デュオサーボブレーキの仕組みと特徴

デュオサーボブレーキの仕組みと特徴

車のことを知りたい

先生、「デュオサーボ」ってブレーキの仕組みがよくわからないんですけど、簡単に説明してもらえますか?

車の研究家

いいよ。「デュオサーボ」は、ドラムブレーキの一種で、前にも後ろにも同じくらい強くブレーキがかかる仕組みだよ。普通のドラムブレーキだと、回転する方向によって強く効くシューと弱く効くシューがあるんだけど、「デュオサーボ」はシューどうしがつながっていて、両方とも強く効くようになっているんだ。

車のことを知りたい

両方とも強く効くんですか?すごいですね!でも、つながっているっていうのが、ちょっとイメージしづらいです…。

車の研究家

そうだね。シューの間には「シューアジャスター」っていう部品があって、それでつながっているんだ。片方のシューがドラムに押し付けられると、アジャスターを介してもう片方のシューも押し付けられる。だから両方とも強くブレーキがかかるんだよ。ただし、摩擦の具合で効き方が変わったり、片効きしやすいっていう欠点もあるけどね。

デュオサーボとは。

『デュオサーボ』という車のブレーキの仕組みについて説明します。これは、主に小型トラックの後輪で使われているドラムブレーキの一種です。

普通のドラムブレーキには、『リーディングシュー』と『トレーリングシュー』という二つの部品があり、前へ進むときはリーディングシューが、後ろへ進むときはトレーリングシューが主にブレーキを効かせます。デュオサーボブレーキも二つの部品でできていますが、前進でも後退でも、両方の部品がリーディングシューのように強くブレーキを効かせる仕組みになっています。

二つの部品の間には『シューアジャスター』という部品で繋がっていて、片方の部品が動くともう片方の部品も一緒に動きます。ブレーキペダルを踏むと、シリンダーからの力で片方の部品がドラムに押し付けられ、同時にシューアジャスターを介してもう片方の部品もドラムに押し付けられます。そのため、普通のドラムブレーキよりも大きな制動力が得られます。

しかし、ブレーキの効き具合が部品の摩擦の程度に影響されやすく、熱によって効き目が変わったり、部品の当たり具合によってブレーキの効き方にムラが生じたりする欠点もあります。

はじめに

はじめに

{車を安全に止めるために欠かせない装置の一つ、ブレーキ。その中でも、ドラムブレーキという種類の中に、一風変わった仕組みを持つ「デュオサーボブレーキ」というものがあります。これは、自己倍力作用と呼ばれる、ブレーキペダルを踏む力を増幅させる働きが特徴です。

このブレーキの仕組みは少し複雑です。ブレーキペダルを踏むと、まず第一のシューと呼ばれる部品が回転するドラムに押し付けられます。すると、ドラムの回転によってこのシューはさらに強くドラムに押し付けられる力が生まれます。これが自己倍力作用の始まりです。そして、この第一のシューの動きに連動して、第二のシューもドラムに押し付けられます。この二つのシューがドラムを挟み込むことで、強力な制動力が発生するのです。

デュオサーボブレーキの最大の利点は、その強力な制動力です。少しのペダル操作で大きな制動力を得られるため、ドライバーの負担を軽減できます。特に重い車や、荷物をたくさん積んだ車には効果的です。

しかし、デュオサーボブレーキには、摩擦の状態変化に敏感という弱点があります。ドラムやシューの表面が水で濡れていたり、摩耗していたりすると、自己倍力作用がうまく働かず、制動力が不安定になることがあります。また、左右の車輪でブレーキの効き具合に差が出やすいという欠点もあります。これは、左右のドラムやシューの状態が完全に同じではないため、自己倍力作用の大きさが左右で異なってしまうことが原因です。

このように、デュオサーボブレーキは強力な制動力を持ちながら、安定した性能を維持することが難しいという側面も持ち合わせています。そのため、現在では他のブレーキ方式に取って代わられ、あまり使われなくなっています。しかし、その独特な仕組みはブレーキ技術の発展における重要な一歩であり、学ぶべき点が多いと言えるでしょう。

項目 内容
種類 ドラムブレーキ
特徴 自己倍力作用による強力な制動力
仕組み 1. ペダル操作で第一のシューがドラムに押し付けられる
2. ドラムの回転により第一のシューがさらに強く押し付けられる(自己倍力作用)
3. 第一のシューの動きに連動し、第二のシューもドラムに押し付けられる
4. 二つのシューがドラムを挟み込み制動
利点 強力な制動力によりドライバーの負担軽減、重い車や荷物が多い車に効果的
欠点 摩擦の状態変化に敏感で制動力が不安定になりやすい、左右の車輪でブレーキの効き具合に差が出やすい
現状 他のブレーキ方式に取って代わられ、あまり使われていない

機構

機構

二組の制動部品を用いる太鼓式停止装置、通称『両作用式太鼓停止装置』について解説します。これは、前後に動く二つの制動片が、常に制動力を高める方向に働く特殊な仕組みを持つ装置です。

一般的な太鼓式停止装置では、制動片は回転する太鼓の内側に押し付けられて車輪の回転を止めます。この時、回転方向によって制動力が大きく変わる『片効き』という現象が発生します。回転と同じ方向に押し付けられる制動片は、回転力によって更に太鼓に押し付けられ、制動力が高まります。これを『進む制動片』と呼びます。反対に、回転と逆方向に押し付けられる制動片は、回転力によって太鼓から離れる方向に力が働き、制動力は弱まります。これを『戻る制動片』と呼びます。

両作用式太鼓停止装置は、この片効きの問題を解消するために、二つの制動片を常に『進む制動片』として機能させる工夫が凝らされています。秘密は制動片の支点にあります。通常の太鼓式停止装置では、制動片の支点は固定されていますが、両作用式では、支点が特殊な調整器で繋がれており、車輪の回転方向に応じて支点が揺れ動きます

例えば、車が前進している時は、二つの制動片はどちらも前進時の『進む制動片』として働きます。そして、車が後退している時は、支点が反対側に揺れ動き、二つの制動片はどちらも後退時の『進む制動片』として働きます。このように、常に二つの制動片が制動力を高める方向に働くため、前進時と後退時で安定した制動力を得ることが可能となります。この画期的な仕組みが、両作用式太鼓停止装置の最大の特徴と言えるでしょう。

利点

利点

二組の制動部品を持つ、デュオサーボブレーキについて解説します。このブレーキ方式には多くの利点があり、中でも特筆すべきはその優れた制動力です。一般的な乗用車でよく使われるリーディングトレーリング方式では、一つの車輪につき、片方の制動部品だけが進行方向に押されて強く効き、もう片方は逆方向に引かれて弱く効くようになっています。これに対し、デュオサーボブレーキは二組の制動部品が両方とも進行方向に押される構造です。そのため、常に両方の制動部品が強く効き、リーディングトレーリング式よりも大きな制動力を発生させることができます。

この高い制動力は、特に重い荷物を運ぶ小型トラックにとって大きな恩恵となります。荷物を積んだ車は当然重くなり、止まるためにより大きな力が必要となります。デュオサーボブレーキは、そのような状況でもしっかりと制動力を発揮し、安全に停止させることができるのです。急な停止が必要な場面でも、制動距離を短くすることができるので、事故の危険性を大幅に低減できます。これは、ドライバーにとって大きな安心材料となるでしょう。

さらに、デュオサーボブレーキは構造が比較的単純であることも利点です。部品点数が少ないため、製造にかかる費用を抑えることができます。また、構造が単純ということは、整備や点検もしやすいことを意味します。複雑な機構がないため、故障のリスクも低く、維持管理の手間と費用を軽減できるでしょう。これらの利点から、デュオサーボブレーキは小型トラックだけでなく、様々な車種への応用が期待されています。

項目 説明
制動力 二組の制動部品が進行方向に押されるため、リーディングトレーリング式よりも大きな制動力を発生。
効果 重い荷物を積んだ小型トラックなど、大きな制動力を必要とする車両に有効。制動距離を短縮し、安全性向上。
構造 比較的単純で部品点数が少ない。
メリット 製造コスト、整備費用、維持管理の手間を軽減。故障リスクも低い。

欠点

欠点

二つの働きを持つ優れた制動力を持つデュオサーボブレーキですが、弱点もいくつか抱えています。まず、ブレーキ部品の摩擦を生み出す素材の性能変化の影響を受けやすいことが挙げられます。気温の変化や湿気、部品のすり減りなどによって素材の性能が変わると、左右の車輪にかかるブレーキの力のつり合いが崩れ、片方の車輪だけが強くブレーキがかかったり、ブレーキの効きが悪くなる現象が起きやすくなります。これは、安定した制動力を保つのが難しく、安全運転を行う上で大きな問題となります。

また、ブレーキ部品の当たり具合が均一でない場合も、ブレーキの力の偏りが生じます。これは、ブレーキの効きが悪くなったり、不快な音や振動が発生する原因となります。たとえ部品が新品であっても、車輪の回転に伴う遠心力や熱の影響で、部品の形や性能が変化し、当たり具合が不均一になる可能性があります。特に、急ブレーキや長時間のブレーキ操作を繰り返すと、この現象が顕著に現れます。

さらに、構造が複雑なため、点検や調整に手間がかかることも欠点の一つです。ブレーキの部品の摩耗や損傷を早期に発見し、適切な処置を行うためには、定期的な点検と調整が欠かせません。しかし、デュオサーボブレーキは、部品点数が多く、構造が複雑なため、点検や調整には専門的な知識と技術が必要です。そのため、整備費用が高額になる場合もあります。これらのことから、日頃の運転における丁寧なブレーキ操作や、定期的な点検整備は非常に重要です。安全で快適な運転を続けるためには、デュオサーボブレーキの長所と短所を正しく理解し、適切な使用方法とメンテナンスを心掛ける必要があります。

弱点 影響 対策
素材の性能変化の影響を受けやすい(気温、湿度、摩耗) 左右のブレーキ力に差が生じ、制動力の低下や片効きが発生。安全運転に支障をきたす。 丁寧なブレーキ操作、定期的な点検整備
ブレーキ部品の当たり具合の不均一性 ブレーキの効きが悪化、異音や振動の発生。
構造が複雑で点検・調整が難しく高額 適切なメンテナンスが不可欠。

使用用途

使用用途

二系統式の倍力装置を持つデュオサーボブレーキは、その名の通り二つのサーボ機構を備え、強力な制動力を生み出すことができます。このブレーキは、主に小型貨物自動車の後輪で使われています。小型貨物自動車は、荷物を積んでいる時とそうでない時で車重が大きく変わり、それに応じて必要な制動力の大きさも大きく変動します。デュオサーボブレーキは、このような状況に適応し、大きな制動力を安定して提供できることが大きな利点です。

荷物を満載した状態では、大きな制動力を必要としますが、デュオサーボブレーキはその要求に応えることができます。空荷の状態では、制動力はそれほど必要ありませんが、このブレーキは過剰な制動力を生み出すことなく、滑らかに停止することができます。このように、デュオサーボブレーキは、荷物の有無に関わらず、様々な状況で安定した制動力を発揮できるため、小型貨物自動車にとって非常に有効なブレーキシステムと言えるでしょう。

一方で、乗用車には、ほとんど使われていません。乗用車では、小型貨物自動車ほど大きな制動力は必要ありません。むしろ、乗用車では、滑らかで思い通りの制動操作、つまり、運転者の意図通りに車を減速・停止させることが重要視されます。デュオサーボブレーキは強力な制動力を生み出すことに特化しており、乗用車に求められる繊細な制動操作には適していません。そのため、乗用車では、円盤状の部品に摩擦材を押し当てて制動力を得る方式や、前後で異なる摩擦力を発生させることで安定した制動力を得る方式が主流となっています。

小型貨物自動車においては、費用対効果と制動力のバランスを考えると、デュオサーボブレーキは依然として有力な選択肢です。強力な制動力を比較的低い費用で実現できるため、小型貨物自動車の安全性向上に貢献しています。ただし、技術の進歩により、より高性能で費用対効果の高いブレーキシステムが登場すれば、デュオサーボブレーキの立場は変化する可能性もあります。

項目 デュオサーボブレーキ
特徴 二系統の倍力装置を持つ。強力な制動力を生み出す。
メリット 荷物の有無に関わらず安定した制動力を発揮。小型貨物車に最適。費用対効果が高い。
デメリット 繊細な制動操作には不向き。
主な用途 小型貨物自動車の後輪
乗用車での使用 ほとんど使用されていない。(滑らかで思い通りの制動操作が求められるため)
将来性 より高性能なブレーキシステムが登場すれば、立場が変化する可能性あり。

まとめ

まとめ

二組のブレーキ部品を使う形式のブレーキは、強いブレーキの効きを生み出すことができます。これは、ブレーキペダルを踏む力を増幅する仕組みが備わっているからです。急な停止が必要な時や重い荷物を積んでいる時には、この大きな制動力が大きな効果を発揮します。例えば、荷物を満載した小型の運送車で坂道を下る際などには、このブレーキの強力な制動力が安全な走行を支えていると言えるでしょう。また、このブレーキは製造費用が比較的安く抑えられるため、費用対効果の面でも優れています。小型の運送車に多く採用されているのは、このような理由からです。

しかし、このブレーキには、路面状況や天候などによる摩擦力の変化に敏感という弱点もあります。例えば、雨で濡れた路面や凍結した路面では、タイヤと路面の間の摩擦力が低下し、ブレーキの効き具合が不安定になることがあります。このような状況下では、制動距離が長くなったり、車が横滑りする危険性も高まります。そのため、より高度な安全性が求められる乗用車では、このブレーキはあまり採用されていません。乗用車には、様々な路面状況でも安定した制動力を発揮できる、より高度なブレーキ機構が求められます。たとえば、横滑り防止装置と連動したブレーキシステムなどは、急ブレーキ時でも車の安定性を保つのに役立ちます。

ブレーキ機構は、車の安全性を確保する上で最も重要な部品の一つです。それぞれのブレーキには、それぞれ異なる特徴や長所、短所があります。車の種類や用途、走行環境などに合わせて、最適なブレーキ機構が選択されていることを理解することが重要です。そして、安全運転を続けるためには、ブレーキの仕組みを理解するだけでなく、定期的な点検や整備を行い、常に良好な状態を保つことが欠かせません。日頃からブレーキの状態に気を配り、少しでも異常を感じたらすぐに専門家に見てもらうようにしましょう。

項目 二組式ブレーキ 高度なブレーキ機構
ブレーキ力 強い (ペダル踏力増幅機構) 安定した制動力
メリット 急停止/重荷重時有効
製造費用が安い
路面状況・天候の影響が少ない
安全性が高い
デメリット 路面状況・天候に敏感
(摩擦力変化で不安定)
製造費用が高い
採用車種 小型運送車 乗用車
その他 坂道走行時の安全確保 横滑り防止装置等と連動