シリコーンコート

安全のために、自動車には衝突時に乗る人を守るための袋状の物が備えられています。この袋は、通常は折りたたまれて収納されていますが、事故が起きた瞬間にガスで膨らみ、乗る人の命を守ります。この重要な安全装置の袋部分を構成しているのが、エアバッグ織布と呼ばれる特別な布です。 エアバッグ織布は、主にナイロン６６という糸で作られています。ナイロン６６は、強度と耐久性に優れているため、エアバッグの素材として最適です。一部では、ポリエステル製の糸が使われる場合もありますが、いずれも高い性能が求められます。というのも、エアバッグ織布は、単なる布ではなく、様々な特殊な機能を備えているからです。 事故の衝撃でエアバッグが作動すると、内部のガス発生装置からガスが瞬時に送り込まれ、袋部分が急速に膨らみます。この時、エアバッグ織布には非常に大きな力が加わるため、破れたり裂けたりすることなく、その力に耐える必要があります。また、膨らんだ後も一定の形を保ち、乗る人をしっかりと支える役割も担います。 これらの要求に応えるために、エアバッグ織布には、高い引っ張り強度、引き裂き強度、そして摩擦に強い性質が求められます。引っ張り強度とは、布が切れるまでにどれだけの力をかけることができるかを示すもので、引き裂き強度は、布に切れ目が入ったときに、それがどれだけ広がりにくいかを示すものです。また、摩擦に強い性質も重要で、エアバッグが展開する際に、他の部品との摩擦で破損しないようにしなければなりません。 エアバッグ織布を作る際には、これらの特性を満たすために、糸の太さや種類、織り方などが緻密に計算されています。安全を守るための重要な部品だからこそ、素材の選定から製造工程まで、様々な工夫が凝らされているのです。