機械損失:エンジンの隠れたロス
車は、エンジンで燃料を燃やし、その爆発力で動力を生み出します。しかし、燃料のエネルギーが全て車の推進力に変換されるわけではありません。動力の一部は、エンジン内部の様々な抵抗によって熱エネルギーに変換され、失われてしまいます。この失われたエネルギーを機械損失と言います。機械損失は、エンジン内部の部品同士の摩擦や、オイルなどの流体の抵抗によって発生します。
エンジン内部には、たくさんの部品が組み合わさって動いています。例えば、ピストンはシリンダーの中を上下に激しく動き、クランクシャフトは回転運動に変換します。これらの部品は、金属同士が直接接触する部分も多く、どうしても摩擦が生じてしまいます。摩擦によって発生した熱は、エネルギーの損失となり、エンジンの出力を低下させます。摩擦による損失を減らすためには、部品の表面を滑らかにしたり、適切な潤滑油を使うなどの工夫が必要です。
エンジンオイルは、エンジン内部の潤滑や冷却には欠かせませんが、同時に抵抗も生み出します。オイルには粘り気があり、この粘り気が部品の動きを妨げるのです。特に、寒い朝などエンジンが冷えている時は、オイルの粘り気が高いため、抵抗も大きくなります。このため、エンジンが温まるまでは、機械損失が大きくなり、燃費が悪化する原因の一つとなります。オイルの粘り気は温度によって変化するため、適切な粘度のオイルを選ぶことが重要です。また、オイルの量が多すぎても少なすぎても、抵抗が増加し、機械損失が大きくなります。こまめなオイル交換や量の確認も、機械損失を減らすために有効な手段です。
機械損失を低減することは、燃費向上に繋がり、ひいては環境保護にも貢献します。自動車メーカーは、様々な技術開発を通して、機械損失を少しでも減らす努力を続けています。例えば、摩擦抵抗の少ない新素材の開発や、オイルの改良などです。私たちも、適切なオイル管理や、急発進、急ブレーキを避けるなど、日頃の運転を心がけることで、機械損失の低減に貢献することができます。