車の整流板:スポイラーの役割
整流板とは、車体の表面に取り付けられた板状の部品で、空気の流れを整えるためのものです。よく似た部品に「空気抵抗板」がありますが、こちらは空気の流れを妨げることで抵抗を増やす役割を持ち、主にブレーキの効きを良くするために用いられます。一方で整流板は、空気の流れをスムーズにすることで抵抗を減らしたり、あるいは特定の方向へ流すことで車体に力を加えたりする目的で使われます。
整流板はもともと飛行機の翼に使われていた技術で、揚力の調整に使われていました。飛行機の翼は、その形によって空気の流れを変え、上向きの力(揚力)を生み出すことで空を飛ぶことができます。この翼に取り付けられた整流板は、揚力を増減させることで飛行機の飛行を安定させる役割を担っていました。
自動車においては、レーシングカーの設計者であったダン・ガーニー氏が初めて整流板を導入しました。彼は、翼の後端に取り付ける小さな板が揚力を増加させることを発見し、これを「ガーニーフラップ」と名付けました。この発見はレースカーの性能向上に大きく貢献し、その後、多くのレーシングカーに採用されるようになりました。
現在では、様々な乗用車にも整流板が取り付けられています。その目的は様々で、車体後部に取り付けられた整流板は、車体上面を通過する空気の流れを下向きに変えることで、車体を地面に押し付ける力を発生させます。これにより、高速走行時の安定性を向上させることができます。また、バンパーの下に取り付けられた整流板は、車体下面への空気の流れ込みを抑制し、空気抵抗を減らす効果があります。その他にも、車体側面に取り付けられた整流板や、ブレーキの冷却効果を高めるための整流板など、様々な形状や設置場所、目的を持った整流板が存在します。このように、整流板は目立たないながらも、自動車の性能向上に欠かせない重要な部品となっています。