大型車のブレーキ:空気圧倍力装置の仕組み
車のことを知りたい
先生、「空気圧倍力ブレーキ」って、普通のブレーキと何が違うんですか?
車の研究家
いい質問だね。普通の乗用車に使われているブレーキは、運転手の足の力だけでブレーキを効かせているのに対し、トラックやバスのような重い車は、それだけでは止まれないんだ。そこで、空気の力を利用してブレーキの力を強めているんだよ。それが「空気圧倍力ブレーキ」なんだ。
車のことを知りたい
空気の力を使うって、どういうことですか?
車の研究家
簡単に言うと、圧縮した空気をピストンに送り込んで、その力でブレーキ液の圧力を高めているんだ。ちょうど、自転車の空気入れで空気を圧縮するように、コンプレッサーという機械で空気を圧縮してタンクにためておく。そして、ブレーキを踏むと、その圧縮空気が使われて、大きなブレーキ力を発生させるんだよ。
空気圧倍力ブレーキとは。
大型の貨物自動車や乗合自動車のブレーキは、車体の重さから、空気を抜いて生まれる力を利用したブレーキの補助装置では、止まる力が足りません。そこで、圧縮した空気を利用した補助装置が使われています。基本的な仕組みは、空気を抜く方法と同じですが、円筒形の容器の中に動力となるピストンが入っていて、運転手のブレーキ操作に応じてピストンの後ろに圧縮空気を送り込み、力を発生させます。この力は、つながっている油圧ピストンを押して、ブレーキオイルの圧力を高めます。圧縮空気は、圧縮機によって空気タンクにためられた、約8気圧のものが使われます。運転手の操作を伝える圧力として、ブレーキペダルにつながるポンプから送られるブレーキオイルの圧力を使う場合と、ブレーキの空気圧制御装置から送られる空気圧を使う場合があります。
はじめに
自動車を安全に止めるための仕組みであるブレーキは、大変重要な役割を担っています。特に、大きな荷物を運ぶトラックやたくさんの人を乗せるバスのような大型車は、乗用車よりもずっと重いため、止まるためにより大きな力が必要です。そのため、大型車には乗用車とは違う、特別なブレーキが備わっているのです。その代表的なものが、空気を利用したブレーキである空気圧倍力ブレーキです。
空気圧倍力ブレーキは、その名前の通り、空気の力を利用してブレーキの効き目を高める仕組みです。では、どのようにして空気の力をブレーキに利用しているのでしょうか?エンジンで動く空気圧縮機によって作られた圧縮空気は、空気タンクに蓄えられます。運転者がブレーキペダルを踏むと、このタンクに蓄えられた圧縮空気がブレーキチャンバーへと送られます。ブレーキチャンバーは、空気が入ると膨らむ袋のような構造になっており、この膨らむ力がブレーキを作動させるのです。
空気圧倍力ブレーキの大きな利点は、少ない力で大きな制動力を得られることです。重い荷物を積んだ大型車でも、運転者は比較的軽い力でブレーキペダルを踏むだけで、しっかりと車を止めることができます。また、万が一、空気圧が低下した場合でも、予備のタンクや、別のブレーキ系統が作動する仕組みになっているため、安全性も確保されています。
さらに、空気圧倍力ブレーキは、部品の交換が比較的容易であるという利点もあります。ブレーキの部品は、使用していくうちに摩耗してしまうため、定期的な交換が必要です。空気圧倍力ブレーキは、部品が一つずつ独立しているため、摩耗した部品だけを交換することができ、整備のしやすさにも繋がっています。
このように、空気圧倍力ブレーキは、大型車にとって欠かせない、安全で効率的なブレーキシステムなのです。
項目 | 説明 |
---|---|
種類 | 空気圧倍力ブレーキ |
仕組み | エンジンで動く空気圧縮機によって作られた圧縮空気を空気タンクに蓄え、ブレーキペダルを踏むとタンクの圧縮空気がブレーキチャンバーに送られ、チャンバーが膨らんでブレーキを作動させる。 |
利点1 | 少ない力で大きな制動力を得られる。 |
利点2 | 空気圧低下時でも予備タンクや別のブレーキ系統が作動するため安全。 |
利点3 | 部品交換が容易。 |
真空倍力装置との違い
ブレーキを踏む力を増幅させる仕組みは、乗用車と大型車で大きく異なります。乗用車では、エンジンの吸気を利用した真空倍力装置が広く使われています。エンジンが空気を吸い込む際に生じる負圧を利用して、ブレーキペダルを踏む力を増幅させるのです。これは、いわばエンジンの力を借りてブレーキを軽く踏めるようにしているようなものです。
しかし、大型車、特にディーゼルエンジンを搭載したトラックやバスでは、この仕組みが使えない場合があります。ディーゼルエンジンは構造上、ガソリンエンジンに比べて吸入する空気の力が弱いため、真空倍力装置では十分なブレーキの効きを得られないのです。大型車は車体が大きく、重い荷物を積むことも多いため、乗用車以上に強力なブレーキ性能が求められます。そこで、大型車では空気の力を利用した空気圧倍力ブレーキと呼ばれる装置が採用されています。これは、エンジンで駆動する空気圧縮機(コンプレッサー)で空気を圧縮し、タンクに貯めておきます。ブレーキペダルを踏むと、この貯めておいた圧縮空気がブレーキ系統に送られ、ブレーキの効きを強めるのです。まるで空気の力でブレーキを強く押す補助をしているかのようです。
この空気圧倍力ブレーキの利点は、エンジンの状態に左右されずに安定した制動力を得られることです。エンジンの回転数が低い時や、坂道発進などでエンジンに負荷がかかっている時でも、常に一定のブレーキ力を発揮できます。そのため、大型車やバスといった安全性が特に重視される車両にとって、空気圧倍力ブレーキはなくてはならない重要な装置と言えるでしょう。
項目 | 乗用車 | 大型車 |
---|---|---|
ブレーキ倍力装置 | 真空倍力装置 | 空気圧倍力ブレーキ |
仕組み | エンジンの吸気による負圧を利用 | 圧縮空気を利用 |
制動力 | 比較的弱い | 強力 |
安定性 | エンジンの状態に影響される | 安定した制動力を得られる |
特徴 | エンジンの力を借りてブレーキを軽く踏める | 空気の力でブレーキを強く押す補助をしている |
空気圧倍力ブレーキの構造
空気圧倍力ブレーキは、運転者がブレーキペダルを踏む力を増幅させて、より強い制動力を生み出す装置です。中心となる部品は、円筒形の殻と、その中に収められた力ピストンです。
ブレーキペダルを踏むと、まず力ピストンの後ろ側に空気が送り込まれます。この空気は、エンジンの吸気管などから供給される負圧を利用するか、エンジンを停止している場合は専用のポンプを使って供給されます。
力ピストンは、供給された空気の力によって前方に押し出されます。力ピストンの動きは、殻内部にある油圧ピストンに直接伝わります。油圧ピストンはブレーキ液で満たされた管につながっており、ピストンが押し出されることでブレーキ液に圧力が発生します。
このブレーキ液の圧力は、ブレーキ配管を通じて各車輪のブレーキ装置に伝えられます。ブレーキ装置では、この圧力によってブレーキパッドが回転する車輪に押し付けられ、摩擦によって車の速度を落とす制動力が発生します。
このように、空気圧倍力ブレーキは、運転者の踏力に空気の力を加えることで、少ない踏力で大きな制動力を得られるようにしています。倍力装置がない場合に比べて、はるかに軽い力でブレーキを操作することができるため、安全性と快適性が向上します。特に、緊急時の急ブレーキが必要な場面では、その効果が大きく現れます。また、重い荷物を積載した車や大型車など、大きな制動力が必要な車には、より効果的な制動力を得るために必須の装置となっています。
圧縮空気の供給源
自動車のブレーキ系統において、なくてはならないのが圧縮空気です。特に大型車両などで採用されている空気圧倍力ブレーキには、この圧縮空気が重要な役割を果たします。では、この圧縮空気はどこから供給されているのでしょうか。
圧縮空気の供給源は、エンジンによって駆動される空気圧縮機です。この空気圧縮機は、エンジンの回転力を利用して空気を圧縮し、高い圧力の空気を作り出します。自転車の空気入れを想像すると分かりやすいでしょう。自転車の空気入れと同じように、空気圧縮機もピストン運動によって空気を圧縮し、圧力を高めていきます。
こうして作り出された高圧の空気は、空気だめと呼ばれるタンクに蓄えられます。空気だめは、高圧の空気を一時的に貯蔵しておくための容器です。この空気だめに空気を貯めておくことで、必要な時にいつでも高圧の空気が使えるようになります。空気だめに貯蔵される空気の圧力は、通常8気圧程度に保たれています。これは、一般的な乗用車のタイヤの空気圧の2倍以上の圧力です。
この高圧の空気は、ブレーキペダルを踏むことでブレーキ系統に送られ、大きな制動力を発生させるために利用されます。空気圧倍力ブレーキは、この高圧の空気の力を利用することで、少ない力で大きな制動力を得ることができるのです。また、空気だめに空気を貯蔵しておくことで、エンジンが停止している状態でもブレーキ操作が可能になります。例えば、坂道発進時など、エンジンが停止していてもブレーキが効くことは、安全性を確保する上で非常に重要です。
このように、圧縮空気は空気圧倍力ブレーキに欠かせない要素であり、空気圧縮機と空気だめによって供給、貯蔵されています。これにより、大きな制動力の確保と、エンジン停止時における安全性の確保が可能となっています。
指令圧の種類
ブレーキをかける力を強める装置、空気圧倍力ブレーキには、指令を出す圧力、つまり指令圧の種類がいくつかあります。大きく分けて二つの種類があり、一つは油圧を使うもの、もう一つは空気圧を使うものです。
まず、油圧を使う種類について説明します。これは、普段私たちが乗る乗用車と同じ仕組みです。ブレーキペダルを踏むと、油圧が発生します。この油圧が指令圧として働き、ブレーキをかける力を強めます。ペダルを踏む強さによって油圧の大きさが変わり、それに合わせてブレーキのかかり具合も変化します。つまり、ペダルの踏み込み量でブレーキの強さを細かく調整できるのが特徴です。
次に、空気圧を使う種類について説明します。こちらは空気を使った油圧ブレーキ、エアオーバーハイドロリックブレーキといった仕組みでよく使われます。ブレーキの調整を行う弁、ブレーキバルブで空気圧を調整し、この空気圧が指令圧となります。油圧ではなく空気圧を使うことで、大きな力を出す必要がある大型車や特殊車両に向いていると言えます。
どちらの種類も、指令圧によって空気圧倍力ブレーキの中にある、力を出すための部品、パワーピストンに空気が送られます。そして、この空気がブレーキを作動させるための力となります。指令圧の種類は違っても、ブレーキ力を発生させる仕組みは同じなのです。空気圧倍力ブレーキは、これらの指令圧を上手く利用することで、ドライバーの負担を減らし、安全な運転を助けています。
指令圧の種類 | 仕組み | 特徴 | 使用例 |
---|---|---|---|
油圧 | ブレーキペダルを踏むと油圧が発生し、これが指令圧としてブレーキをかける力を強める。ペダルの踏み込み量でブレーキの強さを細かく調整できる。 | ペダルの踏み込み量でブレーキの強さを細かく調整できる。 | 乗用車 |
空気圧 | ブレーキバルブで空気圧を調整し、この空気圧が指令圧となる。エアオーバーハイドロリックブレーキなど。 | 大きな力を出す必要がある大型車や特殊車両に向いている。 | 大型車、特殊車両 |
まとめ
大型車は、その車体の大きさや重量から、乗用車とは異なる特別なブレーキ機構が必要です。乗用車では、エンジンの吸気力を利用した真空倍力装置でブレーキペダルを踏む力を増幅させていますが、大型車では、エンジンの大きさや排気量に関係なく安定した大きな制動力を得るために、空気圧を利用した倍力装置、すなわち空気圧倍力ブレーキが採用されています。
空気圧倍力ブレーキは、圧縮空気を利用してブレーキペダルを踏む力を増幅させる仕組みです。エンジンによって駆動される空気圧縮機によって作られた圧縮空気がタンクに貯められ、この圧縮空気がブレーキペダルを踏む力を何倍にも増幅させ、大きな制動力を生み出します。これにより、大型車のような重い車体でも、運転手が比較的軽い力でブレーキを操作することが可能になり、安全な制動を実現できるのです。
空気圧倍力ブレーキの重要な要素の一つに、エアタンクがあります。エアタンクは、圧縮空気を蓄えておくための容器です。ブレーキ操作に必要な圧縮空気を常に供給できるように、エアタンクには一定量の圧縮空気が蓄えられています。もしエアタンクの圧力が低下すると、ブレーキの効きが悪くなり、危険な状態に陥る可能性があります。そのため、運転手は常にエアタンクの圧力計を確認し、適切な圧力が維持されているかを確認する必要があります。
さらに、空気圧倍力ブレーキには、ブレーキペダルの動きを空気圧に変換するコントロールバルブや、ブレーキドラムやブレーキディスクに制動力を伝えるブレーキシリンダーなど、様々な部品が組み合わさって動作しています。これらの部品が正常に機能することで、初めて安全で確実な制動力を得ることができるのです。
大型車の運転には、このような特殊なブレーキシステムの知識が不可欠です。安全運転を心がけるためにも、日頃からブレーキシステムの仕組みを理解し、点検整備を怠らず、適切な操作を心がけることが大切です。また、定期的な点検整備は、ブレーキシステムの信頼性を維持するために非常に重要です。専門の整備士による点検整備を受けることで、ブレーキ系統の不具合を早期に発見し、適切な修理や部品交換を行うことができます。これにより、ブレーキの故障による事故を未然に防ぎ、安全な運行を確保することができるのです。