車の燃料タンク:種類と進化
車のことを知りたい
先生、燃料タンクって床下にあることが多いって書いてありますけど、なんでそこにあるんですか?
車の研究家
いい質問だね。燃料タンクを床下に配置するのは、主に安全性の確保のためだよ。万が一、事故が起きた時に、床下にあることで衝撃から守られやすく、燃料漏れや火災のリスクを減らすことができるんだ。
車のことを知りたい
なるほど。安全のためなんですね。でも、他に理由はあるんですか?
車の研究家
もちろん。他にも、重心を低くすることで車の安定性を高めたり、車内のスペースを広く使えるようにする目的もあるんだよ。それに、床下は比較的温度変化が少ない場所なので、燃料の品質を保ちやすいという利点もあるんだ。
フューエルタンクとは。
車を動かす燃料を入れる箱のことを『燃料タンク』と言います。昔は、さびを防ぐ処理をした薄い金属板を溶接して作っていましたが、今は場所を有効に使えて複雑な形も作れる樹脂製が主流です。樹脂製だと費用も安く抑えられます。車の姿勢が変わったり、カーブを曲がったりした時に燃料が片寄ってしまうと、燃料を吸い込めなくなって無駄になってしまうので、それを防ぐ工夫もされています。タンクの中に燃料ポンプを付けたものもあります。乗用車では安全のため、燃料タンクは基本的に前後のタイヤの間の床下にあります。多くの車は後部座席の下にありますが、前の座席の下に置いたり、車の部品とぶつからないように馬の鞍のような形にしたりするものもあります。
燃料タンクの役割
車は、走るために燃料が必要です。その燃料を安全に保管する場所が、燃料タンクです。燃料タンクは、いわば車の弁当箱のようなもので、必要な時に必要な量の燃料をエンジンに送り届ける役割を担っています。
この弁当箱の大きさは、どのくらい遠くまで走れるか、つまり航続距離に直接関係します。大きなタンクであればたくさんの燃料を積めるので、長い距離を走ることができます。逆に小さなタンクでは、こまめな燃料補給が必要になります。
燃料タンクは、ただ燃料を貯めておくだけではありません。車の動きに合わせて燃料が揺れたり、片寄ったりすると、エンジンへの燃料供給が不安定になる可能性があります。これを防ぐため、タンクの中には隔壁や防波板などが設けられ、燃料の揺れを抑える工夫が凝らされています。ちょうど、お弁当箱の中に仕切りがあることで、おかずが片寄るのを防ぐのと同じです。
さらに、安全面も非常に重要です。万一の事故の際、燃料漏れは大きな危険につながります。そのため、燃料タンクは強い衝撃にも耐えられる頑丈な作りになっています。また、車体への取り付け位置も、追突などによる損傷を受けにくい場所が選ばれています。
そして、環境への配慮も欠かせません。燃料の蒸発は、大気を汚染する原因の一つです。最近の燃料タンクは、この蒸発ガスを回収し、大気中への放出を防ぐ仕組みを備えています。このように、燃料タンクは、一見すると単純な入れ物に見えますが、車の性能や安全性、環境保護に深く関わる重要な部品なのです。
項目 | 説明 |
---|---|
役割 | 燃料を安全に保管し、必要な時にエンジンへ供給する。車の航続距離に影響。 |
構造 | 隔壁や防波板で燃料の揺れを抑える工夫。 |
安全性 | 衝撃に強い頑丈な作り。車体への取り付け位置も安全性を考慮。 |
環境配慮 | 燃料蒸発ガスを回収し、大気汚染を防止。 |
素材の進化
自動車の心臓部とも言える燃料タンクは、その素材の進化によって大きく変化してきました。初期の頃は、主に鋼板を溶接して作られていました。鋼板は強度が高いという利点がありましたが、錆びやすいという大きな欠点がありました。また、複雑な形状に加工することが難しく、設計の自由度が制限されていました。
近年では、これらの問題を解決するために、樹脂製の燃料タンクが主流となっています。樹脂は、鋼板に比べて軽く、成形しやすいという特性を持っています。そのため、様々な形状のタンクを作ることが可能になり、自動車のデザインの自由度が飛躍的に向上しました。複雑な形状のタンクは、限られたスペースを有効活用できるため、車内の居住空間を広げることにも貢献しています。
さらに、樹脂は錆びないため、鋼板のように腐食による劣化の心配がありません。これは、燃料タンクの耐久性向上に大きく寄与しています。また、樹脂は衝撃吸収性にも優れており、万が一の事故の際にも、燃料漏れのリスクを低減し、乗員の安全を守ります。
そして、樹脂製タンクは製造コストの面でも優れています。鋼板の溶接に比べて、樹脂の成形は工程が簡略化され、製造にかかる時間や費用を削減できます。これらの様々な利点が、樹脂製燃料タンクの普及を後押ししていると言えるでしょう。
このように、燃料タンクの素材は、鋼板から樹脂へと進化することで、自動車の安全性、設計の自由度、そして経済性など、様々な面で大きな進歩を遂げました。今後も、新しい素材や技術の開発によって、更なる進化が期待されます。
項目 | 鋼板製タンク | 樹脂製タンク |
---|---|---|
強度 | 高い | – |
重量 | 重い | 軽い |
成形性 | 複雑な形状が難しい | 成形しやすい |
耐錆性 | 錆びやすい | 錆びない |
耐久性 | 低い | 高い |
衝撃吸収性 | – | 優れている |
製造コスト | 高い | 低い |
その他 | 設計の自由度が低い | 設計の自由度が高い、居住空間拡大に貢献 |
形状と配置
自動車の燃料を入れる容器、いわゆる燃料タンクの形や設置場所は、車種によって大きく異なります。車を作る上での様々な制約や、車の設計思想によって最適な形や場所が選ばれるためです。
まず、形について見てみましょう。燃料タンクは、多くの場合、車体の下側に設置されます。限られた床下の空間を最大限に活かすため、タンクの形は単純な箱型ではなく、複雑な形をしていることがほとんどです。
例えば、床下に突起物やタイヤハウスなどがある場合、タンクはその形に合わせてへこんだり、膨らんだりします。まるで粘土のように、周りの空間にぴったりと収まるように形作られるのです。車種ごとに床下の構造が異なるため、燃料タンクの形も千差万別になります。
次に、設置場所についてです。多くの車は後部座席の下に燃料タンクを設置しています。後部座席の下は、車体の重心に近い位置にあるため、車の操縦安定性に優れるという利点があります。
しかし、近年では前部座席の下に燃料タンクを設置する車も出てきました。これは、後部座席の居住空間を広げたり、衝突安全性などを高めるためです。
さらに、車の駆動方式も燃料タンクの設置場所に影響を与えます。エンジンの動力を車輪に伝えるための回転軸である、プロペラシャフトが床下を通る車の場合、燃料タンクとの干渉を避ける必要があります。このような車では、プロペラシャフトを避けるために、鞍のような形をしたタンクが用いられることがあります。
このように、燃料タンクの形や設置場所は、車の設計思想や様々な制約を考慮して、車種ごとに最適化されているのです。
項目 | 内容 |
---|---|
形 |
|
設置場所 |
|
その他 | 車種ごとに最適化 |
燃料供給方式
車は、エンジンを動かすために燃料が必要です。その燃料をタンクからエンジンへ送り届ける方法には、大きく分けて二つの種類があります。一つ目は、燃料タンクの中に燃料ポンプを沈めた方式です。まるで水にポンプを沈めるように、燃料の中にポンプが浸かっている様子から、この方式は「沈め込み式」とも呼ばれます。この方式の最大の利点は、ポンプが燃料に常に囲まれているため、ポンプの熱を燃料が冷ましてくれることです。ポンプは作動中に熱を持ちますが、冷やされることで寿命が延び、長く使えるようになります。また、自動車がカーブなどで傾いても、ポンプは常に燃料の中にあり、燃料を吸い上げ続けられるため、燃料切れを起こしにくいという利点もあります。
二つ目は、燃料タンクの外に燃料ポンプを置く方式です。タンクの外にポンプがあるため、点検や交換などの整備がしやすくなっています。もしポンプが故障した場合でも、タンクから取り外すだけで修理や交換ができます。沈め込み式のように、タンクごと取り外す必要がないため、整備にかかる時間と手間を大きく減らせます。一方、この方式では、ポンプを冷やす効果は沈め込み式に比べると劣ります。また、自動車が傾くと燃料が片側に偏り、ポンプが燃料を吸い上げられなくなる可能性があり、燃料切れのリスクが若干高まります。このように、それぞれの方式には得意な点と不得意な点があります。自動車の種類や設計思想、コストなどを考慮して、最適な方式が選ばれているのです。
燃料ポンプの配置 | メリット | デメリット |
---|---|---|
タンク内(沈め込み式) |
|
整備性が低い(タンクごと取り外す必要がある) |
タンク外 | 整備性が高い(ポンプだけ取り外せる) |
|
安全対策
自動車の心臓部であるエンジンに動力を送る燃料。その燃料を安全に保管するのが燃料タンクであり、安全対策は最重要事項です。燃料タンクは、万一の衝突事故の際にも燃料漏れを起こさないよう、幾重もの安全対策が施されています。まず、タンク本体の素材には、高い強度と柔軟性を兼ね備えた特殊な合成樹脂や高張力鋼板が採用されています。これにより、外部からの衝撃に耐えうる頑丈さを確保しています。また、タンクの構造にも工夫が凝らされており、複数の層で構成された多層構造を採用することで、万一の破損時にも燃料漏れを最小限に抑える設計となっています。
さらに、燃料タンクの配置場所も安全性に大きく関わってきます。衝突事故の際に衝撃を受けにくい場所、具体的には車両の中央部付近の床下に配置されることが一般的です。これは、側面衝突や後方からの追突事故といったあらゆる状況を想定した配置です。
また、燃料タンクには燃料蒸発ガス抑制装置が搭載されています。これは、ガソリンが蒸発して発生するガスを大気中に放出するのではなく、活性炭フィルターなどを用いて吸着し、のちにエンジンで燃焼させる仕組みです。これにより、環境への悪影響を低減するとともに、燃料の無駄な消費を抑える効果も期待できます。
このように、燃料タンクは素材、構造、配置、そして環境性能まで考え抜かれた安全対策によって、乗員の安全と環境保護の両立を実現しています。自動車の安全性を支える重要な部品として、燃料タンクの技術は日々進化を続けています。
項目 | 内容 |
---|---|
素材 | 高強度・高柔軟性を持つ特殊な合成樹脂や高張力鋼板 |
構造 | 多層構造 |
配置場所 | 車両中央部付近の床下 |
燃料蒸発ガス抑制装置 | 活性炭フィルター等で吸着、のちにエンジンで燃焼 |
効果 | 燃料漏れ防止、環境への悪影響低減、燃料消費抑制 |
将来の展望
車は、これから大きく変わろうとしています。これまで主流だったガソリンや軽油で動く車から、電気の力で走る車への移行が進んでいます。そのため、ガソリンなどをためておく入れ物、いわゆる燃料タンクの役割も変わっていくでしょう。
電気だけで走る車や、水素と酸素を化学反応させて電気を作る燃料電池車では、従来の燃料タンクは必要なくなります。その代わりに、電気自動車では大きな電池を、燃料電池車では水素をためておく入れ物が重要になります。
とはいえ、すべての車がすぐに電気自動車や燃料電池車になるわけではありません。ガソリンで動くエンジンと電気で動くモーターを組み合わせた、いいとこどりの車もあります。このような車では、これまで通り燃料タンクが必要です。ただし、より小さく、より軽い燃料タンクが求められます。なぜなら、車は軽くなればなるほど、使うエネルギーが少なくなり、環境にも優しくなるからです。小さな燃料タンクは、車全体の設計の自由度も高めます。
燃料電池車に欠かせない水素タンクの開発も重要です。水素は、とても軽く、地球上にたくさん存在する物質ですが、ためておくのが難しいという問題があります。水素は小さい分子なので、普通の入れ物だと隙間から漏れてしまいます。また、燃えやすい性質を持っているため、安全にためておく技術が求められます。さらに、たくさんの水素を小さな入れ物にためるためには、圧縮したり、液体にしたりする必要がありますが、それには大きなエネルギーが必要です。そのため、安全で、効率よく水素をためられる新しい入れ物の開発が急務です。
このように、これからの燃料タンクは、車の変化に合わせて、これまでとは違う進化を遂げていくでしょう。安全で、環境に優しく、そして使いやすい、そんな燃料タンクが、未来の車社会を支えていくのです。
車の種類 | 燃料/エネルギー源 | 燃料タンク/貯蔵方法 | 課題と展望 |
---|---|---|---|
電気自動車 | 電気 | 大型バッテリー | – |
燃料電池車 | 水素 | 水素タンク | 小型化、軽量化、安全性の確保、高効率な貯蔵方法の開発 |
ハイブリッド車(ガソリンエンジン+モーター) | ガソリン | 小型軽量の燃料タンク | 小型化、軽量化による燃費向上と設計自由度の向上 |