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エンジン

ロータリーエンジンの心臓部、チャターマークとは?

回転式の心臓部である回転機関は、ふつうに見るピストンが上下運動する機関とは違い、三角形の形をした回転子が部屋の中でぐるぐると回ることで力を生み出します。この変わった仕組みのおかげで、機関は小さくて済む上に大きな力も出せるようになりましたが、それと同時に特別な問題も抱えることになりました。その一つが、おしゃべり傷と呼ばれるすり減りです。 このおしゃべり傷は、回転子の先端につけられた「頂点しめつけ」と呼ばれる部品が、部屋の内壁をこすることで起こります。部屋の内壁は「転子線」と呼ばれる複雑な曲線を描いており、頂点しめつけはこの曲線に沿って常にこすりつけられます。このこすり合わせによって、少しずつ小さな傷ができてしまい、これがおしゃべり傷と呼ばれる現象です。まるで、部品同士がこすれ合って「おしゃべり」しているように見えることから、この名前がつけられました。 このすり減りは、機関の力の低下や燃費の悪化に繋がります。回転運動によって力を生み出すこの機関にとって、なめらかに回転することはとても重要です。しかし、おしゃべり傷によって頂点しめつけと部屋の内壁の間に隙間ができると、せっかく作った圧力が逃げてしまい、うまく力を生み出せなくなってしまいます。また、隙間から燃え残りのものが漏れ出てしまうと、燃費が悪くなってしまいます。 そのため、このおしゃべり傷は、回転機関の開発において大きな壁となっていました。より丈夫な材料を探したり、部屋の内壁の形を工夫したり、様々な方法でおしゃべり傷を減らすための研究が行われました。おしゃべり傷を少しでも減らすことが、回転機関の性能を上げる鍵だったのです。この小さな傷との戦いが、回転機関の歴史を形作ってきたと言えるでしょう。