車の冷間始動:ファーストアイドルの役割
車の心臓部である原動機は、冷え切った状態から動き出す時に、様々な準備運動をしています。ちょうど、人の体が寒い朝に目覚めてすぐには動けないように、原動機も温まるまではスムーズに回りません。そこで、原動機を温めるための重要な役割を担うのが「始動時高回転」です。始動時高回転とは、原動機が冷えている時に、回転する速さを高く保つ仕組みです。
原動機が冷えている時は、燃料と空気の混ざりが悪くなり、燃えにくくなります。これは、寒いと空気の密度が高くなり、燃料が十分に気化しないためです。また、原動機の油も冷えて固いため、各部品の動きが悪くなります。これらの問題を解決するために、始動時高回転は必要不可欠です。
始動時高回転中は、回転の速さを上げることで、燃料と空気をより多く原動機に送り込みます。これにより、燃えにくい混合気でも確実に燃焼させることが可能になります。同時に、回転数を上げることで、原動機の油も早く温まり、各部品の動きも滑らかになります。
始動時高回転は、自動的に制御されています。原動機の水温を測る装置で温度を監視し、原動機が温まると、通常の回転数に戻ります。この制御は、電子制御装置によって行われ、常に最適な回転数を維持しています。
始動時高回転は、原動機の円滑な始動だけでなく、排気ガス浄化にも貢献しています。冷えた原動機は、燃焼が不安定なため、有害な排気ガスが発生しやすくなります。始動時高回転によって原動機を早く温めることで、有害物質の排出量を減らす効果があります。
このように、始動時高回転は、原動機の性能と環境性能を両立させるための重要な技術です。一見、単に回転数を上げているだけのように見えますが、実は様々な要素を考慮した高度な制御が行われています。