キャタピラー社の軌跡
農業や土木工事などの現場で活躍する建設機械の中で、整地や運搬作業に欠かせないのがトラクターです。初期のトラクターは車輪で動いていましたが、ぬかるんだ地面や起伏の激しい場所での走行には課題がありました。車輪は地面との接触面積が小さいため、軟弱な地盤では車輪が沈み込み、動けなくなってしまうことが頻繁にあったのです。
そこで登場したのが、無限軌道、いわゆるキャタピラーと呼ばれる機構です。これは、多数の小さな車輪を連結したベルト状の構造をしており、このベルトが地面に接することでトラクターを動かします。1904年、アメリカのホルト社が世界で初めてこの無限軌道式トラクターを開発しました。この画期的な発明は、それまでの農業や土木工事の方法を一変させるほどのインパクトをもたらしました。
無限軌道の最大の利点は、地面との接触面積が車輪に比べて格段に広いことです。接触面積が広いため、地面にかかる圧力が分散され、車輪のように地面に深く沈み込むことがありません。つまり、ぬかるみや砂地、起伏の激しい場所でも安定した走行が可能になるのです。また、無限軌道は地面をしっかりと捉えるため、傾斜地でも滑りにくく、力強い駆動力を生み出します。
この無限軌道の登場により、農作業や土木工事の効率は飛躍的に向上しました。これまで重労働だった作業が大幅に軽減され、人々の労働負担も大きく減りました。そして、これまで機械が入ることが難しかった場所でも作業が可能になったことで、農地の拡大や道路建設など、さまざまな分野で発展が加速しました。まさに、無限軌道の発明は、農業や土木工事における革命だったと言えるでしょう。