オートマチックトランスミッション

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駆動系

変速機の頭脳:バルブボディの役割

車は、停止状態から走り出し、速度を上げていく際に、動力の伝達を調整する装置が必要です。この重要な役割を担うのが変速機であり、人間で言えば自転車の変速機のような働きをします。 変速機には様々な種類がありますが、現在主流となっているのは自動変速機、いわゆる自動で変速する仕組みを持つものです。この自動変速機の中でも、特に重要な部品が弁体と呼ばれるものです。弁体は、自動変速機の心臓部とも言える変速機の中で、いわば頭脳のような役割を担っています。 自動変速機内部には、様々な大きさの歯車が組み合わされており、これらの歯車を組み替えることで、エンジンの動力をタイヤに伝えています。この歯車の組み合わせを切り替える際に、弁体が中心的な役割を果たします。 弁体は、油の流れを細かく調整することで、どの歯車に動力を伝えるか、また、その切り替えのタイミングを決定しています。ちょうど、人間の脳が体に様々な指示を出すように、弁体は変速機内部の油の流れを制御し、滑らかな加速と減速を実現します。この精密な制御によって、私たちは快適な運転を楽しむことができるのです。 例えば、車が停止状態から発進する際には、低い段の歯車に動力が伝わります。そして、速度が上がっていくにつれて、弁体は油の流れを切り替え、より高い段の歯車へと動力を伝えていきます。この一連の動作は、すべて自動的に行われ、運転者はアクセルペダルやブレーキペダルを操作するだけで、スムーズな運転を楽しむことができます。 このように、弁体は自動変速機において、極めて重要な役割を担っており、その働きを理解することは、自動変速機の仕組みを理解する上で非常に重要と言えるでしょう。
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マニュアルバルブ:変速の心臓

車を走らせる時、速度を変えるために変速操作は欠かせません。まるで自転車のギアを変えるように、状況に合わせてエンジンの回転数とタイヤの回転数を調整することで、スムーズな加速や減速、燃費の向上を実現しています。この変速操作の中心的な役割を担うのが、変速機と呼ばれる装置です。変速機には、手動でギアを変える手動変速機と、自動でギアを変える自動変速機があります。 自動変速機の場合、変速の要となるのがマニュアルバルブです。マニュアルバルブは、自動変速機の中にある油圧制御バルブボディという部品の一部です。運転者がシフトレバーで「前進」「後退」「駐車」などを選ぶと、その動きに合わせてマニュアルバルブが作動します。マニュアルバルブは、複数の油路を切り替える小さな扉のような役割を果たしており、この切り替えによって、変速機内部にあるピストンに送られる油の量が調整されます。ピストンは、クラッチと呼ばれる部品を繋げたり切ったりすることで、エンジンの回転をタイヤに伝えます。どのクラッチを繋げるかによって、どのギアに繋がるかが決まり、車の速度が変わります。 例えば、停止状態から動き出す時は、マニュアルバルブが1速用の油路を開き、1速用のクラッチが繋がります。速度が上がると、マニュアルバルブは2速用の油路に切り替え、1速のクラッチを切り、2速のクラッチを繋ぎます。これが自動変速機で変速が行われる仕組みです。マニュアルバルブは、運転者の操作を油圧の力に変換し、変速機に伝える、いわば司令塔のような役割を果たしているのです。この精密な制御によって、私たちはアクセルペダルとブレーキペダル、そしてシフトレバーの簡単な操作だけで、複雑な変速操作をスムーズに行うことができるのです。
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車の心臓部:バキュームダイヤフラムの働き

車は、エンジンの力で動きます。この動力はタイヤに伝わることで、はじめて車は走ることができます。エンジンが生み出した力を効率よくタイヤに伝えるために、自動変速機(AT)を持つ車には、様々な仕組みが備わっています。その中で、吸気力と油圧を繋ぐ重要な役割を果たしているのが、真空膜と呼ばれる部品です。 真空膜は、薄いゴム膜のようなもので、その両側には異なる圧力がかかっています。片側にはエンジンの吸気圧、もう片側には油圧がかかっており、この圧力差によって膜が変形します。エンジンの吸気圧は、アクセルペダルの踏み込み具合によって変化します。アクセルペダルを深く踏むと吸気圧は下がり、逆に軽く踏む、あるいは離すと吸気圧は上がります。この吸気圧の変化によって真空膜が変形し、油圧を変化させるのです。 では、なぜ油圧を変化させる必要があるのでしょうか。それは、油圧がATの変速制御に深く関わっているからです。ATは、複数の歯車を使ってエンジンの回転力をタイヤに伝えています。状況に応じて適切な歯車を選択することで、スムーズな加速や減速を実現しています。この歯車の切り替えを制御するのが、油圧の役割です。油圧が変化することで、AT内部のバルブが開閉し、歯車に送られる油の量や経路が調整されます。これにより、最適な歯車が選択され、スムーズな変速が行われるのです。 つまり、真空膜はアクセルペダルの操作を、ATの変速動作に変換する仲介役を果たしていると言えるでしょう。ドライバーがアクセルペダルを踏むと、エンジンの吸気圧が変化し、それに応じて真空膜が変形、油圧が変化することでATが変速し、車は加速します。まるで、心臓が血液を送ることで全身の機能を調節するように、真空膜はATにとって無くてはならない存在と言えるでしょう。
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快適さと操る喜びを両立:スポルトロニック

スポルトロニックは、アルファロメオ166に搭載された、先進的な変速装置です。これは、自動で変速を行う、いわゆる自動変速機の一種でありながら、運転手の意思で変速操作を行うこともできる、画期的な仕組みを持っています。 この装置を使うと、運転する状況や好みに合わせて、自動変速の楽さと手動変速の操る喜びを自由に選べるのが大きな特徴です。例えば、道路が混んでいる時などは自動変速のままで楽に運転できます。一方、曲がりくねった山道などでは、手動変速に切り替えることで、エンジンの回転数を自由に操り、活発な運転を楽しむことができます。 スポルトロニックは、単なる自動変速機と手動変速機の組み合わせではありません。自動変速の状態でも、運転手のアクセルの踏み方やブレーキ操作に反応して、まるで運転手の気持ちを理解しているかのように変速を行います。これにより、滑らかで無駄のない走りを実現しています。 手動変速に切り替えた場合は、ハンドルに備え付けられたレバーを使って、まるで熟練の運転手のように変速のタイミングを自分で決めることができます。この時、変速ショックがほとんどなく、スムーズに変速できるため、車との一体感が高まり、運転する楽しさをより深く感じることができます。 このように、自動変速と手動変速、二つの異なる長所を兼ね備えたスポルトロニックは、アルファロメオ166の魅力を高める重要な要素となっています。快適な運転と操る喜びを両立させるこの装置は、まさにアルファロメオの技術力の高さを示すものと言えるでしょう。
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バンドブレーキ:ATの隠れた主役

自動で変速を行う装置、いわゆる自動変速機の内部では、精巧な機械の組み合わせがなめらかな変速を可能にしています。その中で、帯ブレーキは影の立役者として大切な働きをしています。帯ブレーキは、主に惑星歯車装置と呼ばれる歯車の組み合わせの回転を調整するために使われます。惑星歯車装置は、中心の太陽歯車、その周りを回る遊星歯車、遊星歯車を支える遊星キャリア、そして一番外側の内歯車からできています。これらの歯車の組み合わせを変えることで、動力の伝わる割合である変速比が変わります。帯ブレーキは、これらの歯車のうち、特定の歯車を固定したり、動きを抑えたりすることで、変速の動作を調整するのです。具体的には、太鼓のような円筒形の部品であるドラムに、帯が巻き付けられています。この帯は、補助ピストンと呼ばれる油の圧力で動くピストンによって操作されます。補助ピストンが動くと、帯の内側に貼り付けられた摩擦材がドラムに押し付けられ、摩擦によってドラムの回転が抑えられます。これにより、惑星歯車装置の回転の速さが調整され、変速が行われます。この仕組みは、自転車のブレーキのように、帯を締め付けることで回転を止める仕組みと似ています。自転車のブレーキは、ワイヤーを引っ張ることでブレーキパッドを車輪に押し当てますが、自動変速機の帯ブレーキは、油の圧力を使って帯をドラムに押し当てている点が異なります。また、自転車のブレーキは車輪の回転を完全に止めるために使われますが、自動変速機の帯ブレーキは、歯車の回転を調整するために使われるため、より精密な制御が必要です。このように、帯ブレーキは自動変速機の中で、滑らかで正確な変速を実現するために、重要な役割を果たしているのです。
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滑らかな走りを実現する技術

車は、アクセルを踏むと動力がエンジンからタイヤへと伝わり、前に進みます。ブレーキを踏むとタイヤの回転が抑えられ、車は止まります。しかし、エンジンの回転速度とタイヤの回転速度は必ずしも一致するとは限りません。状況に応じて最適な回転速度の組み合わせが必要となるのです。そこで重要な役割を果たすのが変速機です。変速機は、エンジンの回転を様々な速度に変換し、タイヤに伝える役割を担っています。 変速機には様々な種類がありますが、近年の乗用車に多く搭載されているのがAT、つまり自動変速機です。ATは、自動で変速操作を行うため、運転者はクラッチ操作やギア選択をする必要がありません。このATの内部で、前進や後退の切り替えを制御しているのが、フォワードクラッチとリバースブレーキです。 フォワードクラッチは、エンジンの動力をタイヤに伝える際に使われます。アクセルを踏むと、油圧によってフォワードクラッチが締結され、エンジンの回転が変速機を介してタイヤに伝わり、車は前進します。一方、リバースブレーキは、後退時に使われます。シフトレバーを後退の位置に入れると、油圧によってリバースブレーキが作動し、タイヤの回転方向が逆になり、車は後退します。これらの部品は、油圧の力によって締結と解放を精密に制御されています。 油圧制御の巧みさによって、まるで熟練の運転手が滑らかにクラッチ操作を行うかのように、ATは変速ショックを抑え、スムーズな加減速を実現します。さらに、走行状況に応じて最適なギアを選択することで、燃費向上にも貢献しています。このように、ATは複雑な機構と高度な制御技術によって、乗員にとって快適で効率的な運転体験を提供しているのです。
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滑らかな変速の秘密:サーボピストン

自動で変速する仕組みを持つ装置で、滑らかな変速を行うために欠かせない部品の一つに、補助となる油圧式の押し棒があります。正式には帯状の制動部品を制御する補助押し棒と呼ばれ、この小さな部品が変速時の衝撃を和らげ、心地よい運転を支えています。 この補助押し棒は、帯状の制動部品を締めたり緩めたりする油圧を利用した押し棒です。帯状の制動部品は、歯車と円筒状の部品の間に配置された帯状の部品で、これを締め付けることで回転を停止させ、緩めることで回転を可能にします。この帯状の制動部品を制御するのが補助押し棒の役割です。 例えば、車が二速で走っている時、帯状の制動部品は締め付けられて特定の歯車を固定しています。そして、三速に切り替える際には、この帯状の制動部品を素早く正確に解放する必要があります。この解放動作を担うのが補助押し棒です。押し棒の上下に作用する油圧を巧みに制御することで、帯状の制動部品を瞬時に解放し、滑らかな変速を実現しています。 油圧の制御は、装置全体の状況を監視する制御装置によって行われます。制御装置は、車の速度やアクセルの踏み込み量など、様々な情報から最適な油圧を計算し、補助押し棒へ指示を出します。これにより、状況に応じた滑らかで正確な変速が実現するのです。 小さな部品ですが、高度な技術が詰め込まれており、滑らかな変速には欠かせない重要な部品と言えるでしょう。