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エンジン

熱の出入りがない変化:断熱変化とは

熱の出入りがない変化、つまり断熱変化は、私たちの身の回りでも様々な場面で見られます。魔法瓶はその典型的な例です。魔法瓶は二重構造の壁の間を真空にすることで、熱の伝わる道筋を断ち、内容物の温度を長時間保ちます。魔法瓶に入れた熱いお茶は冷めにくく、冷たい飲み物はぬるくなりにくいのは、この断熱効果のおかげです。 自動車のエンジンでも、断熱変化は重要な役割を担っています。エンジンの心臓部であるシリンダーの中では、ピストンが上下運動を繰り返しています。ピストンが上に向かって進む時、シリンダー内の空間は狭くなり、中の空気は圧縮されます。この圧縮過程は非常に速いため、周りの空気との間で熱のやり取りをする暇がないのです。これが断熱圧縮と呼ばれる現象で、この時に空気の温度は上昇します。この高温高圧の空気に対し燃料が噴射され、爆発的に燃焼することで、ピストンは下へと押し下げられます。これがエンジンの動力の源です。 ピストンが下がる時、シリンダー内の空間は広がり、空気は膨張します。これも同様に速い変化であるため、断熱膨張と呼ばれ、空気の温度は下がります。このようにエンジンのピストンが上下に動く一連の過程は、断熱圧縮と断熱膨張の繰り返しであり、熱の出入りがない状態変化がエンジンの動力発生に大きく関わっていると言えるでしょう。 断熱変化は、急激な体積変化に伴う現象です。ゆっくりと空気を圧縮したり膨張させたりすると、周りの空気と熱のやり取りが起こり、温度変化は小さくなります。しかし、エンジンのように素早い変化の場合には、熱の出入りがない、つまり断熱変化とみなせるのです。