乗り心地の鍵、プログレッシブスプリング
車のことを知りたい
先生、『プログレッシブスプリング』って、普通のばねと何が違うんですか?
車の研究家
いい質問だね。普通のばねは、伸び縮みする力が一定だけど、プログレッシブスプリングは伸びるほど強い力が必要になるんだ。例えるなら、最初は柔らかいスポンジを押してる感じで、だんだん硬い板を押す感じに変わるんだよ。
車のことを知りたい
へえー。なんでそんな仕組みになってるんですか?
車の研究家
それは乗り心地をよくするためなんだ。小さな段差では柔らかく衝撃を吸収し、大きな段差ではしっかりと支えてくれる。だから、快適で安定した乗り心地になるんだよ。重ね板ばねを例に説明すると、たわみが小さいうちは、長い板ばねだけが作用し、たわみが大きくなると短い板ばねも作用するようになる。それぞれの板ばねの作用する長さが変化することでばね定数が変化するんだ。
プログレッシブスプリングとは。
車の用語で「プログレッシブスプリング」というものがあります。これは、いくつかのばねを組み合わせ、力を加えていくと、ばねの反発力が一定ではなく変化する仕組みをもつばねのことです。車軸を支える装置で使われることが多く、よく使われるのは、重ね板ばねに平板ばねを重ねたものです。重ね板ばねがたわむにつれて、実際に働くばねの長さが変わり、反発力が一定ではないばねの特性が生まれます。これは、円錐形に近い形をしたコイルばねと似たような特性です。
プログレッシブスプリングとは
プログレッシブスプリングとは、荷重の変化に応じてばねの硬さが変わる特殊なばねのことです。普通のばねは、加わる力と縮む量の割合が一定です。つまり、同じだけ力を加えれば、常に同じだけ縮みます。しかし、プログレッシブスプリングは違います。加わる力が大きくなるほど、ばねも硬くなっていくのです。
この仕組みは、複数のばね要素を組み合わせることで実現されます。小さな力が加わった時は、柔らかいばね要素だけが働きます。そのため、路面の小さな段差や振動を滑らかに吸収し、快適な乗り心地を実現できます。まるで絨毯の上を走っているかのような、ふわりとした感触です。
一方、急ブレーキをかけたり、速い速度でカーブを曲がったりするなど、大きな力が加わった時はどうでしょうか。この場合は、柔らかいばね要素に加えて、より硬いばね要素も一緒に働くようになります。ばね全体が硬くなるので、車体が大きく傾いたり、沈み込んだりするのを抑えることができます。これにより、安定した走行を確保し、運転のしやすさにも繋がります。
このように、プログレッシブスプリングは、相反する二つの要素、乗り心地と操縦安定性を両立させることができます。快適な乗り心地でありながら、いざという時にはしっかりと車体を支えてくれる、まさに良いとこ取りのばねと言えるでしょう。そのため、近年の自動車のサスペンションには、このプログレッシブスプリングが広く採用されています。様々な路面状況に対応し、乗る人すべてに快適さと安心感を提供してくれる、優れた技術なのです。
荷重 | ばねの硬さ | 乗り心地 | 操縦安定性 |
---|---|---|---|
小さい(路面の小さな段差や振動) | 柔らかい | ふわりとした感触、快適 | – |
大きい(急ブレーキ、高速コーナリング) | 硬い | – | 安定した走行 |
重ね板ばねの仕組み
重ね板ばねは、複数の薄い板状のばねを組み合わせたもので、荷重の変化に応じてばねの硬さが変わるという特徴を持つ、プログレッシブスプリングの一種です。この仕組みは、長さが異なる複数の板ばねを重ね合わせることで実現されています。
具体的には、軽い荷物が載っている状態では、一番長い板ばねだけがたわみます。この時、ばねは柔らかく、乗り心地が良くなります。荷物が重くなるにつれて、短い板ばねも順々にたわみ始めます。より多くの板ばねが荷重を支えるため、全体としてばねは硬くなり、車体の沈み込みを抑えることができます。
重ね板ばねは、まるで何枚もの板ばねが協力して荷重を支えているかのようです。少ない荷物の時は、長い板ばねが一人で頑張り、荷物が重くなるにつれて、短い板ばねが一人、また一人と加勢していくイメージです。このように、荷重に応じて働く板ばねの枚数が変化することで、ばねの硬さが自然に変化していくのです。
この重ね板ばねは、古くから貨物自動車や路線バスといった大型車に広く使われてきました。大型車は荷物の量の変化が大きいため、重ね板ばねの特性が非常に有効です。空荷の状態でも、満載の状態でも、安定した走行性能を確保できます。近年では、荷室の大きさが変わる多人数乗りの車など、乗用車にも採用される例が増えてきています。荷物の有無や乗員数によって車体の姿勢が大きく変わらないため、快適な乗り心地と安定した操縦性を両立できるという利点があります。
荷重の状態 | ばねの挙動 | 乗り心地/安定性 | 使用例 |
---|---|---|---|
軽い荷物 | 一番長い板ばねだけがたわむ | 乗り心地が良い | – |
荷物が重くなる | 短い板ばねも順々にたわみ始める | 車体の沈み込みを抑える | – |
空荷 | – | 安定した走行性能 | 貨物自動車、路線バス |
満載 | – | 安定した走行性能 | 貨物自動車、路線バス |
荷物の有無/乗員数の変化 | – | 快適な乗り心地と安定した操縦性 | 多人数乗りの乗用車 |
部分円錐形コイルばねとの比較
乗り心地と操縦安定性を両立させるために、車のばねには荷重が大きくなるにつれてばね定数が高くなるプログレッシブ特性が求められます。この特性を実現するばねとして、重ね板ばねと部分円錐形コイルばねの二種類があります。
重ね板ばねは、複数の板状のばねを重ね合わせた構造です。荷重が少ないときは、すべての板ばねがたわむことで柔らかな乗り心地を実現します。荷重が増加すると、順次板ばねが接触し始め、有効な板ばねの長さが短くなるため、ばね定数が高くなり、踏ん張り感が得られます。しかし、重ね板ばねは重量が大きくなってしまうこと、取り付けスペースを多く必要とすることが難点です。
一方、部分円錐形コイルばねは、円錐の側面に沿うようにコイルを巻いた形状をしています。荷重が少ないときは、コイルの径が大きい部分が機能し、柔らかなばね定数となります。荷重が増加するにつれて、コイルの径が小さい部分が機能し始め、ばね定数が高くなります。部分円錐形コイルばねは、重ね板ばねに比べて軽量かつコンパクトであるため、乗用車に多く採用されています。さらに、製造費用も比較的安価であることもメリットです。
このように、重ね板ばねと部分円錐形コイルばねは、どちらもプログレッシブ特性を実現するためのばねですが、それぞれ重量、大きさ、費用といった点で特徴が異なります。そのため、車の種類や用途、設計思想に合わせて、最適なばねが選択されます。
項目 | 重ね板ばね | 部分円錐形コイルばね |
---|---|---|
プログレッシブ特性 | ○ | ○ |
原理 | 荷重増加に伴い有効板ばね長が短くなる | 荷重増加に伴いコイル径が小さい部分が機能 |
重量 | 重い | 軽い |
サイズ | 大きい | 小さい |
費用 | – | 安価 |
採用車種 | – | 乗用車 |
乗り心地への影響
乗り心地は、自動車を選ぶ上で非常に重要な要素です。路面の凹凸による振動が、乗員に不快感を与えてしまうからです。そこで、振動を効果的に吸収し、快適な乗り心地を実現する部品の一つが、プログレッシブスプリングです。
従来よく使われてきた線形ばねは、一定の重さで同じだけ縮む特性を持っています。そのため、路面からの小さな衝撃も、大きな衝撃も同じように車体に伝えてしまいます。小さな段差を乗り越えただけでも、車体に大きな揺れが生じ、乗員に不快感を与えてしまうことがあります。一方、プログレッシブスプリングは、ばねの巻き方が特殊です。ばねの巻き間隔が狭い部分は柔らかく、広い部分は硬いという特性があります。この構造により、小さな衝撃に対しては柔らかく反応し、振動を吸収します。まるで絨毯の上を走るように、滑らかな乗り心地を実現します。
また、急カーブや急ブレーキなどで大きな力が加わった際には、ばねの巻き間隔が広い部分が硬く作用し、車体の沈み込みや傾きを抑えます。これにより、高速走行時や悪路での安定性が向上し、乗員の安心感につながります。
プログレッシブスプリングは、様々な路面状況に対応できるという点で、日本の道路環境に非常に適しています。舗装の滑らかな高速道路から、凹凸の多い一般道まで、状況は刻々と変化します。このような環境下でも、プログレッシブスプリングは常に最適な乗り心地と安定性を提供し、快適な運転をサポートします。まさに、日本の道路事情に最適なばねと言えるでしょう。
ばねの種類 | 特性 | 小さな衝撃時 | 大きな衝撃時 | メリット |
---|---|---|---|---|
線形ばね | 一定の重さで同じだけ縮む | 車体に揺れが生じ、不快感を与える | 車体に揺れが生じ、不快感を与える | – |
プログレッシブスプリング | 巻き間隔が狭い部分は柔らかく、広い部分は硬い | 柔らかく反応し、振動を吸収、滑らかな乗り心地 | 車体の沈み込みや傾きを抑え、安定性向上 | 様々な路面状況に対応可能 |
操縦安定性への貢献
自動車の操縦安定性を語る上で、ばねの役割は極めて重要です。プログレッシブスプリングは、その名の通り荷重に応じてばねの硬さが変化する仕組みを持っています。これにより、乗り心地と操縦安定性の両立という、相反する要素の調和を実現しています。
通常走行時のような小さな荷重がかかっている状態では、ばねは柔らかく設定されています。そのため、路面の小さな凹凸を滑らかに吸収し、快適な乗り心地を提供します。まるで絨毯の上を滑るように、乗員に不快な振動を伝えることなく、スムーズな移動を可能にします。
一方、急ブレーキ時や急カーブ時など、大きな荷重がかかる状況では、ばねは硬くなります。これにより、車体の沈み込みや横方向への傾き(ロール)を抑制し、安定した姿勢を保ちます。急な操作時でも車体が大きく傾くことなく、ドライバーは落ち着いて運転操作に集中できます。まるで地面に吸い付くように安定した走行は、乗員に安心感を与え、危険回避能力の向上にも繋がります。
プログレッシブスプリングのもう一つの利点は、タイヤの接地性を向上させる効果です。路面の凹凸にしなやかに追従することで、タイヤが路面から離れるのを防ぎます。タイヤが路面にしっかりと接地していることで、常に安定したグリップ力を維持し、ブレーキ性能やコーナリング性能を向上させます。これにより、ドライバーの意図通りの運転操作が可能となり、一体感のある、より意のままになる操縦性を実現します。
このように、プログレッシブスプリングは、乗り心地と操縦安定性を高い次元で両立させるための重要な部品と言えるでしょう。路面状況や走行状況に合わせて、最適なばねの硬さを提供することで、あらゆる状況下で安全で快適な運転を支えています。
荷重 | ばねの硬さ | 乗り心地/操縦安定性 | タイヤの接地性 |
---|---|---|---|
小さい (通常走行時) | 柔らかい | 路面の凹凸を吸収し、快適な乗り心地 | 路面に追従し、接地性を向上 |
大きい (急ブレーキ/急カーブ時) | 硬い | 車体の沈み込み/ロールを抑制し、安定した姿勢 | 路面に追従し、接地性を向上 |