車のエンジン始動を探る
車を走らせるためには、エンジンを始動させ、連続した爆発力を得る必要があります。これは、まるで複雑な仕掛けを持つ時計のゼンマイを巻き上げるような工程です。まず、運転者が鍵を回す、あるいは始動ボタンを押す動作をきっかけに、電気の流れがスターターモーターへと送られます。スターターモーターは、電気の力で回転する小さなモーターで、エンジン内部のクランク軸という太い軸を回転させるための重要な役割を担います。スターターモーターには小さな歯車(ピニオンギア)が付いており、これがクランク軸の先端にある歯車に噛み合います。まるで歯車と歯車が噛み合って大きな歯車を回すように、スターターモーターはクランク軸を力強く回転させます。
クランク軸が回転を始めると、それに繋がるピストンと呼ばれる部品がシリンダーと呼ばれる筒の中で上下運動を始めます。このピストンの上下運動によって、シリンダー内では吸気、圧縮、爆発、排気の4つの動作が順に行われます。まず、ピストンが下がることでシリンダー内に新鮮な空気と燃料の混合気が吸い込まれます(吸気)。次に、ピストンが上がり、混合気をぎゅっと圧縮します(圧縮)。そして、圧縮された混合気に点火プラグから火花が飛び、爆発が起こります(爆発)。この爆発の力はピストンを押し下げ、クランク軸を回転させます。最後に、ピストンが再び上がると、燃えカスがシリンダーから排出されます(排気)。この一連の動作を繰り返すことで、エンジンは連続した回転力を得ます。最初の爆発が起き、エンジンが自ら回転を続けることができるようになると、スターターモーターの役割は終わり、ピニオンギアはクランク軸から離れます。まるでバトンを渡すリレー選手のように、エンジンは自分の力で回転を続け、車は走り始めるのです。現代の車は、電子制御技術の進歩により、これらの複雑な工程が自動的に、そしてスムーズに行われるようになっています。