乗り心地を左右する懸架系の振動と騒音
車のことを知りたい
『懸架系振動騒音特性』って一体何ですか?難しそうです…
車の研究家
簡単に言うと、車の乗り心地や静かさに関わる『車輪を支えるしくみ』の性質だよ。具体的には、車が揺れたり、音がしたりする性質のことだね。
車のことを知りたい
揺れと音の性質ですか?例えばどんなものがありますか?
車の研究家
例えば、でこぼこ道を走った時の揺れや、加速した時の車体の傾き、あるいは部品がこすれて出るキーキー音なども『懸架系振動騒音特性』に含まれるよ。これらの性質を数値や評価で表すことで、より乗り心地が良く、静かな車を作ることができるんだ。
懸架系振動騒音特性とは。
車のパーツである『懸架系』(サスペンション)が発生させる音や揺れの特性について説明します。懸架系自身が発生させる音や揺れの他に、懸架系が支えている部分に伝わる音や揺れなども含みます。揺れには、乗り心地に影響する車体の上部の揺れや、タイヤやホイールなどの下部の揺れ、アクセルやブレーキ操作時の揺れ、ハンドル操作時の揺れ、ばね自身の揺れ、部品同士の繋ぎ目の曲げやねじれによる揺れなど、様々な種類があります。これらの揺れは、実際に車を走らせたり、揺れを起こす試験を行うことで、車の速度や揺れの回数ごとの揺れの強さで表されます。音には、ハンドル操作時やばねの揺れ、繋ぎ目の揺れなどによって車内に響く音や、タイヤが路面を走る音、ばねや繋ぎ目、緩衝材などの部品同士が擦れ合うことで発生する異音、揺れを吸収する部品から発生する異音などがあります。これらの音は、実際に車を走らせたり、揺れを起こす試験を行うことで、車の速度や音の高さごとの音の大きさで表されます。部品同士が擦れ合うことで発生する異音については、人の感覚による評価が中心となります。
懸架系の役割
車は、道路の凸凹をタイヤで拾ってしまうと、そのまま車体に振動が伝わってしまい、乗り心地が悪くなってしまいます。また、カーブを曲がるときも、遠心力で車体が傾いてしまい、タイヤが路面から離れてしまうかもしれません。そこで、車体とタイヤの間をつなぐ重要な部品である懸架系が活躍します。
懸架系は、ばねや緩衝器といった部品で構成されており、路面からの衝撃を吸収する役割を担っています。でこぼこの道を通るとき、タイヤが上下に動いても、ばねがその動きを吸収し、車体への振動を和らげます。これにより、乗っている人は快適に過ごすことができます。まるで、魔法のじゅうたんに乗っているかのように、道路の凸凹を感じることなく移動できるのです。
また、懸架系は、タイヤが路面にしっかりと接地するように保つ役割も担っています。カーブを曲がるとき、車体は外側に傾こうとしますが、懸架系がその動きを制御し、タイヤが路面から離れないようにします。これにより、ハンドル操作に対する反応が良くなり、安全にカーブを曲がることができます。
さらに、ブレーキをかけたときも、懸架系が車体の沈み込みを制御し、タイヤのグリップ力を保ちます。急ブレーキをかけても、タイヤがロックせず、しっかりと止まることができるのは、懸架系のおかげです。
このように、懸架系は、乗り心地と走行安定性を両立させるために、路面からの衝撃吸収とタイヤの接地性確保という二つの重要な役割を担っています。それぞれの車は、走行する環境や目的に合わせて、最適な懸架系が設計されているのです。
懸架系の役割 | 効果 |
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路面からの衝撃吸収 |
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タイヤの接地性確保 |
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振動の種類
車は、走ることで様々な揺れが発生します。この揺れは、乗り心地や安全な走行に大きな影響を与えます。大きく分けて、車体全体が揺れる揺れと、タイヤや車軸といった地面に近い部分が揺れる揺れがあります。
車体全体が上下に揺れる現象は、ばね上共振と呼ばれ、乗り心地に直結します。路面の凹凸を乗り越える際に、まるで船が波に乗るように車体が上下に揺さぶられる感覚を覚えるのは、この揺れのせいです。ばね上共振は、ばねの硬さや減衰装置の性能によって大きく変わります。硬すぎるばねは、路面の小さな凹凸も拾ってしまい、ガタガタとした乗り心地になりがちです。反対に、柔らかすぎるばねは、ふわふわとした落ち着かない乗り心地になり、車酔いを引き起こす可能性も高まります。
タイヤやホイール、車軸といった地面に近い部分が上下に細かく揺れる現象は、ばね下共振と呼ばれます。これは、路面をしっかりと捉える力や、ハンドル操作への反応に影響します。ばね下共振が大きいと、タイヤが路面から離れやすく、ハンドル操作が遅れたり、不安定な挙動に繋がったりする可能性があります。タイヤの空気圧や、サスペンションの部品の重さなども、この揺れに影響を与えます。
車体が前後に揺れる現象は、加減速時によく起こります。急な加速や急ブレーキをかけた際に、体が前のめりになったり、後ろにのけぞったりする感覚は、この揺れが原因です。不快感を覚えるだけでなく、急な揺れによって運転操作が乱れる可能性もあります。
カーブを曲がるときに車体が傾く現象は、ロールと呼ばれ、旋回時に発生するワインドアップ共振と関係します。急なカーブを曲がると、車体が大きく傾き、不安定な挙動を示すことがあります。これは、遠心力によって車体が外側に引っ張られることで起こります。サスペンションの構造や設定によって、この傾き具合は大きく変わります。
これらの揺れは、車の種類や路面の状況、運転の仕方などによって様々に変化します。それぞれの揺れの特性を理解し、適切な対策を行うことで、乗り心地や走行安全性を高めることができます。
揺れの種類 | 説明 | 影響 | 関連要素 |
---|---|---|---|
ばね上共振 | 車体全体が上下に揺れる現象 | 乗り心地に直結、船酔いのような感覚 | ばねの硬さ、減衰装置の性能 |
ばね下共振 | タイヤ、ホイール、車軸などが上下に細かく揺れる現象 | 路面保持力、ハンドル操作への反応 | タイヤの空気圧、サスペンション部品の重さ |
前後揺れ | 車体が前後に揺れる現象 | 加減速時の不快感、運転操作の乱れ | 急加速、急ブレーキ |
ロール (ワインドアップ共振) |
カーブ時に車体が傾く現象 | 旋回時の不安定な挙動 | サスペンションの構造、設定 |
騒音の種類
車が走る時、様々な音が発生しますが、大きく分けて部品の動きから生まれる音と路面から伝わる音の2種類があります。
まず、部品の動きから生まれる音について説明します。車は多くの部品が組み合わさってできており、それらが動くことでどうしても音が出てしまいます。例えば、車の重さを受け止めるばねは、路面の凹凸によって伸び縮みし、その際に微かな振動音を発生させます。また、車輪と車体を繋ぐ部品も、路面からの衝撃や車の動きに合わせて動きます。この動きによって、部品同士が擦れ合い、音が発生することがあります。これは部品の劣化や損傷によって大きくなる場合があり、異音と呼ばれることもあります。さらに、車の揺れを抑える部品も、作動する際に音を発生させます。この音は、路面状況が悪いほど大きくなる傾向があります。これらの音は、車内にこもり音として伝わり、不快感の原因となることがあります。
次に、路面から伝わる音について説明します。路面の凹凸や舗装の種類によって、タイヤと路面の間で様々な音が発生します。この音は、ロードノイズと呼ばれ、タイヤや車体を通して車内に伝わります。ロードノイズは、車速が上がるほど大きくなる傾向があり、静かな車内空間を保つためには、この音をいかに抑えるかが重要になります。
快適な車内空間を実現するためには、これらの様々な音を抑える必要があります。そのため、自動車メーカーは、部品の素材や形状、配置などを工夫したり、吸音材や遮音材を使用したりすることで、音を発生源から抑え込んだり、車内に伝わる音を小さくしたりする対策を施しています。
振動と騒音の評価
車が走る時、または試験装置で揺さぶる時に、車体に伝わる揺れと聞こえる音の大きさを調べることが大切です。この揺れと音の調べ方を振動と騒音の評価と言います。
まず、揺れの大きさの調べ方について説明します。車は様々な速さで走ります。速さが変わると、車体の揺れ方も変わります。揺れの大きさは、速さと揺れの細かさ(周波数)ごとに、揺れの勢い(加速度)で表します。例えば、速い速度で走っている時に、特定の周波数で揺れが大きくなっている場合は、その速さと周波数に注目して対策を検討します。
次に、音の大きさの調べ方について説明します。音の大きさも、車の速さと音の高さ(周波数)ごとに調べます。音の大きさは、騒音計で測った騒音レベルや音圧レベルで表します。例えば、ある速さで走っている時に、特定の高さの音が大きくなっている場合は、その速さと高さの音に注目して対策を検討します。
また、部品の不具合などで発生する異音も重要な評価項目です。異音は、大きさだけでなく、音の質にも注意が必要です。「キーキー」「ゴロゴロ」といった様々な種類の異音を聞き分け、不具合の原因を探ります。異音の評価は、騒音計の数値だけでなく、人の耳で聞いて判断する部分が大きいため、熟練した技術者の経験と知識が重要になります。
このように、様々な速さや周波数で揺れと音を細かく調べることで、車体や部品の設計をより良いものにすることができます。そして、これらの評価結果に基づいて、部品の形状や材質、取り付け方法などを工夫し、揺れを抑え、音を静かにすることで、快適な乗り心地と静かな車内空間を実現することができます。快適な車を作るためには、様々な状況における揺れと音を詳しく調べる必要があります。
評価項目 | 測定方法 | 指標 | 注目点 |
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揺れ(振動) | 試験装置や実走行で測定 | 加速度(速さ、周波数ごと) | 特定の速さ・周波数での揺れの大きさ |
音(騒音) | 騒音計で測定 | 騒音レベル、音圧レベル(速さ、周波数ごと) | 特定の速さ・周波数での音の大きさ |
異音 | 騒音計と人の耳で判断 | 音の大きさ、音質(キーキー、ゴロゴロなど) | 異音の種類、発生原因 |
快適性向上への取り組み
車を作る会社は、乗る人が心地よく感じ、静かに過ごせる車を作るために、色々な工夫をしています。車に乗っていて感じる揺れをうまく吸収する部品の開発は、快適な乗り心地を実現する上で特に重要です。道路のデコボコをスムーズに乗り越えられるように、ばねの硬さや伸び縮みする力を調整する技術は常に進化しています。
また、車内の静けさを保つことも快適性に欠かせません。外の騒音をできるだけ車内に入れないように、遮音材と呼ばれる音を吸収する材料を車全体に効果的に配置しています。この遮音材は、素材の研究開発によって、より高い効果を発揮するものへと進化し続けています。風切り音などの原因となる空気の流れ方を変える工夫も、静粛性を高める上で重要な要素です。
コンピューターを使った模擬実験も、快適な車を作る上で大きな役割を果たしています。設計の段階で、車にかかる様々な力や、音の伝わり方をコンピューターで計算することで、実際に車を作る前に問題点を見つけ、より良い設計を実現できます。例えば、道路の凹凸による振動がどのように車に伝わるかを予測し、振動を抑える部品の配置や形状を最適化することができます。同様に、車内に入り込む騒音を予測することで、遮音材の種類や配置を最適化し、静かな車内空間を実現することが可能です。これらの技術開発の積み重ねにより、車の快適さは日々向上しています。今後も、乗る人がさらに快適に過ごせる車を目指して、様々な研究開発が続けられていくでしょう。
快適性の要素 | 技術的工夫 |
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乗り心地 |
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静粛性 |
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開発手法 |
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今後の展望
自動車を取り巻く環境は、電気自動車の普及に伴い大きく変化しようとしています。従来の自動車ではエンジンの音が多くの音を覆い隠していましたが、電気自動車ではエンジンの音が無くなるため、これまで意識されることの少なかった音が際立つようになります。特に、路面からの振動によって発生する懸架系の音は、これまで以上に気になる存在となるでしょう。このため、自動車メーカー各社は、今後、懸架系から発生する振動や騒音を抑える技術開発に、より一層力を入れていくと考えられます。
具体的には、振動や騒音を抑えるための制御技術の高度化や、振動を吸収しやすい新しい素材の活用などが期待されます。例えば、路面の凹凸をセンサーで捉え、その情報を元にサスペンションの硬さを自動的に調整する技術などが考えられます。また、振動を熱エネルギーに変換することで吸収する素材なども研究されており、これらの技術が実用化されれば、自動車の乗り心地は飛躍的に向上するでしょう。
さらに、将来は、路面状況や運転状況、乗員の好みに合わせて、振動や騒音を最適に制御するシステムの開発も期待されます。高速道路を走行する際には振動を少なくして快適性を高め、山道を走行する際には適度な振動を残して路面状況を把握しやすくするなど、状況に応じて振動特性を変化させることが可能になるでしょう。また、乗員が静粛性を重視する場合には振動や騒音を最小限に抑え、スポーティーな走行を好む場合にはある程度の振動を許容するなど、個人の好みに合わせた調整も可能になるかもしれません。これらの技術革新により、ドライバーや乗員にとって、より快適で安全な移動空間が実現されるだけでなく、自動車の運転体験そのものが大きく変わる可能性を秘めていると言えるでしょう。
課題 | 対策 | 将来展望 |
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電気自動車ではエンジン音が無くなるため、路面からの振動による懸架系の音が際立つ。 |
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