クルマの燃料蒸発ガス規制

クルマの燃料蒸発ガス規制

車のことを知りたい

先生、『オンボードペーパーリカバリー規制』って、何のことですか?名前から想像できないです。

車の研究家

簡単に言うと、クルマに特別な装置をつけて、ガソリンを入れる時に出る蒸気を空に逃がさないようにする規制だよ。アメリカではもう義務になっているんだ。

車のことを知りたい

なるほど。ガソリンの蒸気を逃がさないようにする装置をつけるってことですね。どうしてそんなことをする必要があるんですか?

車の研究家

ガソリンの蒸気には、空気を汚してしまうものが入っているんだ。だから、それを回収することで大気をきれいに保つことができるんだよ。環境を守るための大切な規制なんだ。

オンボードペーパーリカバリー規制とは。

自動車用語の『搭載蒸発燃料回収装置規制』について説明します。これは、アメリカで定められたもので、ガソリンを入れる際に燃料の蒸気が空気に出ていくのを防ぐ装置を車に取り付けることを義務づけた規制です。英語の略称でORVR規制とも呼ばれます。空気を汚さないようにするために、1998年からアメリカで実施されています。この規制に対応するには、ガソリンを入れる時の燃料の蒸気を大きな容器のようなもので回収する装置を車に付ける必要があります。また、アメリカやヨーロッパの一部では、ガソリンスタンドの給油ノズル側にも、ガソリンを入れる時の燃料の蒸気を回収する仕組みを義務付けています。日本では、1997年に環境庁(今の環境省)と中央環境審議会が出した報告書の中で、このORVR規制を導入する必要性について、今後検討していくべきだと書かれており、検討が進められています。

はじめに

はじめに

環境への関心が高まる昨今、自動車が出す排気ガスによる大気汚染は、世界中で取り組むべき課題となっています。特に、ガソリンなどが蒸発して出るガスは、大気汚染の大きな原因の一つとして、各国で様々な対策が取られています。この対策の中心となるのが、アメリカで始まった、乗用車に搭載する燃料蒸発ガス回収装置の規制、いわゆる「乗用車搭載蒸発ガス回収装置規制」です。

自動車の燃料となるガソリンは、常に蒸発してガスになります。この蒸発ガスには、光化学スモッグの原因となる有害物質が含まれており、大気汚染を引き起こす可能性があります。燃料の蒸発は、自動車を走らせている時だけでなく、ガソリンを入れる時や、駐車場に停めている時にも発生します。ですから、自動車を使っていなくても、大気汚染につながる可能性があるのです。このような蒸発ガスを適切に処理することは、私たちの健康と美しい環境を守る上で、大変重要なことと言えるでしょう。

「乗用車搭載蒸発ガス回収装置規制」は、蒸発した燃料のガスを大気中に放出するのではなく、専用の装置で回収し、再びエンジンで燃やすという仕組みです。この規制によって、燃料タンクや燃料系統から出る蒸発ガスを効果的に回収し、大気汚染を減らすことができます。

この規制は、アメリカだけでなく、世界各国で導入が進んでいます。日本でも同様の仕組みが取り入れられており、大気環境の改善に大きく貢献しています。

蒸発ガスを出さないようにする技術は、自動車メーカーの努力によって、日々進歩しています。私たちは、このような技術革新を理解し、環境を守るために、一人ひとりができることを考えていく必要があるでしょう。

問題点 原因 対策 効果
自動車の排気ガスによる大気汚染 ガソリン蒸発ガスに含まれる有害物質 乗用車搭載蒸発ガス回収装置規制 大気環境の改善
ガソリンの蒸発(給油時、駐車時など) 蒸発ガスを回収しエンジンで再燃焼

アメリカの規制

アメリカの規制

アメリカでは、大気汚染への対策として、乗り物から出る燃料の蒸発した気体を抑えるための様々な決まりごとがあります。特に、1998年から始まった「乗用車からの燃料蒸発ガス排出抑制規則」、いわゆるORVR規則は、この問題にしっかりと取り組むための重要な一歩となりました。この規則によって、ガソリンを使う乗用車や小さいトラックには、燃料の蒸発した気体を集めておく特別な装置を取り付けることが義務付けられました。

この特別な装置は、簡単に言うと、大きな入れ物のようなものです。ガソリンを入れる時にどうしても出てしまう蒸発した気体を、この入れ物の中に集めます。もしこの装置がなければ、蒸発した気体はそのまま空気に出てしまい、空気を汚してしまうからです。この入れ物のおかげで、燃料の蒸発した気体が空気に出ていくのを防ぎ、大気をきれいに保つことができるのです。

このORVR規則は、アメリカで定められた厳しい環境を守るための基準を満たすために必要なものです。自動車を作る会社は、この規則に従って、燃料の蒸発した気体を出さないような車を作らなければなりません。この規則のおかげで、アメリカの空は以前よりもきれいになり、人々の健康を守ることにも繋がっています。

さらに、この規則は、ガソリンスタンドにも影響を与えました。ガソリンスタンドには、給油中に発生する蒸発した気体を回収するための特別な設備が必要になりました。この設備は大気汚染を減らすだけでなく、ガソリンスタンドで働く人たちの健康も守る役割を果たしています。ORVR規則は、車を作る会社だけでなく、ガソリンを売るお店、そして私たちみんなにとって、大切な環境を守るための規則なのです。

対象 内容 効果
乗用車、小型トラック 燃料蒸発ガスを貯蔵する装置の設置義務化 燃料蒸発ガスの大気放出抑制
ガソリンスタンド 給油中の燃料蒸発ガス回収設備の設置義務化 大気汚染削減、作業員の健康保護

ヨーロッパの規制

ヨーロッパの規制

大西洋を隔てた米国だけでなく、ヨーロッパでも、燃料の蒸発による気化ガスの対策が進められています。特に西ヨーロッパ諸国の一部では、ガソリンスタンドの給油設備そのものに、気化したガソリンを回収する装置の設置が義務付けられています。給油時に発生する目に見えない気化したガソリンを、給油ノズル側で回収する仕組みです。

給油ノズル、つまり給油ガンにこの回収装置を設けることで、乗用車、貨物自動車、自動二輪車など、どんな種類の車であっても、気化したガソリンを確実に回収することができます。これは、米国のように車側に装置を設ける方法と比べて、気化したガソリンをより確実に回収できると考えられています。車側の装置の場合、装置の不具合や経年劣化による性能低下、あるいは装置が搭載されていない車種も存在し、すべての車から確実に回収できるとは限りません。給油設備側に回収装置があれば、このような心配はなくなります。

ヨーロッパでは、各国で独自の環境保護のための決まりが設けられています。例えば、排気ガス規制や騒音規制など、さまざまな分野で独自の基準が設けられています。気化したガソリン対策についても、各国で独自の基準が設けられているものの、米国と同様に厳しい基準を設けている国もあるのです。環境意識の高いヨーロッパ諸国では、地球温暖化対策の一環として、気化したガソリンの回収を重要な課題と捉えています。大気中に放出されるガソリンを減らすことで、大気汚染を抑制し、地球環境を守ることに貢献できると考えているからです。今後もヨーロッパでは、技術革新や法整備などを通して、気化したガソリンの対策が更に強化されていくと予想されます。

地域 対策 メリット デメリット 備考
米国 車側に気化ガソリン回収装置設置 装置の不具合、経年劣化、未搭載車種あり。確実な回収が困難。
西ヨーロッパ 給油ノズル側に気化ガソリン回収装置設置(義務化) 車種に関わらず確実に回収可能 各国で独自の基準。米国並みに厳しい国も。

日本の状況

日本の状況

我が国における燃料蒸発ガス対策は、現状、欧米諸国と比べて遅れをとっています。1997年、環境問題を担当する環境庁(現在の環境省)の中央環境審議会にて、燃料蒸発ガス抑制装置、いわゆるORVR規制導入の必要性について議論が交わされました。審議会は、大気汚染の観点からORVR規制の重要性を認め、導入に向けた検討を開始するよう提言しました。これは当時、アメリカやヨーロッパ諸国で既にORVR規制が導入されていたことや、地球規模での環境問題への意識の高まりを受けてのことでした。

しかし、それから四半世紀近くが経過した現在も、我が国ではORVR規制は導入されていません。導入に向けた検討は続けられているものの、具体的な時期や規制の内容については依然として未定のままです。自動車メーカーやガソリンスタンドなど、関係各所との調整が難航していることが、導入の遅れに繋がっていると考えられています。

ORVR規制導入の遅れにより、我が国では、燃料蒸発ガスによる大気汚染への対策が不十分な状況となっています。燃料蒸発ガスには、光化学スモッグの原因となる揮発性有機化合物などが含まれており、大気環境や人体への悪影響が懸念されています。地球環境保全の観点からも、早急な対策が求められています。

今後、関係各所との協議を進め、一日も早く具体的な導入計画を策定することが望まれます。国民の健康と美しい大気環境を守るためには、欧米諸国と同様に、燃料蒸発ガスによる大気汚染を抑制するための対策強化が不可欠です。我が国の自動車産業の技術力をもってすれば、ORVR規制への対応は十分可能であり、将来に向けて、より積極的な取り組みが期待されています

現状 ORVR規制導入遅れ(欧米諸国と比較して)
1997年 中央環境審議会にてORVR規制導入必要性議論、導入検討提言
(背景:欧米諸国での導入、地球環境問題への意識高まり)
現在 ORVR規制未導入(導入時期・内容未定)
(要因:自動車メーカー、ガソリンスタンド等との調整難航)
影響 燃料蒸発ガスによる大気汚染への対策不十分
大気環境・人体への悪影響懸念
今後 関係各所との協議、具体的導入計画策定
積極的な取り組み

技術の進歩

技術の進歩

車は私たちの生活に欠かせないものですが、同時に環境への影響も無視できません。特に、ガソリンなどの燃料を使う車は、走っていない時でも燃料が蒸発してガスが発生し、これが大気を汚染する一因となっています。

この燃料蒸発ガスを減らすための技術開発が、近年大きく進歩しています。例えば、燃料タンクの素材を見直すことで、ガソリンが蒸発しにくいように工夫されています。また、タンクの構造を改良し、中の空間を小さくすることで、蒸発するガソリンの量を減らす技術も開発されています。

さらに、蒸発してしまったガスを無駄にせず、再び燃料として利用する技術も進んでいます。これは、車の燃費向上にもつながるため、環境にもお財布にも優しい技術と言えるでしょう。具体的には、活性炭のような材料を使ってガスを吸着し、それをエンジンに送り返す仕組みが採用されています。

こうした技術革新に加え、電気自動車や燃料電池車といった、そもそも燃料蒸発ガスを出さない車も普及しつつあります。これらの車は、モーターで走るため、ガソリンを使う車のように燃料蒸発ガスが発生しません。電気自動車は充電することで、燃料電池車は水素と酸素の化学反応で電気を作って走ります。そのため、大気汚染の心配が少なく、地球環境にとって非常に有益です。

これらの技術開発や次世代車の普及によって、より環境に優しい車社会が実現していくと考えられます。未来の車は、環境への負担を最小限に抑えながら、快適な移動手段を提供してくれるでしょう。私たちは、これらの技術進歩を積極的に受け入れ、環境保護に貢献していく必要があります。

課題 対策 効果
燃料蒸発ガスによる大気汚染 燃料タンク素材の改良
燃料タンク構造の改良
蒸発ガス燃料化技術
電気自動車、燃料電池車の普及
ガソリン蒸発抑制
ガソリン蒸発量の減少
燃費向上、大気汚染抑制
燃料蒸発ガス排出ゼロ

まとめ

まとめ

揮発しやすい燃料から発生する蒸発ガスは、大気汚染の一因となっています。目には見えませんが、燃料蒸発ガスには、光化学スモッグの原因となる炭化水素などが含まれており、私たちの健康や環境に悪影響を与える可能性があります。世界各国では、この燃料蒸発ガスによる大気汚染を少しでも減らすため、様々な対策が進められています。

例えば、アメリカでは、自動車の燃料系から発生する蒸発ガスを回収する装置の搭載を義務付ける「蒸発ガス排出抑制装置規制」、いわゆるORVR規制が導入されています。この規制により、駐車中に燃料タンクや燃料配管から自然に蒸発するガスを車内に留め、エンジン始動時に燃焼させることで、大 atmosphere中への排出を抑制しています。

一方、ヨーロッパでは、給油時に発生する蒸発ガスを回収する装置をガソリンスタンドの給油ガン側に設置することが義務付けられています。給油中に揮発する燃料蒸発ガスを回収することで、大気中への排出を防いでいます。このように、国によって対策方法は様々ですが、燃料蒸発ガス排出量削減への取り組みは世界的な課題となっています。

日本では、現在のところアメリカのようなORVR規制は導入されていません。しかし、地球環境保全の観点から、今後導入が検討されているとされています。また、自動車メーカー各社は、燃料蒸発ガスを抑制する技術開発にも力を入れており、より密閉性の高い燃料タンクや配管の開発、あるいは燃料蒸発ガスの吸着能力を高めた活性炭キャニスターの改良などが進められています。これらの技術革新も、燃料蒸発ガス排出量削減に大きく貢献すると期待されています。

さらに、電気自動車や燃料電池車、水素自動車といった次世代自動車の普及も、燃料蒸発ガス問題の解決に繋がると考えられます。これらの車は、そもそも燃料蒸発ガスを発生しないため、大気汚染の削減に大きく貢献するでしょう。

私たち一人ひとりが環境問題に関心を持ち、環境に配慮した車選びや日々の運転を心がけることが大切です。例えば、こまめな点検整備を行うことで、燃料系の不具合による蒸発ガス漏れを防ぐことができます。また、エコドライブを心がけることで、燃料消費量を抑え、結果的に蒸発ガス発生量も削減できます。地球環境を守るため、未来の子供たちのために、より環境性能の高い車社会の実現に向けて、私たち全員が協力していく必要があります。

地域 対策 詳細
アメリカ ORVR規制 蒸発ガス排出抑制装置で、駐車中の蒸発ガスを回収し、エンジン始動時に燃焼
ヨーロッパ 給油時蒸発ガス回収 給油ガンに回収装置を設置し、給油中の蒸発ガスを回収
日本 検討中/メーカーによる技術開発 ORVR規制導入検討、密閉性の高い燃料タンク/配管開発、活性炭キャニスター改良
世界共通 次世代自動車の普及 電気自動車、燃料電池車、水素自動車など、燃料蒸発ガスを発生しない車の普及
個人 環境に配慮した車選び/運転 こまめな点検整備、エコドライブ