急加速の秘密:キックダウンスイッチ
自動変速機を備えた車には、素早く速度を上げるための仕掛けが隠されています。それを、踏み込み量で変速を制御する装置といいます。この装置は普段は静かに仕事をしていますが、運転者がぐっとアクセルペダルを深く踏み込んだ時、大きくその働きを変えます。
アクセルペダルには、踏み込み具合を測る仕組みが備わっています。ペダルには可動範囲があり、その範囲のおよそ8割7分を踏み込むと、ある小さな装置が作動します。これが踏み込み量で変速を制御する装置の重要な部品の一つで、俗に踏み込み量感知装置と呼ばれています。
この踏み込み量感知装置は、アクセルペダルの踏み込みが一定量を超えるとスイッチが入り、変速機を制御する装置に信号を送る働きをします。信号を受け取った変速機を制御する装置は、即座に低い段の歯車に切り替えるよう指示を出します。
車の速度を変える歯車は、複数の段が用意されており、低い段の歯車を使うと、エンジンの力は速度よりも力強さを重視した状態になります。高い段の歯車では速度は出ますが、力強さは弱まります。踏み込み量感知装置のおかげで、エンジンの回転数が上がり、力強い加速を生み出すことが可能になるのです。
例えば、他の車を追い越したり、高速道路に合流したりする時など、瞬時に速度を上げる必要がある場面を想像してみてください。このような時こそ、踏み込み量で変速を制御する装置が真価を発揮します。アクセルペダルを深く踏み込むだけで、自動的に低い段の歯車に切り替わり、力強い加速を得られるので、安全でスムーズな運転操作が可能になります。まるで隠された加速装置が、必要な時にだけ力を貸してくれるかのようです。