着させ、安定したコーナリングを実現します。まるで地面に吸い付くような感覚で、思い通りのラインを走ることができます。

このように、アクティブサスペンションは、様々な状況に合わせてサスペンションの働きを最適化することで、快適性と操縦性を高い次元で両立させ、乗る人すべてに最高のドライビング体験を提供する、まさに先進技術と言えるでしょう。

状況 サスペンションの挙動 効果
デコボコ道 サスペンションを柔らかくする 路面からの衝撃を吸収し、滑らかな乗り心地を実現。車体の揺れを抑え、長距離運転の疲労を軽減。
急ブレーキ/急ハンドル サスペンションを硬くする 車体の傾きや揺れを抑え、安定した姿勢を保つ。危険回避能力の向上。
コーナリング 外側を硬く、内側を柔らかく調整 車体を路面に密着させ、安定したコーナリングを実現。