アンバー鋼

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エンジン

オートサーミックピストン:過去の技術

エンジンは、燃料を燃焼させることで動力を生み出します。この燃焼は高温高圧な環境で行われるため、エンジン内部の部品、特にピストンは過酷な熱にさらされます。高温にさらされたピストンは熱によって膨張し、その形状や寸法が変化します。この膨張が過度になると、ピストンとシリンダー壁との隙間が小さくなりすぎて、摩擦抵抗が増加します。最悪の場合、ピストンがシリンダー壁に固着する「焼き付き」と呼ばれる現象が発生し、エンジンが損傷する可能性があります。このような問題を解決するために開発されたのが、自己熱制御ピストン、別名オートサーミックピストンです。 自己熱制御ピストンは、熱膨張を自ら制御する特別な仕組みを備えています。ピストンの材質を工夫することで、高温になっても過度に膨張しないように設計されているのです。具体的には、ピストンの中でも特に高温になりやすい「ピストンピンボス」と呼ばれる部分に、熱膨張率の低い特別な鋼材が埋め込まれています。ピストンピンボスは、ピストンとコネクティングロッド(コンロッド)を繋ぐピストンピンを支える重要な部分です。この部分に熱膨張率の低い鋼材を埋め込むことで、高温下でもピストンピンボスの膨張を抑制し、ピストン全体の形状変化を最小限に抑えることができます。 この特別な鋼材は、一般的に「アンバー鋼」と呼ばれています。アンバー鋼は、他の鋼材と比べて熱膨張率が低いという特性を持つため、自己熱制御ピストンに最適な材料です。アンバー鋼をピストンピンボスに埋め込むことで、ピストン全体の熱膨張を効果的に制御し、摩擦抵抗の増加や焼き付きといった問題を防止できます。これにより、エンジンの耐久性と性能が向上し、より長く、よりスムーズに車を走らせることが可能になります。