クルマの排出ガス規制:平均値とは?
車のことを知りたい
『排出ガス平均値規制』って、何だか複雑ですね。簡単に言うとどういう意味ですか?
車の研究家
そうですね。簡単に言うと、クルマを作る会社が、作ったクルマ全体の排出ガスの平均値を、ある基準値よりも少なくしなければならないというルールのことです。例えば、ある工場で同じ種類の車を100台作ったとしましょう。そうすると100台の排出ガスの平均値が基準値を下回るようにしなければなりません。
車のことを知りたい
なるほど。つまり、1台1台の排出ガス量ではなく、まとめて平均で見るんですね。でも、どうしてそんなルールがあるんですか?
車の研究家
それは、大気汚染を防ぐためです。たくさんのクルマから出る排出ガスが空気を汚してしまうので、クルマを作る会社に排出ガスを減らす責任を負わせるために、このルールが作られました。1台1台厳しくチェックするよりも、まとめて管理する方が効率的ですしね。
排出ガス平均値規制とは。
『排出ガス平均値規制』とは、型式指定を受けた車などに対し、製造時の排出ガス基準の量産管理値を定めた制度のことです。量産管理に使われる排出ガス基準値のことを『平均値』と呼びます。一方で、保安基準で定められた、公道を走る車が満たすべき排出ガス基準値のことを『最大値』と呼びます。例えば、1978年に定められたガソリン乗用車の排出ガス規制では、10・15モード試験での排出ガス基準値は、一酸化炭素が1キロメートルあたり2.7グラム(平均値は2.1グラム)、炭化水素が1キロメートルあたり0.39グラム(平均値は0.25グラム)、窒素酸化物が1キロメートルあたり0.48グラム(平均値は0.25グラム)となっています。ただし、排出ガス基準が強化された2000年規制では、新しい基準の最大値と平均値の両方が保安基準で定められました。そして、指定自動車などは、量産管理時と公道走行時の両方で平均値だけが適用されるようになりました。
排出ガス規制の概要
自動車から出る煙には、空気を汚し、私たちの健康や周りの環境に悪い影響を与えるものが含まれています。そのため、世界各国で自動車の煙に対する決まりが作られています。この決まりは、自動車を作る段階から煙の量を減らし、きれいな空気を取り戻すことを目的としています。
日本では、自動車から出る煙の決まりは「道路運送車両法」という法律で決められています。決められた量よりも多くの煙を出す自動車は、公道を走ることができません。煙の中で特に問題となるものには、一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物、そして目に見えないほど小さな粒子状物質などがあります。
一酸化炭素は、物が燃える時に出る無色無臭の気体です。体の中に入ると酸素を運ぶ血液の働きを邪魔し、めまいや頭痛を引き起こします。大量に吸い込むと、命に関わることもあります。炭化水素は、ガソリンなどに含まれる物質で、光化学スモッグの原因となります。光化学スモッグは、目がチカチカしたり、喉が痛くなったりするなど、私たちの体に様々な影響を与えます。
窒素酸化物は、酸性雨の原因となる物質です。酸性雨は、森の木々や海の生き物、そして建物などにも悪影響を与えます。また、窒素酸化物は、光化学スモッグの原因の一つでもあります。粒子状物質は、とても小さな粒で、肺の奥まで入り込み、呼吸器系の病気を引き起こすことがあります。これらの物質は、地球の気温を上げる原因にもなっています。
自動車の煙に対する決まりは、これらの問題を防ぎ、人にも環境にも優しい社会を作るために欠かせないものです。自動車メーカーは、よりきれいなエンジンを開発したり、排気ガスをきれいにする装置を取り付けたりすることで、これらの決まりに対応しています。私たちも、エコドライブを心がけたり、公共交通機関を利用したりすることで、きれいな空気を作るために協力していく必要があります。
煙の種類 | 影響 |
---|---|
一酸化炭素 | めまい、頭痛、酸素運搬阻害 |
炭化水素 | 光化学スモッグの原因 |
窒素酸化物 | 酸性雨、光化学スモッグの原因 |
粒子状物質 | 呼吸器系疾患、地球温暖化 |
平均値規制の導入
車は、私たちの生活に欠かせない便利な乗り物ですが、同時に排出ガスによる大気汚染の原因ともなっています。そのため、世界各国では排出ガス規制を設けて、大気環境の保全に努めています。排出ガス規制には、一台一台の車が満たすべき排出ガス量の限度を定めたものだけでなく、製造された車全体の平均排出ガス量を定めたものもあります。これを平均値規制といいます。
平均値規制は、製造過程でどうしても生じてしまう一台一台の排出ガス量のばらつきを考慮し、より効果的に排出ガスを抑えるために導入されました。車を作る際には、同じ設計図に基づいて製造しても、部品のわずかな違いや組み立ての精度などによって、どうしても一台一台の性能にばらつきが生じてしまいます。このばらつきを考慮せずに、一台一台の排出ガス量の限度だけを定めた規制では、規制の実効性が低くなってしまう可能性があります。そこで、平均値規制を導入することで、全体の排出ガス量を確実に減らすことを目指しています。
平均値規制では、国から型式指定を受けた車について、実際に製造したすべての車の排出ガス量の平均値が、あらかじめ定められた基準値以下であることが求められます。型式指定とは、車の設計や性能が国の定める基準に適合していることを確認する制度です。型式指定を受けた車は、その設計に基づいて製造され、販売されます。もし、製造された車全体の平均排出ガス量が基準値を超えた場合、製造会社は基準値を達成するために様々な対策を講じる必要があります。例えば、排出ガスの少ない車の生産台数を増やす、排出ガスを減らすための技術的な改良を行う、排出ガス量の多い車の生産を調整するなどです。
平均値規制の導入によって、製造会社は排出ガス量の少ない車の開発や生産を積極的に行うようになり、排出ガス削減に向けた取り組みが強化されます。平均値規制は、排出ガス削減を促進するための効果的な制度であり、よりきれいな空気の実現に貢献しています。
項目 | 説明 |
---|---|
車の排出ガス | 車は便利だが、大気汚染の原因でもある。各国は排出ガス規制で環境保全に努めている。 |
排出ガス規制の種類 | 一台ごとの排出ガス量の限度を定めた規制と、製造車全体の平均排出ガス量を定めた平均値規制がある。 |
平均値規制の目的 | 製造過程での一台ごとの排出ガス量のばらつきを考慮し、効果的に排出ガスを抑えるため。 |
平均値規制の内容 | 型式指定を受けた車について、製造した全車の排出ガス量の平均値が基準値以下であることが求められる。 |
型式指定 | 車の設計・性能が国の基準に適合していることを確認する制度。 |
基準値超過時の対策 | 排出ガスの少ない車の増産、技術改良、排出ガス量の多い車の生産調整など。 |
平均値規制の効果 | 排出ガスの少ない車の開発・生産促進、排出ガス削減に向けた取り組み強化。 |
最大値と平均値の違い
自動車から出る排気ガスには、環境や人の体に悪い影響を与えるものが含まれています。そのため、世界各国で排気ガスの量を制限する様々な決まりが作られています。この決まりの中で、「最大値」と「平均値」は重要な役割を果たしており、どちらも排気ガス対策をより良くするために欠かせないものです。
まず、「最大値」とは、一台の車が、どんな時でも出して良い排気ガスの量の限界を定めたものです。これは、公道を走る一台一台の車すべてが守らなくてはいけない、とても厳しい決まりです。たとえ少しの間でも、この量を超えて排気ガスを出すことは許されていません。この最大値があるおかげで、どの車も必ず一定以上の清潔さを保つことができ、環境や私たちの健康を守ることができます。
一方、「平均値」は、同じ型式の車をたくさん作った時の、排気ガスの量の平均を示したものです。これは、車を作る会社に対する決まりです。平均値の決まりがあることで、会社はより環境に優しい車を作るように促されます。もし、平均値が基準を超えてしまうと、会社は罰せられたり、車を売ることができなくなったりする可能性があります。そのため、会社は排気ガスを減らすための技術開発により力を入れるようになります。
最大値は一台一台の車の排気ガスを制限し、平均値は車を作る会社全体の技術向上を促すというように、それぞれ異なる目的を持っています。そして、この二つの決まりを組み合わせることで、より効果的に排気ガスを減らし、きれいな空気と健康を守ることができるのです。
項目 | 説明 | 対象 | 目的 | 罰則 |
---|---|---|---|---|
最大値 | 一台の車が排出できる排気ガスの量の限界 | 公道を走る一台一台の車 | 一台一台の車の清潔さを保ち、環境や健康を守る | 基準超過の場合、運行停止等の措置 |
平均値 | 同じ型式の車をたくさん作った時の排気ガスの量の平均 | 車を作る会社 | 環境に優しい車を作るように会社を促す | 基準超過の場合、罰金、販売停止等の可能性 |
過去の規制値の例
昭和五十三年(一九七八年)の排出ガス規制では、ガソリンを使う乗用車に対し、有害な排気ガスを減らすための決まりが設けられました。具体的には、排気ガスに含まれる一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物のそれぞれについて、最大値と平均値という二つの基準値が定められました。
例えば、一酸化炭素の場合、道路を走る時に瞬間的に排出される量の最大値は、一千メートル走るごとに二・七グラムまでと定められました。また、様々な運転状況を想定した平均的な排出量は、一千メートル走るごとに二・一グラムまでとされました。これは、当時の自動車の技術レベルを考え、実現可能な範囲で排気ガスを減らすことを目指したものです。
これらの基準値は、定められた方法でクルマを走らせ、実際に排出される排気ガスの量を測る走行試験によって確認されました。この試験で得られた数値は、クルマの排気ガス性能を評価する大切な指標として使われました。
時代が進むにつれて、大気汚染への対策はより重要になり、排出ガス規制も強化されてきました。そのため、これらの基準値は年々厳しくなり、自動車メーカーはより環境に優しいクルマを作るための技術開発を続けています。例えば、排気ガスを浄化する装置の性能向上や、燃費の良いエンジンの開発など、様々な工夫が凝らされています。これにより、私たちの健康を守るだけでなく、地球環境の保全にも貢献しています。
排出ガス成分 | 基準値 | 値 |
---|---|---|
一酸化炭素 | 最大値 | 2.7g/km |
平均値 | 2.1g/km | |
測定方法:走行試験 | ||
時代とともに規制強化、技術開発が進む(例:排気ガス浄化装置、低燃費エンジン) |
規制の変遷と現状
車は私たちの生活に欠かせないものですが、同時に排出ガスによる大気汚染の原因ともなってきました。そのため、排出ガスに対する規制は時代と共に変化し、より厳しいものへと進化してきました。2000年を境に、それまで行われていた排出ガス規制の評価方法が大きく変わりました。それまでは、排出ガス量の最大値と平均値の二つの基準を満たす必要がありました。つまり、どんなに優れた技術を搭載していても、一度でも大量の排出ガスを出してしまえば規制に適合しませんでした。しかし、2000年以降は平均値のみを基準とする方式へと変更されました。これは、自動車製造技術の進歩により、常に安定した排出ガス量の制御が可能になったこと、そして、平均値のみを規制対象としても、全体的な排出ガス抑制効果は十分に高いと判断されたことが背景にあります。
この規制変更は、自動車メーカーにとって大きな転換期となりました。平均値をクリアするためには、すべての車種において排出ガス量を低減させる努力が必要になったからです。その結果、各メーカーは排出ガス浄化技術の開発に力を注ぎ、触媒技術の向上やエンジンの燃焼効率改善など、様々な技術革新が生まれました。
2000年以降も、排出ガス規制は段階的に強化されています。特に近年は、地球温暖化への対策として、二酸化炭素の排出量削減が強く求められています。それに伴い、ハイブリッド車や電気自動車、燃料電池車など、環境性能に優れた車の開発と普及が急速に進んでいます。これらの車は、従来のガソリン車に比べて排出ガスが少なく、地球環境への負荷を軽減することが期待されています。
今後も、技術の進歩や社会情勢の変化に合わせて、排出ガス規制はさらに進化していくでしょう。よりクリーンな空気、そして持続可能な社会の実現に向けて、自動車業界の挑戦は続きます。
時期 | 排出ガス規制 | 規制の背景・影響 | 自動車業界の対応 |
---|---|---|---|
2000年以前 | 排出ガス量の最大値と平均値の両方を規制 | 一度でも大量の排出ガスを出せば規制不適合 | – |
2000年以降 | 排出ガス量の平均値のみを規制 |
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近年 | 二酸化炭素の排出量削減を強化 (地球温暖化対策) | – |
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今後 | 技術の進歩や社会情勢の変化に合わせてさらに進化 | よりクリーンな空気、持続可能な社会の実現 | 自動車業界の挑戦は続く |
今後の展望
地球の環境問題への意識の高まりを受けて、自動車の排出ガスに関する決まりは、これからもっと厳しくなっていくと考えられます。特に、二酸化炭素の排出量を減らすことは、すぐに取り組むべき大切な課題です。世界中の様々な国で、この問題解決に向けた取り組みが行われています。
例えば、電気で走る自動車や、水素と酸素の化学反応で走る自動車など、走行中に全く排出ガスを出さない自動車の開発と普及は、これからますます加速していくでしょう。
また、排出ガスに関する決まりだけでなく、自動車が使う燃料の量に関する決まりも厳しくなる見込みです。環境への負担が少ない自動車社会を実現するために、様々な技術開発や政策が進められていくでしょう。具体的には、エンジンの燃焼効率を高める技術や、自動車を軽量化する技術、空気抵抗を減らすための車体の設計などが挙げられます。さらに、渋滞を減らすための交通システムの改善や、公共交通機関の利用促進といった政策も重要になります。
これらの技術開発や政策と並んで、運転方法の工夫も大切です。急発進や急ブレーキを控える、適切な速度で走行するなど、一人ひとりが環境に配慮した運転を心がけることで、二酸化炭素の排出量削減に貢献することができます。
このように、様々な角度からの取り組みを通して、環境を守りながら、人々の生活を支える持続可能な社会を作っていくことが、私たちにとって重要な目標です。
対策 | 具体例 |
---|---|
排出ガス削減 | 電気自動車、水素自動車の開発と普及 |
燃料消費量削減 | エンジンの燃焼効率向上技術 自動車軽量化技術 空気抵抗低減のための車体設計 渋滞削減のための交通システム改善 公共交通機関の利用促進 |
運転方法の工夫 | 急発進・急ブレーキを控える 適切な速度での走行 |