車づくりの原点:マスターモデルの進化
車のことを知りたい
先生、マスターモデルって何ですか?車を作るのに使う型みたいなものですか?
車の研究家
そうだね、マスターモデルは型を作るための元になる、いわば「型の型」のようなものだよ。昔はマホガニーという木で作られていたんだけど、今はエポキシ樹脂っていう材料や、コンピューターのデータで作られることが多いんだ。
車のことを知りたい
へえー、今はコンピューターで作れるんですね!でも、どうして昔は木で作ってたんですか?
車の研究家
マホガニーは加工がしやすくて、精密な形を作りやすかったからなんだ。でも、木だと温度や湿度の影響で変形してしまうこともある。だから、より安定したエポキシ樹脂が使われるようになったんだよ。さらに最近は、粘土みたいなもので作った模型をコンピューターで読み取って、そのまま型を作れるようになったから、マスターモデル自体を省略することも多いんだ。
マスターモデルとは。
車を作る際に必要な型や道具、検査に使う計器などを作るための元となる模型のことを『マスターモデル』と言います。昔はマホガニーという木で作られていましたが、その後エポキシ樹脂という材料に変わりました。最近は、粘土で作った模型の情報をコンピューターで管理して、色々なところで使えるようになったので、『マスターモデル』を作らないことが一般的になっています。
模型づくりの歴史
車の模型作りは、長い歴史の中で、技術の進歩とともに大きく変わってきました。かつて、車の設計において中心的な役割を果たしていたのは「マスターモデル」と呼ばれる模型でした。この模型は、車の外形や部品の形を精密に再現したもので、車の製造に欠かせないものでした。まさに、設計図を立体的に表現したもので、金型作りや検査に用いる道具の原型として使われていました。
初期のマスターモデルは、主にマホガニーなどの木材を削り出して作られていました。経験豊富な職人が、設計図に基づいて、のみややすりなどの道具を使い、細かな作業を何度も繰り返すことで、精巧な模型を作り上げていました。木材は加工しやすいという利点がありましたが、温度や湿度の変化によって大きさが変わりやすいという欠点もありました。そのため、保管や管理には大変な注意が必要でした。また、模型作りに時間がかかることも、開発期間を短縮する上で大きな課題でした。
その後、材料として、木材に代わり樹脂が使われるようになりました。エポキシ樹脂などは、寸法安定性に優れ、木材よりも精密な模型を作ることが可能になりました。さらに、コンピュータ制御による工作機械の登場は、模型作りに革命をもたらしました。3次元設計データに基づいて、機械が自動で模型を削り出すことができるようになり、製作時間の短縮と精度の向上が同時に実現しました。職人の熟練した技術に頼っていた時代から、デジタル技術を活用した精密なものづくりへと、車の模型作りは大きく進化を遂げました。 近年では、3Dプリンターも模型作りに活用されるようになってきており、複雑な形状の模型も容易に製作できるようになりました。このように、技術革新とともに、車の模型作りは進化を続け、より高品質な車づくりを支えています。
時代 | 材料 | 技術 | 利点 | 欠点/課題 |
---|---|---|---|---|
初期 | 木材(マホガニーなど) | 手作業(のみ、やすりなど) | 加工しやすい | 温度・湿度の変化に弱い、製作に時間がかかる |
木材の後 | 樹脂(エポキシ樹脂など) | – | 寸法安定性が高い、精密な模型製作が可能 | – |
コンピュータ制御時代 | 樹脂 | コンピュータ制御による工作機械 | 製作時間の短縮、精度の向上 | – |
近年 | – | 3Dプリンター | 複雑な形状の模型も容易に製作可能 | – |
新素材の登場
自動車の開発において、模型作りは欠かせない工程です。かつては木材が主な材料でしたが、木材には湿気で変形しやすいという大きな欠点がありました。温度変化にも弱く、精密な模型作りには不向きでした。そこで登場したのが、エポキシ系樹脂という新しい素材です。
エポキシ系樹脂は、液体の状態から硬化剤を加えることで固まる性質を持っています。硬化すると、木材よりもはるかに高い強度と寸法安定性を示します。これは、精密な模型作りにおいて非常に重要な特性です。温度や湿度の変化による影響も少なく、木材に比べて耐久性に優れているため、長期の保管や管理も容易になりました。
さらに、エポキシ系樹脂は加工性にも優れています。切削や研磨などの加工が容易なため、複雑な形状の模型も容易に製作できます。従来、木材を削り出して模型を作るには熟練の技術と長い時間が必要でした。しかしエポキシ系樹脂の登場により、模型の製作期間が大幅に短縮され、開発効率の向上に大きく貢献しました。
また、エポキシ系樹脂の中には透明性が高いものもあります。透明なエポキシ系樹脂を使用することで、模型の内部構造を確認することが容易になります。これは、設計の検証や修正を行う際に非常に役立ちます。さらに、顔料を混ぜ込むことで色の変更も容易です。様々な色の模型を作成することで、デザインの検討がしやすくなりました。このように、エポキシ系樹脂の登場は、自動車開発における模型作りに革新をもたらしました。
項目 | 木材 | エポキシ系樹脂 |
---|---|---|
寸法安定性 | 低い (湿気・温度変化の影響を受けやすい) | 高い |
耐久性 | 低い | 高い |
加工性 | 低い (熟練の技術と長い時間が必要) | 高い (切削・研磨などの加工が容易) |
製作期間 | 長い | 短い |
透明性 | – | 高い (内部構造の確認が可能) |
色の変更 | – | 容易 (顔料を混ぜ込むことで可能) |
設計情報の変化
図面や模型といった従来の設計手法は、コンピューター技術の進歩によって大きく変わりました。設計情報は、今では数字の情報として扱われ、計算機で管理されています。設計者は、3次元CADと呼ばれる設計支援用の計算機プログラムを使って、立体的な設計図を画面上で作り上げます。画面上で、形や大きさなどを細かく確認できるため、図面だけで確認していた頃に比べて、より直感的に設計内容を把握できます。
この設計情報のデジタル化は、製品の設計における中心となる「マスターモデル」の役割も一変させました。かつては、木や粘土などで作られた実際の模型が、設計情報を伝える唯一の手段でした。設計者はこの模型を基に、製品の細部を決定し、製造部門に指示を出していました。しかし、今では数字の情報で出来た設計図そのものがマスターモデルの役割を担うようになりました。設計変更も計算機上で簡単に行えるようになり、関係者への情報の共有も速くなりました。以前は、設計変更の度に新しい模型を作ったり、図面を書き直したりする必要がありましたが、デジタル化によってそのような手間は不要になったのです。
この結果、製品開発にかかる期間は大幅に短縮され、費用も削減できるようになりました。さらに、設計図のデジタル化は、設計者間の意思疎通を深めることにも繋がりました。設計者は、3次元CAD上で設計図を共有し、互いに意見を交換しながら、より良い製品を作り上げていくことが可能になったのです。このように、コンピューター技術の進歩は、製品設計の手法を革新し、より効率的で高品質な製品開発を実現する大きな原動力となっています。
項目 | 従来 | デジタル化後 |
---|---|---|
設計手法 | 図面、模型 | 3次元CAD |
設計情報 | 物理的な模型 | 数値データ |
マスターモデル | 木や粘土の模型 | デジタル設計図 |
設計変更 | 模型の作り直し、図面の書き直し | 計算機上で容易に変更可能 |
情報共有 | 時間がかかる | 迅速 |
開発期間 | 長い | 短い |
費用 | 高い | 低い |
設計者間の意思疎通 | 困難 | 容易 |
近年の模型事情
模型作りを取り巻く状況は、近年、大きく変化しています。コンピューター技術の進歩により、粘土で作った模型の形状を三次元測定機で読み取り、数値データに変換することが可能になりました。この数値データは、製造のための型作りや検査工程で直接使用できるため、従来のように原型となる模型を作る必要性が薄れてきています。特に、大量生産される車では、原型となる模型を省略するのが一般的になっています。原型となる模型作りにかかる時間と費用を削減できるため、開発の効率化に大きく貢献しています。
しかし、デザイン性の高い高級車や少量生産のスポーツカーなど、形状の正確さが特に求められる車種では、今でも原型となる模型が作られる場合があります。熟練の職人によって丁寧に仕上げられた原型となる模型は、微妙な曲面や線などを正確に再現しています。これは、デザインの最終確認や、見た目や触れた感じといった感覚的な評価を行う上で重要な役割を果たしています。
数値データは正確で効率的なのですが、人の感覚的な判断に頼る部分も依然として重要です。例えば、光の反射具合や陰影の付き方、実物を見た時の全体の印象などは、数値データだけでは完全には把握できません。そのため、人の目で見て、手で触れて確認できる原型となる模型は、デザインの完成度を高める上で欠かせないものとなっています。
このように、模型作りはコンピューター技術の進歩とともに変化しつつも、職人の技術と経験が重要な役割を担い続けています。模型作りは、車作りにおける芸術性と技術力の融合と言えるでしょう。
車種 | 模型製作 | 理由 |
---|---|---|
大量生産車 | 省略 | 費用と時間の削減 |
高級車、少量生産スポーツカー | 製作 | 形状の正確さ、デザインの最終確認、感覚的な評価 |
これからの模型の役割
模型は、自動車を作る過程で長い間中心的な役割を担ってきました。設計図だけでは分かりにくい実物らしさや、全体の釣り合いなどを確認するために無くてはならない存在でした。しかし、近年の計算機技術の進歩に伴い、その役割は変わりつつあります。設計の初期段階から、計算機上で立体的な絵を描くことで、模型を作らずとも様々な角度から形を確認できるようになりました。また、空気抵抗や強度なども計算機上で精密に計算できるようになり、実物を作る前に性能を予測することが可能になりました。
このような技術革新により、全ての自動車で模型の必要性が薄れているかというと、そうではありません。少量生産される車や、デザイン性を特に重視する車などでは、模型の価値が見つめ直されています。人の手で丁寧に作り込まれた模型は、微妙な曲面の美しさや、素材の質感をリアルに感じ取ることができます。計算機上の絵だけでは表現しきれない、感性に訴えかける繊細な部分を確かめることができるのです。
さらに、仮想現実の技術や立体印刷の技術と模型作りを組み合わせることで、新しい使い方も生まれています。仮想現実の世界に模型を取り込むことで、まるで実物と同じように、大きさや形を体感しながら確認することができます。会議などで関係者と意見を交わす際にも、仮想現実空間で模型を共有すれば、よりスムーズに意思疎通を図ることが可能です。また、立体印刷技術を使えば、計算機上の設計データから直接模型を作ることができます。修正が必要な場合にも、すぐに新しい模型を作成できるので、開発期間の短縮にも繋がります。このように、模型は姿や役割を変えながらも、自動車開発において重要な役割を担い続けると考えられます。
技術革新 | 模型への影響 | 模型の価値の再認識 | 模型の新しい使い方 |
---|---|---|---|
計算機技術の進歩 ・立体的な絵による確認 ・空気抵抗や強度の計算 |
模型の必要性低下 | 少量生産車やデザイン重視車では、模型の価値が見直されている。 ・微妙な曲面の美しさ、素材の質感をリアルに感じ取れる ・感性に訴えかける繊細な部分を確かめることができる |
仮想現実技術との組み合わせ ・実物と同じように大きさや形を体感 ・関係者とのスムーズな意思疎通 立体印刷技術との組み合わせ |