車の翼、ウイングの役割
昔の車は、舗装されていない道を走ることが多かったため、タイヤが巻き上げる泥や小石が問題でした。車体が汚れ傷つくだけでなく、運転している人や歩いている人に当たる危険もありました。これを防ぐために、タイヤを覆う部品が必要でした。そこで登場したのが、車体とは別に独立して取り付けられた板状の部品、今で言う泥よけです。これが、翼のような形をしていたことから「羽根」を意味する「ウイング」と呼ばれるようになりました。
初期の車はタイヤがむき出しで、雨の日は泥だらけ、晴れの日は砂ぼこりで、乗る人も周りの人も大変でした。ウイングは、この問題を解決する画期的な部品でした。材質は金属や木などで作られ、形も様々でした。丸みを帯びたもの、四角いもの、流れるような曲線を描いたものなど、車種によって個性的なデザインが施されていました。ウイングは単なる実用的な部品ではなく、車の外観の重要な要素の一つでもありました。
時代が進むにつれて、道路が舗装され、車の構造も変化していくと、ウイングは車体と一体化した形に変わっていき、今では泥よけ全体を指す「フェンダー」という言葉が一般的になりました。「ウイング」という言葉は、独立したフェンダーを持つ昔の車、特に年代物の車に対して使われることが多くなりました。現代の車では、空気抵抗を少なくするために車体と一体化したフェンダーが主流ですが、昔の車の独立したウイングを見ると、自動車の歴史と進化を感じることができます。ウイングは、車の発展における重要な部品であり、その歴史を知ることで、車のデザインの変化や技術の進歩をより深く理解することができます。