スプリットピストン

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ソリッドスカートピストン:基礎知識

車は、エンジンの中でピストンと呼ばれる部品が上下に動くことで動力を生み出しています。ピストンは、エンジンの心臓部とも言える重要な部品であり、その形状や構造はエンジンの性能に大きく影響します。数あるピストンの中でも、構造が簡素なソリッドスカートピストンについて詳しく見ていきましょう。 ソリッドスカートピストンとは、名前の通り、ピストンの側面、つまりシリンダー壁と接する円筒状の部分であるスカートが一体成型されたピストンのことです。他の複雑な形状のピストンと異なり、一体成型のため製造工程が簡素化され、コストを抑えることができます。これが、ソリッドスカートピストンが多くの車、特に基本的なエンジンに広く採用されている理由の一つです。 スカートは、シリンダー壁との摩擦を少なくする重要な役割を担っています。ソリッドスカートピストンは、このスカート部分が一体となっているため、構造的に単純で丈夫です。この丈夫さのおかげで、ピストンは高い硬さを持ち、エンジンの燃焼で発生する高い圧力にも耐えることができます。 さらに、ソリッドスカートピストンのシンプルな構造は、設計の自由度が高いという利点も生み出します。つまり、エンジンの出力や燃費など、様々な特性に合わせてピストンの形状や大きさを細かく調整することが容易なのです。このため、様々な種類のエンジンに合わせることができ、多くの車種で採用されています。 しかし、ソリッドスカートピストンにも課題はあります。一体成型であるがゆえに、他の形状のピストンに比べて重くなってしまう傾向があります。また、熱による膨張の影響を受けやすく、ピストンがシリンダー壁を叩くピストンスラップと呼ばれる異音が発生しやすいという側面もあります。これらの課題を解決するために、材料の見直しや表面処理などの改良が日々続けられています。
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姿を消した工夫:スプリットピストン

かつて、自動車のエンジン音は、今よりもずっと大きく、騒々しかったものです。静かなエンジンを作ることは、当時の技術者にとって大きな課題でした。その中で、様々な工夫が凝らされ、騒音を抑えるための様々な部品が開発されました。その一つが、「分割式」と呼ばれる特殊な形をした部品です。これは、エンジンの内部で上下に動く、筒のような部品の一部に、切れ目が入っているという、少し変わった構造をしていました。 この、筒のような部品は、エンジンの中で激しく動き、筒状の壁にぶつかることで大きな音を立てていました。この音を「打撃音」と呼び、エンジンの騒音の大きな原因の一つでした。そこで、この筒状の部品に切れ目を入れることで、部品全体の硬さを意図的に弱くし、壁にぶつかった時の衝撃を吸収しようとしたのです。 切れ目が入っていることで、部品は衝撃を受けた際に、わずかに変形します。この変形によって、ぶつかった時のエネルギーが吸収され、大きな音の発生が抑えられるのです。まるで、硬い板を叩くよりも、柔らかい布を叩く方が音が小さいのと同じ原理です。 この、分割式と呼ばれる部品は、当時の技術者が、静かなエンジンを作るために、知恵を絞って生み出した工夫の一つでした。今では、材料技術や設計技術の進歩により、このような部品を使わなくても静かなエンジンを作ることができるようになりましたが、かつての技術者の努力と工夫は、現在の技術の礎となっていると言えるでしょう。