切り立った窓:クリフカットの魅力
切り立った崖のような、独特な形状をした車の後部窓。これが、クリフカットと呼ばれるデザインです。この斬新な造形は、1960年代のアメリカ車から始まりました。広大な土地をゆったりと走る、巨大な車体が主流だった時代。力強いエンジンと豪華な装飾を備えたアメリカ車は、まさに豊かさの象徴でした。その中で、クリフカットは、大胆なスタイルをさらに際立たせる要素として登場しました。
それまでのなだらかな傾斜で構成された後部窓とは異なり、クリフカットは、まるで断崖絶壁のように垂直に切り落とされた形状をしています。そのため、後部座席の頭上空間は狭くなる傾向がありましたが、それ以上に、他に類を見ない個性的な外観が人々の目を引きました。斬新なデザインは、見るものを驚かせ、話題を呼びました。
1960年代当時、車の空気抵抗に関する研究は、まだそれほど進んでいませんでした。そのため、クリフカットのような角張ったデザインは、空気抵抗を増やし、燃費を悪化させる一因と考えられていました。しかし、燃費よりもスタイルを重視する人々にとっては、この個性こそが魅力でした。クリフカットは、すべての車種に採用されたわけではありませんが、一部の車種で、その特徴的な外観が愛好家たちの心を掴み、特別な存在感を放っていました。彼らは、多少の燃費の悪化よりも、他とは違う個性的な車を所有することの満足感を選んだのです。こうして、クリフカットは、アメリカ車における一つのデザインの潮流として、その時代を彩りました。